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邪神降臨 2

暁を撃て

アニメ版マブラヴの主題歌を聴きながらはよ続き書きたいと思いながらも、相変わらずの筆の遅さから進まないジレンマ


だからこそ、書き上がった時の興奮は計り知れんのですがねぇ


登場人物

浅間灯夜:本作の主人公

フィリア・リース:銀髪無表情系の少女、トウヤの先輩ヒーロー

セド・ヴァラド:大貴族ヴァラド家の次期後継者でトウヤの先輩ヒーロー、義妹であるリーゼがやってきてからトローネの目が冷たい気がして少し胃が痛み出している

リーゼ・ヴァラド:セドの義妹で婚約者(自称)

トローネ:ひょんなことからセドの元で暮らしている少女、現在彼に師事され修行している

篝野:ベガドの街に向かうバスの中でトウヤと出会った男、トウヤ達と同じ変身技術を用いて戦う

朝食をとった3人は折角天華が来たのに家にいるのは勿体無いという事で外へと繰り出していた


目的の無い散歩の様なものではあったが、彼らにとってそれは出会った日を思い起こさせ感慨深い感情を抱かせ、自然とあの日と同じ道を辿り歩き回る


「あ、ここ私がトウヤさんにぶつかった場所じゃないですか?」


「あぁ・・・ここだっけ?」


「ここですよ、ほらあそこの屋台にぶつかって」


天華が指を刺した方を見てみると、確かに見覚えのある屋台が立っていた


「確かに、そう」


「そう言われてみれば・・・あの時はびっくりしたなぁ、まさかぶつかったのが勇者様だなんて思っても無かったし」


「あはは、あの時は失礼しました」


当時を思い出し、天華は照れ臭そうに微笑む


「でも、おかげで、天華と出会えた」


「そうですね、そのおかげで天華に会えたんだから今となっては良い想い出だよ」


「ありがとうございます」


そんな彼らの言葉に天華は照れ臭そうにする


あの日彼らと出会えた事は天華にとって幸運だった

召喚された日、同じ異世界人がいない世界で1人疎外感と孤独感に苛まれていた彼女を救い覚悟を抱かせたのは間違いなく、目の前にいるトウヤ達のおかげだ


「本当にありがとうございます・・・」


口からこぼれ落ちた感謝の気持ち

その言葉にトウヤも照れ臭そうに笑うのだった


「あら、皆様おはようございます」


「あ、おはようございます」


不意に声をかけられ顔を向けてみればそこには仲睦まじげにリーゼはピッタリとセドにくっつき、トローネと篝野はそんな2人の後ろを付いて歩いて来る姿が見える


「仲良いですね、セドさん」


「まぁ家族だから」


「まぁ、気が早いですわお義兄様」


「そういう意味では無い」


顔を赤らめてそう言うリーゼにセドは即刻訂正を入れる


「それにしても、おっちゃんがこの中に混ざってるなんて珍しいなぁ」


「おっちゃん言うな、散歩してたら丁度街を巡ってるコイツらに巻き込まれたんだよ」


「自分から来ておいて巻き込まれたとはなんだ」


明朗快活と言った様子で平然と嘘を吐く目の前の男に、思わずセドはため息を吐くが当の本人は気にした様子を見せず、セドは度重なる刺激により胃が痛み出していた


「ところで・・・なぁ天華ちゃん」


「え、はい!」


まさか篝野が自分に声が掛けらとは思わず肩を振るわせ驚きながら返事をする


「この街・・・楽しんでるか?」


「・・・はい、楽しいんでます!」


「そっか・・・なら、良かったよ・・・」


元気よく答えた彼女の笑みに篝野は目を細め珍しく優しげな笑みを浮かべながらそう言うと小さく笑い、意地悪そうな笑みを浮かべトウヤを見る


「坊主、ちゃんと楽しませる事出来てんのか? 勇者様に気を遣わせてるんじゃ無いだろうな?」


「なっ、してるよちゃんと・・・出来てますよね・・・?」


篝野の言葉に不安に思ったのか天華とフィリアへと交互に目を向ける


「大丈夫、出来てるよトウヤ」


「はい! トウヤさん達のおかげで楽しいです!」


片や無表情、片や満面の笑みでそう答える姿にトウヤはホッと胸を撫で下ろす


そんな彼らを篝野は何処か寂しげな眼差しで見つめた


「どうしたんだ・・・さっきから変だぞ?」


流石に篝野の様子のおかしさにがまんできず声をかけると、彼は恥ずかしげに頬を掻く


「あぁいやな・・・俺にも昔いたんだよ、お前・・・らみたいな仲間がな、それで懐かしくなってよ・・・」


「あぁそれは・・・すまない、野暮なことを聞いたな」


「あぁ良いんだよ、昔の事だし・・・それにお前らは知らない事だから気にすんなよ!」


「それは良かったが、背中を叩くのをやめろ」


バシバシと力任せに叩かれた背中の痛みに僅かに眉を顰めながらそういうが、「細かい事は気にするな」と取り合おうしない


そんな姿にセドは心配をして損したと、またため息を吐くのだった










「皆様楽しそうで何より、そろそろショーが始まるので準備に取り掛かってもよろしいかな?」


聞き覚えのある声に猛烈な嫌な予感がトウヤとフィリアの背筋を凍らせる


声の方向へと振り向いて見れば、赤黒く黄金の装飾が為された司祭冠に司祭服を着たアドラがトウヤ達を見て嫌らしく嗤っていた


「お前・・・アドラ! なんでここに!?」


トランセンドまではかなりの距離があるはず、にも関わらず何故コイツがここにいるのか

そう驚きながらもフィリアと共に天華の前へと出る


「一体なんの様だ」


「おぉそう獣のような野蛮な瞳で見てこないで下さいますかな? 大変反吐が出そうです」


「貴様・・・!」


拳に風を纏わせ殴り掛かろうとするセドだったが、アドラは静止を促す様に手を差し出す


「私が要があるのはそこにいるアサマトウヤ、フレアレッドですので、どうぞお構い無く・・・それとも、今ここで我らを相手取りますかな?」


その言葉と共に周辺から怪人達が姿を現す

いずれも人型、少なくとも上級以上の怪人達の姿に冷や汗を流す


「あなた達は無事でも、これだけの怪人が暴れたらどれだけの被害が出るでしょうねぇ?」


今この場にいる怪人だけでも、勇者である天華の力を借りたとしても少なく無い被害が出るのは間違いないだろう


「・・・わかった。着いていく」


「トウヤさん・・・」


だからこそ、アドラの要求にトウヤは頷きアドラは益々嫌らしい笑みを深めていき手を叩き合わせた


「よろしい、ではどうぞコチラへ」


心配げな眼差しを向ける皆に見守られながら、手を差し示したアドラの導きに従いトウヤは歩を進めていき街の角へと消えていく


その姿を静止して見つめ続ける一同だったが、怪人達が姿を消したのを見計らうとすぐさま行動を開始した


「俺達も動くぞ、リーゼ、トローネ、フィレスにこのことを伝えに行くぞ、フィリアは天華の護衛と避難を・・・」


「天華ちゃんは俺に任せろ、フィリアはこの街の警護を頼む」


「・・・わかった」


一同は互いのやるべき事を理解すると一目散に駆け出していく

フィリアもまた彼らを見送りながら、気になることがあり暫し考え込むがすぐさま街の中を見回りに行こうとした


「そこのお嬢さん」


そんな時だ、不意に掛けられ声に振り向くと老婆の姿があった


枯れ木のような震える手で三度手招きする老婆の誘いに乗り近付けばしゃがれた声で話しかけて来る


「なに?」


「冒険者ギルドへの道を教えて欲しいんだがね、どっちかね?」


「なら、あっちの方、来て?」


そう言い案内をしようとするが、老婆はピクリとも動かない


どうしたのかと疑問に思っていると老婆がニカリと嗤い出す


醜悪な笑み

その顔に思わずフィリアは老婆の側から飛び引いた


「あなた、誰?」


「おやまぁ・・・ようやく気が付いたの?」


老婆の発した言葉を皮切りに、その姿が液体が波打つようにしながら歪み始める


「あなた・・・」


その様子にフィリアは顔を歪め幾度と無く相対して来た仇敵へと敵意を向けた


「クヨキシ」


「またあったわね、フィリア」


『空間魔法、アクティベート』


「変身」


『音声認識完了、エクスチェンジ』 


「あら、せっかちね」


「何の用?」


悠々とした態度で話しかけて来るクヨシキではあるが、つい先程トウヤが連れて行かれたばかりのフィリアは気が立っていた


トンファーダガーを構えながら戦闘体制へと入る


「別にあなたと戦いに来たわけじゃ無いわ、忠告しに来たのよ」


「忠告・・・?」


「そう、スポンサーから直々にあなたを連れ出せと言われたけど・・・、あんまり介入したく無いから端的に伝えるわね、この街から逃げなさい」


逃げろ、クヨキシの口からその言葉が出た事にフィリアは内心驚く


「それ、どういう意味?」


「そのまんまの意味よ、組織にとって今は好機なの、勇者とこの国の王女様が揃ってるというのは」


それは確かにそうだ

魔国が背後にいる組織が今の好機を逃す筈が無い


納得の感情と共にならばこそ、大規模攻撃が予想されると考えすぐさま通信を繋げ危機を伝えなければと考えた


防衛艦隊はすぐに来れる位置にいる。まだ対応出来る


「アサマトウヤ、アドラに連れて行かれたでしょ?」


その言葉と共に何かを察してしまい顔が青ざめて行く


トウヤがアドラに連れて行かれた状況

つい先日トランセンドで遭遇した状況と酷似した状況に、胸の内に秘めていた嫌な予感がクヨキシの言葉で確信へと変わってしまう


『どうしたフィリア?』


あの時はトランセンドの王がいたから何とかなった

それ以前もアークトゥルスがいた


『フィリア・・・何があった。フィリア!!』


「・・・ゥャ」


通信越しに聞こえるセドの声が遠くから聞こえる気がするが、今の彼女にそれを気にする余裕はない


「トウヤ・・・!!」


悲痛な叫びが街に木霊する


それもそうだろう

今この大陸に超越者はいないのだから


ひとつ仮説を立てるとしよう


この世界は神が作り出した・・・なんだ、その当たり前だろと言いたそうな顔は、わかっているくせに・・・まぁ良い続けよう


神はまずこの広い宇宙に星を、大地を作った。そして、管理する為の神を配置して生き物達を作り最後に人を作り出した


人で無くても良いが、人型である方が馴染みが深いから・・・いや、嫌悪感が無いからかな?

そして、神すら超越する存在を作り出そうとした


何故かって? それは私にもわからない

だが、だからこそ何度も繰り返したのだろう?

私の故郷が・・・原初の魔王によって消されたように


なぁ、ゼトア?

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