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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 門鍵モンキー
第一章 異世界に行ったらヒーローになったSO
42/177

勇者見参 4改

伸び切った触腕は半円の防御結界の淵を沿うように叩きつけられる


結界内部では打撃音が響き、天華は思わず耳を塞ぎしゃがみ込む


「なんでこんなところにいるんだよ2人とも!」


怪人は触腕を引き戻すと再度引き上げ叩き付ける


そんな中ダーカー博士は笑いながらトウヤの疑問に答えた


「そりゃあんた達の戦闘を見たいっていうのと、新しい武器を作ったから丁度良いと思って持ってきたのさ」


「新しい武器?」


「新しいガジェット!?」


トウヤと天華、思い思いの反応をしながらダーカー博士の言葉に応じる


見ればダーカー博士は何処か近未来的な、おもちゃの様なデザインをした拳銃の様な物を持っているのがわかった


「ひょっとしてそれが新しい武器?ってか銃?」


「そうさ、あんたのブレスレットのデータを解析して作った新型武器、名前はまだないから勝手に決めてくれ」


「え!?な、ちょっと・・・!?」


身体強化術式を発動させるとひょいと天華を持ち上げ、怪人とは反対の結界魔法の外へと走り去る

去り際にポイっと銃を放り投げて来たので急いでトウヤは結界魔法を慌てて解除し、銃を受け取った


「これが・・・新しい武器、スゲェ・・・うぇっ!?」


惚れ惚れと手におさまった銃を返しながら見ていると、再び触腕が振り下ろされる

慌てて横に避け隙を晒してしまうが、怪人からの二の矢は飛んで来ない

見れば怪人は触腕を引き戻した警戒してるのかこちらの様子を伺う様に見ていた


ならばと、トウヤは笑うと怪人へと銃を構える


「こいつの名前はフレアレッドの持つ銃、フレアシューター!!」


『登録名称確認、フレアシューター、再登録』


機械音声がそう告げた後、トウヤはフレアシューターへと魔力を送り引き金を引く

引かれた瞬間、内部の術式が起動し膨大な熱を持つ炎魔法が薬室内部に生成され、前へと撃ち出される

撃ち出された炎魔法は銃身に刻まれた収束用魔法陣により収束され、1本の熱線となり射出された


撃ち出される2本の熱線は怪人の身体に撃ち込まれ耐熱性にも優れた表皮を焦がし溶かす


があぁぁ!?と悲鳴を上げる怪人

すかさずトウヤはフレアジェットを起動すると一瞬で近付き突く様に蹴りを見舞い、反動で宙を舞うと右足の踵からジェット噴射を行い独楽の様に回転し回し蹴りを放ち、その勢いのまま左足の踵からの回し蹴りも見舞う


2連回し蹴りにより左方向に体制を崩し転げ回る


「これなら!」


『オーバーパワー、アクティベート』


ヨロヨロと立ちあがろうとする怪人を尻目に必殺の一撃の準備をする

ブレスレットを重ね合わせ離すと、機械音声と共に色が赤から黄色へと変わり、魔力布は緑へと変わった

次いでフレアシューターの後部を上げ、外部魔力供給口を解放しブレスレットを擦り合わせる


『フレアシューター、オーバーロード!』


機械音声が鳴り響くとフレアシューター全体がその形を変えひと回り大きくなる

より広くなった薬室は多くの熱エネルギーを充填できる様になり、より太くなり延長された銃身は、収束機能が著しく強化された


フレアシューターは魔力を充填されながら光輝く、その中でトウヤは姿勢を低くすると、立ち上がった怪人の懐に潜り込む

反応出来ない怪人を、そのまま強化された膂力により怪人の身体を空へと殴り飛ばす


強烈な光を宿すフレアシューターを打ち上げられた怪人へと向け、両手で構える


『熱烈、一線!!』


強烈な輝きを放つ光が徐々に収束していき、その度に銃口付近の空気を歪めやがて小さな点となっていく


「セイヤー!!!」


『フレアシュート!』


気合いの声と共に引き金を引けば、機械音声が技名を唱え薬室内に充填されていた膨大な熱エネルギーが前へと押し出され、伸びた銃身内で収束され先程とは比べ物にならない太い一条の熱線が撃ち出された


「嫌だ、やめろー!!」


熱線は叫びを上げる怪人を包み込み焼却していき、やがて光の中で爆散する


必殺技を撃ち切ったフレアシューターは各所が解放されて冷却術式の起動と共に冷却状態へと変わった


外の空気を冷やし取り込み外へと白い煙となって吐き出され循環していく


自身の戦闘が終わり一息吐いたトウヤではあったが、向こうの様子はどうかと思いフィリアの方へと顔を向ける


どうやらあちらはすでに終わっている様で、いつの間にかフィリアの傍へと移動していたダーカー博士と何やら話していた


それならばと、怒られるとわかっていたのか近付いてしおらしく顔を俯かせている天華へ顔を向ける


「なんでここに来たんだ?店で待ってろと言ったろ」


「ごめんなさい・・・気になってつい・・・」


その言葉に思わず呆れ返る

つまり好奇心で来たわけかと、変身を解くと怒りを抑えようと深く深呼吸をしながら眉間に皺を寄せた


溢れ出る怒気に気が付いたのかダーカー博士とフィリアもまた2人へと近付いてくる


「まぁまぁ、良いじゃないか無事だったんだし」


「なっ、博士そうは言ってもですね」


「野次馬なんて、よくいる」


「フィリアさんまで」


そう2人の反応に困った様な表情を見せるトウヤではあったが、2人にそう言われたのであれば仕方ないと思い、顔を和らげた


「なら、次からはこんな事しないでくれよ、怪人との戦闘は安易に近付くと危ないんだから」


そう言うと天華は頷く


「よし、約束な」


「わ、ちょっとトウヤさん」


笑みを浮かべながらグシグシとローブ越しに頭を撫でるトウヤに天華が思わず抗議の声を上げる


その事に気が付きうわ、ごめんと慌てて手を引く


「すまん、なんか妹を思い出してつい・・・」


「いえ、別に気にしてないので大丈夫です」


何処となくぎこちない空気が2人の間を流れる

その光景を目にダーカー博士は呆れた様な視線を送るが、ふと傍から何か圧の様なものを感じ目を向けるとフィリアが何処か遠い目をしながら2人を見ていた


「どうしたんだいフィリア、そんな遠い目をして」


「妹、最近会ってないから会いたくなった」


「今のやりとりで会いたくなったのかい」


予想だにしない返答にダーカー博士は思わず吹き出し笑ってしまう


その笑い声に気まずそうにしていた2人もダーカー博士とフィリアに視線を送る


「博士、笑わないで」


少しばかり目を細めながら何処か居心地悪そうにフィリアが言う


ごめんごめんと言いながらひとしきり笑うとダーカー博士は目元の笑い涙を指で拭き取りながらフィリアへと顔を向ける


「それじゃあんた達はギルドに報告に行きな、ゼトアが待ってる。この子は私が預かっておくよ」


「え?良いんですか?」


「あぁ構わないよ、ほらほら行った行った」


急かす様に反応したトウヤの背を押してギルドへ向かわせた


その様子に不信感を覚えつつも報告に行かないわけにもいかないので、心配ながらも2人はギルドへ向かいだす


それを見送り2人の背が見えなくなった頃だろうか、その時天華はあまりにも付き合いが短く共通の話題もないダーカー博士と2人っきりでいるのに気まずさを覚えていた

何か話題はないか、ヒーローの話題はどうか、技術面のことについてはどうかなど、頭を悩ませていると


「ねぇあんた」


先に声を掛けて来たのはダーカー博士だった


彼女は天華へと顔を向けると笑顔で問いかけて来る


「鎧の勇者様がなんでこんな所にいるんだい?」


「え・・・?」


発された言葉は意外なものだった

自分の正体は何処にも公表されていないはず、それなのに何故


彼女の動揺に気が付いたのかニコリと笑いかける


「これでも私は大陸同盟に色々と納品している立場だからね、結構話が入って来るんだよ、それより」


ズイと顔を近付けると天華のローブを捲り上げると、ショートカットの幼い顔立ちが顕になった

適当なローブを拾って使ってたせいだろうか、顔や髪には埃や土で汚れている


顕になった彼女の顔をジロジロとダーカー博士は見ていく

何が何やらわからず困惑している天華を他所にうんと小さく呟くと顔を離し言った


「まずは風呂だな」


「え・・・?」


「とりあえず来な」


「ちょっと、やめて!」


そう言うと天華の手を掴み歩き出した

突発的な行動や自身の正体を知っていると言う点から彼女は警戒心を顕にしながら抗議の声を上げる


「なんだい、風呂は嫌いかい?」


「いや、そうじゃなくて・・・」


「なら良いじゃないか、私の工房には風呂があるからそこでサッパリしてから話は聞くよ、色々と事情はあるだろうしね、それでも嫌かい?」


そうニヒルに笑うダーカー博士に天華は再度困惑を顕にする


「・・・私を、連れ戻しに来たんじゃないんですか?」


「そんな事しないよ、勇者も人なら色々あるだろう、その事情も聴かずに本人の意思を無視して戻すつもりも無いよ」


信じて良いものがわからない

それが天華の本音ではあった


トウヤには異世界出身者仲間という共通点があり、尚且つ自身を助けてくれた特撮の中から出て来た様なヒーローだ

だが、彼女は違う

出会った事情が異なれば信用する為の時間もまた長くなる


だけど、それでも彼女の言葉を聞き、少しは信用しても良いのかと天華の心は傾き掛けていた

それ故に彼女は変わらず警戒心を持ちながらも、ダーカー博士についていく事にする


「わかりました。その、よろしく・・・お願いします」


「ん、じゃあ工房に行こうか」


そうして2人は工房へと歩き出す


その後、ある意味当然の帰結というべきではあるが、工房の中と風呂を見て彼女は別の意味で後悔するとは今はまだ思いもしていなかった




ーーーーーーーーーー



「あれが勇者かぁ、可愛かったね!」


「そうだね、とってもとぉーーっても、可愛かったね」


陽の光を背に、建物の上から覗く2つの影があった

それはどちらも幼く、そのどちらもが幼い外見に似合わぬどす黒い悪意を宿している


子供は笑い踊る

クルクルと2人で手を広げながら円を描き楽しげにあははと狂った様に声を上げ


やがて笑い声は止まり、目と歯を剥き出しにした口を大きく開けて歪な表情のまま、時が止まったかの様に微動だにしない


風の音だけが響く沈黙の時間が僅かに流れたが、思い出したかの様に不意に顔だけを横に動かし自身の目的たる人物

今なおダーカー博士に手を引かれ歩いている雨宮天華の姿を見る


「楽しみだ、ね?ビヨロコ」


「そうだね、とっても楽しみだよ、ね?クーラ」


組織の3大怪人、その一画を担う存在

かつてトウヤが初陣を飾った怪人を唆した悪意の権化

ビヨロコとクーラが動き出す


この街に暗い、仄暗い夜がその歩みを早め近付いて来た

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