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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 門鍵モンキー
第一章 異世界に行ったらヒーローになったSO
20/176

ベガドの危機!? 魔王軍襲来! 9終

これにて第3話終了です

それから間も無く戦闘の終結が宣言された

戦闘が終結してもなお、現場では慌ただしく侵攻してきた時に生じた大穴の処理や被災者の救護と怪我人の確認の作業が行われていた


ラーザは自身の仕事がひと段落し一息ついていると、瓦礫に座り込む見知った背中を見つけた

ちょうど探していた人物だったので近付き声を掛ける


「おーい、トウヤ、お疲れ様・・・うわ、なんだその顔」


呼ばれて振り返ったトウヤは戦闘が終わったにも関わらず辛気臭そうに落ち込んでいた

その顔に思わず声が漏れてしまう


「うわってなんですか」


「悪い悪い、んでどうしたんだよ、戦闘が終わったんだぞ、もうちょっとこう明るくなるもんだろ、それなのになんでそんな顔してんだよ」


トウヤの声に笑いながらそう言うと、彼の隣に腰掛けた


「あぁ、いや、俺もうちょっと何か出来たんじゃないかなって・・・そう思うとしっかりしないとって思えてきて」


そう言うとラーザはへの字に口を歪める

トウヤにとって初陣ではあるが、それでもあのスライムローパーを倒せたと言う自負がトウヤをそうさせたのだろう

そう考えたラーザはトウヤこっち向け、と彼に言うと顔を向けて来たトウヤのおでこにほんの少し身体強化を掛けたデコピンを食らわせる


「あがっ!いってぇ!」


ひっくり返りながら彼がそう言う

トウヤが何するんだと抗議の声を上げようと仰向けになりながらも顔を上げると、そこには彼の様子を見て笑うラーザの姿があった


「お前何調子乗ってんだよ、新米のくせに今やった以上のことなんて出来るかよ」


「でも俺ヒーロー志望なんですよ、ならもっと何かをやらないとダメじゃないですか」


トウヤは考えていたのだ、サラに助けられ、この街に来てから今日の戦いまでラーザとシスに助けられて、助けられたままでヒーローを名乗って良いのか

だが彼のそんな悩みにラーザは笑顔で持って答えた


「あぁあるある、新米が1回の成功で調子に乗るやつな、懐かしいな・・・良いか、浅間灯夜、お前が今後何になる予定かなんて関係ない、今日のお前は自分で出来る範囲で力を出せなかったのか?スライムローパーを1体撃破してヘロヘロの状態で王国軍に助けてもらったのに、他に何か出来ていたのか?」


「それは・・・」


出来るとは思えない、それがトウヤの答えだった

避難誘導をして今出せる全力を持って当たった、戦闘も死ぬかもしれないと何度も思ったしその中でも果敢に戦った

彼にはこれ以上力を発揮するのは無理だっただろう


「でも、俺今日まで助けられてばっかりこれじゃヒーローになっても名乗れないですよ」


彼の悩みの根源はそこだった

彼にとって人助けをする者であり、助けられっぱなしの今の自分は足手纏いの様な存在ではないのか?という漠然とした人助けという言葉、大きな目標は定まっているがそこに至るまでの小さな目標も定まっておらず、また数値化も出来ていない曖昧な目的意識がトウヤを苦しめていた


その事に気が付いたラーザはトウヤへと優しく問いかける


「そこか・・・なぁトウヤ、お前にとってのヒーローってなんだ?」


そのラーザの問いかけにトウヤはしばらく考える


「みんなの日常を守る為に戦う存在・・・ですかね」


「お、良い答えじゃんか、ならお前は今日誰かを助ける為に戦ってなかったのか?」


そう問われ思い出すのはあの親子の存在だった


「報告聞いたよ、お前さ、あの親子を逃す為に戦ったんだろ?あんな蹂躙されてる風景見せられても、それでも戦ったんだろ?」


ラーザの問いにトウヤの胸中に宿る悩みが掬われて行く様な感覚がする


するとラーザが何かに気が付いたのか、おっと声を上げる


「トウヤ見てみろよ、あそこ」


そう指さされた場所を見てみるとそこには避難民の列があり、その列の中にあの親子の存在も確認出来た


子供が気が付いたのかこちらに手を振ってくる、母親の方もこちらを見て一礼して来ている

あの白いMRAに言われてはいたが、存在を視認して実感が湧いてきた

そうするとトウヤの目頭が熱くなってくる


「お前にとってはそんな気はないかもしれない、でもさ、あの2人にとってお前は紛れもないヒーローだよ、今はそれじゃ足りないか?」


口を結び涙を湛える

あぁ今日は泣いてばっかりだなと思いながらも止められない

ラーザの問いにトウヤは涙を堪えながら言った


「ありがとう・・・ございます・・・」


「礼なんて良いよ、俺の方こそあんな状況で生きてくれてありがとよ、すまんかったな、せっかくの最終日がこんな事になってしまって」


その言葉にトウヤは答えない、答えられない

答えたら最後、流れる涙を止められないから

ただ黙って首を横に振るだけだった


「あー!!トウヤの事泣かしてる!」


後ろから声が響く

ラーザが気まずそうに振り向くとそこにはシスがいた


「うげっなんだよシス、今男と男の話し合いの最中なんだよ、邪魔だ邪魔、あっち行った」


声を掛けて来たシスにラーザはしっしっと手を動かす


「何よ男と男の話し合いって、大丈夫?ラーザに何か言われたの?」


「お前なぁ、ちょっとは空気を読んだりだな」


「戦闘終わったのに辛気臭い空気出してるから心配して来たのに、何よその言い方」


いつも通りのラーザとシスの応酬に顔を上げたトウヤは涙を我慢しながらもククッと笑いそうになる


やがて涙は笑い涙へと変わって行く

それはトウヤの心境の変化を表す様だった


その笑顔を見てシスは少し引き、ラーザは安堵したかの様に共に笑顔になる


「何で急に笑顔になってるの?」


「吹っ切れた様だな、トウヤ」


ラーザの問いにトウヤは答える

今度はしっかりとその目を見て


「はい、ありがとうございます。ラーザさん」


「良いって事よ、んじゃ改めて、俺たちは今日で終わり、まだまだ新米としての道のりは長いけど明日からも頑張れよ、応援してるよ」


そう言うとラーザは拳を捧げてくると、トウヤも握り拳を作りぶつけながら言った


「はい、この3日間の事忘れません。精一杯頑張ります」


こうしてトウヤの3日に渡る代理研修の日々が、怒涛の1日が終わりを迎えた

この後も分割祭り

続きます


次話からは1/26の昼以降に分割していく予定です

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