表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 門鍵モンキー
第一章 異世界に行ったらヒーローになったSO
31/215

貧民街にやって来た! 2

そうして時は立ち、現在へと戻る

エオーネの店で言った通り、彼は貧民街ボランティアの支部へと足を運んでいた

事前に電話にて連絡していたのもありスムーズに受付を済ませると彼はボランティアの新米として活動を開始する


「はいよ新入りさん、そしたらこのジャガイモ全部剥いてもらって良いかい?」


「わぁ!」


ドサリと下された高さ50cmの籠にはジャガイモがこれでもかと詰め込まれていた

その畏怖堂々たる有様に思わず声を上げる正直何十個あるのかわからないが、終わるのにどれくらい時間がかかり手首が死ぬことになるのかわからない

籠を持ちながら思案しながらトボトボと歩くとやがて座りジャガイモの皮を剥き始める


「これ新米には多いな?俺も手伝うよ坊主」


そうしていると後ろから聞き馴染みのある声がかけられる

後ろを振り返ってみるとそこには見覚えのある男が立っていた

乱れた短めの髪に無精髭、小袖に袴を履いたその姿をトウヤは徐々に思い出していく


「あ!バスにいたおっちゃん!」


「おう、あと俺はおっさんじゃ無い、お兄さんだ」


男との再開はトウヤにとって喜ばしい事だった

久しぶりというには期間が短い気もするが、この異世界という地において比較的最初に知り合った人物の1人であったというのが主な理由である

そんな思わぬ再開に喜びながらも、男はトウヤの隣に座ると2人で並んでジャガイモの皮を剥き始めた


「最近どうよ、なんかこの街も色々あったけどさ元気にやってんのか?」


ジャガイモの皮にピーラーの刃を当てると、力を込めずジャガイモを動かしながら皮を剥いていく

剥がされた皮は、ピーラーの刃により短く切断され細々とした小片となりながら下に引いたバケツの中へとボトボトと落ちていく


「あーまぁ色々あったけどなんだかんだやっていけてるよ、ヒーローにだってなれたし、おっちゃんの方こそどうなんだよ、仕事とか見つかったのかよ」


ピーラーの輪っかの様な突起でジャガイモの芽を抉り取っていく

皮も芽も取り除かれた薄い黄色の素肌をさらしたジャガイモ達は足元に置いてるのとはまた別のバケツへと入れられて、ガコンという音を響かせる


「とりあえず冒険者やってる。まぁ俺くらいの実力者になれば冒険者ギルドに入って一攫千金も夢じゃ無いん訳だしな、今のところ草むしりしかしてないけど」


そう自信満々に言い放つ男の姿においおいと呆れながら笑うトウヤではあるが、なんだかんだ別れてから数日の間、元気に生きて来れたこの男なら大丈夫だろうという安心感があった


そうして喋りながらも黙々と作業をしていると、俄かに辺りが騒がしくなって来ているのに気が付く

騒音の元となっているのは自分達の後ろのからだったので、2人して何事かと後ろへと顔を向ける

そこには集まったであろう子供達によって小さな人集りが出来ており、その中心には金色の長髪を結った先端が尖った長耳の男がいた


「なんだろ、耳長い人がいるな」


そう眺めながらトウヤが呟くと男はどこか不機嫌そうな雰囲気になる


「あーそりゃエルフだろ、ほっとけどうせ点数稼ぎに来たクソ神父だ」


普段は温厚で人当たりが良いと思っていた男から発された不躾な言葉にトウヤは驚いた


「おっちゃん神父嫌いなのか?」


「あいつだけは別だ別」


理由が気になるが、聞こうにも返ってきたぶっきらぼうな言葉からこの事には触れない方が良いのだろうと思いトウヤは口を噤む

だが、そんな2人の思いを知ってか知らずか、男が神父と呼んだ長耳の男がこちらへと目を向けると一瞬驚いた様に目を開くと、薄く笑みを浮かべながら2人の元へ歩み寄ってきた


「こんにちは、もしかしてお二人が新しく入ってくださったというボランティアの方でしょうか?」


優しい笑みを浮かべながら問いかけて来る

思わずその笑みに同じ男ながら見惚れてしまう

長耳、エルフと呼ばれる人種は長命で顔立ちが精霊由来の出自を持っているが故か、整っている者が多くこの男も例外では無かった


「はい!俺は今日からここでボランティアをさせていただく事になりました浅間灯夜って言います!」


「そうですか、元気があって良いですね、私はマインと言います。これからもよろしくお願いしますね、そちらの方は?」


「名乗る程の者でも無いさ、神父さんよ」


僅かに肩に力が入りながらもトウヤが返事をした一方、男が何処か威圧的な態度で神父へと応対する

だが、そんな男の対応とは別にマインは少し残念そうな顔をしている


「そうですか、それは残念です。名乗れる様になってからで良いのであなたの名前、いつか教えて下さいね」


「そんな時は・・・まぁいつかな」


何処かツンデレの様な対応をする男の姿にトウヤは呆れた

だがそんな男の態度にマインはコロコロと笑うと2人を見渡しながら言った


「さて2人ともこれから私達は多くの方と接して多くの事を知る事になるでしょう、しかし、献愛とは時に苦痛を伴う物です。その事を忘れずに慈悲の心を持って人々を共に救いましょう」


「神父様!一緒に遊ぼ!」


「すぐ行きますね、それではこれで失礼しますね、これから頑張って下さい」


そう言うと呼んできた子供達の方へとマインは歩いていく

その後ろ姿を見ながら男はまたしても悪態を吐く


「ケッ、何が救いましょうだ偉そうに」


「おっちゃん、あんたそんなにあの神父さんが嫌いなのかよ」


「あぁ大っ嫌いだね!あんなロクでなし、良いかトウヤ、世界にはあんな人の為に尽くしますって顔をして悪事を働く奴なんざいくらでも居るんだ、態度や見てくれで騙されるんじゃねぇぞ」


そんなものなのか、とトウヤは男の主張に首を傾げるも、黙り込み作業を続ける男の姿にトウヤもこれ以上は聞かない方が良いと思い作業に戻るのであった





「もう出来たのかい、ありがとうね!はいこれお昼の賄い!ここ置いとくからしっかり食べて午後からも頑張ってね!」


「わぁ、ありがとうございます!」


2人で作業をしたおかげだろうか、滞りなく終える事ができた


「追加で籠が2つ来た時は時間掛かりそうだと思ったが、案外すぐ終わったな、ほらよ」


男がそう言うと背負っていた籠を渡して来る

それを手に取りながらトウヤも言った


「おっちゃんが手伝ってくれたおかげだよ、ほんと助かったありがとう」


「そうかい、そりゃ良かったよ」


配給された膳を手渡しながらそう言うと男は膳を受け取りながらニヒルに笑いそう言う

そんな男を見ながらそう言えばと、トウヤも疑問に思った事を、歩きながら口にした


「そう言えばおっちゃんの名前、俺聞いてなかったな」


「俺の名前?良いだろ別に知らなくても」


「いやよく無いだろ、いつまでもおっちゃんおっちゃんって言うのもなんだし」


「まぁそれもそうだが、うぅむ、あと俺はおっさんじゃ無い、お前よりまだ2歳年上なだけだ」


トウヤにとってはこの男と自分が2歳差なのが驚きなのか思わず目を見開くが、そんなトウヤを他所に男は余程言いたく無いのだろうか、うぅむと唸りながら考え込む

そして、ため息を吐きながら言った


「篝野、それが俺の名前だよ」


そう告げられた名前は、何処か聞いた覚えのある名前だった

その既視感に思わず首を傾げる


「篝野の・・・なんか聞いた事ある名前だな、おっちゃん」


「おっさんじゃ無いっての、そうなのか?結構珍しい名前だと思ってたが」


「いやそうなんだけど、なんだろうこう頭に引っかかるって言うの?なんか後頭部で詰まって出てこない感じ」


思い出せそうで思い出せない感覚になりながらも頭を捻りなんとか思い出そうとするが、思い出せない

何とも気持ち悪い感覚に陥りながらも考える事を辞めない

そんなトウヤの様子に男、篝野は付近の椅子に腰掛け笑いながら言った


「そんな悩むならもう良いじゃねぇか、ほれお前も座れよ、せっかくのスープが冷めちまうよ」


そう言い膳に乗っている保存用の硬いパンを千切り、スープに浸してふやかしてから口へと運ぶ


「まぁ・・・こんだけ考えても思い出せないからいくら考えても無駄か」


「おう、無駄だ無駄、だからさっさと食って気持ちを切り替えろよ」


あっけらかんと言われ少し腹が立ったが、彼の言う通りいくら悩んでも仕方が無いので気持ちを切り替え食事を取る事にした

椅子に座ると膝に膳を置き、パンへと手を伸ばす


「あ、それめっちゃ硬いからスープに浸してから食えよ」


「マジで?あ、ほんとだめっちゃ硬い」


硬く焼かれたパンに驚きながらも千切りスープに浸していく

パンがスープを吸い取り色が変わっていく様を眺めながら、元の世界の柔らかいパンへと思いを馳せる

あんなのが災害時でも届けられる日本って凄かったんだなぁなどと思いながらふやけたパンを口に運んだ

薄味のスープに浸ったパンはスープの優しい味に包まれ非常に味気なかった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ