義妹襲来 6 終
遅くなりましたが、第34話その6の投稿です!!
これにて第34話終了となります
セドの手を取り立ち上がるリーゼの姿に、トローネは戦いが終わったことを悟ると安堵からため息を吐く
ーー良かった・・・
そう思いながら自身の傷だらけの腕へと目を向けた
かすり傷から少し深めの切創まで様々で一様に赤い線を残す傷達
痛みはある。だが、何故かその傷を見ても尚、痛みよりも心の奥底から湧き上がる高揚感を大きく感じる
それは達成感
自身がリーゼを倒した訳ではないが、それでも敬愛する師が彼女を止める手伝いを出来た事に対する感情であった
「今度は・・・役に立てたんだ・・・」
「あの・・・トローネさん・・・?」
「あ、はい!!」
そんな達成感に浸っていると不意にリーゼが話しかけて来て肩を動かし驚く
何用かと思い慌てて顔を向けると申し訳無さそうに暗くした彼女の表情が目に映った
何処か言い難そうにしながら視線を左右に動かして恐る恐る口を開いたのだ
「その・・・申し訳ございません、モコ達の死を利用してあの様な酷いことを言ってしまい、あなたを傷付けて本当に申し訳ございませんでした」
「え・・・あ、いえ、私は大丈夫です!」
目の前で謝辞を述べ頭を下げるリーゼの姿にトローネは呆然とするが、慌てて手を振り乱し平気だと身体全体を使って表現する
「私が弱かったからモコさん達が死んで、師匠の足を引っ張って・・・でも、リーゼさんのおかげで私もっと強くなろうと思いました。もっと強くなって今度は師匠を守ります!!」
「トローネ・・・」
男子三日会わざれば刮目して見よ、という言葉があるがそれは彼女にも当て嵌まったらしい
今朝とは違う姿に驚きを露わにしながらも、何処か吹っ切れた様子の姿に安堵を覚えた
「そう言うのであれば、帰ってから訓練だな」
「えっ・・・師匠、それは流石に・・・」
先程までの姿はどこへ行ったのか、訓練という言葉を聞いた瞬間に彼女の言葉は尻窄み表情が萎びていく
そんな彼女の様子がおかしかったのか、セドはつい吹き出し笑ってしまい、トローネは恥ずかしく思い顔をいじらしく下に向ける
ーーあぁ、お義兄様は本当にこの街で居場所を見つけたのですね
楽しく話し合う2人の姿を見てリーゼは寂しさを内心宿しながら、ふと、そう思ってしまう
「リーゼ、この後はどうするんだ? 家に帰るのか?」
「いいえ、お義兄様、私もこの街に残ろうかと思います」
「そうなのか? 確か学園は暫く閉鎖されるはずではなかったか?」
「えぇ、なのでお義兄様の家にお邪魔しようかと思っています」
「・・・は?」
寝耳に水
今し方言われた言葉に思わず呆けた顔を見せるセドとトローネではあったが、当の発言者本人は2人の顔を見て非常に申し訳なさそうに顔を逸らす
「いえ、その・・・先ほどまで戦っておいて都合の良い話をしている自覚はありますよ、ただ・・・私としても婚約者が歳が離れているとは言え女性と一緒に暮らしているというのはどうも・・・」
「え、え!? 婚約者!?」
義妹ではなかったのか!?
そう続けて叫びそうなりながらもすぐさまセドへと顔を向けると、バツが悪そうに顔を顰める
「婚約者と言っても俺がまだ家にいる時だ、今はもう無いも当然だろう」
「お義兄様・・・何度も言いますが、お義父様はお義兄様の帰りを待っているのですよ? まだ家に席は残しています」
「そう言ってくれるのは有り難いが・・・俺には貴族としての実績は何も無いのだぞ?」
交流の場である夜会への参加もしていなければ、魔導学園を卒業した訳でもない
大貴族として最低限の実績も持ち合わせていないとセドは苦言を呈すが、リーゼは彼の言葉に思わずクスクスと笑ってしまう
「あら、それでしたら心配いりませんね」
「どういう事だ?」
「だって、お義兄様はベガドの街の運用補佐の実績にヒーローとして活動して魔人や8大罪との戦闘実績があり、第一王女と親身な関係で1級冒険者のオータム、戦術級冒険者のフレアレッド、トランセンドの王子エオーネ様との交流も深い、誰が次期当主に相応しく無いと考えるでしょうか」
確かに改めて思い返してみれば何だこの経歴はと、自分の経歴に内心呆れる
「・・・確かに師匠、アサマさんの事言えないですね」
改めて指摘された普通では無い経歴を前に、トローネもまた同様の事を思ったのであろう
そんな彼女の漏らした言葉にセドは何も言い返せず押し黙ってしまう
「という事で・・・よろしくお願いしますね、お義兄様」
気のせいでなければ、美しい白磁の肌を僅かに赤く染め上げるリーゼにたじろぐセド
その光景を見てトローネはあの時扉を開けた事を後悔した
「あらあら、それはどういう事でしょうか? お兄様」
一難去ってまた一難
聞き覚えが有りつつもここにいる筈が無い人物の声に、面倒事の雰囲気を感じ取ったのだろう
セドは敢えて声の聞こえた方向を見ないようにしたが、他2人は違うらしい
顔を向けた先にいた見覚えの無いMRAを両隣に2機伴わせた美しい女性の姿に、誰だろうと疑問符を浮かべるが、対してリーゼは挑発的な笑みを浮かべる
「あら、これはこれは・・・王女殿下、本日も美しくあられますね」
フィレス・F・フェイル
この国王女であり、セドの幼馴染である彼女は不気味な程の満面の笑みを持ってリーゼの言葉に反応する
「ありがとうリーゼ、ところで先ほどのお話は本当なのかしら?」
「はて、先ほどのお話とはどのようなお話でしょうか?」
「あら、そう恥ずかしがらないでくださいまし、お兄様・・・セド・ヴァラドの婚約者という話に決まっているでしょう?」
「し、師匠・・・これ一体どういう状況なんですか・・・?」
互いににこやかに会話を交わしながらも目が笑っておらず、その間にはバチバチと火花が散っているのが幻視できた
側から見ていたトローネは何か恐ろしい感覚を覚え肩をすくめてぷるぷると震えながらセドの手を握る
しかし、当の握られた本人は状況を理解しながらも何故2人が険悪なムードを出しているのかと呆れにも似た感情を宿していた
「ご存知なかったのですか? 確か貴方が我が家に度々遊びに来ていた時からずっとですよ」
「養子縁組をした以上は家族として扱われますし、婚約というのはローヴェ教会で貞節の契りを交わさなければ認められません。あなたはいつお兄様と契りを交わしのでしょうか?」
「教会に行かなくとも、親が公認していれば効力は認められますよ? 私は幼き頃にお父様が仲介人となり婚約の契りを交わしています」
それはあくまで子供の頃のごっこ遊びではあるがな、と思いながらも確かに自分も悪く無いと子供心ながらに思いながら約束を交わしたので何も言えない
「それはあくまで子供の頃の遊びであり、仮の契りなので拘束力はないですよ、それにそれなら私も・・・」
「あの・・・姫様・・・そろそろお時間の事もありますので・・・」
流石に見かねたのか、側に控えていたMRAの1機が恐る恐ると言った様子で口を挟んできた
確かにこのまま言い合いを続けても埒が開かない
「・・・そうでしたね」
小さくため息を吐くと先ほどまでの微笑みを消して何処か疲れたような表情を浮かべる
そんな表情から話を逸らすには今が好機と考えたセドはすかさず入り込む
「そ、そう言えば今日は何故この街に来たんだ? 祝祭まではまだ少し時間があるが・・・」
年に一度、初代勇者の降臨を祝した祭りがこの大陸で行われる
だが、前夜祭含め祭りが行われるのは2週間先であり、中途半端な今のタイミングで王女であるフィレスがこの街に来る理由はないはずと不思議がるが、その言葉を聞き今度は困った様に眉を顰めた
「私も本来なら来る予定は無かったのですが、勇者様がどうしてもと言うので・・・」
「勇者だと・・・?」
彼女の口から発された言葉に、セドは思い当たる節がありながら聞き返すと、その反応を待っていたとばかりにフィレスは答えた
「はい、鎧の勇者雨宮天華様です」
その言葉と共に街に巨大な影が差し掛かる
思わず顔を上げてみれば戦艦、巡洋艦、駆逐艦、揚陸艦と複数の空中艦艇達が空を覆っていた
「これから8日程、長期間になりますがお兄様含めたヒーロー諸氏には勇者様の護衛、及び街の治安維持活動の強化をお願い致します」
「なるほどな・・・」
空に浮かぶ黒鉄の艦隊、フェイル王国本土防衛艦隊の影に隠れながら満面の笑みを浮かべるリーゼの前で、セドは面倒事が増えたと眉を顰めるのであった
「なぁ、俺達こんなので良いのか?」
「さぁな、まぁ前線に比べれば王女様と勇者様の護衛だけだから楽なもんだろ」
何やら訳ありの4人の姿を眺めながら、第3特殊遊撃部隊所属の新型MRAを纏う2人はそう言いながら肩をすくめるのであった
神話から続く物語がある
伝説から紡ぐ想いがある
それは得てして後世に繋げたい意志であり、可能性である
「故に我らは・・・我らが神の名において紡ぐのだ・・・」
「神など糞食らえと」
「我らが神こそ至高なりと」
違う場所にいながら、異なる目的を持つ2人の声が重なる
そうして世界はゆっくりと終わりを迎えるのだ
収穫の時、それは神の目指した救済の時
未だ魂の蒐集は止まらない
次回、邪神降臨




