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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 門鍵モンキー
第一章 異世界に行ったらヒーローになったSO
5/175

おいでませ異世界 5 改

分割版その3です

高い志、情熱、仕事への誇りはあった

曰く付きのベオテの森、その中を走り回れるというのはある種彼女にとって昔からの憧れでもあった

そんな彼女が森に関係する職に着いたのは自明の理である

だから、こうなっても後悔はないとそう思っていた


「あぁ・・・ダメだなぁ、やっぱ怖いや」


トウヤを逃してからサラは魔獣の気を引こうと絶え間なく攻撃をし続けたが、そのどれもが通用しない


撃ち出した水魔法は漏れ出した分厚い魔力の層により水から元の魔力へと希釈されてしまい、ナイフで切り裂こうにも毛皮に阻まれる

そんなナイフもすでに折れ、諦めずに身体強化した肉体で振るった銃床による死に物狂いの一撃も、ライフルが折れ曲がったと同時に心も折れた


どうやっても倒せない相手を前に、なんで今日この森に来てしまったのが自分なのかと漏れ出る後悔の念

だがそんな中でも誇りはあった。トウヤを逃がせたという誇り


「上手く逃げてね・・・」


無傷の魔獣が自分へと近付いてくるのが見える

抵抗する術も意欲すらも失い、木に背を預け座り込む動かない餌に成り果てた自分へと


無謀な戦いを始めて10分足らず、だがこれからの事を考えると逃げるには十分な時間を稼げた

まだ成人すらしていない少女の公開の年の中には確かに、守り人としての誇りが宿っていた


座り込む少女の眼前へと迫った魔獣は、やがて鋭利な歯が並ぶ口を開き、喉元へと食らいつかんとした


その時であった


「セイヤー!!」


少女の視界の端から飛んできた黒い人影が魔獣を蹴り飛ばし僅かに宙を舞う

思いも知れない光景にサラの頭は混乱し、目を見開き口を開け呆然としてしまう


「・・・あう、なにこれ・・・」


「大丈夫か!サラ!」


「え? その声・・・トウヤなの? 何その格好!?」


「えぇっと、なんかカバンの中のブレスレット付けたらこうなった」


「こうなったって・・・あなたひょっとしてヒーローだったの?」


混乱するサラの捲し立てるような言葉にトウヤも思わず説明に困り果てた

正直トウヤ自身こうなるとは予想せず勢いのままやってみたからである

だがそんな彼らの言葉の応酬を遮るように恨めしく唸る様な声が聞こえてくる


「すまん、話は後で、危ないから下がってろ!」


そうサラに告げるとトウヤは先ほど蹴り飛ばした魔獣へと相対する

すでに蹴り飛ばされた衝撃から立ち直り、先程よりも全身から荒々しく火を噴き出す様は言うまでもなく怒り狂っていた


先程までは逃げるしかなかった相手

だが今は違う、その事実に僅かにだが胸が躍り掬う気持ちになる


「うし! 行くぞ!」


大声で叫びそんな自分に喝を入れ走り出す

強化魔導装甲服に内蔵された本来人では発動し得ない複雑で強力な強化術式はトウヤの身体を極限まで強化する

一歩目は先程よりも大きく、二歩目にはより速く、トウヤの身体を前へと押し出させた

地面を抉り、舞い散った土を被ったサラの悲鳴が響くがすでに魔獣の眼前にまで来たトウヤには聴こえていない

拳を引き、その勢いのまま魔獣へと打ち込む

ゴンという硬い音と共に魔獣は大きくのけ反った


「いったぁ!!!?」


同時にトウヤは悶絶した

想像以上に魔獣の頭が硬かったのだ


「なんでこんな・・・いってぇ・・・」

「まだ強化術式をちゃんと発動出来たいんだよ! さっきの魔力を流す感覚を思い出して!」

「んな!? ちょっと待て、うわ!?」


体制を立て直した魔獣が太い剛腕を薙ぎ払う

悶絶していたトウヤは崩れた体勢のままモロに腹に受けてしまい車に跳ね飛ばされたかの様地面へと叩きつけられた


「トウヤァ!!」


サラの悲痛な叫びが響く

巨木すら折ってしまうほどの一撃を受け身も取れず身体に受けたのだ

普通ならば無事で済むはずがなかった


「いたっ・・・くない・・・お? お? スゲェ! なんかわっかんないけどいた・・・い、ちょっとだけ・・・」


だが魔導強化装甲服を着用している彼には致命傷を与えるには程遠かった

魔獣の一撃が当たった場所には僅かな透明な波紋が生じただけで打ち傷すら負ってない

その波紋も数秒後には消え去っていた

これこそが魔導強化装甲服の防御機能、重結界魔法である


魔獣の一撃を喰らっても物ともしない姿を見てサラは胸を撫で下ろす

トウヤは先ほどの一撃すら防いだ事で安心感を得たのか、俄然やる気が出したのか

よし、と小さく声を上げると魔獣へと再度駆け出した

今のトウヤには怖いものはなかった

今の魔獣に対して有効な攻撃手段があり、対して相手の攻撃は不可視のシールドで防ぐことが出来る

これ程までに安心して戦える要素はない

だが逆にいうとそれだけであった


魔獣へと駆け寄ったトウヤは再度拳を振るう

先ほどよりも小ぶりの一撃

そして、体制を下ろし、拳を下から顎目掛けて振り上げた

僅かに持ち上がる魔獣の身体、そして、そのままの勢いで魔獣の胸へと肘鉄、殴ると連撃を繰り出す

連撃を受けた魔獣は後ろ足でヨロヨロと下がっていく

これなら行ける、そうトウヤは考えていた

だからこそ、そのままヤクザキックで押し込もうとしたその時であった


魔獣の身体から先程とは比べ物にならないくらいの炎が噴き出たのだ

噴き出た炎はある程度の勢いを持ってトウヤへとぶつかり、それに煽られる様に後ろへと転がる

まだ魔獣は本気を出していなかったのだ

炎に焼かれブスブスと燃える草木を尻目に二足となった魔獣はトウヤの頭へと拳を振り下ろした


「あがっ・・・」


魔力による強化と鋭利な爪を伴った一撃は、先程よりも強力になっており、結界魔法を通してトウヤの身体へとダメージを与える

地面へと叩きつけられた頭は僅かに地面へと沈む

衝撃で目の前が白く染まり、視界がぐらつく

そんなトウヤを魔獣は掴み上げる


動けなくなった獲物に対して、魔獣は掴み上げた後どうするのか

それは至ってシンプルであった

鋭利な牙を喉元へと喰らい付かせた

結界魔法により防がれた一撃だが、徐々に押されて牙を食い込ませていく


「がぁ、離せ! 離せぇぇ!! ぐくぅぅ!」


掴んできている手を振り解こうと力を入れるが腕ごと掴まれ拘束身体は、全く広げられない

サラが先に言った通り、強化術式がきちんと発動されておらずその出力を十全に生かし切れてない今の状態では振り解く事が出来ないのだ


ーーヤバイ!!!


先ほどまでの慢心は既に消え去り、焦燥感だけが残っていた

刻一刻と迫る牙、喉を振るわせ力を込めるが動かない身体

足を羽虫の羽が如く無様にバタつかせながら暴れるも魔獣の身体はピクリとも動かない


油断していた、その考えも最早後悔先に立たずであった



やっぱ分割してる方が良いですなぁ

あとで他の話しましょ

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