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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 門鍵モンキー
第一章 異世界に行ったらヒーローになったSO
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貧民街にやってきた! 4

トウヤが施設に戻ると、そこには先ほどと変わらぬ3人の姿があった

何か話している様子だったが、トウヤの姿を見るといの一番にフィリアが近付いてくる


「さっきの子供、どうだった?」


「いやもう散々ですよ、膳を持って行ったらあの子の連れの子供達に石とか木を投げられました。取り敢えず膳は置いて来ましたけど」


そう笑いながら言うと、あらまぁという声と共に後ろから声を掛けられた

目を向けるとそこにはエプロン姿の妙齢の女性が1人立っている


「おや、お兄ちゃんもしかして悪ガキどもに捕まってたのかい?全くどうしようもない子達だね」


「悪ガキどもって、もしかして有名なんですか?」


「有名も何も、こっちがご飯配ってるのになんでか人の食べかけばかり持って行って、新しいのよそって持って行くとやれ施しは受けないーだの、俺達には誇りがあるーだの言って石を投げつけて来るんだよ、正直めんどくさくて誰も相手したくないんだよ」


「あーなるほど、昔の私に似ているな・・・それは」


そうプリプリと怒る女性を他所に、オータムがそう独りごちり隣で聞いていたエオーネが思わず吹き出してしまう


「確かに、ここに来たばかりの貴方って誇りがどうとか自分の力を過信し過ぎて酷く偉ぶってたものね」


「それも君にこっ酷くやられるまで治らなかっと来たものだ・・・今考えただけでも恥ずかしいよ」


そう言い力無くははは、と笑う

一方それを聞いたトウヤとフィリアは今の温和な彼との違いに大層驚いた


「オータムさん、意外と昔やんちゃしてたんですね」


「まぁね、まぁそれはさておき、あの子供達の事をどうにかしないとね」


あまり掘られたくない過去なのだろう、少し無理矢理ではあるがオータムは話を件の子供達の事に変えようとした


「多分無理だと思うよ、何せこれまで何人も何とかしようと言いに行ったのに石投げて来るだけで碌に話が出来なかったんだから」


無情にもそれは無理と女性に否定される


「それなら大丈夫ですよ」


そして、彼女の意見もまた笑顔で持って否定された

その言葉はトウヤから発されたものである

一同はトウヤに顔を向けたが、各々思う事は同じであり、いずれも石投げられて追い返されるのにどうやって話をするのか?という事についてであった


「何するつもりなの?」


無表情ながらも心配げに話をしてくるフィリアにトウヤは笑顔で答える


「話をするだけですよ、頑張って近付いて」


その笑顔にエオーネとオータムは一抹の不安を覚えたのであった






翌日、子供達を見つけた場所へ来たトウヤは胸にボランティアバッチを付けると早速件の子供達を探す事にした

少し街を練り歩けば、少し茶色がかった清掃されていない街並みにテントの様な布切れが散見できたり、路上で寝ている人達の姿がある

そんな中辺りを見回しながら歩いていると路地裏から声が聞こえた

もしやと思い角から路地裏を覗いてみると日の当たらぬ路地の中に複数の小さな人影が動いている

その中に昨日石を投げつけて来た少女の姿も確認出来たので早速話しかける事にした


「よう!昨日ぶりだな」


ゴミ箱を漁る子供らに声を掛けると、バッと顔を此方に向け警戒心を露わにしている

何人かはゴミ箱の中にあった適当な物を手に持っていたりしているが、トウヤは構わず彼らに近づく


「そう警戒するなって、今日は話があって来ただけだよ」


「みんなやれ!!」


にこやかにそう話すが、リーダーであろう少女の号令と共に一斉に物を投げ始める

路地は奥が行き止まりな事もあってか、必死になるがあまり中にはゴミ箱内にあった鋭利なガラス片を投げ付ける子供もいるが、全てトウヤの前に展開された不可視の結界により防がれ弾かれた


「結界魔法なんて狡いぞ!正々堂々戦え!」


「ははは、そもそも戦う気なんてないよ、俺は話をしに来ただけなんだから」


結界魔法を使っている為その場を動けないが、笑顔を浮かべながら話しかけ続ける


「安心してくれ別に取って食おうなんて思ってないよ、俺はただ君たちが安心して暮らせる様に話をしたいだけなんだ」


「うるさい!お前らにそんなの決められてたまるか!」


「もちろん選択の自由はお前らにあるけど、こんな状態だと死んじまうぞ!せめて飯くらい食いにこいよ!」


「うるさいうるさい!!命令するな!」


「命令じゃない、これはお願いだ!こっちとしてもお前らに死なれたら後味悪いし」


止まらない不毛な言葉の応酬

宥めようと掛ける言葉は全て裏目になってしまう

どうしようか、そう悩んでいるとまた声が掛けられた


「何の権限があってそんな事言ってんだよ!死ね!!」


「そりゃヒーローなんだから、それくらいするよ!」


「・・・みんな待って!」


不意に集団の中から声が掛けられる

どうしたのかと思っていると1人の少女が前へと出て来た。それは先日トウヤのパンを待っていた少女だった

先日とは打って変わり、堂々とした立ち振る舞いの彼女はトウヤをジッと見つめた後口を開く


「ねぇ、貴方ヒーローなの?」


「おう!とは言っても、数日前になったばかりだけどな」


そう言うと彼女はふーん、と顔を伏せ考え込む様な仕草をする

そして、次に顔を上げた時、満面の笑みをトウヤに向けた


「良かった!それなら安心ね!」


「おい、シリ!何勝手に決めて」


少女は前へ歩み出て来たシリという少女の発言に不満がある様で少女の肩を掴み怒りを露わにする


「チリ待って、私に任せて」


シルが声を上げた少女、チリの目を見てそう言う

しばしお互いの目を見つめあった後、チルがそっぽを向き後ろへ下がった


「ありがとう」


「勘違いするんじゃねぇよ、まだ納得したわけじゃ無いからな」


「わかってる」


そう言うとシリは笑顔を浮かべ改めてトウヤに近付くと見上げる様にして相対する


「お兄さん、貴方を信用するね、それで私達は何をしたら良いの?」


「何って、そりゃ普通に飯食いに来てくれたら良いだけだよ、食いかけのパンじゃ足りないだろ」


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