第14話 恐ろしき3大怪人の魔の手!
復活の登場人物紹介
浅間灯夜:言うまでもなく本作の主人公
ダーカー博士:篝野を勝手にライバル視し始めた変身アイテムの生みの親、第6話にてラスが義父である事が判明
ビヨロコとクーラ:第6話にて初登場した3大怪人の一角、トウヤがこの街に来たから起こった大体の怪人テロの首謀者、組織に所属している
とあるホテルの一室
豪華な装飾がなされたその部屋は、通常の部屋とは違う特別感を感じさせる
そんなホテルの一室で女、クヨキシは苛立ちを隠せずにいた
動かずに静観を決めるラーズ、失敗続きのビヨロコとクーラ
そんな彼らに代わり送り込んだ部下親衛怪人2人が撃破されたと報告が入ったからだ
「どいつもこいつも・・・役に立たないな」
「申し訳ございませんクヨキシ様」
その一言に、前で跪くビヨロコとクーラは何も言い返せずにただ一言謝罪のみを口にした
しかし、今回で何度目になるだろう謝罪にクヨキシの心を動かす事なく、冷め切った平静な様子で2人へと告げる
「謝罪の言葉はいい、成果で示せ、ビヨロコ、クーラ」
放たれた最後通牒の様な言葉に、2人は邪悪な笑みを浮かべ自信を持って答える
「ご安心を、クヨキシ様」
「既に準備は整っております」
「後は私が向かえば、全て滞りなく」
「後は私が向かえば、全て滞りなく」
邪悪な思惑が街に襲い掛かろうとしていた
「はいこれ」
「ん?なんです・・・?これ」
その日、酒瓶の転がる工房に呼び出されたトウヤはダーカー博士からとある物を手渡された
それはいつも使用している強化装甲を使うための円盤状の道具を一回りほど大きいサイズにした物体
しかし、新しい強化装備を作ると言う話は聞いていなかった為、手渡された物を見てトウヤは不思議に思った
「新しい強化装備の話とかは無かったですよね」
「そうだね、新しい強化装備はまだない」
「ならこいつは・・・?」
その言葉に待っていたと言わんばかりに椅子の上で両手を広げしたり顔で説明してくる
「そいつはね、学習型術式からのフィードバックを基に強化装備を自己製造してくれるっていう優れものさ!」
「自己製造って・・・そんな事出来るんですか?」
言ってしまえば装甲や新しい部品の制作、何から何までこの物体で出来る等と言われて、思わず半信半疑になってしまう
しかし、ダーカー博士は自信満々に答えた
「出来る!空間魔法を使って拡張した内部空間に私謹製の自動製造設備を取り付けてある。そこで学習型術式からの情報を基に新たな強化装備を作成する。時間は多少掛かるがね」
「おー・・・!なんか凄いってのはわかりました!」
説明された所でどの様な原理で動いているのかわからないが、そういう物なのだとトウヤは一先ず納得する事にした
「よぉし!そうとわかれば戦ってこい!」
「えぇ・・・」
何やら異様に興奮しながら急にそう言ってきた博士にトウヤは思わず困惑する
よく目元を見てみれば黒い隈が出来ており、転がっている酒瓶の数から、おそらくこの異様な興奮は酔いと寝不足のせいだという事が、窺い知れたがそれにしてもであった
「さぁさぁさぁ!」
そんなトウヤの様子など気にも止めずに、椅子から立ち上がるとほんの僅かに香るアルコール臭さを感じさせながらトウヤの手を引き次いでその背中を押す
「うわちょっと!?押さないで!」
「早く行ってこい!早く成果を見せて来いー!」
「うわぁぁ!?」
工房の外へとそのまま放り出されたトウヤは、倒れ込む様に転ぶ
バタンと閉じられた扉の音を聞きながらヨロヨロと立ち上がると服についた砂を落としていく
「なんだよ博士・・・なんか今日異様にテンション高いし変な感じだな・・・」
そうぶつくさ言いながらも、とりあえずトウヤは先に街の巡回を始めているセドと合流すべく歩を進める事にした
しかし、そうは言っても怪人とそう簡単にすれ違う訳もない
今の所通信も入らず平和な街の姿を保っている
「どうしたもんかなぁ」と考えていると一つの案を思い付く
「あ、そっか、別に模擬戦でも良いのか」
何も戦うだけであれば怪人とだけでなくとも良い
模擬戦形式でセドや篝野と戦えばそれだけでも学習型術式の情報収集能力を活かす事ができる
そうと決まれば善は急げとばかりに走り出そうとした
「ん・・・?」
「・・・あっ」
大通りから覗く路地への道をふと何気なしに目が向いた時だった
路地裏で何やらコソコソと何かをしているひとつ目の触腕を持った怪人と目があったのは
一時彼らの間には沈黙の時間が流れる
『空間魔法、アクティベート』
そうした中でいち早く立ち直りつつあったトウヤはブレスレットへと魔力を供給し、ブレスレット同士を擦り合わせた
「変身!」
『音声認識完了、アクシォン!』
「何やってんだお前!!」
フレアレッドへと変身したトウヤは怪人を指差し声を張り上げれば、怪人は予想外の事態に慌てだす
「ヒーローだと・・・!おい、お前ら行け!」
何やら隠したいことでもあるのだろう
壁際を見せない様に隠しながら、作業中であった無貌達を呼び寄せた
怪人の後ろから飛び出した無貌達は路地の壁を自在に使い飛び跳ねながらトウヤへと迫ってくる
「フレアシューター!」
『フレアシューター、アクティベート!』
向かえ打つトウヤは、腕を振るい呼び出されたフレアシューターを構え魔力を込めて稼働状態にさせる
そうして引き金を引くと幾条もの熱線が銃口から放出され無貌達を貫いていく
だが、全てを撃破出来ず2体の無貌が迫ってきた
フレアシューターをすぐさましまい身を屈めると半身を捻りながら右腕を振るい左腰のあたりへと手を持っていく
「ヒートソード!」
そのまま呼び出したヒートソードの刀身に空いている左手を当て沿わせ赤い熱線の刃を形成させながら振るい、飛び掛かってきた1体の無貌を下から斜めに両断し、返す刃で後ろから迫ってきた無貌へと唐竹割りをお見舞いする
「よっし・・・!おわっ!?」
「クソッ外れた!」
最後の無貌を両断した後、トウヤに向けて振られた触腕に気が付き急ぎ身体を捻り避けると、怪人が悪態を吐く
次いで戻した触腕を再度振りかぶって来る
鞭の様にしなる触腕はトウヤ目掛けて振り下ろされたが、それを手に持つヒートソードで切り裂くと、触腕はドサリと音を立てて地面を転がる
「うわぁぁぁ!僕の腕ぇ!!」
触腕を切り裂かれ痛みから悲鳴を上げる怪人は、今度は暴れ回る様に無事な触腕と切り裂かれ短くなった触腕を無作為に振り回した
「うわっ!?この、暴れるな・・・いたっ!」
無作為に振り回された触腕が腕に当たり、ヒートソードを落としてしまう
「しまった・・・ってうわっ!?」
落としたヒートソードを拾おうにも動きの読めない触腕に翻弄されて取りに行けない
だからこそ、トウヤは修行の成果をここで発揮しようと考えた
トウヤ目掛けて触腕が振り下ろされようとした時、手を握ると拳から肘にかけての魔力の流れを纏いそれを迫る触腕へと当てがい触腕を受け流したのだ
触腕は拳からの魔力の流れに乗りそのままあらぬ方向へと流されていく
その結果を受けてトウヤは確信する
「これなら行ける!」
今度はもう片方の腕にも同じ様に魔力の流れを作ると、振るわれる触腕を両腕で持って受け流しながら前へと進む
暴れ回る触腕の中を進む彼の姿を見た怪人はこのままではやられると恐れを抱くと、痛みをグッと堪えて両腕を揃え纏めて自身の頭上に振り上げた後に振り下ろした
だが、それすらもトウヤもまた両腕を顔の前で縦に揃えて構えることで触腕を受け流し、途中で外へと腕を動かすことで触腕を弾く
外へと触腕を押し弾かれた事で、怪人は腕を広げた無防備な状態になる
『オーバーパワー、アクティベート』
そんな状態をトウヤは見逃さない
再度ブレスレットを擦り合わせスーツの性能を限界突破させると怪人の懐へと一気に入り込む
右腕の魔力の流れを肩から拳への流れに変えて拳の先に突起を作る
『貫徹、一撃!』
「ペネトレーションナックル!!」
怪人の腹へと拳を突き出しそのまま上空へと振り上げれば、肩までの魔力が勢いよく怪人突起により出来た傷から内部へと放出され、その勢いで空高く吹き飛ぶ
「いやだ・・・私は・・・」
放出された魔力が怪人の身体を駆け巡り、術式回路をズタズタに引き裂くと破損した術式回路からの魔力の逆流により怪人の身体がジタバタと暴れ回り、爆散する
それを見届けたトウヤは、湧き上がる感情を拳を作り握り潰すと怪人が隠そうとしていた物を見る事にした
「・・・なんだこれ?」
そこにあったのは四角い爆弾の様な物と、赤黒い液体だった
「・・・これ、なんか・・・見覚えがある様な・・・」
そう思った瞬間だった
トウヤの脳裏に次々と様々な光景が過ぎる
それはどこでもない雪原
燃え盛る街の光景
呻く松明達
泣き叫ぶ肉人形とそれを抱える誰かの姿、その姿に彼は無心に手を伸ばす
そこでトウヤは、意識を取り戻す
心臓が早鐘を打ち立ちくらみがする
「今の光景・・・」と少し呟きながらも何とか立ち上がると、目の前の奇怪な代物を何とかするべく通信を行うのだ
事件はまだ始まったばかりである
登場人物紹介復活!!




