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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 門鍵モンキー
第一章 異世界に行ったらヒーローになったSO
85/213

第15話 悪意を砕く怒りのフォーム、パワード!

登場人物

浅間灯夜:いつもの主人公


ビヨロコ、クーラ:トウヤが来てからの立ち会った怪人災害の殆どの元凶、製造元は双子の子供であり、兄のビヨロコ、妹のクーラと元から実の兄弟関係であった

ビヨロコ、クーラと対峙したトウヤが双子に向けて睨み付ける様な視線をスーツ越しに送る

そんな彼がまず最初に取り出したのはフレアシューターだった


『フレアシューター、アクティベート』


魔力を流し機動状態になったと機械音声が告げるや否や引き金を引くと、いく条もの熱線が双子へ向けて放たれる


「見て、あの時の武器だよ! やっぱり良いねあれ」


迫る熱線を前にビヨロコは楽し気な様子を見せる


「うんうん、あれさえあればもっと楽しく遊べそうだね! 的当てとか楽しそう!」


嗤いながらそう言うクーラは前に手を出すと防御結界を展開した

2人の前を包むように展開された膨大な魔力による高出力の結界は飛来する熱線を次々と弾き淡い波紋を生み出していく


その様子に2人は尚更目を輝かせる


「クッ・・・やっぱりダメか!」


銃撃の効果が無いとわかると銃撃を止める

するとビヨロコとクーラはその様子に煽るように楽しげに声をかけてきた


「終わり? 終わり? 終わりなの?」


「なら次はこっちからいくね!」


まるで戦闘を楽しむかのように次はこちらの番と声を発しながらビヨロコがトウヤへと飛び掛かる。上空の離れた位置から拳を振り下ろすと、強力な拳圧がトウヤへと襲い掛かった


「グウゥッ!」


その衝撃波にトウヤの身体はまるで紙屑の様に簡単に持ち上がり吹き飛ばされる


一瞬空を舞うトウヤの身体、ビヨロコは地面へと降り立つとすぐさま飛び上がり彼を追いかけた


「これで終わりー」


拳を引き絞り彼の身体へ向けて拳を振るう

しかし、それを易々と食らってやる程トウヤは未熟では無い

今までの戦闘から鍛えられた反射神経が空中に浮かぶ身でありながら彼をすぐさま行動に移させた


「フレアジェット、レディ!」


『イグニッション、プレパレーション』


「イグニッション!!」


ビヨロコの拳がトウヤへと到達する前に、トウヤはフレアジェットを起動すると全身から展開した噴出口から燃焼ガスを噴かし、空中ですぐさま姿勢転換を行うと魔力を流しながら独楽の様に回転しビヨロコの拳を受け流し背後に回る


「ありゃりゃー外れちゃったよ」


すれ違い様に残念がるビヨロコに向けて、トウヤは背後から逆に魔力を纏った拳を振るう


魔力の流れを前方に向けて捩れさせた貫通力を高めた一撃は、ビヨロコの背中に突き刺さると同時に未だ人間体である彼の表皮を抉りながら殴り飛ばす


一瞬理解不能な痛みにより顔を歪めたビヨロコだが、すぐに痛みの正体がトウヤから放たれた拳の一撃だと気が付き狂気的な笑みを浮かべた


「すごいすごい!! いつの間にそんなに強くなったの!」


「こいつ・・・笑ってるのか・・・!?」


倉庫の壁に叩きつけられ落下しながらも楽しげに笑うビヨロコの姿にトウヤは思わずゾッとする


「ビヨロコー、ズルいズルい! 私も戦いたい!!」


一方のクーラは笑いながら落ちていくビヨロコを見て羨ましそうに駄々を捏ねた

まるでお気に入りのおもちゃを独り占めされた子供の様な、そんな駄々の捏ね方に音を立てて倉庫の床に頭から落ちたビヨロコは頭を掻きながら何でもないような気軽さで声かける


「待っててーすぐ行くから」


「・・・! 逃すか!」


せっかく分断できたのに、チャンスを逃す訳にはいかないとトウヤはフレアジェットを噴かしヒートソートを呼び出し刃を展開しながらビヨロコへと突撃する


ヒートソードを持つ腕を引き、フレアジェットの勢いのまま突きを放つ


「ちょっと通るね」


「うわっ!?」


しかし、その寸前に飛び上がったビヨロコはトウヤを踏み台にさらに大きく飛び上がると一足でクーラの隣に降り立つ


「ごめんね、クーラお待たせ」


「もうビヨロコだけ楽しんでズルい!」


「ごめんごめん、それじゃ僕たち2人で楽しもっか」


「うん、楽しもう楽しもう!」


そう笑顔を向け合うと、お互いの両掌を合わせると顔を押し付けあった


すると双子の姿に異変が生じた。ビヨロコとクーラの身体が急速に歪に縦に伸び始めたかと思えば、足が、腕が、胴体が、顔が捩れ絡み合う

そうして現れたのは1体の異形、文字通り2人が絡み会った様な形状をした怪人


あの時、自身が挑み手も足も出なかった怪人の姿に立ち上がり振り返ったトウヤは思わず後退りするが、それを追いかけるように怪人は駆け出してきた


「さぁもっと遊ぼ!」


「一方的な蹂躙! これが1番楽しいんだ!!」


楽しげに声を発しながら迫る怪人にトウヤは、ヒートソードを構えながらもどうすべきかと思案する

ライトニングでの速攻を考えたが、防御力を捨てたフォームである為、親衛怪人の時もそれで追い込まれた事から早々に選択肢から除外すると、ヒートソードをしまい敢えて無手を選択した


怪人は腕を伸ばし揃えられた鋭利な指先ーー2人の身体が絡み合う様な指の形状ーーの爪での突きを放ってくる


トウヤの顔目掛けて放たれた突き、しかし、それを目の前にしてもトウヤは臆する事なく、半身を逸らし躱わすと逆にその腕を両手で掴み上げ、怪人の勢いそのままに自身の身体を起点に背負う様にして地面に叩き付ける。背負い投げを行う

だが、怪人の頭が地面へとぶつかる前に怪人がもう片方の腕を伸ばし地面に手をつく事により防がれてしまった


それを見るや否やすぐさまトウヤは手を離すと僅かに後ろに下がり背中の噴出口から燃焼ガスを噴射し、瞬時に加速しながら片腕立ちをして晒された無防備な腹へと膝蹴りを叩き込む


膝蹴りを喰らった怪人の身体はそのまま吹き飛び倉庫の壁へと叩き付けられた


「いったーい!」


「これ前にビヨロコが喰らった技だよね、こんな痛いんだぁ!」


楽しげに腹を摩りながら怪人が立ち上がる


「あれ? あれ? というかこれ前と同じだよね?」


「そうだね、ん? という事は次に来るのって」


そう言い怪人がトウヤへと目を向ければ彼はフレアシューターを構えていた

やはり予想通りと思った怪人は満足げに笑う


「やっぱりそうだ!」


「うんうん、やっぱりそうくるよね!」


フレアシューターの引き金を引くといく条もの熱線が放たれるが、それをわかっていたとばかりに怪人は腕を飛来する熱線へと向けると防御結界を展開した


先程まで、それどころか前回の焼き直しの様な攻撃に怪人はどこかつまらなさそうにしている


「ねぇ、これさっきも見たよ」


「それどころか前と同じだよぉ!ねぇ!」


まるで駄々を捏ねる子供の如く抗議する怪人だが、彼ら自身どこか期待していた

同じ攻め手を行うということは何かあるのではないかと、そう思えばこそ怪人もまた敢えて乗る事にする


怪人も以前の焼き直しの様に空いているもう片方の手を持ち上げ構えると、指先から捩れ出す

捩れはやがて腕全体へと波及していき指先に行くほど大きく広がり、まるでラッパの様にぽっかりと開いた空洞が顔を覗かせた大砲が出来上がった


その空洞の奥に仄暗い光が宿り、怪しく光る白い魔力の粒子が空洞の奥へと集まると丸い形へと纏まっていく


あの技が来る。そうトウヤが考えるとフレアシューターの銃撃を止め身構えた

銃撃が止まった事で防御結界を解除して、空いた手を口元に当てると怪人は「うーん、あの時なんて言ったっけ?」と悩む仕草をする


「あっ、もっと遊びたいから死なないでね?だっけ?」


思い出したかの様に小首を傾けながら言葉を言い放った瞬間、炸裂音と共に魔結晶の塊が撃ち出される


撃ち出された魔結晶の塊はトウヤへと迫り、彼の眼前で爆散し無数の破片へと分かれていく


それこそがトウヤの狙っていたタイミングであった


破片が地面へと突き刺さる中、トウヤは高く飛び上がりながら避けると空中でブレスレットを擦り合わせる


『オーバーパワー、アクティベーション!!』


機械音声と共に、スーツが魔力供給量を通常モードから安全装置解除状態へと移行する

供給過多とも言える魔力量により、スーツを駆け巡るバロン式身体強化魔法術式を限界まで作動しスーツの色が赤色から黄色へ、首元から噴き出る魔力布も黄色から緑色へと変化させた



『脚部集中、一撃必殺!』


「セイ、ハァーー!!」


倉庫の天井いっぱいまで飛び上がったトウヤはフレアジェットの火を噴かすと魔力を集中させた脚部を怪人へと向けて突っ込む


だが、それを見た怪人の反応は期待はずれといった失望の言葉を口にする


「まんまあの時とおんなじ」


「変わらない、学習しない」


だからこそ、あの時と同じやり方で防ごう、それこそがせめてもの楽しみ方だとそう言わんばかりにやる気なさげに突き刺す様なトウヤの蹴りに片手を向ける


今のビヨロコとクーラは人間体ではなく怪人体であり、あの時と同じ戦い方が通用するわけがないのだ

結果は火を見るよりも明らかであった


フレアジェットの勢いのまま突っ込んでいくトウヤの足と怪人の手がやがて衝突する

そこにあの時との違いは何もない







その直前に魔力の流れが変わった点を除けば


「・・・! なに!?」


衝突する直前にトウヤは足に流れる魔力の流れを変えたのだ、それは相手の攻撃を受け流す流れでもなく、貫くための流れでもない

ただ己の前に空気をかき分ける為の魔力の傘を作ったのだ


そうして衝突した瞬間、突撃の勢いを殺す事なく足を曲げると怪人の手を足場に空高く舞い上がった


そのまま身体を無理やり捻りフレアジェットの勢いそのままに空中で大きく反転すると足先に捩れる魔力の流れを纏う


これこそがトウヤの考えていた策

リメイク版を見て、その後過去の動画を何度も見返した憧れのヒーローの技の真似事


その名も


「フレアレッド、反転キック!!」


「・・・嘘でしょ」


加速し続けたフレアジェットの速度は空から迫るトウヤを呆然としながら見続けた怪人に、防御の為の隙を生ませない


先程よりも速い勢いで突っ込めば怪人の胸部へと蹴りが炸裂する

捩れ纏った魔力が怪人の身体を勢いと合わさり抉りながら突き刺さり踏ん張ろうとした怪人の身体は吹き飛ばされ宙を舞い、放物線を描きながら地面へと落ちていく


「やったのか・・・?」


地面へと倒れ伏しピクリとも動かない怪人の姿にトウヤは爆散しないことから警戒しながらも、周囲を見渡し本来の目的を果たそうとする


「あった・・・」


目的の物を発見して走り寄ればそこには爆弾が置かれている

それを手に取るとトウヤはすぐさま通信機能を作動させた


「こちら浅間、見つけました最後の爆弾です。場所は・・・」


そう言いかけた瞬間だった


「まだ、まだ終わってないよ」


後ろから声が聞こえた

急ぎ振り返って見ると、怪人がフラフラとふらつきながら立ち上がるのが目に映る


「お前・・・なんで・・・」


爆散していない状況故に倒せたとは思ってはいなかったが、それでもふらつきながらも執念深く立ち上がってくる怪人の様子にトウヤは怪訝な表情を浮かべる


そんな様子のトウヤに対して怪人は驚きの行動に出た


「お願いします! スーツを、そのスーツを渡して下さい!」


「お願いお兄ちゃん! そうしないと私たち・・・私たち・・・」


怪人はトウヤへと頭を下げてきたのだ、頭を下げ懇願してくる怪人に思わず度肝を抜かれトウヤの頭は混乱する


「なっ・・・はぁっ!? なん・・・だよ、いきなり・・・」


「私たち本当は戦いたくないの!」


「そうだよ、でもクヨキシ様に言われて仕方なくお兄さんと戦ってたんだよ! だからお願い・・・」


「・・・」


必死な様子で懇願してくる怪人に思わずトウヤは良心が痛み押し黙ってしまう

彼らもまた被害者なのかと絆されかけた思考の中で、とある事実を思い起こし爆弾を元の位置に置き直してひとつだけ尋ねた


「なぁ・・・ひとつ聞いて良いか?」


「なぁに、お兄さん?」


「お前・・・散々人の事をおもちゃ呼ばわりしてたのにいきなりそんな事言って変だと思わないのか?」


「うん! 変だねー!」


怪人のふたつの口が笑みを浮かべた瞬間、トウヤの傍に置かれた爆弾が爆発する


「やったやった! 上手く行った!」


「上手く行ったねー」


爆発に巻き込まれて呻くトウヤの姿を見て怪人は嬉しそうにピョコピョコと飛び跳ねる


「グッ・・・爆弾が・・・!」


「大丈夫だよ、安心して?それはただの爆弾さ」


「そうそう、お前を戦闘不能にする為の予備プラン、使うと思ってなかったけどねー」


「ねー」


首を右へ左へと揺らしながら、楽しげに嗤う怪人にトウヤは不快感を覚えた

彼はフラフラと立ち上がると怪人へと問い掛ける


「お前・・・やっぱりさっきまでのは嘘だったんだな・・・」


「全部が嘘じゃないよ? 失敗したらクヨキシ様に叱られる」


「どんな目に遭わされるかわかったもんじゃないよ、だからこうしたの」


「なら・・・街に爆弾を仕掛けたのもこの為なのか?」


「そんな訳ないじゃん、アレは僕達が楽しむ為」


「言ったでしょ? みんなみーんな、私達のためのおもちゃなんだって」


さも当然の如く放たれた言葉にトウヤは言葉を失う

だが、それはわかっている事だった。わかりきっている事だった


「さぁヒーロー、可哀想な僕達のためにそのスーツを差し出してね?僕達がこの街にいるおもちゃで遊ぶ為にも」


「そーそー、私達はもっともーーっとたくさんのおもちゃで楽しまないとダメなんだから」


無邪気な声で双子は語る


「それが君達の運命なんだから」


「それが君達の運命なんだから」


他者をおもちゃと呼び、その運命を勝手に形付け己の為にと消費する事を嬉々とする。形容し難い悪意を語る


「ふざけんな!!」


それ故にトウヤは溢れんばかりの怒りを込めて叫んだ


「お前ら人を何だと思ってるんだ、おもちゃだって・・・そんなの許される訳ないだろう!」


「許さないも何も、許されているからここにいるんだよ?」


「それにお前の許しなんて必要ない・・・でしょ?」


煽る様に嗤い語り掛けてくる言葉に、トウヤは歯噛みする

溢れ出す感情は歯止めを知らず、それと同時に内から漏れ出た魔力が結晶となりスーツの表面で結晶化していく


「あぁそうかよ、なら俺がお前らを止めてやる。その悪意を絶対に止めてやる!」


人の命を運命を、捻じ曲げ弄ぶ悪鬼羅刹に怒りを滲ませる


そうして意識せずに振るった手には、今朝ダーカー博士から手渡された円盤状のアイテムが握られていた


『魔力量、規定量を数値』


『自動製造機から報告、発展型追加装備名称:パワード、使用許可』


それは彼にとっては無意識に近い行動だった

未だ使えるかわからない道具を取り出して使おうとするなど普通は思わない

だが、確信に近い直感の元いつの間にか道具を手元に呼び出し、何の違和感もなく腰の突起へと嵌め込む


これが必要だと、わかっていたかの様な確信を持ちながら


「変身!!」


『発展型装備承認、装備名:パワード!!』


機械音声が流れると共に嵌め込んだ円盤へと片腕のブレスレットを擦り合わせるとトウヤの身体を光が包み込む


『モードエボリューション! パ・パ・パ・パワード!!』


軽快な機械音声が告げると共に腕を振るうとガラスの砕ける音共に新たな力が姿を表す


今この場にいるのは自身のみ、それ故に思う

俺がやらねば誰がやると、怒りの拳を握り締めながらトウヤは叫ぶ


「お前の悪意は俺が止める!!」

個人的にはジンバーレモンと同じ16話が良かったんですけどね

途中話の差し替えとか、流れおかしくなるから入れるのやめたりとかで15話になっちゃいました

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