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飛んで東国 6

登場人物


浅間灯夜:我らの主人公で自分の実力をわかっているが頭を突っ込まずには居られない猪突猛進マン


皇:陛下を助けたい気持ちはあるが、立場上それを言い辛いなんとも言えない立場の人、未だ経験が浅い所為か応用が効かない


翁:皇の付き人、自分など軍用甲冑を相手に出来る程度の腕などとほざく爺

一方のトウヤは倒れ伏した鬼を見ると、自身の行動に効果があった事を確信した


「よし・・・それなら!」


「・・・! やれ!」


再度攻撃をしようとするトウヤに対して鬼達も、反撃をしようと駆け出す


彼が先に狙ったのは九里と大弓を構えた3体の鬼であった


刀を持った鬼達が近付く前に3体の鬼の影法師に向かい魔力の矢を撃ち出すと、影法師の身体を穿ち霧散していく、それと同時に1体の鬼がトウヤの元へと辿り着いた


鬼が刀を振り下ろすが、振り下ろし切る前に鬼の脇を滑り通り抜けると、その鬼の背後から迫る別の鬼の影法師に向けて魔力の矢を放つ


行われていく攻防の中で、次々と倒れていく自身の配下の姿に、リーダー格の鬼は困惑を隠しきれないでいた


「あいつ、見えているのか・・・俺達の姿が」


俺達、そう発した鬼は部下の最後の1人が倒れる様をまるで何かを確認する様にただじっと見つめていた


「あとはお前だけだ!」


最後の影法師を消滅させたトウヤは最後に残ったリーダー格の鬼へと顔を向け、違和感を覚える


「・・・? お前なんで影が無いんだ」


丸い月が差す煌々とした光を一身に受ける男の背中には何もいない

声もせず、影もない、ならばこの男は人間なのかと困惑してしまう


「やはり見えていたか」


その答えは間違いであった。鬼の肉体が膨張を始めたのだ

内側から盛り上がる肉に、纏っていた甲冑が内から引き裂かれ地面へと甲高い音を立て落ちていく


「我らを滅せれる者を生かしておくわけには行かぬ」


膨張した筋肉が巨体を作り出すとトウヤを見下ろしながら鬼が言う


それが誰から発された言葉なのか、彼にはわかってしまった


「お前・・・もしかして、あの鬼達の背後にいた影か!」


「そうだが、それがどうかしたのか?」


「・・・! ひとつになれってそう言うことかよ・・・!」


喰え、我らとひとつになれ、その言葉の指し示す意味を察してしまい思わず歯噛みする


「ようはお前達人間とひとつになりたいって事かよ、何が目的だ!」


既にこの男を操っていた影法師は完全に一体化したのだろう、だがそれ故に何を目的にしているのかわからない

ただ侵略をするだけならば、態々一体化せずとも操り一体化するのは最後でも良い筈だ

ならば何が目的なのか、それを問いただすと鬼はただ嗤うだけだった


「察しの良い餓鬼は死ぬぞ?」


振り上げられた拳がトウヤに向かい突き出される

それを見た瞬間、相対すら彼は全身から眩いまでの魔力の光を発しながら全力で身体強化術式を発動すると迫る拳を両腕で受け止めた


「答えろ! お前の目的はなんだ!」


「受け止めただとっ・・・この!」


変わらず声を掛けるトウヤではあるが、鬼は受け止められた事実に動揺しておりそれどころではなかった


慌ててもう片方の拳で殴りかかるが、それをトウヤは拳を受け止めていた腕を離し、すかさず高く飛び上がる事で回避するとフィーベルアローから刃を展開して、落下と同時に鬼の身体を縦に切り裂く


傷口からは鮮血が舞い、鬼は顔につけられた傷を庇いながら悲鳴を上げる


「グゥッ貴様ぁ!」


「答えないなら・・・!」


『パワード、オーバーパワー!!』


ブレスレットを円盤に再度擦り合わせると、機械音声と共に、スーツが魔力供給量を通常モードから安全装置解除状態へと移行する

供給過多とも言える魔力量により、スーツを駆け巡る身体強化術式を限界まで作動させた


ーーなんだ、何かやばい


その異変は鬼にも確かに感じとれた

先ほどよりも増大した魔力量に血の気が引いて行く


トウヤが片腕を鬼へと向けると展開されたフィーベルアローへと供給された魔力が巨大な弓を形造る


『パワード、スペシャルムーブ!』


「待てっ! 待ってくれ、話す話すから待て! 俺達は人の身に乗り移る事でこの世界に再顕現して裁定者様の復活を支援するのが目的だ!」


「裁定者・・・?」


「お前らで言うところの・・・そう魔王、原初の魔王を復活させる事が目的なんだ! 頼む話したんだから見逃してくれ? な?」


懇願する様に鬼は言う、だが最初からトウヤの行動は決まっていた


「人を食べるお前達を放って置けると思うか?」


答えろと言ったが逃すとは言っていない


処刑宣告とも取れる言葉の後に、トウヤは半身の姿勢を取ると、弓へと指を摘み弦を引く様な動作をすれば摘んだ指先から1本の渦巻く魔力を纏った巨大な魔力の矢が形成された


「このガキィ!!」


彼の言葉に怒りを顕にした鬼はすぐさま拳を振るってくるが時既に遅い


「セイリャァァ!」


『フィニッシュアロー!!』


トウヤの雄叫びと共に撃ち放たれた魔力の矢は、渦巻く魔力を纏い鬼の身体を大きく吹き飛ばしながら穿つ


神社の境内から外へ吹き飛んだ怪人の身体は下へと落下しながら爆散した


その爆炎を眺めながら月に照らされたトウヤは何かを考えるかの様に1人立ち尽くした


「トウヤ殿!!」


「爺さん」


「鬼の討伐お疲れ様でございます」


恭しく頭を下げる翁、彼の胸中にはトウヤに対する畏怖の念が込められていた。容易く鬼と人とを分離せしめた事に対する尊敬と、女神デアテラの加護を受けているという畏れの念、裏返せばそれだけデアテラ信仰の強さをという物を感じさせる物であった


そんな翁の姿にむず痒さを感じながらも、トウヤ言い出し辛そうにポツリと翁を呼んだ


「なぁ爺さん・・・」


「なんでしょうか」


「今御所ってとこにはあんなのがいっぱい居るのか?」


彼の発した言葉、その言葉の真意を理解した翁はその次に発されるであろう言葉に期待を込めながらも、湧き上がる気持ちを押し殺しながら首を縦に振るう


「そうでございます。都・・・町の中心にある御所ではこの様な鬼が皇様の捕縛の報を今か今かと待ち潜んでいる状態です。もし報が届いたら暁には、町に鬼が放たれる子でしょう」


柄にもなく意地の悪い言い方をしまったと、内心思うも今彼以外にこの状況を覆せるものは居ないとわかり祈りの様な想いを込めて言葉を発した


そして、トウヤもまたそんな翁の想いに答える様に近強く言葉を発する


「俺、行ってくるよ」


それは翁の期待通りの返事だった

和国を、都を、自身の主を助ける為の期待した返事、それ故に翁は心の奥底でチクリと良心が痛む


この国の人ではない、こちらから願い出た訳でもない青年が、たった1人で戦いに行くという決意を立てさせてしまった事に


「お願い致します」


だからこそ、翁は頭を下げた。そんな青年に敬意を表して






階段を降りて行くトウヤの背を見送った翁は、ひとつの決意を携え皇の元へと足早に向かった


「爺か、鬼共はどうした?」


「トウヤ殿が討伐なされました。御所守は棟梁以外は侵食が浅く解放された様です。もう間も無く目を覚ますかと」


翁の言葉に皇は目を見開く、デアテラの加護がある者にしか果たせない大役を偶然縁を結んだ男が果たしたのが信じられないといった様子だった


「ならばトウヤは今どこに?」


「御所へと向かわれました。この事態を放っては置けないと」


「・・・あやつ、何故そこまで」


たった数時間前に結んだ縁、特に硬い訳でもなく柔くほつれる他人と言っても差し支えのない物、それなのに何故あの男は向かったのかと疑問に思い眉間に皺を寄せながら目を細める


そんな彼女の顔を見て翁は静かに言った


「あの者は我らの為というよりも、民の事を想い向かったのでしょうな」


「それはどういう事だ? あやつにとってこの国の民など他人では無いのか?」


困っていようが所詮は他人、それも海を跨いだ他国の人間、無視をしようが彼に何ら影響を及ぼすことは無い

褒美が欲しいからと言うならまだしも、民のためなどと言われたところで納得できる訳もない


「彼は民の血が流れたと聞き鬼と対峙し、皇様が捕まればより多くの流血が流れると聞くと御所へ向かいました。なればこそ・・・」


「あやつは・・・お人好しなのか?」


「あの様なものは勇者の言葉を借りるなら愛すべき馬鹿と言うそうですぞ、人情に篤く、他者の為に働く者の事を指す言葉だとか」


翁の言葉を聞き、皇は思わず呆れ返る様にため息を吐く


「皇様、ついてはひとつご相談が」


「なんじゃ、申してみよ」


「例え他国の者とは言えあの様な若者を死なせるは恥かと思いまする。故にお願い申し上げたい」


翁が頭を下げ次に顔を上げた時、その眼は翁の目から力強い覇気を纏った戦士の眼へと変わっていた


その眼を見て、皇は確信に近い予感を覚える


「陛下から言われているであろう、我らの仕事は国外への脱出と新大陸の軍に応援を呼ぶ事だと」


翁の瞳から逃げる様に顔を背けると、自分達の言われた事を思い起こし言葉が発される前に否定する


「確かに陛下より戴いた任は救援を呼ぶ事、しかし、それでは手遅れになるかも知れませぬ、それに皇様も陛下を助けないのでは?」


陛下を助けたい

その言葉は皇の胸の内に宿る想いであった。だが、陛下から言われているのは他国の救援を呼ぶ事、そして、それ以上に皇は信じられなかった


「しかし・・・お前はあの男を信じると言うのか? あって間もない異国の男を!」


あって間もない見知らぬ外人の男、信じろと言う方が難しいだろう

だが、そんな彼女の迷いにも翁は笑みを浮かべ言い切る


「はい、信じてみようかと思います」


笑顔で言い切る翁に皇は気圧される

何故そこまで信じられるのかと


「あそこまで行くと実に清々しい者です。1人で座り込む皇様を気遣い、我らを助け民まで助けようとする生き様・・・彼には人を惹きつける何かがあるのかも知れませぬな」


そこまで言われると皇も言葉を詰まらせる

情に動かされてはいけない立場ではあるが、たった数時間のうちにアサマトウヤという男の行動原理を見せつけられ、彼女の人情とも言うべき良心が突き動かされているのだ


「ですので皇様、お願い申し上げます。どうかーー








ーー抜刀の許可を」

ハリーポッター見ました?

良いですよねぇ、私も好きです


ところで話変わるんですが一時ホグワーツレガシーというゲームで出てきた主人公を題材にしたスレがあったのはご存知ですか?


あれの主人公を題材にした作品がハーメルンというサイトにあるんですけど、めちゃくちゃ面白いんですよね

よかったら読んでみてください

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