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第33話 邪神降臨

あと2話くらいで第3章は終わり次の章へと移ります

思えばここまで長かったような短かったような・・・


あとご報告ですがまたミスが発覚しました・・・

話数がめちゃくちゃ狂ってました

本話で35話の予定でしたが実際は2話ずれて33話となります

大変申し訳ございませんでした


ただ当初予定していた全50話予定には狂いはございませんので、今後も引き続きご愛読いただければ幸いです

浅間灯夜の朝は早い

まず日が昇り鳥の囀りと共に彼は目を覚ます


ソファで寝たせいか少しばかり凝っている肩を何度か回しほぐし、身体を刺す寒さに身を縮こませながら急いで暖房のスイッチを入れて台所へと向かう


台所を漁りながら冷蔵庫を開けて夕飯の残りであるスープの入った鍋を取り出し温め、パンを焼き朝食の準備を整える


そうしていると誰かが廊下を歩く音が聞こえてきた

やがてその音はリビングに続く扉の前で止まり、ゆっくりと扉が開かれた


「あっ、おはようございます」


「おう、おはよう天華、ゆっくり眠れたか?」


「はい!」


そこにいたのは鎧の勇者としてこの世界に召喚された雨宮天華だった


彼女の元気の良い返事にトウヤは「そっか、なら良かった」と小さく呟くと温めたスープを皿によそいテーブルへと並べていく


「朝食の準備しといたから冷めないうちに食ってくれ」


「わ、ありがとうございます!」


そう言いながら席に着く彼女の前へと皿に乗ったパンと蜂蜜の入った小瓶を置く


受け取った天華は蓋を開けて蜂蜜をパンに塗ると、薄く黄金色の膜を纏ったパンを口へと運びかぶりつきザクッと軽快な音を鳴らす


「美味しい・・・」


幸せそうに笑みを溢しながら呟く彼女を見て、トウヤは薄く笑みを浮かべながら向かいに座りカップに入った黒い液体を啜る


何故勇者たる彼女が寝巻きを着てトウヤの家にいるのか、それを語るにはトウヤ達がトランセンドから帰って来た前日にまで話を遡る必要があった







「帰ってきたなぁベガド!」


「テンション高いねトウヤ君」


トランセンドで知り合った人々に見送られながら雫の作ったゲートを通り抜けベガドの街郊外へと戻ってきたトウヤ


彼は出るなり両手を空へと伸ばして脱力しながらそう声を上げた


トランセンドでの結婚式の後すぐさま帰ってきた彼らは疲労困憊と言った様子ではあるのだが、どうやらトウヤにとっては帰ってきたことへの感動が優っていたらしい

そんなトウヤを茜は呆れた目で見た


「だって、なんか帰ってきたと思うとテンション上がりません?」


「いやまぁそうだけど・・・」


「色々あったし聞かされたからね・・・」


前日の教会での攻防、帰る前に聞かされたフィリアの出生についてと、トランセンドでの旅路は当初思ってたよりも過激な旅路となった


「でも、楽しかった」


「そうですね、またトランセンド行きたいですね」


旅に苦労はつきもの

色々とあったがそれでもこの1週間は彼らにとって楽しい旅路となった


だが、それでも彼らの頭を悩ませる問題は残っている


「ただ・・・フィリアちゃんの件はどうしましょう、多分真偽不明の情報だから対応して貰おうにも時間が掛かると思うわ」


「それにあのアドラとか言う8大罪、あんなものを召喚できる奴があれで終わるわけ無いでしょうから、また何かすると思いますし・・・」


問題は山積み

以前よりも目的がわからなくなってきた組織の動向に、フィリアをどう守るか


すぐには答えが出ない問題に、つい頭を悩ませてしまう


「何かする前に、止める」


「・・・そうですね、浅間さんもいますし私たちギルドも出来るだけサポートや情報収集は行いますから、もしも止める事が出来なくとも今は街の被害が少しでも減る様に対策しましょう」


常に後手に回るヒーローだからこそ、先手を打てるようにと最善を尽くし、もし後手に回っても大丈夫な様にと準備を重ねるのだ


ゼトアの言葉にそう深く決意を固めた一行だったが、そんな彼らに近付く人影があった


「戻ったか、みんな」


「あ、セドさん、ただいまもど・・・り・・・」


久方ぶりに聞いた馴染みのある先輩、セドの声にトウヤは顔を明るくさせて顔を向けたのだが、すぐさま何があったのかと困惑して閉口してしまう


「あのね、セド・・・その人たちどなた? それとこの状況は何?」


それは皆が考えていた事だった

代表して雫がセドの後ろで睨み合う同じ美しい金色の髪を持つ2人の女性と、そんな2人を恐れセドにベッタリとくっつき震えているトローネを指差す


「えっと、1人はフィレス王女で・・・もう1人は?」


「・・・俺の義妹だ」


その言葉を聞いた皆が何かを察したのか一様に口を閉ざした


「・・・また?」


「またとはなんだ、またとは」


「ですが・・・また、ですよね?」


「だからなんなのだ・・・まるで俺が女誑しの様な言い方をするな」


フィリアとマインの呆れた目に抵抗の意思を示したセドではあったが、返ってきた言葉に皆心の中でそうだろと頷く


「あの・・・師匠、そろそろ・・・」


「む、そうだな・・・フィレス、リーゼその辺にしておけ、本題に移るぞ」


セドが一声により、2人はしぶしぶと言った様子で睨み合いを辞めた


「残念ですわ、決着が付かなくて」


「あら、決着とはなんでしょうか? すでに勝負ならついてるではないですか、フィレス王女」


「やめろと言ってるだろう、頼み事があるのだろう?」


またしても言い合いを始めようとする2人の姿にセドは眉間を押さえながら呆れた声を出す


だが、トウヤにはそんなセドの姿が気にならない程の嫌な予感を覚えた


「頼みごと・・・?」


王族からの頼み事など面倒ごとに違いない

そう思いながら聞き返すとフィレスはとても良い笑顔でトウヤへと向き直り「そうです」と答えた


一体何なのだろうと戦々恐々と言った表情を浮かべるトウヤではあったが、街から聞こえてきた音楽に一瞬眉を顰め、フィレスもまたその音に反応する


「あら、始まったみたいですね、折角ですから観に行きましょう」


始まったとは何がなのか

皆が首を傾げる中、フィレスは1人先に歩き出し一行は憂鬱そうな表情を浮かべるセドの後ろに続き歩き出す


街の門に近付いて程大きくなっていく音楽、それと共に民衆の歓声も聞こえ出してくる


これは一体何なのか、トランセンドから帰ってきた一行がそう思い始めた頃、歓声の正体が人混みの向こうで露わになった


「あれって・・・」


街を一周する車道、そこを数台の車がゆっくりと走っている

その車両に見覚えのある人物の姿が見えた


雨宮天華

今代の鎧の勇者とその3人の仲間たちが民衆に向けて笑顔を浮かべ手を振っていたのだ


「なんでここに・・・」


「雨宮さんの希望です。もう一度この街に来たいと仰られまして、他の勇者様と私達は雨宮さんの付き添いです」


そう言った後にフィレスはトウヤへと向き直ると真剣な眼差しを向ける


「それでアサマトウヤさんに折行ってご相談がございます」


「俺ですか?」


「はい、今日から明日まで雨宮天華の護衛をお願い出来ますか?」


「え?」


「あ、泊まるのは貴方の家でお願いしますね」


「え、え?」


突然の事に目を丸くして驚くトウヤではあったが、対するフィレスは何処かひと仕事を終えた様な、友の旅路を後押ししたかの様な清々しい笑顔を浮かべている


「ええぇぇ!?」


こうして、トウヤの驚愕の声と共に天華の宿泊が決まったのだ








話は冒頭、トウヤたちが帰ってきてから翌日の朝に戻る


昨日のフィレスからの依頼には驚いたトウヤではあったが、よくよく考えてみれば知らぬ仲でも無ければ妹の様な友人が久方ぶりに泊まりに来ただけであると考えを改め3人仲良くトウヤの家で一晩を過ごした


「昨日は楽しかったですね、特にあの人狼ゲームみたいなの」


「アレ良いよな、俺もお気に入りなんだよ、でも惜しかったなぁ・・・あと少しで勝ってたのに」


朝食を取りながら昨晩3人でやったカードゲームの話に花を咲かせる


天華がいなかった数ヶ月間の出来事や、逆に天華が最前線で戦う中で見てきた山や美しい花、大陸に住む動物や魔獣の話

昨晩だけでも充実した夜を3人で過ごせた


そう3人である


残りの1人である彼女はいつ来るのかと話が途切れた合間にぼんやりと考えていると、再び廊下から足音が聞こえ扉が開く音がした


そこでトウヤと天華の2人は顔を扉へと向けると彼女を出迎える


「おはようございます!」


「おはようございます。フィリアさん」


「・・・おはよう」


扉を開いて入ってきたフィリアはいつも以上にぼんやりとした眠たげな眼を擦りながら、寝癖で爆発した銀髪を恥ずかしがる様子もなくポテポテと歩き椅子に座る


最後の1人

それはフィリアだった


あの日フィレスから天華が家に泊まると告げられた後、式典終わりの天華と合流し足早に家に向かおうとするトウヤの手を引くと何処か不安げな様子を浮かべながら「私も泊めて」と告げて来たのだ


彼女としても何故そう言ったのかはハッキリとはわからない

ただ何だか嫌だったのだ、トウヤが友人とは言え異性と一夜を同じ家で過ごすことが


「ダメ?」


そう言って小首を傾げながら尋ねる彼女を前にトウヤはおずおずと首を縦に振るった


こうして3人は仲良くトウヤの家に泊まる事となったのだ


「朝ごはんです。よく噛んで食べて下さいね」


「ありがとう・・・」


目の前に並べられた朝食を前にうつらうつらと頭を僅かに揺らしながら、フィリアは礼を言うとパンへと手を伸ばしモソモソと食べ始めた


ーーなんかいつもと雰囲気違うなぁ


まるで小動物を彷彿とさせる姿にトウヤも天華も表情には出さないが驚いていた


そして、同時に天華はトウヤが甲斐がしくフィリアの世話を焼く姿に仄かな嫉妬心を燻らせてしまう


だが、不思議な事に感謝の心も抱いていた


恐らくきっと、確実にフィレス王女は自分の応援してくれているからこそ、この街に居る間はトウヤとこうどうを行動を共にさせてくれるのだろうが、幾らなんでも1人で好いた相手の家に泊まるのは奥手な彼女には難度が高い


しかし、もうそうは言っていられない


ーー今日が最後の1日・・・


今日の夕方、天華達はこの街を立つ


密かな想いを胸に秘めた少女は、仲睦まじげな2人の姿を眺めながら1人静かに覚悟を決めるのだ

タイトルと比べて平穏な日常回

このギャップなぁにぃ?

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