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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 門鍵モンキー
第一章 異世界に行ったらヒーローになったSO
86/213

悪意を砕く怒りのフォーム、パワード! 2 終

登場人物:

浅間灯夜:いつもの主人公、新しいフォームを手に入れてるけどそれも気にならないくらいのお怒り状態


ビヨロコ・クーラ:現在は融合して1人の怪人となっている3大怪人、融合時の名前は羅鬼という

ビヨロコとクーラの融合した姿である怪人、羅鬼は目の前で起こったフレアレッドの変化に警戒した


スーツの基本色が赤色から黄色に変わり、首から吹き出す魔力布の色も黄色から白へと変化している

上半身だけだった装甲はより発達し、今まで装甲がなかった部分も装甲で覆われ全身鎧の様な姿へと変わっていた

両腕には折り畳まれた弓の様な物が装着されており、あの熱線を撃ち出す第4勇者の様な銃を出さずとも遠距離戦に対応出来るのだと推察出来る


過去のライトニングの事例からも強化装甲を纏った際には何か特殊な攻撃ができる様になっていたがーー機械音声の発していたーーパワードというフォームにおいても例外ではないだろう


頭を回転させてそこまで考えが及んだ羅鬼が出した結論はひとつだった


「楽しめれば何でもいっか」


「楽しめれば何でもいっか」


まるで楽観主義的な思考

しかし、それこそが彼らが創造主たる組織に与えられた思想であり、組織の管理怪人として4字感情の喜と楽を与えられた2人の使命であった


その使命の赴くままに羅鬼はトウヤへと向かい走り出すと拳を強く握り殴り掛かる


ここで羅鬼は2つ思い違いをしていた。ひとつはトウヤが展開したのは通常の強化装甲とは違い、基礎フォームの機能を変更して追加で新たな機能を取り付ける物ではない、基礎フォームの強化発展型なのだ


羅鬼の振りかぶった拳は、さらに強力になった身体強化術式によって動体視力すらも向上したトウヤが姿勢を下げながら前へと進む事で避けられ、すれ違い様に腕に新たに装着された武具「フィーベル・アロー」を展開すると、両端から炎魔法が付与された魔力の刃を形成し羅鬼の脇腹へと斬り込む


思い違いの2つ目はこの武具、フィーベル・アローである

羅鬼は腕に装着された弓の様な武具と考えた事で遠距離武器だと勝手に思い込んでしまったが、この武器は遠近両用なのだ


その事に遅まきながら気付き内心舌打ちをしながらも痛む脇腹には構わず苦し紛れに背後に回ったトウヤへと腕を振るおうとする

しかし、腕を振るおうとするよりも先に動いていたトウヤにより再度フィーベル・アローから形成された魔力の刃で背中を斬りつけられた


「グゥゥッ」


飛び散る火花と共に羅鬼は苦悶の声を上げる


「離れようビヨロコ!」


「そうだね、クーラ」


近接戦はまずいと考えたのか、半身であるクーラからの提案で羅鬼は腕をラッパ状の銃撃形態へと変化させると前へと飛び上がり距離を離すと空中でトウヤに向けて魔力塊を放つ


それを確認すると振り返りながらトウヤは展開されたフィーベル・アローの刃を消すと魔力を受注させ魔力の矢を形成し、魔力塊へと撃ち放ち魔力塊をバラバラに四散させた


「なに!?」


空中で迎撃された魔力塊と魔力の矢に驚きの表情を露わにする


地面へと降り立った羅鬼はフレアレッドーートウヤに対する警戒心を引き上げた。自分達の思っている以上に進化していると


羅鬼はトウヤの出方を伺い、トウヤもまた羅鬼の出方を伺いお互い睨み合う


ジリジリとした攻防の中、意を決した羅鬼が横に駆け出すとトウヤもまたそれに追従した


羅鬼は銃撃形態の腕を、トウヤはフィーベル・アローを互いに向け合うと走りながら撃ち合いを始める


放たれる魔力塊とそれを迎撃する魔力矢、飛び散る破片が壊れた倉庫の屋根から降り注ぐ光に照らされ彼らの間を彩る中、転機は訪れた


「・・・グッ!」


魔力塊の破片が倉庫の屋根から差す光に反射しトウヤの眼を眩ましたのだ

一瞬顔を背けるトウヤに羅鬼は隙を見出した


すぐさまもう片方の腕も銃撃形態へと変化させると立ち止まりトウヤへと両腕を向け撃ち出したのだ


視線を戻したトウヤは自身に迫る2つの魔力塊に気が付くが、彼もまたすぐさまもう片方のフィーベル・アローを展開すると羅鬼と同じ様に両腕から魔力の矢を放ち魔力塊へと向けて迎撃する


放たれた魔力矢が魔力塊に当たると魔力塊が霧散し濃密な煙と化しトウヤの視界を遮った


それこそが羅鬼の狙いである

大きく広がる煙をかき分ける様に羅鬼がトウヤの前へと姿を現す


煙を使っての不意打ちにトウヤは反応しきれずに振るわれた拳をこめかみに受けてしまうが、踏ん張りその場に留まると殴られたトウヤも反撃に転じる


フィーベル・アローの両端を変形させて前へと向けると、捩れる魔力の流れを前へと向けた両端に纏わせ羅鬼の腹へと突き立て振り抜く


「ガアァァッ!!」


羅鬼は火花を散らし叫び声を上げ自身の展開したスモークを払いながら吹き飛ぶと、背中から地面に落ち転げ回る


仰向けに倒れながら悶える羅鬼の姿を確認すると、トウヤは再度嵌め込んだ円盤へとブレスレットを擦り合わせた


『パワード! オーバーパワー!』


スーツの色が黄色から白に、魔力布は白から水色へと色を変えると、機会音声に合わせてトウヤは片腕をフラフラと立ち上がろうとする羅鬼へと向けると、フィーベル・アローが展開され供給された魔力が巨大な弓を形造る


『パワード、スペシャルムーブ!』


機会音声が鳴り響くと共にゆったりとした動作で、半身の姿勢を取り弓へと指を摘み弦を弾く様な動作をすれば摘んだ指先から1本の渦巻く魔力を纏った巨大な魔力の矢が形成された


それを見た瞬間羅鬼は当たったらマズイと直感した。それ故に顔を上へ向けると声を張り上げ叫ぶ


「スーラ、イア! 見ているんだろう、僕たちを助けろ!」


「このままじゃやられちゃう、助けて!」


羅鬼の叫びに仲間がいるのかと構えをとったまま警戒するが、空間に直接響く様に返って来た言葉は呆気ないものだった


「断る。何故貴様を助けねばならんのだ」


「なっ・・・! スーラ、貴様ぁ!」


「組織の意向に逆らうのか!」


「その組織からの命令で納めていた私の領地で暴れたのは誰だ? 貴様は自身の裁量で勝手に行動すると言ったでは無いか、ならば大怪人として役目を果たせ」


羅鬼の焦る様な声に比して、スーラの突き放すような冷たい言葉に、羅鬼は弱りきった身体をフルフルと震わせて怒りを露わにした


「スーラァぁ!!」


必死に上へと手を伸ばし今この場にいない相手に殺意を送る羅鬼だが、そんな姿を前にトウヤはただ一言だけ呟く


「お前、哀れだな」


『フィニッシュアロー!!』


指を離すと衝撃波を伴いながら撃ち出された魔力の矢が空中で細くなりながら成形されていき、1本の光の線を空中に描き出しながら真っ直ぐに飛翔する

羅鬼の胴体へと直撃すると、強固な表皮を容易く喰い破り身体の内で炸裂し全体をめぐる術式回路をズタズタに引き裂く


苦しみから胸を掻く様な動作をすると、流れ出た膨大な魔力の逆流により羅鬼の身体が痙攣を始めた


「いやだ! 僕たちはもっと遊ぶんだ!」


「もっともっと、ずっとたくさん、おもちゃがたくさん・・・あるのに!」


その言葉を最後に、ビヨロコとクーラの融合体である羅鬼は通常の怪人とは比べ物にならない程の爆発を起こした


燃え盛る火を眺めながら、トウヤは独りごちる


「他人を利用しようとして、最後は誰にも助けられずに1人で爆散・・・本当に哀れな奴だったよ」


こうして首魁であったビヨロコとクーラを討伐しこれで爆弾事件は終結することになる


未だ姿を現さない大怪人や組織という強大な敵が残っているが、トウヤは倉庫の屋根から見える空を眺めながら街を守れたという達成感と安心感に今だけは浸るのだ








後日、街を守れた事と、3大怪人を討伐した事からエオーネの店では祝勝会が開かれていた

いつもとは違う飾り付けをされた店の中にはテーブルに所狭しと料理と酒が並んでいる


「えっ、和国に帰るんですか!?」


そんな料理のひとつを自身の皿に入れながら隣に立っている茜の言葉にトウヤは身体を動かし驚愕を露わにした


だが、そんな驚くトウヤとは対照的に茜は彼の大袈裟な反応に笑みを溢す


「別にもう戻って来ないとかじゃないよ、ただの休養の為の帰省だよ」


「あ、あぁなるほど・・・」


彼女の言葉にトウヤは安心感を抱いた

折角仲良くなったのにここで別れてしまうのはトウヤに取っても残念でならなかったからだ


そんなトウヤの様子に茜は何かを思いついたのか小さく「あっ」と声を漏らすと、席に座りながら食事している雫へと声をかけに行く


何事かと思いその姿を目で追っていたトウヤではあったが、楽しげに話しながらも時折目を彼へと向けて笑う姿に何やら嫌な予感がしてくる


少しばかり早いが切り上げて避難しようかと一瞬考えたトウヤの元に茜が戻ってくると彼女は言った


「ねぇトウヤ、和国に一緒に帰る?」


「えっと・・・」


「2泊3日の帰省旅行! あ、もちろん私と雫は途中別行動だけど家まで送るし帰る時には声を掛けるよ?」


完全な善意から発された言葉

確かにトウヤは一応はこの世界では和国出身という事にしてあった為、本来であればありがたい提案である


しかし、それが嘘である為に乗りづらい提案ではあったが、同時に茜達の好意を無碍にもしづらかった


「あ、あぁ・・・良い・・・ですね、お願いしても良いですか?」


結果トウヤは話に乗る事にした

和国がどんな場所なのか気になる。という理由ももちろんあったが多くの理由は単純に断り辛かったからである


そうとも知らずに茜は雫へと顔を向けると、「良いって〜!」と声を上げた


「なら決まりね、出発は急だけど明後日の朝南門に集合ね!」


こうしてトウヤの3日間の和国行きが決まったのだ

書き方とかちょい変えてみたら、冗長気味だった描写とかを変えてみました


あとここまでを一旦の区切りとして、次回からは第二章として書かせてもらいます


あ、あと評価して下さりありがとうございます!

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