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義妹襲来 2

投稿遅くなり申し訳ございません


言い訳としてはリアルの方のお仕事が忙しくめっちゃ残業してました・・・

頑張ります



あらすじ

トウヤ達が南の国トランセンドへと旅立った後、篝野が街の警備を変わりセドは所用で家を開けることになった

家で1人、かつての怪人大進行の際のトラウマに苦しむトローネではあったが、そんな彼女の元にセドの義妹リーゼが訪れる



登場人物

トローネ:セドが保護した半魔人の少女、若くして魔人としての能力からか魔法の素質に溢れており、今はセドの元でヒーロー見習いとして修行している


リーゼ:セドの義妹、本来ならばヴァラド家の領地内にある学園に行くはずだったのだが、何かしらの理由からベガドの街にある学園に通っており、その事でセドからは怪しまれていた

怪人大進行の際に8大罪テッラと戦闘になり友人2人を失う事になった

セドの義妹であるリーゼの訪問

あまりにも唐突な出来事にトローネは驚きながらも心の何処かでは安堵していた


「その時お義兄様ったらね、俺がなんとかするって言ってお義父様に直談判に行ってくれたんです」


「へぇ、師匠にもそんな時期があったんですね」


「まぁ結局は子供2人で祭りに行く事は許さない! って言われてお義母様と一緒に行く事になったんですけど・・・それでも楽しかったです」


黒を基調として緑のラインが入った貴族然としたスーツの様な服装をしているリーゼに、始めは戦々恐々とした態度を見せていたトローネも、彼女と話していく事に接し易い雰囲気に徐々に態度を軟化させていった


セドはすぐ帰って来ると言っていたが、誰1人もいない空間でいる事への苦痛よりもそんなリーゼが居てくれる安心感がトローネの心を満たしていく


テーブルのティーカップに注がれた飲みやすい温めのお茶を飲めば、口内をほろ苦くも甘い味が満たし喋り疲れた喉を癒す


ーー美味しい


思わずトローネの顔が綻ぶ


「どうしたの?」


そんな彼女の様子にリーゼは不思議そうに小首を傾げる


「その・・・師匠が帰って来るまで1人で待っていて心細くて、でもリーゼさんが来てくれて色んな話をしてくれて楽しいなって思って」


笑っているのを見られた恥ずかしさからか、トローネはしどろもどろになりながらも自身の気持ちを吐露する


「そうですか、私が来て楽しんでくれてたのね」


「はい! とっても楽しいです!」









「モコとモーブを死なせたくせに?」


「・・・え?」


先程までと変わらない笑みを浮かべるリーゼ

だが、その一言で何かが変わった


「覚えてないですか? あなたが無様に泣いて赦しを乞うてる時に来た私の事を」


顔に笑みを貼り付けたまま、彼女は






トローネの隣に立っていた



「なっ・・・!?」


何が起こったのかと訳もわからぬまま咄嗟に立ち上がった瞬間、最小限の動きで振られた拳がトローネへと迫る


咄嗟の事で反応出来ないトローネはその拳を肩に受けると激痛が走ったのも束の間、受け身を取ることが出来ないまま壁へと打ち付けられた


「あぐっ・・・!?」


「この程度なのですか? お義兄様の元で修行をしているというのに・・・」


落胆の色を見せながらため息を吐き呆れを隠すことなく身体全体で表現する


「やはりあなたには荷が重いのかしら・・・」


聞こえる様にわざと大きく言ったであろう言葉、だが、その言葉にトローネが答える事はない


否、答えられないのだ


肩を抑え激痛に悶え口を紡いでいる

頭の中は何故こんな事をするのか、こんな事になっているのかと気持ちの混乱が勝り思考が上手くできない


「しっかりなさい」


だが、そんな彼女へとリーゼは容赦なく追撃する


再び目の前で振りかぶられた拳が今度は家の壁に撃ち込まれた

一瞬のたわみの後に粉々に崩壊し大穴が空いた壁が彼女の拳の力強さを如実に物語っている


そんな大穴を見て先程の痛みも、混乱した思考も何処かへと吹き飛び全身の血の気が引く感覚が変わりにやって来た


「あなたがヒーローを目指しているのなら何をすべきか・・・わかりますね?」


そう言い冷たい目でトローネを見下ろす


「あ・・・あう・・・」


恐怖で身体が強張り声が上手く出ない

何故リーゼが殴りかかって来たのかはわからないし、どうすれば良いのかもトローネにはわからない




「なんだ、どうしたんだ!?」


「まさか・・・怪人!?」


だが、壁が破壊され様子を見に来た人々の声が聞こえ出した瞬間、今すべき事だけは分かった


すぐさま立ち上がるとトローネは壁に開いた穴から外へと飛び出すと集まりつつあった人々を押し退け一目散に走り去る


「・・・あら」


自身に背を向けて走り去る姿を見て、リーゼは暫し呆気に取られた後に指先を頬に当て暫し思考する


ーー怖くて逃げ出したのかしら


その様な結論に至ると自然と口角が上がり、目が限界まで見開かれていく


半端者どころか臆病者だった少女、ならば如何様にも調理しても良い獲物を見つけ狂気的な笑みを浮かべているのだ


「なら、話が早いですね・・・待ってて下さい、お義兄様・・・






すぐにでもあなたを連れ戻します」









街中を息を切らしてトローネは走る

殴打を受け外れた肩は壁に身体を叩きつける事で無理やり治した


「早く・・・早く行かないと・・・」


急に殴りかかって来たと思えば次に叱咤の言葉を投げかけて来る

あの女の目的がわからない

それでもハッキリとしたことは分かった


痛む身体に鞭打ち身体強化魔法で街を駆け抜け、たどり着いたのは公園だった


時間は昼前

ならばあまり時間はないがここなら十分だ


そう思いある程度肩の力が抜けるのを感じながら背後からわざとらしく立てられた足音に振り返る


「鬼ごっこは終わりですか? それにしても何で公園なんかに・・・」


余裕を感じさせるゆったりとした動きながらも、彼女の表情には困惑の色が浮かべている


対してトローネはその問いかけにまたしても答えられず黙り込むだけであった


正直なところ、何故、そう問いかけて来られてもトローネにも自分自身の行動に未だ納得出来ていなかったのだ


怖い、だから逃げる


その選択肢が彼女の中にはあった


だが、同時に

ここで戦えば他の人にも被害が出るかも知れない

そんな考えも浮かび上がっていたのだ


己を守る為に逃げる事と他者を守る為に動く事、等しくこの場を離れるという過程は同じだが結果は異なる


しかし、そんな相反する選択肢の中で彼女の感情は逃げることを選び、思考は守ることを選んだ


思考と感情のすれ違いによるチグハグな行動の結果は、何故と問い掛けたリーゼの言葉に答えられず混乱する彼女の様子こそがそうなのだろう


未だ幼い頭で訳もわからず、兎に角守らなければ、逃げなければと複数の思考を引き連れ行動した結果、先程よりも冷静になって来た今になって何故そうしたのかと訳がわからなくなってしまったのだ


「その・・・逃げたいって思いながら、でもこのまま襲われたら怪我する人が出るかもって考えたら、ここに来てました・・・」


しかし、何とか言葉を捻り出しながら辿々しく答える


そんな彼女の言葉をどういう意味なのかと、ほんの一瞬考え込んだリーゼではあったがすぐさま結論に辿り着く


「あなた・・・」


答えは至極簡単だった

ただ彼女が純粋であり、それ故の優しさを


今の自分とは真逆の姿を見て、狂気に染まっていた瞳はほんの一瞬平静の色を取り戻す


「やっぱりお義兄様の弟子なのね」


目尻を下げ、酷く悲しげで儚い微笑みを浮かべる

その表情に思わずトローネは驚いた


先程まで狂った程の笑みを浮かべ嬉々として自分の事を痛ぶろうかとしていた筈の彼女が、何故そのような顔をするのかと


もしかしたら何か自分を襲った事情があるのではないか、彼女の表情を見て思い始めてしまう


「あの・・・なんでこんな事をするんですか?」


先程までトローネはリーゼが何故こんな事をするのか分からなかった

わからないからこそ怖かった


だからこそ、彼女へとそう問いかけたのだ

何か事情があるのであれば聞きたい、出来ることなら協力したい


そんな想いを込めた言葉を前にリーゼは少しの逡巡の後に口を開いた


「・・・お義兄様の為よ」


「師匠の・・・?」


「そう、8大罪、魔人、今この街には脅威が迫っている」


先の8大罪テッラによる襲撃を受けた学園にいたからこそ感じた脅威


故に彼女は考えた

ここに居れば自分達は死ぬ


如何にフレアレッドが強力でも、だからとて怪人とその裏にいる魔国を纏めて相手取る事など出来ないのだと、貴族として知っているが故に


だからこそ、今一度瞳に狂気を宿し嬉々として言うのだ


「だからね、お義兄様を連れて帰るの・・・例え傷付けても」


「何で・・・」


「何でって、言っても聞かないのは分かりきってる。こうでもしないとあの方はきっとここに残り続ける」


こんな事を話されて尚、セドという男が易々と帰る事などあり得ない


きっと民の為にと残り続けるだろう

それがリーゼには許せなかったのだ


「だから・・・まずはあなたを見せしめにします。民ではなく最も近い所にいるあなたを傷付ければ、お義兄様は自身の無力さを幾ばくか思い知る筈です。そしたらきっと・・・!」


それは8大罪の恐ろしさを実感した彼女の考えられる中でも最も正しく成功率が高い行動であった


「それ、どういう・・・」


だが、そうであるが故にトローネにはその考えが余計に理解出来なかった


無論、話を理解出来なかった訳ではない

何故それが成功すると思っているのかという疑問だった


普通に考えれば、トローネを痛め付けた所で必ず大人しく帰る訳が無い

それがセドであれば尚更だ


話を聞いたセドは是が非でも犯人を捕まえようと行動するだろう


不当な暴力行為を働いた者の要求など呑むはずがないだろう


だが、目の前の少女はそれが成功すると信じている

狂気が浮かぶ瞳の奥に恐怖の色を宿したリーゼはそう信じてやまないのだ


体験した出来事への恐怖、それ故の狂気からリーゼは実行する

何者にも変え難い愛すべき義兄の為に


「さぁ・・・戦いましょうトローネさん・・・お義兄様の戦意を削ぐ為に、あの方を守る為に・・・」


恐怖故に思考が狭まり、愛故に人は狂う


そこに今も昔も、異世界も関係無いのだ

うちのシチュー

玉ねぎは出来るだけ薄切りにして、昆布茶入れて玉ねぎが溶け切るまで煮込むんですよ


そしたらね、そん時にはジャガイモもシチューに溶け込んでポタージュみたいな滑らかな状態になるんですよ

これがもうめっちゃ美味くて


彼女からもよく絶賛されてます

まぁその分鍋の中身が煮込み始めは半分以上あったのに最終的には三分の一くらいにまで減るんですけど、やっぱ減った分味が濃縮されるんでしょうね

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