王妃はただの仕事です
王とはどのような存在だろうか。どのような存在が王であるのか。いまだ、世界において滅びることがなかった国など存在しない。この国は、どうだろうか___
「城にきて何か不自由はあるか?」
「いえ、大丈夫ですわ。お心遣いありがとう存じます。」
私は、王妃として王を支えなければならない。例え、親同士が決めた婚姻だったとしても私は彼を、この国を支えなければならないのだ。
私は、王が王位を継承なさると同時に、先王とお父様に王との婚姻を命じられた。お国のためになるのであればと、返事をして王家に嫁いだ。
これが、本心から出た言葉であったかどうかは自信がない。私だって、人並みに物語にあこがれていたし、夢見がちな普通の女の子でありたいと思っていた。
でも、私はこの国が好きだ。この国の民を愛している。彼らのため、私は王妃となるのだ。
「そうか、ならばよい。」
王に嫁ぎ、一か月が過ぎたが彼のことはいまいちわからない。王立学園でも貴族同士の社交辞令程度しか会話は交わさなかった。
私のことを気遣ってくれている様子は見せてくれているので、まぁ悪い人ではないのだろう。
ある日、月明かりも雲に遮られまるで夜空の中にいるかのように思える夜。針の落ちる音が聞こえるほどの静けさの中、ふと物音がした。布がこすれる音、金属がこすれる音。
私は咄嗟に、寝具のわきに備えてあるベルを鳴らした。その瞬間、剣を持った男が天井から降りてきて、また、ベルの音を聞いた護衛が扉から入ってきた。
「王妃!大丈夫ですか!!」
「くっ、邪魔がはいったか。」
「王妃から離れろ!」
男は、無理を悟ったのかすぐさま窓から逃げて行った。そうすると、騒ぎを聞きつけたのか王が私の部屋までやってきた。
「なにがあった。」
私は、今あったことを説明すると
「そうか・・・。これからは私の部屋で寝るといい。私が守ってやる。」
え?と聞く間もなく腕をつかまれ王の部屋の寝具まで連れていかれた。
「なんだ?そんな顔をして。結婚したのだかた普通は同じ部屋で過ごすものだろう?今までがおかしかったのだ。」
「い、いや、ですが。」
「もういい、今日はもう遅い。寝ろ。」
文句の一つでも言ってやろうと思ったが、促されるまま同じ寝具で寝かせられた。
翌朝。
「おはよう。」
「おはようございます・・・。」
「不満そうだな。」
「いえ・・・。」
「まぁいい。私はもう出る。お前はゆっくり用意をして出てくるがよい。女の用意は時間がかかるからな。前髪、はねているぞ。」
朝からつらい。
王が出て少しすると、使用人が用意を手伝いに来た。
「昨日はお楽しみでしたか?」
「いえ、何もありませんでしたわ。」
「陛下、物凄く心配なさっていましたよ。昨日のことがトラウマになっていらっしゃらないかと。」
どうして、そんなに優しくしてくるのだろう。王のことがよくわからない。私は国のため民のために王妃になったはずなのに。
本当に好きになってしまったらどうすればいいのだろう。