飛んで東国 2
登場人物
浅間灯夜:実は米が恋しい
雨宮雫:実は雑穀米が好き
里晴茜:銀シャリに梅干し乗せて食べるのが和国にいる時の日課
町についてみれば、そこにあったのは嘗てトウヤがテレビ番組で見ていた時代劇の街そのものだった
「すげぇ・・・これが和国の街か・・・」
瓦屋根の建築物が並ぶ光景を目にして、懐かしさを覚えると彼は日本を思い出し僅かに望郷の念に駆られる
「みんなどうしてるかな」そう小さく呟くと串団子を持った茜が横から顔を覗かせた
「どうしたの?」
「あぁいえ、何も・・・何です? その団子」
見れば見た事もない赤黒いタレが掛かっている串団子、よく見れば小さい粒々とした物がタレの中に入っており果実を潰した物なのだと推測は出来る
「これ? 和国名産の果物ダレの串団子、少し酸っぱいけど甘くて美味しいよ〜」
「あなたも食べる? はい」
「あぁ、ありがとうございます」
植物の皮に乗った串団子のうち1本を手渡されると、それを受け取りマジマジと眺めてしまう
みたらしのようなねっとりとした赤黒いタレに包まれた僅かに焦げのついた白い団子
思わず生唾を飲み、一口齧り付いてみた
「うっま! これ、うまいっすね!」
「でしょー! 私たちこれ結構好きなんだよねぇ!」
「ですね! ちょっと俺色々と買い食いしても良いですか?」
「良いわよ、なら夕方にここで待ち合わせしましょうか、確か今日は宿に泊まるんだっけ?」
「はい、まだ家に帰るのも気が引けるので今回は街を楽しむことにします!」
元気よく言葉を発するトウヤの姿に、雫は年下ながらもその楽しげな様子に思わず笑みを溢す
「ならいってらっしゃい、楽しんできてね」
「はい、では!」
そう言うとトウヤは一目散に駆け出した
数十分後、店を巡った彼の手には幾つかの串団子や団子、饅頭の入った包みが両手から下げている
「米は帰り際に買うか・・・久々に米が食えるのか、良いなテンション上がってきた」
この世界に来てから早2ヶ月が経っていたが、その間食べていたのは洋食と言っても差し支えのない料理ばかりであり、故郷の味とも言える和食を味わう機会がなかったのだ
それ故にトウヤの気分は最高潮に達している
異世界とはいえ、日本に似た場所で米を食べれると言うのは擬似的に故郷に帰ってきたかの様な充足感を彼に与え始めている
そう気分良く歩いていると、ふと川のほとりで座り込む少女の姿が見えた。それだけであれば特に気にすることはないのだが、少女は肩を震わせて泣いていたのだ
何事かと思いトウヤは少女へと近付いていく
「どうしたんだ? 迷子にでもなったのか?」
話しかけても少女は返事をしない、それどころか振り返る事もなく未だに彼に背を向け泣き続けていた
話しかけてほしくないのだろうと一瞬思い放っておこうとも考えたが、ほんの僅かな引っ掛かりを覚えたのでとりあえず少女の隣に腰掛けると、片方の包みを解き中から饅頭を取り出す
「泣いてばっかりじゃ何にも解決しないぞ、これ食って落ち着けって、な?」
そう少女へと饅頭を差し出すとチラリと横目で見た後にいらないとばかりに顔を横に振る
「いらない、それは其方が買った物じゃ、妾など気にせず其方が食べよ」
「おぉそうだな、俺が買ったもんだ、その俺が渡したんだから気にせず食えよ」
そう言い再度少女へと饅頭を渡すと、少女は渋々と言った様子で受け取る
「・・・良いのか?」
「おぉ気にすんなよ、ほらよく言うだろ、みんなで食った方が美味いって・・・うん、美味い! ほら食ってみろよ」
トウヤがそう言うと少女はおずおずとしながらも饅頭を口へと運ぶ
「甘露じゃな、店主は良い腕をしておる」
「だなぁ! あんまんみたいで美味い」
「あんまん・・・? なんじゃそれは」
「あんまんってのはだな」
「これ梅や、何をやっておるのじゃ?」
不意に声をかけられ顔を上げればそこには1人の老人の姿があった
ボサついた白髪を長く垂れ流し、ボロ衣を纏った骨ばった身体をした翁は少女へと顔を向け、柔らかな笑みを浮かべている
「爺・・・」
「さ、ここは危ない家に帰ろう」
翁は梅と呼ばれた少女の手を取ると、立ち上がらせて手を引き歩き出す
「祖父さんが迎えに来てくれたのか、よかったな! 気を付けて帰れよ」
そんな2人の背中にトウヤは声をあげると、梅と翁が振り返りペコリと頭を下げ立ち去っていく
「家族か・・・良いもんだな、さて俺も行くかな」
傍に置いた包みを手に持ち町の散策に戻ろうとした。その時だった
悲鳴が聞こえたのだ
急いでその方向へと振り向くと、声は先ほど翁と少女が歩いて行った先から聞こえてきた
「爺を離せ!」
そんな少女の悲痛な叫びが聞こえてきた時、トウヤは駆け出していた
なんか新しい書き方にしたらめちゃ書きやすいな・・・




