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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 門鍵モンキー
第一章 異世界に行ったらヒーローになったSO
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勇者見参! 8

なんと今回驚きの構成!

いやぁ凄いですねぇ!

それも見てくださいこの立派な蟹!

彼らは天華救出のために一度ダーカー工房へと向かい作戦会議を行うことにしたのだが、戻った一同に重い空気が流れる


探し出す手段がないわけではない

どうやってビヨロコとクーラを打倒するのか、それが彼らの空気を重くさせた


勝てない事はわかる

だが、それでもやらねばならない事もあった


しかし、やらねばならないのと出来ないのはまた別の話である


あの場に現れたのが上級怪人を従える三大幹部の一角であり、その実力はフィリアとセドの攻撃を容易く防いで見せた事からも明白だった


「防衛隊に応援を頼むのはどうですか?」


このまま黙っていては埒があかないと、無理は承知でトウヤは提案を述べる


「街一個を単騎で制圧出来る程だ、防衛隊がいても厳しいだろうな・・・」


その返答はトウヤの想像通りのものであった


「とりあえず・・・勇者だけ救出するプランを立ててからその後を考えないか?このままだと埒があかねぇ」


言いにくそうにラーザが言う

だが、彼らの空気を重くしている問題の本質はそこでは無かった


「そのプランはある。雫の協力があれば行けるだろうな、だが問題はその後だ、勇者救出が叶い、雫の刀で遠方に避難したらその後は奴によって街を破壊される可能性がある・・・迎撃は絶対、しかしその手段がないのだ」


グッと拳を握りしめ、湧き出る悔しさという気持ちを抑えながらもセドは言った


救出は出来るが、そもそも撃退出来なければこの街が破壊されてしまう

そうであるが故に撃退は必須事項となる


見えぬ未来はやがて、ストレスという形で集まった者たちの心を蝕み消耗させていく


そんな折、工房の扉がコンコンと叩かれた


こんな時に誰かと思い、一同が扉の方へと向けば子供の楽しげな笑い声が遠くに去っていくのが聞こえる


聞き覚えのある楽しげな声

ともすれば、その声の正体にいの一番に気が付いたトウヤは、歯を食いしばり全身の筋肉に力を入れ感情の赴くままに扉へ向かい開け放つ


そこには一通の手紙が落ちていた


なんて事はない無地の折り畳まれた手紙、それを拾い上げ広げていき、書かれている言葉を見てトウヤは押し黙る


「何があったのか・・・?」


「トウヤ・・・?」


トウヤの異変に気が付いたのか、セドとフィリアが心配そうな声で声を掛けた


「あいつら・・・俺に1人で来いって言ってます」


「・・・!?」


あいつらとは誰を指す言葉なのか、それに気が付いた全員が驚愕の表情を浮かべ絶句する


明らかな罠であった


勝てない戦いに1人で向かう、その意味がわからないトウヤではない

だが、それは行かない理由にはならなかった


「俺・・・ちょっと行ってきます」


「トウヤ・・・」


「大丈夫ですよラーザさん、もしかしたらただお茶飲んで終わりかもしれないですし」


「嫌でもお前・・・」


そう声を掛けるラーザに彼の前に立つセドがソッと手を翳し制止する


彼とトウヤの間に声は無く、ただ静まり返った空間とトウヤの目を、彼自身の覚悟を見定めるようにジッと見つめていた


「・・・トウヤ、行くかいないかはお前が決めろ、ただしお前だけでも良い・・・無事に帰ってこい」


それはある意味でトウヤが負ける事をわかっているが故のヒーロー失格な言葉だろう

だが、明確にトウヤの事を案じた言葉であり、その優しさを受けたトウヤは感謝の念を心に浮かべ笑顔で持ってトウヤ自身の覚悟を伝える


「行ってきます」


その行為はきっと仕事人として失格の行為なのだろう

見込みも可能性もないのにたった1人で無謀に挑もうときているのだから

だが彼は仕事人として行くのではない、1人のヒーローとして助けに行くのだ

勇者だからでは無く、たった1人の少女を救うために死地へと赴く


手紙をセドへと渡し、工房を出たトウヤは指定された場所目掛けて一目散に走る


目的地に辿り着いてみればそこは倉庫だった

街に運び入れられる荷物の集積所、その一角にあるそれは全体が赤錆て古臭く中にいる者達の事もありトウヤの目に不気味に映る


倉庫の扉に手を掛けようとすれば、彼の中で僅かな緊張が走った

あの化け物とこれから戦う事になるのだと、そう考えると次に恐怖が波の様に襲ってくる

果てのない穴に落ちて行く様な感覚と共に手が僅かに震えた


「大丈夫か?アサマトウヤ」


後ろから不意に声が掛けられる

ハッとしてすぐ様振り返ってみればそこには見覚えのある白い身体と烈勢面の様な顔がそこにはあった


「あんたは・・・確か」


「ダライチだ、久しぶりだねアサマ君」


柔らかな物腰でそう名乗る怪人、それはトウヤが怪人と初めて戦った時に乱入してきた怪人であった


この怪人もまたフィリアが戦い倒し切れなかった存在、その事もありトウヤは警戒心を露わにしいつでも変身できるようにと構える


こいつの目的はなんだ、と考えようした時、その答えは意外にも怪人の方から口を開きトウヤヘト打ち出された


「そう警戒するな、私はただ激励に来ただけだ」


「激励・・・?なんで三大怪人の部下のお前が・・・?」


訝しげな表情を浮かべそう言った

組織は改造の際に洗脳術式を仕込み怪人を操るにも関わらず、ビヨロコとクーラとは違う行動には怪しさすら覚える


だが、そんなトウヤの疑問の答えもすぐに出た


「私は組織ではなくラーズ様の元で、共に牙持たぬ者の為に戦っている。あの様な下郎と一緒にしてもらっては困るよ」


「・・・」


どうやら組織も一枚岩ではないらしい

確かに定期的なフィリアの勉強会でトウヤは多くの怪人の罪状について聞いたことがある

その中でもダライチを含めたラーズの配下は暴行殺人器物破損等、他の怪人と同じ罪状を掛けられているが、その対象の殆どが後に殺人、誘拐、汚職や国家反逆罪などで投獄された者達ばかりで、彼の言うとおり同じではないのだろう


「だか、私とて組織の末席に席を置く身だ、スポンサーの事もあるからな、今回の勇者救出には手を貸せそうにない」


だが、それでも彼は組織の怪人なのだ

いかに組織のやり方に反対しようとも、属している以上はいつまでも嫌と言い続ける事もできないし、表立って批判も出来ない


それ故に残念そうな表情を浮かべ助けられないと言う、激励もせめてもの抵抗なのだろうか


その言葉にトウヤは薄れいく警戒心を感じながらもただ黙って聴くに徹しているが、内心としては複雑なものだ


敵と思っていた怪人が意外に悪くないと思える事であったり、だがそれでも組織の意向に逆らう事はしないとはっきりと言う

敵であり味方であるという微妙な関係


だが、今回ばかりはその微妙な関係もはっきりとしている


「まぁ今回は味方で、俺を応援しに来たって事で良いんだよな?」


「あぁそうだな、まぁ応援されたところでどうしたと思うが」


自傷気味に呟かれた言葉には、見ていることしかできない自分自身への悔しさが込められていた

そして、トウヤの目を力強い真っ直ぐな目で見つめ言う


「今は君にしか勇者を救えない・・・だから、頼んだぞヒーロー」


それは弱き者の為にという願いの込められた少年の様に真っ直ぐな想いからくる言葉


その意思は、願いはトウヤの心に確かに届く


言葉への返事はなく静かに倉庫の扉に手を掛ける

持ち手は錆びつきひんやりとした感覚がトウヤの手に伝わる


そうして振り向く事なく、トウヤは自身の覚悟を告げた


「任せろ」


勇ましく返事をして扉を開け放つ

難産につぐ難産

生まれたのが綾鷹でした

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