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第二話「特訓と魔色鑑定」

この世界に転生してから七年の月日が流れた。

俺とソラは七歳になった。


思えばこの七年間、色んな事をした。

ソラが安心してこの世界で暮らせるよう、そばにいる俺が強くなるために。

そして今日という日のため。


一歳までは禄に二足歩行できなかったため、

歩くのにすら大変苦労した。

何度も転んでは膝を擦りむき、床の木目を間近で眺めていた。

魔法を使って飛べれば大変楽なのだが、

この世界で俺は赤眼という魔力量がただでさえ少ないので、

浮遊魔法なんて使ったら途中で魔力が切れて地面に真っ逆さまだ。

今の歳で安易に浮遊魔法を使うのはやめようと思った。


一歳までにこの世界の魔法のを知りたく、

家にある魔法に関する書物を読み漁った。

羊皮紙の臭いがする本棚に魔法に関する本がたくさんあったので、それを読んだ。

本棚の上段にある本などはさすがに浮遊魔法を一瞬だけ使わざるを得なかったが。


そしてこの世界の魔法の概念や使い方についていくつか分かったことがある。


まず、この世界では魔法を使うのに、

魔力を媒介する物を使うのが主流らしい。

例えば杖だな。

杖を使うと体内にある魔力が増幅し、より強い技が打てるようになるらしい。

手などから魔法を直接発動するのは普通はしないみたいだ。

これは神界の常識とは違って驚いた。


二つ目は、魔法にはクラス1〜クラス10までの強さの段階があるみたいだ。

クラス10が最も強い魔法だ。

だがクラス10まで人類が規定したはいいものの、

今まで人類史上ではクラス7の魔法までしか観測されていないらしい。

それに其のクラス7を使った魔術師はどうやら現代に生きている、と。

最強の魔術師が現代に居ると考えると胸が高鳴った。

自分がどこまでのクラスの魔法を使えるのかは分からないが、

できることならクラス10まで使ってみたいものだ。


最後は、魔法には火、水、土、木、光、闇、無の六属性あるらしい。

個人それぞれにどの属性に適正があるとかはないらしい。

ということは全属性習得できるということだ。

これも全種類習得したいな。


こういった魔法に対する概要を知った俺は、

この赤ん坊の体で魔法の練習をするために、

とりあえず家の中で魔法触媒を探した。

家の中を探すと、杖があった。


母のものだろうか?

まあいいか。


この杖を使って魔法の習得と強化をしようと思った。

赤ん坊の手で持つには少し太いが、

頑張って手を広げ握った。


勉強が親にバレるとめんどくさいので、

親の目を盗んで勉強していたのだが、

ある日たまたま母親に見つかってしまい、

驚きと恐怖の混じった悲鳴が家の中を駆け巡った。


そりゃそうだ、

一歳にも満たない赤ん坊が杖を握って魔法書を読んでいるのだから。

今まで普通の赤ん坊を演じていた俺は、

これからキモがられるかなあ、とか思いつつ母親の次なる反応を待った。


「ファナ!?な、なにしてるの!?

 もしかして、お勉強!?」


かなり慌てた様子だった。

演技するのが急にめんどくさくなった俺は、

普通に喋って答えてやろうと思った。


「そう。クラス一魔法の習得中だよ。」

「え!?ファナ!?もう喋れるようになったの!?

 ちょちょちょっとまってね。整理するわ。」

「ファナ?まずあなたは言葉が理解できるのね?」

「うん」

「それで言葉もう喋れるのね?」

「うん」

「で、いまはクラス1魔法の勉強をしている、と?」

「そうなるね。」


全部正直に答えてやった。

前世があるとかはまた話がややこしくなるので言わないが。


「信じられないわ。ファナがこんなに…」


そりゃ奇妙と言われても仕方ないか。

普通の赤ん坊だったら考えられないことだもんな。

これから親に変な目で見られながら生活するのか…

はあ…


「天才だったなんて!!!」


え?

なんか思ってたのと違う反応が帰ってきた。


普通奇妙に思わないのか?

まだ一歳未満の赤ん坊だぞ?


…まあいいか。

変に思われるよりかはマシだな。

天才ってことにしとこう。


そしてこんなことで天才だと言ってもらえて、

前世で何習得しても野次しか飛ばなかったあの頃と比べると、

なんだかじんわり心があったかくなった。


―――


そんなこんなあって俺は一歳までに、全六属性のクラス1魔法を覚えた。

ただし、回復魔法を除いて。

まあ回復魔法はソラが得意だし俺がやる必要はないと考えていた。


一歳〜三歳までは、

二足歩行もできるようになったことなので、

剣術の基礎である体作りを行うことにした。

もちろん魔法の勉強も並行して。


正直この身体づくりが今までの修行の中で一番きつかった。

この体はそこまで身体能力が高いわけではないし、

いくら習得の神とはいえど、こういう基礎的なものはちまちまやるしかないのだ。

さらにすぐに息が上がる、すぐに筋肉痛になる。

大変だった。


ぜひぜひ言いながらそんな訓練をしてたもんだから、

両親からはとても心配された。


ソラも途中から俺の体力づくりに参加してくれた。

これにより俺のやる気は数百倍にも跳ね上がった。

ソラがそばにいるだけで俺はどこまでも強くなれるのだ。


魔法の勉強も同時にしていて、

また判明したことがある。


それは、魔力量そのものの増大には、

一度魔力を使い切って魔力限界になる必要があること。


よくよく考えれば、

俺は習得の神なのだから、魔法くらいなら一瞬で習得できる。

しかし、魔力量は俺にとってそう簡単に増やせるものじゃない。

よって、優先すべきは魔力量の増大だと思った。


それから魔術の勉強をいったん辞め、

魔力量の増大に力を入れた。

具体的には、魔法を打ちまくって魔力限界に持っていくのだ。


この魔力限界になった状態がまあきつい。

全身に力が入らないし、ずっと身体が熱異常のような感覚になる。

例えるなら全身の血が逆流するような熱さだ。

指先まで魔力が擦り切れていくようだった。


しかし、これを乗り越えねば魔力量は増えないと自分に言い聞かせ、

ほぼ毎日魔力限界になるまで魔法を打ちまくった。


こんな辛い訓練をしている中でも喜ばしいことがあった。

ソラが二歳半ばになったときにソラに妹ができたのだ。

名前はリナというらしい。

これがまたソラと同じく可愛らしい金髪赤眼の子だった。

まだリナは赤ん坊なのであまり関わることはなかった。

大人になった時に、どんな美女になるのか楽しみだ。


そして三歳〜七歳になるまでは、

魔法に関しては魔力量の増大に注力した。

お陰で六歳後半には目の色が赤から橙色に変色していた。

途中からだったがソラも俺と同じ修行をしていたため、

ソラの目も橙色になっていた。


そして肉体の強化の方は、いよいよ剣術練習に入った。

とは言っても、前世で覚えた剣術を思い出す練習だったが。


剣術の練習をしていて、家に父がいると必ず手合わせを申し込んでくる。

前世の俺だったら喜んで受けているところだが、

今の俺では到底敵うはずのない相手である。

だが断ることはなく、いい機会だと思ってありがたくボコボコにされた。


手加減ってもんを知らんらしい、あの父親は。


こういった修行してて痛感したこともある。

この体は圧倒的に弱い。

剣術も魔術も魂で覚えちゃいるが、

どうもこの体では再現しにくい。

だが、やれることはやった。

今日のために。


今日は俺達が転生して住んでいる王国、

ワスハルト王国が定めた魔色鑑定の日である。


魔色鑑定とは、

この王国にいる七歳の子どもに対して行われる、

目の色の判定のようなものだ。

それぞれの子ども達の潜在能力を国が調べるために行う。

魔色鑑定は地方にあるそれぞれの教会にて行われる。


朝起きた俺は、

一階にあるリビングの木製のテーブルで、

両親とともに朝食を食べる。


「ファナ、今日は魔色鑑定の日だな。」

「そうだね。」

「緊張とかしてるか?」

「まあ目の色を見てもらうだけだから、そんなにかな。」


父親と目の前にあるパンを齧りながら話す。


「目の色を見てもらうだけじゃないぞ。」

「え?そうなの?」

「そうだ、目の色だけじゃなくなんの職業に適正があるかも見てもらえるぞ。」

「そうなんだ…知らなかった…」


どうやら職業適正まで調べてくれるらしい。

この世界にどんな職業があるかよく知らないが、

職業の適正がわかるのなら未来に対する行動がわかりやすくなるな。

ありがたい。


母親はニコニコしながらパンをちぎって俺の皿においた。


「ファナー?大丈夫よぉ。

 そんなに気負わなくてもするっと終わるわ〜。」


母親が父親の話を聞いて少し緊張した俺の顔をみてそう言った。


―――

朝食を食べ終え、自分の部屋に戻り身支度をする。

特に服装などに規定はないらしいので、

普段通りの格好で行こうと思う。

荷物は…まあ何もなくていいか。


一階に降り、玄関へと向かう。

そして玄関と扉を開けて外に出た。


「いってらっしゃい」


家の中から、先程まで仲良く皿洗いをしていた両親の声がした。

その瞬間、少し胸が騒いだような気がした。


まあいいか。


「いってきます」


そう言って俺は家をあとにした。


家を出るとちょうど隣の家からソラが出てきていた。


「おーい!ソラー!」


ソラに呼びかける。

ソラはぱっと振り返り、金色の髪の毛が朝日にきらめいた。


「あ!ファナー!おはよー!」


元気な返事が帰ってきた。

ああ、今日も太陽より眩しい笑顔だな。


「おはよー」


相変わらずソラは今日もかわいいな。

早朝から癒やされるぜ。


ソラと合流し、教会まで舗装された道を歩く。

歩きながらソラと話をする。


「魔力鑑定って目の色見るだけでしょー?なんだかつまんないねー」

「それだけじゃないみたいだぞ。

 なんでも適正の仕事がわかるらしい。」

「え!?そうなの!?じゃあ私は治療系の仕事かなあ」

「ソラらしいな。」


そんな会話をした。

行き交う人々と挨拶を交わしながら、

きれいな田園風景を横にして教会まで歩いた。


教会についた。

この教会は地方の教会なのでそこまで豪華な装飾はされていない。

だが、はっきりと教会だとわかる形に白塗りの壁。

すこし神界を思い出す雰囲気があった。

教会の入り口に、入っていく子どもの姿が見えた。


教会の中に入ると、

中は思ったより広く、木造の長椅子と司教がいる書見台が目に入った。

書見台の周りを見てみると、

俺達の他にも鑑定を受ける子どもたちが数人いた。


いよいよか。

とはいっても目の色は分かりきっているのでいいのだが、

気になるのはなんの職業に適正があるのかだな。


―――


「えー次、ソラ・ファリオン。」


ソラが先に鑑定に呼ばれたようだ。


「あ!私呼ばれた!いってくるね!」

「おう。いってらっしゃい。」


歩いていくソラの背中を見て、ソラの職業適正について考えた。

まあソラは恐らく事務系の仕事か治療系の仕事に適正があるだろうな。

治療系の仕事になった暁には前世の能力を存分に活かしてほしいものだ。

うーん、治療系かあ、えっちな治療とか俺にしてほしいなあ。

うへへ、想像するだけで気持ちが良くなるぜ。


俺がそんな馬鹿なことを想像してる内に、

ソラの鑑定が終わり俺の名前が呼ばれた。

ソラが笑顔でこっちに戻ってくる。

俺も席を立ち、書見台がある前方へ歩き出した。

ファナとすれ違うときにこんな会話をした。


「ファナ!ファナん家行っとくね!

 家でパーティしながらなんの適性があったか話し合お!」

「俺の家でパーティするのか?まあいいけど。気をつけていけよ―」

「もー、心配しなくても大丈夫だってぇ!」


心配ではあるが大丈夫だと思おう。

家でパーティか、帰った時の楽しみができたな。


俺は書見台の前に立ち司教の鑑定を受ける。


「ふむふむ…目の色は橙、と。」


最初に目の色の鑑定を受けた。

鑑定結果は最初から分かりきっていた橙色だった。


「じゃあ次は職業適正を調べるから、目を閉じて」


そう言われ、俺は目を閉じる。

目を閉じると、司教が俺の額の前に手をかざすのを感じた。


「クラス2無属性魔法『鑑定』」


なるほど、無属性魔法に鑑定という魔法があるのか。


「…ふむ、なるほど。珍しいね。

 どうやら君には全ての職業に適正があるようだな。」


ほう。

すべての職業か。

まあ確かに前世が習得の神であるから、

どんな仕事でも割とこなせるか。


「目の色は橙色だが、すべての職業に適正があるのは珍しいことだ。

 自分の興味のあることを好きに極めるといい。」

「わかりました。鑑定ありがとうございました。」


俺の鑑定が終わり、司教に感謝の言葉を述べて

教会の出口に向かった。


教会をあとにし、自分の家の帰路についた。


まあ大体予想はしていた結果になったな。

ただ、これではこの世界にどんな職業があるのかよくわからないな。

まあいいか。職業は後々学んでいけばいいさ。


そんなことを考えながら帰っていると、

道の前方になにやら人だかりがあった。

其の人だかりの周りは騒然としていた。

人だかりの辺りには血が流れていた。


誰か倒れているのか?


比較的平和であろうこの街で物騒な出来事が起こっているな。

まったく、せっかく帰ってソラとパーティするのだから、

嫌な出来事はできるだけ起こってほしくなかったのだがな…


だが、誰が倒れているのか気になったので近づいてみる。

知人だったら嫌だな。

一歩、二歩と歩を進めて近づいていく。

少し近づくと人だかりの隙間から金色の髪の毛が見えた。


……まさか。


限りなく嫌な予感がした。

歩を進めると倒れている人の姿が目に入った。


……え?


倒れている人を見た瞬間に俺の足が止まった。


―――倒れていたのは、ソラだった。

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