恐ろしき3大怪人の魔の手! 5
己低気圧!!!
貴様だけは・・・貴様だけは許しておけぬ!!
薬も効かぬ、寝ても痛い!
あぁ己低気圧、ゆ゛る゛ざん゛
登場人物紹介
浅間灯夜:主人公
里晴 茜:雫の彼女、東方の国である和国の忍び、数少ない1級冒険者であり普段は街にいない
雨宮 雫:茜の彼女、東方の国である和国の忍び、数少ない1級冒険者であり普段は街にいない
特殊な刀を持っている
普段は人通りの少ない路地のゴミ箱を開けた時、蓋に感じるドッシリとした重みから蓋の裏へと目を向ける
「見つけた!」
蓋の裏には爆弾が貼り付けられていた。それを確認するとすぐさまスーツの通信機能を作動させる
通信が繋がり、通信員の声が聞こえた瞬間トウヤは通信員に告げた
「こちら浅間、爆弾を見つけました!目印あげます!」
そう言うと手を空に掲げ火球を打ち上げると、火球は上空で炸裂する
暫くしてから空に黒い1本の線が入り、線はやがて広がりぽっかりと空いた穴になると1人の少女が穴から出て来た
トウヤの目の前に降り立った少女は黒髪のポニーテールを揺らしながら彼の顔を見ると嬉しそうに笑みを浮かべる
「おっ!トウヤもひとつ見つけたんだねおめでとー!」
「ありがとうございます・・・?ところで茜さん、天華の護衛の時も思ってたんですけどこれなんですか?」
降りてきた少女、茜に爆弾を手渡しながらトウヤは空に出来た穴を見つめながら言うと、彼女は指を立て唇に当てがいニヒッと可愛らしく笑う
「秘密」
「秘密って・・・まぁ良いですけどね」
あの異様な通信から40分が経過した
彼が見つけた爆弾はこれまでに3個になるが、雫と茜が合流してから街全体の爆弾処理の効率は格段に上がった
その理由に雫の持つ刀にある
詳細は教えてもらえないが、彼女の刀には空間を切り裂き繋げる。所謂ワームホールの様な物を作る力があるのだ
それ故に見つかれば信号弾または、魔法で位置を知らせて回収し処理は広場の爆弾処理班が待機する場所で行う手法が行える様になり、これまで爆弾処理班が向かうまでの時間と位置を知らせる役割として割かれた人員を爆弾の捜索に当てることができる様になった
「でも、爆弾の処理が容易になったのは助かります。おかげで住民の混乱も少しずつマシになってますし」
「ありがとう・・・ねぇところで、トウヤはどう考えてる?怪人の事」
茜が僅かに悩ましげな表情をしながらそう聞いてくる
「どういう事ですか?」と聞き返せば、彼女はうーんと唸り声を上げた
「何だろう、何か違和感があるんだよねぇ・・・確かあの怪人ってビヨロコとかいう大怪人の部下なんでしょ?なんかやたらとこの街に固執してるみたいだし、なんでなんだろうって」
それはトウヤの思うところでもあった
確かに何故この街を狙うのか、雨宮天華という鎧の勇者がいる時は彼女を目当てに来たのだとわかる
しかし、その後移動式遊園地のピエロ型怪人、今回の触手型怪人と言い何故この街をピンポイントで狙うのか
仇討ちと言うには仲間意識は強いとも思えず他に考えられる点は、とそこまで考えてトウヤはひとつ思い当たる事を思い出す
「あ・・・ひょっとして俺のスーツか!?」
「スーツって・・・それの事?なんで?」
「前親衛怪人とかいうのが襲ってきた時に言ってたんですよ、俺のスーツを8大罪に贈呈するとかって・・・」
以前の親衛怪人戦の時彼らは言っていた。スーツの贈呈を許可されたから寄越せと、行ってきていたのだ
もし考えられるとすれば、彼らも自身のスーツを目当てにしている
ならばと次に疑問に思う事があった
「ならなんで・・・こんな事するんだ・・・?」
スーツが目当てなら態々この様な回りくどい真似はしなくて良い筈だ
遊びと称してこの街を狙う理由
2人が頭を悩ましていると、不意に2人の通信機が震える
トウヤと茜はまさかと思い目を見合わせた後、通信機を起動すればそこから聞こえてきたのは2人の予想通りの女の声だった
『みなさまー、楽しんでますか?爆弾回収は順調でしょうか?爆弾は全85個、今どのくらい見つけれているでしょうかぁ?』
相も変わらず人の神経を逆撫でする様な煽る様な言い方をしてくる怪人
だが、発された言葉に安心感を覚えた
「爆弾は85個・・・茜さん!」
「うん、今回収されているのはこれを合わせて84個!あとひとつだけ!」
そう現在処理済み76個、未処理8個という状況であり、爆弾の殆どは回収が終わっている状況にあったのだ
その事に2人は歓喜する
『ここで皆様に楽しいお知らせ!残りの1個の場所は私が直接お知らせ致します!なのでぇ・・・ついて来てくださいね?フレアレッド』
「ついて来てくださいね?フレアレッド」
2人の近くで声が聞こえる
その声に急ぎ顔を向ければそこには一対のブレードを両手に装備した人型のカマキリ型上級怪人が立っていた
怪人は手に持つ通信機を放り捨てながらトウヤ達へと笑みを浮かべながら近付いてくる
「さっきぶりね、クソガキ」
「お前・・・、最後の爆弾は何処だ!」
「そう慌てない慌てない・・・、うーんそうだねぇ」
ふざけた顔をしながら怪人はどうしようかと顎に手を当てて考えると、何かを思いついたのか下卑た顔を浮かべる
「まぁそれも面白そうか・・・、お前とビヨロコ様達との因縁の地に置いてるよ」
「・・・あの倉庫か」
思い起こされる記憶に苦々しい顔を浮かべる
もしそこに置いてあるのならば、当然爆弾だけではないだろう
「ビヨロコ達もそこにいるのか?」
「大正解!ビヨロコ様とクーラ様がお前を待ってるんだ、さぁ早く行きな?」
急かす様に言ってくる怪人、だが自身が行けばこの場に残るのは茜1人になる
そうなれば彼女は怪人と戦う事を強いられるだろう
だが、それを察して茜はトウヤに笑みを向ける
「私は大丈夫、だから行って?」
「茜さん・・・頼みます!」
厳しい戦いになる。だが、茜は真っ直ぐな瞳でトウヤを見つめた
その瞳に不安はなく諦めの色も浮かんでいない
だからこそ、トウヤは彼女を信じ己のやるべき事をなすために走り出す
トウヤが走り去っていく音を確認すると、茜は拳を構えた
「さて、トウヤを行かせて怪人さんはどうするつもり?」
答えは分かりきっている
だが、あえて聞いた
その言葉に怪人は当然の如く答える
「遊ぶに決まってるだろ?新しいおもちゃで!」
そう言った瞬間、怪人は走り出す
常人には目にも止まらぬスピードで、茜へと駆け寄るとブレードを彼女へと振り下ろそうとする
だが、それをゆったりと傍観する茜ではない
怪人の動きに呼応する様に懐から4本のクナイを取り出すと怪人に向けて両手を振るい投げ付けた
飛翔するクナイは確かに怪人の身体を捉え鋭利な刃をその身体に突き立てようとするが、強固な表皮の前に容易く弾かれる
軽快な金属音と共に空中を踊るクナイ
そんなもので怪人の身体を傷付けられる訳もないと、浮かんだ余裕は怪人の顔に笑みを浮かばせた
それ故に気が付かない
弾かれたクナイの1本が煙と共に茜の身体と入れ替わったのに
「忍法、転身の術」
背後から聞こえた声に反応して顔を向けようとするがもう遅い
鋭い目をした茜は、足に纏われた魔力を岩の塊へと置換させるとその足を怪人の頭目掛けて薙ぐ
足はまっすぐ怪人の頭へと打ち込まれその身体を壁へと叩き付けた
「忍法、疾風迅雷:斧」
「・・・このぉっクソガキぃ!!」
怒る怪人は壁に叩き込まれた体勢のまま臀部から本体である触手を伸ばし未だ空中にいる茜へと向ける
触手の先端が花弁の様に開くと、中から白い液体が飛び出して来ると、空中で凝固し鋭利な刃物となり茜へと襲い掛かった
それに気がついた彼女は空中で左腕を振るい指先から出る細い魔力糸が電灯へと絡ませると、腕を引き自身の身体を電灯の方へと動かした
凝固弾が空を切ると同時に懐から取り出した3本のクナイを怪人へと投げ付ける
「無駄だってわっかんないかなぁ!」
体勢を整えた怪人はまたクナイ等通用しないとばかりに動かずに受け止める
だが、その意識は確かに警戒はしていた
また再びクナイのどれかと入れ替わる形で茜が現れるのだろうと思い込み、クナイを見渡す
しかし、クナイは茜と入れ替わることは無い
代わりにその全てが爆散した
ばら撒かれるのは粘着性可燃液であり、怪人の身体に燃えた可燃液がこびりつく様に張り着くと激しく燃え上がる
「アガッ!?ガアアァァ!!」
怪人の表皮を焼きながら包み込む様に燃え上がる焔
その熱さと痛みから怪人は堪らず悲鳴をあげる
茜は怪人が包み込む焔に気を取られてるのを確認すると、身体の姿勢を空中で変え脚を電灯の柱へと横に着地し踏みしめる
膝を落とし怪人を視線の先にしっかりと捉えると電灯を足場に怪人へと跳び、空中で右掌を開き構えると腕全体に魔力を纏い岩へと置換した
そうして腕を振るうと掌が当たる寸前に、腕を覆う岩の塊が前へとせり出し張り手と共に岩が掌から撃ち込まれる
「忍法、疾風迅雷:鉄砲!」
撃ち込まれた岩は轟音と共に燃え上がる怪人の身体を後ろへと押し退けた
壁へと再び叩き付けられた怪人は身体を動かす事なくぐったりと倒れ込む
地面へと降り立った茜はそんな怪人の様子に警戒心を緩める事なく注視する
魔法兵器であるスライムローパーを一撃で倒した技だが、この程度で倒せる筈が無いと確信しながら
「やなクソガキだよ・・・私の事をここまで虐めるなんてね・・・」
ポツリポツリと身体を動かす事なく茜へと恨めしそうな声を向ける怪人
警戒は緩めず、その声を聞くがふと違和感を感じた
声が怪人の身体とは違う方向から聞こえると
そう気が付き、周囲へと顔を向けた瞬間目の前に白い触手の姿が見えた
触手は口を大きく歪めながら嗤う
「今更気が付いてもおせぇ!!」
振り払おうと腕を振るうが、触手は逆に振るわれた腕に巻きつきそのまま茜の身体を這い上がふと、身体全体をその身体で持って縛り付ける
巻きついてきた触手により締め上げられる身体が悲鳴をあげた
「グァッ・・・グッ・・・」と声をあげるが触手は締め付ける力を緩めない
「もう油断しない!このまま死ねぇ!!」
怪人が身体全体へと力をさらに入れると、締め付けられた茜の身体はバキッと音を立てて砕けた
「はっ・・・?」
人の身体からなる事のない音と目の前の木片が飛び散る光景に堪らず怪人も惚けた声を出す
「なんで・・・木になってるんだよ」
怪人は自身が巻き付いている砕けた札が貼ってある木片を眺め唖然とした様子を浮かべる
すると怪人の近くにスタンと音を立てて2人の人影が降りて来た
「茜、油断しすぎ」
「油断してないってば!雫ひどくない?これでも結構頑張ったんだよ!」
降りてきた2人の人影は言い合いながら怪人へと近付く
怪人はその姿を見て驚愕した
「お前・・・なんで!?」
声を掛けられた少女、茜はニヒッと怪人へと笑みを浮かべる
「忍法、変わり身の術、知らないでしょ?」
「忍法・・・?お前ら、和国の忍びか!!」
「ありゃ、知ってたのか」
怪人の反応に残念がる茜だが、雫としてはあまりベラベラと自分達のことを喋って欲しくないのだろう、彼女の様子に小さくため息を吐く
「茜、あんまり私たちの身分をひけらかしたらダメだよ」
「わかってるって、雫は心配性だなぁ」
「クソッ!」
雫の言葉に笑みを浮かべ反応する無事な茜の姿に、怪人は急ぎ身体へと戻っていく
口からするりと本体である触手を滑り込ませると、身体は閉じていた瞼をゆっくりと開く
「雫、応援は?」
「フィリアとセドは下級怪人の奇襲にあって来れそうにない、けどオータムさんが来る予定」
増援に駆けつける名前を聞いた時、茜は驚いた様に目を見開き次いで勝ち誇った笑みを浮かべる
「なら、安心だね!」
動き出した怪人へと、2人は構える
あ、ちなみに雫と茜は何かしらの物語を終わらせた後の主人公的な感じで書いてます
まぁ実際何かしらの二次創作の主人公として描こうとした2人なんですよねぇ
おじゃんになったけど・・・