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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 門鍵モンキー
第一章 異世界に行ったらヒーローになったSO
72/213

第12話 襲来!親衛怪人!

おでん作ってたらこんな時間になってしもうた・・・

第12話です


あ、ちなみに50話完結予定で行ってます

「いらっしゃいませー!」


その一声を皮切りに店内にいた店員がまるで波の様に声を張り上げ始める


最初に声を張り上げた店員が、店内の喧騒の中を小走りで来れば、トウヤの前に立ち笑顔で問い掛ける


「何名様でしょうか?」


「5人です」


ここはベガドの街にある居酒屋

名前の通り、何代か前の勇者が持ち込んだ居酒屋という概念から生まれた飲み屋である


そこに5人の男達が集まっていた


彼らは座敷と呼ばれる靴を脱いで座る東洋式の席に案内されると、思い思いに頼んだ酒が届くと乾杯の音頭と共に飲み始める


「どうしたんだいトウヤくん、私達全員を飲みに誘ってくるなんて・・・珍しいじゃないか?」


酒と共に配られた小鉢の中身

塩気のある緑色の豆を手に取りながら、オータムは珍しそうに言ってくると、トウヤは恥ずかしげに頭を掻きながら言う


「いやぁ、ちょっと最近色々ありまして・・・なんか飲みたい気分になったのと、もしよかったら話聞けたらなぁって」


「なるほどね、それなら君達のカウンセリングも私たちの仕事だし、遠慮なく聞いてくれよ」


納得の言葉と共に、ゼトアが笑い掛けてくる


ガラス製のコップに並々と注がれた大麦の蒸留酒を飲み、机の上に置けばラーザもまた、意外そうに言ってきた


「しかしまぁ、お前が悩みなんて結構珍しいというか意外というか」


「いや、ラーザさんは研修の時に俺が落ち込んでるのを慰めてくれましたよね?」


「あぁ・・・なんか、そういう事もあったかなぁ!あはは!」


1杯目の大麦の蒸留酒ですでに酒が回っているのか、ラーザは顔を赤らめながら楽しげな様子で笑い出す


そんな様子に呆れ返る者が1人いた


「ラーザ・・・お前そろそろ己の酒の弱さを自覚したらどうなんだ?」


「細かい事は良いじゃないか委員長!今日はオータムさんからも酒は幾らでも飲んで良いって許可が出たんだからよ!」


隣に座るセドの背中をバシバシと叩きながら楽しそうに言う

そんな下戸の酔っ払いにセドは頭を抱えオータムに恨めしげな様子で言葉を投げ掛ける


「オータム・・・そんな事を許したのか?」


「まぁ・・・偶には羽目を外すのも良いと思ったんだが、そう言えばここはエオーネの店とは違うんだったね・・・すまない」


エオーネの店では下戸のラーザとシス用に特別にアルコール度数の低い酒を準備しているのだが、もちろんここにそんなものがあるわけもない


名前もわからず適当に頼んだ酒が、この店でもアルコール度数の高い酒であったのがある意味で運の尽きでもあった


申し訳無さそうに笑うオータムにセドはため息を吐くと、耳元で笑うラーザの声と背中から感じる痛みに意識を向けない様にしながらトウヤへと向き直る


「それで、その悩みとは何なのだ・・・おい、痛いからやめろ!」


意識しない様にとは思えど、良い加減鬱陶しく思ったのか、上げられたセドの抗議の声に、ラーザも同様に声を上げる


「良いじゃねぇか!減るもんでもなし!」


「俺の忍耐力が減っているのだ!良いからやめろ!」


「なら今ここで鍛えようぜ!!」


「本当に酒が入ったらめんどくさいなお前!」


しかし、相手は下戸の酔っ払いである

まともに会話が出来るわけもなかった


皆が集まっている前だと言うのに、ついにはトウヤ達を他所に2人で言い合いを始めてしまう


だからこそ、トウヤは敢えて触れない事にした


「あぁまぁ・・・最近、俺もっと強くならないとって思って、そこで聞きたいんです!強くなる方法!みなさんどうやって鍛えてますか?」


その質問に2人は困った様な顔をする


「トウヤくん、言っては何だが・・・君はどう強くなりたいんだい?」


「どう強くなりたいかですか?」


自分の言葉に変えながら、オウム返しをするとゼトアは頷く


「そうだ、どう強くなりたいか、目標がないままでは真の強さを得る事はできないよ」


「目標はみんなを守れる強いヒーロー、これじゃダメですか?」


「うーん、それでは大まかすぎるんだ」


そんなゼトアの言葉にトウヤは疑問符を浮かべる

目的とはそんな者ではないのか?と、ならばどう言う事なのかと


それに気が付き、オータムがとある話をした


「何故何故何故と追求して行くんだ、例えば・・・歴史で例えよう、何故初代勇者は誕生したのか?それは原初の魔王を倒す使命を帯びたから、何故?それはデアテラ様が力を授けて下さったから、こんな感じでね」


「俺の場合だと・・・何故力が欲しい、何故?それは守れなかったことが多いから、何故?それは俺が弱いから・・・こんな感じですか?」


「ネガティブワードが多い気もするが、そうだねそんな感じだ、そこで何故強さを得たいのかの根本の理由を探る事で、君の強さのあり方を考えていける様になる」


「おぉ!なるほど・・・なんかマネジメントみたいですね」


思わず納得の声が出る


「実際マネジメントから来た発想らしいからね」


「だがなトウヤ、貴様は勘違いしてるぞ?」


ラーザの頭を抑えながらセドが言う


「まず貴様は弱くはない、上級怪人の討伐に成功しているのだからな」


「・・・そうですか?」


トウヤの自身無さげな言葉にセドは頷く


「あぁ、そもそもヒーローになってから数ヶ月で上級怪人を倒せるやつが弱いわけないだろう」


そんなセドの言葉にゼトアもオータムも頷く

以前の勇者誘拐事件の際や、初めての怪人戦でのフィリアとダライチの戦闘で仕留めきれなかった通り、上級怪人はベテランヒーローであるセドとフィリアと同じくらいの実力がある

そんな上級怪人を討伐したトウヤが弱い無いのだ


手元のグラスを掴み、一口だけ水を飲み喉を潤す


「まぁどちらにせよ、俺たちに教えられる事はない、俺は風魔法メイン、オータムは剣技とそれぞれの戦い方を持つが、お前の戦闘スタイルは何だ?」


考えさせる為にわざとトウヤへと問い掛けた

それは彼自身で考え気付くべき事だからである


うーん、と手にもつグラスを指で擦りながら僅かに唸ると、やはりと言うべき答えをトウヤは出す


「やっぱ接近戦とかですね」


「あぁそうだそれも間違ってはいない、だが、細かく言えばスーツの機能と接近戦の合わせ技だがな」


それは彼なりにトウヤの戦い方を見てきたからこそ言える言葉だった


トウヤの持ち味とはフレアジェットを用いた高速飛行と、強化装備であるライトニング

そこから繰り出される接近戦である


他にもヒートソードやフレアシューターといった武器も持っているが、やはりメインになりがちなのは接近戦であった


「なら格闘技の先生に教えてもらった方が良いって事ですか?」


「そこはお前が決めろ」


「えぇ・・・そんなぁ」


いきなりの突っぱねた様な言葉にトウヤは思わず不満の声を出す


しかし、セドはその言葉を意に返すことなく言う


「当たり前だ、そこはお前が出すべき答えだ、だが、もしも教えを乞いたいなら言ってこい力を貸す」


「お前も素直じゃ無いなぁ、心配してんならそう言えよ、あ!俺にはいつ言ってくれても良いからな!」


「頬を突くな、あと耳元で叫ぶなうるさい」


隣に座る彼らの問答にトウヤは思わず笑って返事をし、オータムとゼトアもまた笑みを浮かべる


そうして、店員が料理を持ってきて、彼らはそれを舌鼓する事にした

そこからはたわいもない世間話へと、話の流れは映っていく





そんな彼らの様子を伺う集団がいた

彼女らはテーブル席に座り、いくつか席を挟んだ先にいる男達の様子を伺いながら、机に置かれたグラスとつまみを口に運びながらチラチラと目を向けている


「ラーザ・・・何酔ってんのよあいつ、というか何話してんだろ?」


シスが顔を向けない様に横目でチラチラと見ている


その度にラーザがセドに絡む様子が見えて呆れと同時に嫉妬の様な感情を浮かべていた


そんな彼女の前で、フィリアはそっと身体強化魔法を使い聞き耳を立てようとするが、あたりの喧騒により声がかき消され、何か騒いでるのはわかるが何を言ってるかまでは判別出来なかった


「聞こえない」


「そりゃ聞こえる訳ないわよ、というかあなたも中々良い趣味してるんね」


エオーネが美しい呆れ顔をしながらカクテルのグラスを手に取り口に運ぶ


「そうは言うけど気になるじゃん!何言ってるのか」


「まぁラーザが行ったから気になるのはわかるけど、少しは遠慮しなさい、浮気してる訳でもあるまいし」


「なっ・・・!浮気って、私は別にあいつが誰と付き合おうが・・・」


慌てふためくシス

そんな様子の彼女にエオーネは早く付き合っちゃいなさいと思う


そんな2人とは対照的に、フィリアはいつも通りの無表情ではあるが、何処となく暗い面持ちでトウヤ達の方に顔を向けていた


「心配?」


その様子に気が付いたエオーネが隣に座る彼女へと声をかけた


「わからない、でも、モヤモヤする」


「モヤモヤ・・・ね、もし気になるならあとで声を掛けなさい」


「うん」


エオーネは彼女が抱く感情の正体を、ある程度察していた

だが、敢えてそれを言わない


それは時に自分で気が付いた方が良い時もある

もし彼女がその感情の正体に気が付いた時を楽しみにしながら、そっとグラスを傾けるのだ


「おや、これは珍しいメンバーがお揃いの様子で」


不意に彼女達に声が掛けられた

目を向けてみれば、視線の先には無精髭を生やしたボサボサの髪の男が立っている


「あらカガリノさんじゃない、こんな所で会うなんて奇遇ねぇ」


「久しぶり」


そこに立っていたのは篝野だった

彼女らはギルドでちょくちょくあっていたということもあり、彼に挨拶をする


「1人で飲みにきたの?」


「おぉ、ちょっと酒が欲しくなってな、それで飲もうとしたらあんたらを見つけたから声を掛けた次第さ、あんたらは?なんかただ飲みにきたって訳でも無さそうだが・・・」


「2人はあっちの男子グループの野次馬、私は野次馬の監視」


「監視ってなんだよ、あはは」


そう言い笑うと自身の卓に置いてあるおちょこを手に持つ


「ご一緒しても?」


「2人は良い?」


「良いよ、ここ空いてるから座って座って」


エオーネの問いかけに2人は快く頷くと、シスの隣の席に篝野は座る


「どうも、んであの男子グループってのは・・・お、いたいた勢揃いだなぁ」


「でしょ!それでなんか気になってねぇ」


どうせ気になっているのは今も酔っ払って隣のセドにちょっかい掛けているラーザはなんだろうなと、篝野は内心思いながらも口には出さない


そして、篝野を入れた4人もまた、世間話へと移っていくのである


そうして夜は更けていく



時計の針が10時を回った頃

飲みは解散となり各帰路に着く事になる


些か飲み過ぎたのか、身体には軽い倦怠感があり、熱った身体が冷たい夜風に当たりちょうど良く冷やされていく


そんな1人歩く夜の街に、トウヤは視線を感じた


誰だ?とは思いつつも警戒しながらブレスレットに魔力を少しずつ込める


そうして徐に振り返ってみれば、暗い道の真ん中に1人の女が立っていた


「なんだ・・・フィリアさんか・・・」


そう思い、警戒心を解くと前を向こうとするがそこでアルコールと咄嗟の事で気が付いていなかった意識が気付いてしまう


何故彼女がここにいるのかと


「え!?なんでいるの!?」


思わずもう一度勢いよく振り向き二度見してしまう


彼女の家は反対方向のはず、なのに何故彼女がいるのか


そのトウヤの疑問に彼女は答えた


「ついて来た」


「何処から!?なんで!?」


言ってしまえばストーキング

何故自分がそれをされるのか、理解が出来ず困惑してしまう

そんな彼を他所に彼女は近付いて来る


「あの・・・俺何かしました?」


「・・・うん」


ーー何をやった俺!


フィリアの言葉にトウヤは考えた

彼女にストーキングされるに足る理由を、過去の自分に問いただした


「・・・工房に置いてるコーヒー飲んだのバレました?」


「ごめん、それ知らない」


墓穴を掘った

こういう時に自分から言い出すことの愚かさを知っておきながら、トウヤはついポロリと秘密にしてた事を漏らしてしまう


「やっちまった・・・」


「気にしてないからいい、それより、少し・・・歩こう?」


そうして2人は夜の街の中、歩いていく

ちょっとストック無くなったので更新スピードが落ちます

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