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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 門鍵モンキー
第一章 異世界に行ったらヒーローになったSO
3/189

おいでませ異世界 3 改

分割版その2です

そんな時だった

サラとトウヤの間を煌めく粉のような物がパラパラと落ちてくる

それを見てトウヤは何だと思い顔を顰め、サラはサーッと青褪めていく顔を引き攣らせ、同じタイミングでゆっくりと上を見上げる


「あっ・・・」


その言葉はどちらから発された物なのだろうか

見上げた先にあったのは快晴な青い空と空にヒビが浮かんでいる光景だった

魔獣除けの結界にヒビが入っているのだ


本来であれば魔獣除けの結界にヒビが入ることなど無いのだが、トウヤの魔法により結界が損傷したようだった


「これ俺のせいか・・・?」


「・・・とりあえずここからすぐ離れよ、このままだと空気中に残留してる魔力に反応した魔獣が集まってくるから・・・」



そう言った瞬間だった

ヒビは一気に空から地面へと落ちていき、まるでガラスが割れたかのような音ともに粉々に砕け散った

その光景を見たトウヤは呆然とし

サラは咄嗟にトウヤへと走って、と叫ぼうとしたその時だった


森中をビリビリと震わせる大きな爆発の様な咆哮が響く

思わず耳を塞ぎ口を開けるトウヤとサラ


「なんだよこの声・・・」


「この爆発音みたいな咆哮・・・多分、ここら辺で1番厄介な奴が来るかも・・・」


咆哮が鳴り止み、辺りを見渡しながらサラは自身の考える中で最悪な部類の魔獣が来る事を考えた

そして、その予想は仄かに明るく照らされる遠くの木々の合間を見る事で確信へと変わる


木々を薙ぎ倒し、燃やし大地を耕しながら小さな"炎"が勢いよく迫ってきていた


「・・・何だ、あれ」


「結界札を貼るからトウヤは私の後ろ!」


呆然としているとサラが叫びポーチから札を取り出し地面へと叩きつけた

その瞬間トウヤとサラを包む様に半透明の壁が出現する

ついでサラは背負っていたライフルを迫る炎へと向ける


彼女は自分の思っている通りなら自分の持っている小型種用の銃では効果が無い、だからといって魔法攻撃はより効果は見込めない

だからこそ、結界にぶつかり勢いが弱まったあと、至近距離から首の隙間めがけて撃つ

その事を頭の中で反芻する

ライフルを握る手が力む

幾ら安全な結界の中とはいえ、迫ってくる炎に身体は強張り、息があがる

トウヤは状況を理解できておらず、逃げ出したい衝動に駆られるが身体が動かない


ここに来て彼は思い知らされることになったーー


炎との距離が近付く

35m・・・30m・・・20m


近付くにつれ周りの空気が熱を孕んでいく

小さかった炎は近づくにつれその熊のような姿の巨体を露わにする

中心に浮かぶ厳つく血走った鋭い目をした赤い顔

開けた口からは鋭い牙が自分たちを噛み切らんと涎を垂らしている

身体を包む様に燃え盛る火とは別に、四肢の関節部から噴き出る炎は辺りの木々へと火を写しながら、地面を力強く蹴り抉り迫ってきている


ーー自身がいるのは紛れもなく異世界であり、生半可な思いで来て良い場所ではなかったのだと


それが恐怖であると自覚した時、すでに炎を纏った巨獣は目の前にいた

まるで鉄の塊が落ちてきた様な重い衝撃音が響く

視界に広がる獣の巨大な体躯は薄い透明な膜に阻まれ勢いを失うが、なおもこちらに牙を突き立てようと結界に噛みつき前脚を振るい火の粉を撒き散らし辺りを焼いていく


「嘘でしょ・・・ここまでなんて思わなかった」


「サラ・・・サラ!早くその銃を撃ってくれ!」


焦る様に彼女へと言葉をかけるトウヤ

すでに何度打ち付けられたかわからない巨獣の牙が展開された結界へと突き立てられる

防ぐたびに防がれるたびに、同じ高さにある巨獣の憎たらしげな顔と目が合う

急くように、己らを肉としか見てないであろう捕食者の目と

その目を見る度にトウヤは益々身体が強張り、震え、目の前の少女の肩を掴み隠れるように萎縮する


だからこそ気がついてなかったのだ

煙の上がるライフルに

容赦なく間髪入れずに連射された12.7mm×9mm弾をモノともせずに暴れる巨獣に


「くそ、くそ!」


だがそれでも少女は守り手なのだ

その事実を目の当たりにしても後ろで震える1人の庇護者を守る為に、叫び声をあげ自らを奮い立たせる

ライフルに装填された魔結晶が尽きるまで引き金を引き続けた

射撃の反動を身体強化の魔法で抑えて、無駄かもしれないという一抹の不安を覆い隠すように叫び撃ち続ける


やがてライフルの引き金がカチカチと虚しく弱々しい声を上げた頃

痺れを切らした無傷の巨獣が立ち上がった

空を覆い尽くさんばかりの、先程の倍はあろうかという長大な体躯がトウヤ達を見下ろしてくる


「嘘、だろ・・・あ、はっ・・・」


チリチリと肌に感じる熱気と共に、恐怖は既に灰色の絶望へと変わっていた

サラの持っていたライフルが弾切れになるほど撃っても効果がないのであれば、もう打つ手は無いのだろう


「トウヤ、逃げて」


「え・・・?」


全てを諦めかけたその時だった

サラがそう言ったのは


「逃げてって、サラはどうするんだよ!」


「私は大丈夫、適当に足止めしてから逃げるし魔法も武器もあるからね・・・だから、逃げて」


腰に備えた短剣を抜き、トウヤに笑って見せる

だがそれが虚勢である事はわかった

魔法ではなくライフルを使い、それでも身じろぎすらしなかった巨獣に、サラ1人で立ち向かえるわけが無いと、無事で済むはずがないと

だが逆に自分が居ても意味が無いことに、自分が居るからこそ余計に危険な事にも気付いてしまっている

巨獣は結界へと覆い被さり、全身の力を使い結界を割ろうとしていた

既に結界にはヒビが入り、魔力の粉がパラパラと舞っている

長くは持たないのは目に見えてわかった


「逃げて!!」


その言葉を皮切りにトウヤは駆け出す

ただひたすらに、真っ直ぐ走る

巨獣の雄叫びも、サラの悲鳴に似た叫びも置き去りにして

前へ前へと走る

確かにこのぐらいのが読みやすいですよなぁ

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