義妹襲来 4
お待たせしました。遅くなり申し訳ございません。
漸く書き切れた!!
第34話その4です
今回久々にめちゃ長に書き過ぎたので2話投稿です!
飛んで西国みたいに間違えて投稿したら嫌なので30分後に上がる様に設定してます!!
あらすじ
トウヤ達が南国、トランセンドへと向かった初日
1人家に残ったトローネだったが、そんな彼女のの元へセドの義妹リーゼが訪問して来た
楽しく語らいに興じる2人ではあったが、突如としてリーゼがトローネへと襲い掛かってきた
困惑の中で無意識に周囲の被害を考えその場を逃げ出した彼女は、公園へと向かうがすぐに追い付かれてしまい戦闘となる
実力差のある2人ではあったが、一時は奇策によりリーゼへと追い縋るもすぐに追い詰められてしまった
負けを悟り覚悟を決め迫る拳を待っていたトローネではあったが、戻ってきたセドが2人の間に割って入り拳を受け止めた・・・
リーゼ・ヴァラドは養女である
元々は子爵位の貴族の生まれであったが、先天性魔力過剰障害であった為に幼子の時に親から捨てられた
それはこの大陸における昔から伝わる風習の名残り
先天性魔力過剰障害というのはその魔力に惹かれた魔獣を誘引して街や村を壊滅させる原因になるのだ
しかし、それも過去の話
今は廃れた筈の風習ではあるが、彼女の親はその風習を今も守り続けているのだ
その事を知り憂いたヴァラド家当主が彼女を引き取りヴァラド家に養子として迎えられた
大貴族であるヴァラド家での生活は彼女にとって充実したものであった
優しくも厳しい義母の元と真面目で頭の硬い義父
そして、何よりも頼りになる義兄の存在
故に彼女は思ったのだ
ーーいつまでも家族一緒に暮らしていけますように
巻き起こる暴風は義兄であるセドの心情を表すかの様に荒々しく吹き荒れている
その理由など火を見るよりも明らかだ
だが、そんな彼とは対照的にリーゼは嬉しそうに破顔してみせた
「お久しぶりです。お義兄様・・・元気でいらっしゃいましたか?」
高揚した声を抑えきれず高い声で発された当たり障りのない挨拶
しかし、そこでふと自身の髪が乱れていないか、衣服は汚れていないかと気になり急いで整えようとするが、愛しき義兄の前に立っても恥ずかしくない姿をしていると悟るとほっと胸を撫で下ろす
「何をやっている・・・」
目の前でより鋭くなる眼光、彼女とは別の意味で感情の高まりを抑えながらもドスの効いた声
そのどれもが愛おしく頬を紅潮させながら初心な生娘の様に顔を俯かせながら上目遣いで義兄を見た
「お、お義兄様を迎えに来たのです」
「俺を迎えに・・・それでこんなことを?」
「はい!!」
満面の笑みで返事をするリーゼ
だからこそ、セドには理解出来なかった
「何故・・・トローネを傷付けた」
ボロボロの服、顔や腕に浮かび上がる殴打痕
それを見ているからこそ理解出来ないが故に感情が昂り苛立ちが込み上げてきて、リーゼの腕を握る手に力が入る
だが、それすらも彼女は嬉しそうにしていた
「だって、お義兄様・・・こうでもしないと帰って来られないでしょう?」
「・・・俺を連れ帰る為に強硬手段に出たと言うわけか」
「あぁ! 勘違いしないで下さい・・・別にお義兄様が恨めしい訳ではありません。ただ私は心配なだけです!」
「心配・・・?」
心配という言葉とはあまりにも乖離し過ぎている現状との差に思わず顔を顰めた
「心配と言うにはかなり暴れたようだな」
怒りを滲ませた声で呟いた言葉にリーゼはクスリと笑う
「だから、言ってるではないですか・・・そうでもしないとお戻りにならないでしょうと」
瞬間、感情は我慢の限界を超えた
溢れる怒気は、吹き荒れる風は一瞬の静けさと共に拳に宿り鈍い打撃音が響く
「覚悟は・・・出来てるのだろうな?」
放たれた拳を手のひらで受け止め愛おしそうに握ると愛おしそうにクスリと笑う
「お義兄様こそ、帰る覚悟は出来ておりますか?」
売り言葉に買い言葉
それは始まりの合図であり、とどのつまりトローネの奮闘虚しく賽は投げられてしまったのである
「師匠・・・!」
セドを守ろうと手を伸ばそうとするがそれよりも早く再び吹き出した暴風によって遮られてしまう
思わず目を瞑り顔を守る姿勢を取ると激しい戦闘の音が彼女に耳に入ってきた
僅かながら収まりを見せた風に恐る恐る目を開けてくと、自分とは違う世界が目に入ってくる
「お義兄様! 腕は落ちてない様で何よりです!!」
嬉々としてセドの拳を防ぎながら風を纏った拳を打ち込み、同じく風を纏った足で薙ぐ
先程自分と戦っていた時とは違う出力の風魔法、身に纏うスーツ型の強化装甲服の身体強化術式を全力で発動して戦う姿に、手加減をされていたのかと嫌でもトローネは気付いてしまう
一方のセドも強化装甲服の術式を全力で発動しながらリーゼの拳を、脚撃を確実に防ぎ反撃の一撃を入れていき、その度に風がぶつかり合い突風が辺りに吹き荒れた
飛ばされない様にと地面にへばり付きながら、自分の介入する暇もない戦闘にトローネは歯噛みする
「まるであの時の様ですね、お母様とお義兄様と家で模擬戦闘をしたあの時と!」
「何故・・・俺を連れ帰って何になる。何故そこまで固執する!!」
楽しげに叫ぶリーゼへと拳を打ち付け、それが防がれると間髪入れず蹴りを放ちながらセドは叫ぶ
家を破壊し、自分よりも力が劣る者を人を痛め付け、何故そこまでして自分に固執するのかとリーゼに問うた
だが、それが彼女の気に触ったのだろう
先程まで笑みを浮かべていた顔の眉間に皺が寄る
「何故? 何度も言わせないで下さい、それともお義兄様はそんな事もわからないのですか?」
その言葉を皮切りにリーゼの攻勢はさらに勢いを増していく
「お義母様が亡くなってからお義父様がどの様な気持ちで・・・お義兄様には・・・!」
「だが、俺は家から出た身だ、父上がそんな者の事など・・・!」
「そんな者・・・?」
家を出る時の何も語らぬ父親の背を思い出す
その光景を振り払いながらセドはリーゼの拳を受け流し防ごうとしたが、突如として感情の乗り出した拳を前に反応が一拍遅れる
防ぎ切れない、そう思った刹那リーゼは口を大きく開き叫んだ
「子を思わぬ親が何処にいましょうか!!」
先程まで見せていた淑女然とした姿とは裏腹に、強い怒りを瞳に宿した怒声にセドもトローネも思わず目を見開く
驚きは動揺を生み、動揺は隙を生じさせる
「しまった・・・グゥ!?」
彼の見せた一瞬の隙、その合間にリーゼはセトの腕を振り払うとガラ空きの腹を拳で穿つ
回転する風魔法を纏った拳による一撃は彼の腹を捻り、その痛みから膝を突く
「師匠!!?」
「もし・・・それを本気でおっしゃっているのであれば・・・貴方はどれだけ腑抜けたのですか? 親の心を勝手に悟った気になり、私もお義父様も自分から突き離し・・・この街で過ごすお義兄様をどれだけ・・・どれだけ心配したと・・・!」
彼女の頬を伝う熱い一筋の雫
その姿はセドの身体だけではなく、心に深い痛みを生み出す
「春先の魔獣の襲撃から始まり、3大怪人、魔人、8大罪・・・これで・・・連れ帰ろうとしない方がどうかしてます!!」
貴族としてではなく、家族として心配する姿に遂には何も言えなくなる
「それでも・・・ご自分の意思で帰ってくるつもりは無いのですか?」
「・・・すまない、俺には・・・この街でやる事がある」
項垂れながら絞り出す様に出された声にリーゼは顔を歪める
「やる事とは何ですか? 私達よりも優先すべきことがあるというのですか・・・」
先程までの大人びた雰囲気から一転、泣きそうな顔をしながらまるで子供じみた癇癪を起こすがセドは彼女の気持ちが痛いほど理解出来てしまう
わかるからこそ、彼は唇を噛み自責の念から押し黙ってしまう
そんな彼の姿に小さくため息を吐く
「何も答えては下さらないのですね・・・残念です」
呟きながら再び拳に魔力を流し風魔法を収束させていく
「それでは暫し・・・お眠り下さい」
振るわれた拳を前に、セドは目を閉じてその時が来るのを座して待った




