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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 門鍵モンキー
第一章 異世界に行ったらヒーローになったSO
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唸れフレアナックル 6改

フィリアは屋根の上まで移動すると、そのまま屋根伝いに広場まで走っていく

そうして、広場近くの家屋の屋根までくるとより鮮明に状況が確認出来た


おそらく戦闘があったのだろう、屋台の多くがバラバラに崩れ去り広場の広範囲に血が付着している

1ヶ所に集められた民衆の中には力無く倒れ伏す者も多くいる事から既に事切れた者もあの中にはいるのだろう


その行いを確認すると思わず眉を顰めた

感情を出す事が苦手な彼女ですら、その有り様には不快感故に顔が動く

今なお大切な者の亡骸にしがみ付き嗚咽を上げる者達の姿を見れば嫌でもそうなってしまう

その傍で高らかに演説を行う非道の輩の姿もまた滑稽に見えてくる


そんな湧き上がる感情を抑え込み、フィリアは武器を構えると構えを取った

狙いは怪人の首、切断した瞬間に魔力の逆流により無貌とは比較にならない程の爆発が起こるので切断した後は空高く蹴り上げる


その算段を整えて、その場で後ろへと飛び跳ね、両足が後ろへと回すと彼女はとある魔法を発動させた

足裏から防御結界の膜を小さく展開させたのだ

空間を軸に発動された結界魔法は、軸である空間に固定されるので動くことはない

瞬時に発動したそれを足場に膝を折ると身体強化術式を全開にして前へと一気に飛び出る


凄まじい勢いで加速した彼女の身体は弾の様に打ち出された

そのまま怪人の首を狙い刃を振るう


「そうはさせないぞ、フィリア・リース」


だがその刃は突如として目の前に現れた別の怪人により受け止められた

驚愕の目を持って怪人を見つめるフィリアは受け止められた刃を押して後ろへと飛んだ


「上級怪人、なんでここに」


「ラーズ様麾下上級親衛隊怪人、名をダライチと申します。この度は我が配下の怪人がご迷惑をおかけ致しました。」


そう柔らかい丁寧な物腰でフィリアへと烈勢面をつけた様な様相の白い怪人、ダライチは語りかけてくる


「何様だダライチ、俺は大義のために・・・」


「貴様は黙っていろ、ラーズ様から受けた恩を忘れ民草に対してこの様な仕打ちをし、本来であればこの場で私が処刑したいところだぞ」


抗議の声を上げる怪人をダライチは、睨みにつけ怒りを抑えきれぬと言った様子で黙らせた

だが、フィリアの方へと向き直るとこほんと咳払いをし話を続ける


「この怪人はラーズ様の静止を聞かず、勝手にゴーレムを持ち出して広場にて虐殺行為を働きました。この者の処分は私どもの方で行いますので、この場はどうか引いていただけないでしょうか?」


「それは出来ない」


この場を穏便に済ませたいダライチにとっては最大限譲歩しての交渉だったのだが、公的機関に所属するフィリアにとってはそれは出来ないことだった


「その怪人には住居破壊、器物破損、暴行並びに殺人を含めたテロ行為の処罰が必要、あなたにもその容疑で討伐依頼が届いている。何より、前例は作らないしいらない」


「なるほど、テロ組織とは取引しないと言うことですか、合理的な判断です。前例は人を堕落させ脅威の種を育む物ですからな」


1回の前例、されどそれは人に甘えを生む

前任者がやったのだから、他でこの様な判断が行われたから、これはそれで対処すれば良い、そうやって人は前例を何度も何度も繰り返してやがてそれは常識になる

それを作ってはいけないのだ


ダライチは理解できるからこそ、残念に思う

隆々とした身体を闘争に湧き立たせながら、拳に向かうほど太く、大きくなる拳に力を込めた

目の前のヒーローを粉砕する為に


「ゴーレム隊、民間人を解放し下がりなさい、残念ですフィリア・リース、貴方のようなヒーローをここで叩き潰さねばならないのを」


「解放してくれるんだ」


「もちろん、我らが求めるのは全ての民衆の平穏であり、その平穏を害してまで他者の為の安息を強制させる気はありませんので」


意外そうなフィリアの声にダライチは至極当然のように言ってのけた


「理想論」


「えぇ、理想論です。ですが、実現出来なくとも理想に近付けることは出来ます。それを時間を掛けて繰り返して行けば良いのです」


まるで夢物語の様な話だが、それ故にその想いは崇高で純粋なのだ

だが、彼らは現実を見ていない訳ではない、現実を知ってるが故にすぐには届かない理想に、時間を掛けて近づいて行けば良い


しかし、それが我慢ならない者もいる

たかが理想、何故すぐに出来ない事をやろうとするのかと、すぐにやらないとダメなのだと、行き場のない焦りが憤りが爆発する


「そんな理想・・・すぐに出来ないなら意味ないじゃん」


そうボソリと怨嗟の籠った呟き聞こえた


「何度も言っているでしょう、急な変化は過激な反発を生みます。それを力で押さえ付けていては取り返しのつかない事になりかねません。ですから・・・」


「そんなの知らないよ、認めない奴らが悪いんだ!僕たちのやってる事が正しいのならやって何が悪い!お前も、ラーズも!やる気がないだけだろ」


下級怪人は触手を振り回しながら、まるで駄々を捏ねるように地団駄を踏み喚き散らす

発される言葉は現実を見ない他責の罵倒

その様子に興が削がれたとばかりにダライチはやれやれと首を横に振りながら深くため息を吐く


「このままでは埒が開かないな」


「何気取ってんだよ!お前なんか後ろで偉そうにふんぞり帰ってるくせに!なんで僕の邪魔をしようとするんだよ!ビヨロコ様とクーラ様とは全然違うじゃんか!」


彼の様子に辛抱ならなかったのだろう、遂には広場中に響く声で癇癪を起こし始める



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