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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 門鍵モンキー
第一章 異世界に行ったらヒーローになったSO
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唸れフレアナックル 5改

当時中央広場では昼の最繁時に向けて多くの屋台が準備を進めていた

辺りには肉や魚、野菜の焼き煮込まれる匂いが漂い出している


サンドイッチ屋の店主もその1人だった

彼は昼に買いに来るであろう人々に思いを馳せながら、サンドイッチを一つ、また一つと作り保存用の魔道具へとしまっていく


そんな彼がふと顔を上げると広場の端から外套を被った一団が歩いて来ている事に気がつく

1人は2mはあろうかという大柄で先頭を歩いていた

他10人は身長が同じで、先頭を歩く人物の後を全く同じ足跡で追っている

ただ黙々と歩いてくる一段に不気味さを覚えながらも店主は調理を続ける事にした


だが、ほんの一瞬、その一瞬目を離しただけで事態は一変したのだ

先頭を歩いていたら人物が広場の中央に辿り着く手前で外套越しに大きくなっていく

モリモリと大きくなる身体に外套が伸びていき、ついには広がりに限度が来たのだろう、ぶちぶちと音を立てて引き千切られていき、糸の様に細くなった外套越しに隙間から灰色の背中が見えてくる


それを見た者は気付かれないように、声を立てずに去っていくがすでに手遅れだった

広場の中心へとたどり着いた一団は外套を脱ぎ去る


「お、おい、アレなんだよ!?」


その声に異変があったと思い店主が顔を上げると、そこで事態に気がつく


目を向けた広場の中心には、赤い瞳孔を持つ1つ目を胴体から光らせ、丸太の様な太い足、腕の代わりに1本の触手を左右に生やした灰色の異形の化け物、怪人がいた

その後ろには昨日広場を襲った無貌の人型が並び控えている


怪人は前へと歩み出ると声高々に宣言した


「ここは僕達が占領した!命が惜しければ僕の指示に従え!もし逆らえばその命を持って償ってもらう」


低い声で怪人がそう告げる

その光景に恐怖したのだろう、1人の男が走り逃げ出した

怪人はそれを見つけるや否や配下の無貌へと命令を下す

それはあまりにも慈悲のない言葉だった


「全員捕まえろ、生死は問わない」


そのほんの一言だった。その言葉を聞いた者から堰を切ったように走り出す

風魔法により空を飛び、獣人種特有の足の速さで駆け、ゴブリン種は潜み逃げ出した

力に自信のあるオーク種や居合わせた冒険者は人々の盾となる為に武器を持ち殿を務めようと、迫る無謀へと果敢に立ち向かう


だが、全てが無駄だった

風魔法で空へ飛んだ者は、空高く飛んでき無貌により足を掴まれ地面へと叩きつけられる

獣人種特有の足の速さを持ってしても無貌に追いつかれ組み伏せられた

果敢に無貌へと挑んだオークも鉄をも切り裂ける魔剣を携えた冒険者達も剣と共に折られ沈む


そんな者達の腹を満たす為に、くつろぎの時間に、大切な人と共に過ごす為の時間は虚しくも破り去られ、今は恐怖と悲しみの支配する場へと変貌した

逃げれた者は少なく、逃げきれなかった被害者達は物言わぬ屍となった冒険者達や民衆の亡骸と共に一ヶ所に集められる


血に濡れ、大切な人の屍を抱き恐怖に震え助けを求めた



だからこそ、ヒーローが来るのだ




目の前に広がる惨状を見てトウヤは吐き気を覚えた

広場中央には一つ目の怪人が声高らかに何かを誇らしげに叫んでいる

内容は聞こえ辛いが、苦しむ民の声も聞かずや貧困に喘ぐ者をという内容が聞こえた


その後ろには民衆が集められ座らされており、震え怯えているのが遠目からでもわかった

そして、その中に見知った顔を見つける

それは昨日世話になったサンドイッチ屋の店主だった

それを見つけた瞬間トウヤは今すぐ助け出そうとするが、フィリアに静止させられる


トウヤの前に手を出したフィリアはトウヤの顔を見る事なく、いつも通りの無表情で広場へと目を向けたまま言う


「今行ったらダメ」


「なら、どうしろって言うんですか!このままだとあのおっちゃんも!」


「だから、気付かれない様に倒す、今はそれが大事」


そう言った瞬間、フィリアの身体が消えた

目の前で起こったそれをトウヤは驚愕するが、よく見れば目の前の景色が人型に歪んでいるのがわかった

トウヤがそれを見ていると目の前から声が聞こえてくる


「人質がいるなら、無闇に手を出したら危ない、私が先に行く」


そう言うと目の前の歪みは前へと進み高く飛び上がった



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