飛んで東国 11 終
これにて和国編終了にて候
これ2話に分けた方が良かったで候?
登場人物
浅間灯夜:なんだかんだ米を買えてホクホク
雨宮雫:秋水の一振りで首が取れた鬼の軍勢を見て引く
里晴茜:同上
福:「鳥獣変化:重」を使用して雫、茜と一体化していたが、相変わらずとんでも性能の雫の刀と茜の身体能力、秋水の技に引く
朝日と共に事件は終わりを迎えた
鬼に取り憑かれていた者は鬼神が死んだ事により、解放され元に戻っていったが、鬼に取り憑かれている間の記憶が色濃く残りその後の生活に支障をきたす恐れの者が大勢出たらしい
皇は鬼の討伐後、御所へと戻ると床に伏せている帝に変わり政務に勤しんでいる
3日目の旅立ちの日
トウヤ達は思い思いの荷物を持つと昼前には雫の家へと集まっていた
「トウヤ殿、感謝致す。あなたのおかげで私は皇様より抜刀の許可をいただけた。あなたの勇気が人を動かしたのだ」
頭を下げてくる秋水に飛んでもないとばかりに手を振るう
「いや、俺はそんな大した事してないですし、第一鬼を倒したのは秋水さんじゃ無いですか」
「ありがとう、だがトウヤ殿がいてくれたからこそ、私は刀を振るうことができ事件の早期解決が出来たのだ、皇様からも感謝の言伝を預かっている。本当に感謝する」
まぁそこまで言うのならと、トウヤは頬を掻きながら照れ臭そうにする
「そう言えばあの鬼を召喚した呪い師というのは一体何だったんですか?」
「あぁ・・・其奴については情けない話だが、今現状わかっているのは、あの呪い師が再転の教会という新興宗教の関係者という事だけだ」
再転の教会、その言葉を聞き雫と茜、トウヤの3人は目を見開く
それは以前3大怪人のビヨロコとクーラとの戦いの時に、街に仕掛けられた爆弾に取り付けられた魔物を引き寄せる液体を作ったとされている新興宗教団体の名前だった
その名を聞き、トウヤは眉を顰める
「あいつらが・・・もしそうなら原初の魔王を呼んだっていう話も本当なのか」
かの教団には原初の魔王を擬似的に呼び起こし血液を採取した。という根も葉もない噂を聞いていたが、今回の呪い師の一件を受け一気に真実味を帯びてきて恐ろしさを覚える
そんな中で人差し指を顎に当てながら不思議そうに茜が呟く
「でも、そうなると鬼神が言ってたって言う叩き起こすってどういう事なんだろ?」
彼女のいう通り、もし呼び出すのに成功しているのであればわざわざ叩き起こす必要はない
「そこはあいつらが原初の魔王をちゃんと呼び出せてないからじゃ無いですか?」
「・・・どう言う事?」
「え、いや原初の魔王を擬似的に呼び出しただけって聞いてますけど、違うんですか?」
以前ゼトアからは擬似的に呼び出したと聞いていたトウヤは、雫の問いと漂い始めた不穏な空気に困惑し、遠くから聞こえる叫び声が耳に入ってこない
「あの・・・いったいどうしたんですか・・・?」
そんなトウヤの問い掛けに雫が重々しく口を開く
「実はね、私達ギルドからの依頼で教会について調べてるの、そこでわかった事なんだけど・・・げん」
「雫ざーーん!!! 茜ざーーん!! 私に内緒でがえろうどじでるんでずがー!!!」
言い掛けた雫の言葉を遮る様に、彼女の顔へと1匹の鴉がへばり付く
「えぇ・・・」
あまりの事態に唖然としながらも空気が漏れる様なか細い声を上げる
鴉は涙を浮かべながら駄々をこねる様に首を横に振り、その度に嘴により整えられた髪が乱れ巻き上がった
「やだでず! 帰らないでぐだざい!」
「あの・・・福? とりあえず離れた方が・・・」
これはマズイ、そう直感した茜は言いながらも少しずつ雫とへばり付いた鴉、福から距離を取り始め、長くなると感じた秋水はトウヤを連れ添わせ雨宮家の中へと入っていく
「あれ、そういえば皆さんはどこに・・・あっ」
そこまでしてやっと福は自分のやった行いに気が付くがすでに後の祭りであった
「ふぅくぅ・・・?」
「ひゃい!?」
すぐさま雫の顔から離れ地面に降り立つが、彼女は青筋を立てながら笑みを浮かべていた
「そこに直りなさい」
「はい・・・」
彼女に取って何度目かにあたる説教の時間を告げる合図であった
「いつもあんな感じなんですか?」
人の姿に戻り説教を受ける福の姿を眺めながら、秋水とトウヤ、上手く逃げ延びた茜は縁側で茶を啜っていた
トウヤの言葉を受け茜は苦笑いを浮かべている
「あはは、まぁあの子結構ドジ踏むし感情的になってあんな事やっちゃうからねぇ」
「あぁなるほど・・・」
御所での出来事や目の前で起こっている事を踏まえて、トウヤはそれ以上の言葉を返せない
「だけど、なんか良いですねああいう関係も」
「え!? トウヤってもしかして痛い目見るの好きなの!?」
その言葉に思わず口に含んでいた茶を吹き出してしまう
「いや違いますよ!? ほら遠慮の無い関係って言うんですか? それの事ですよ!」
「えぇ? 言いたいことは分かるけど・・・本当かなぁ? やっぱり変わってる」
「いやまぁ、変わってるのは否定しないですけど・・・なんか酷いなぁ」
気を遣って言ったつもりが変人扱いされてしまい、拗ねる様に茶を啜るが茜はその姿を見て「ごめんごめん」と言って笑う
「んー、でも確かになんか良いなぁこう言うの、和国に帰ってきたって最後になって漸く実感が湧いて来たよ」
背伸びをしながらそう言うと、風に揺れ木漏れ日を漏らす木を、くつろいだ表情で眺める
「今回の事件、其方らにもよく働いてもらったからな、本当にありがとう、そしてすまないな休息の邪魔をしてしまって」
「いえ、国の大事となっては馳せ参じるが忍びの役目と理解しておりますので、気にしておりません」
「そうか、そう思ってくれるのであればありがたい、本当にありがとう」
秋水が温和な笑顔を浮かべると、茜もまた笑みを返す
そんな姿をトウヤは小さく「おぉ・・・」と声を漏らし眺める
「何、どうしたの?」
「あ、いえ茜さんそんな真面目な事言えたんだなって」
「それどういう意味?」
目を細め抗議の目を向ける茜ではあったが、一方のトウヤは関心の余り不意に出てしまった失言に気が付き「あっ・・・いや、そのぉ」と歯切れが悪くなる
「それどういう意味って聞いてるのよ、このこの!」
「いででで! 茜さん、ギブッ! ギブッ!!」
首に腕を回し締め上げられながら笑顔で抗議の声を上げる茜に、腕を叩きお約束の言葉を吐きじゃれ合う
そんな2人を見て、微笑ましく思いながらも「良き友が出来たのだな、茜」と秋水は小さく呟く
「トウヤ殿」
「え、はい!」
秋水に呼びかけられ、2人がピタリとじゃれ合うのを止めると、彼は2人は身体を向け頭を下げて来た
「しつこい様だが此度の事件解決に協力いただき誠にありがとうございまする」
「いえ、俺は自分にやれる事をやっただけです。まぁでも、お力になれたのなら良かったです」
茜から解放されたトウヤはまたもや言われた例の言葉に、再び照れ臭そうに頬を掻く
「もし、そちらで助けが必要な時は呼んで欲しい、陛下からのお許しが出ればいつでも助太刀致そう」
その言葉を聞き、思わず茜とトウヤは目を丸くしお互いの顔を見合うが、秋水へと顔を戻すと笑顔で返した
「ありがとうございます。それではその時はお願いします」
「うむ」
そうして時間は流れていく
雫の説教がひと段落付き、福の別れを惜しむ言葉を背に受けながらトウヤ達はベガドの街近郊へと帰って来た
「着いたー! いやぁ本当に疲れたぁ・・・あれ?」
「ほんと漸く帰って・・・これ・・・た」
先に戻った2人の様子がおかしいことに気が付きそう言葉をかけ、彼女らの視線の先を見つめると、トウヤもまた異変に気が付いた
「2人ともどうしたんですか・・・何かあったんですか?」
街から煙が上がっているのだ
次回からやっと17話です
大陸同盟軍と魔王軍関係に巻き込まれる話になる予定です
まぁ作中にはあまり出して無いですが、仮称:第⚪︎次新大陸戦争の真っ只中なので




