飛んで南国!! 7
トウヤ達がトランセンドに来てから5日たった
あれから暫くはトランセンドの街並みを巡りながら観光をしていたが、同時に結婚式の準備も着々と進めていた
そして、迎えた結婚式の当日
トウヤ達は各々がレンタルしたスーツやドレスを着用すると式場へと向かう
「ここが・・・ローヴェ神を祀る教会・・・」
この世界における神は地母神デアテラ、冥府の神ハーデのように複数存在している
その為結婚式の式場はデアテラ教会とは別に存在する神、ローヴェ神の教会が式場として利用されているのだ
眼前に広がる石碑を中心とした円形の庭と聳え立つ教会を見てトウヤは「おぉ・・・」と間抜けな声を漏らす
「俺、結婚式で教会に来るの初めてです」
「まぁ人の結婚式なんて中々行かないからね、安心して、私も初めてよ」
候補生用の色鮮やかな服装にポンチョの様な羽織を纏ったエオーネがクスクスと笑う
「まずは受付を済ませてからね、みんな準備は済んでる?」
「もちろん! でも・・・花で良いの?」
「えぇ大丈夫よ、これだけあれば良いわ」
雫と茜は困惑気味に花の入ったバスケットを持ち上げるが、エオーネは満足げに頷く
元の世界でも幸せを悪魔や災難から守る。という意味でフラワーシャワーというものがあったが、どうやらここトランセンドでも似たような文化があったのか、参列者は花の準備をする様にとエオーネから言われ準備して来たのだ
「じゃあそろそろ受付に行きましょうか・・・」
「エオーネ、エオーネじゃないか我が友よ!」
彼らが受付へと向かおうとした最中、声が掛けられる
野太い男の声、しかし、その声にハッとしてエオーネは振り返った
「ベーレン、久しぶりじゃない!」
褐色肌のエオーネと同じくらいの190cmはあろうかという大男がこちらに向けて走ってくるのがわかる
大男の名前をベーレンとエオーネは嬉しそうに叫びながら、2人は駆け寄ると互いに肩を殴り合う
「久しぶりだな、返事が無かったから今日は来ないかと思ったぞ!」
「ごめんなさい、ちょっと今住んでる街が色々と問題を抱えていて返事が出来なかったのよ」
「そうか・・・まぁ積もる話は色々あるし、あっちで話そう! あぁ・・・こちらはご友人方で良かったかな?」
トウヤ達の存在に気がついたのか、ベーレンは僅かに言い淀みながら問い掛ける
「えぇ、フェイル王国で出会った私の友人達よ」
「そうか、遠い所からありがとう、是非色々と話を聞かせて欲しいんだが君達も良いかな?」
「もちろん、ご一緒させていただいても?」
「ありがたい、大歓迎だ! さぁこちらに!」
エオーネの友人と聞くとベーレンは嬉しそうにしながら共に式場へと向かい歩き出す
「親友か・・・」
そんな彼らの背中を見つめながらトウヤは元の世界にいた友人達へと思いを馳せる
地元の滝や、砂原で共に遊んだ日々を思い起こす
「良いなぁ、昔馴染みって」
「本当ですなぁ、良いものです。友の存在というのは」
「本当に・・・っ!?」
聞き覚えのない声
しかし、確かに感じる敵意にトウヤは顔を横に向ける
「誰だ、お前・・・」
隣に立つのは目元には黒いクマが浮かび頬骨やエラが目立つ、所謂ゴツゴツとした顔の男
彼は驚いた様子を見せるトウヤの顔を見ると嬉しそうに嗤う
「私は再転の教会最高司祭にして8大罪が1人、アドラと申します。短い付き合いにはなると思いますがお見知り置きを」
仰々しく身体を動かし挨拶をするアドラだが、彼の名乗った肩書きにトウヤは驚く
「再転の教会の最高司祭が8大罪・・・!? それどういう!」
「まま、積もる話も色々とありますし、場所を変えませんかな? 折角の祝いの場だ、ただの挨拶程度で場を乱したくはないのです」
チラリと式場の方へと目を向けるアドラ
トウヤも彼の視線に釣られ目を向けてみるとそこには笑い合うエオーネ達の姿があった
久方ぶりの親友との再会を楽しむ姿を見た彼は、邪魔したくはないと思い不満はあるがアドラの指示に従うことにする
「わかった・・・場所を変えよう」
「んふぅ、それではこちらへ」
彼の返答に満足したのか、アドラは気味の悪い声を出し嗤うと歩き出す
ーー気味が悪い、何が目的だ
そう思いながらトウヤはアドラの後をついていく
歩き続けている間、2人に会話は無い
教会の敷地を抜け、街中を通り抜け森の中へと入っていくがその間もトウヤはいつでも変身できるようにとブレスレットに機械音声が鳴らない程度に魔力を流し続ける
森の中に入り暫く経った頃、ようやくアドラが足を止めた
「ここら辺でよろしいでしょう、ついて来てくださり感謝しますぞ、アサマトウヤ・・・いや、フレアレッドとお呼びしましょうか?」
「こんな所まで連れて来て何のようだ」
「おや、もう答え合わせですか? 連れないですなぁ・・・折角ですから森を見ながらフリートークでも・・・」
「答えろ! 何が目的だ!!」
溢れ出さんばかりの怒気が風に乗り木々のざわきめと共にアドラへとぶつかる
ーーこれがアサマトウヤか
膨大な魔力と圧を前に額から汗が流れ落ち膝を屈しそうになるが、それ以上に笑いが込み上げてくる
ーーこの量・・・異常だな、これが魔人化だと? 笑わせるな化け物め
こんなものが魔人な訳がない
魔法生物を作り出す程の膨大な魔力量、その片鱗を目にして改めてアドラは思う
「なるほど、確かにアガーが倒される訳ですよ」
だが、こちらとて8大罪
ただ気圧されて終わる訳にはいかないと仰々しく腕を広げ負けじと声を張り上げた
勝ち誇った笑みを浮かべて
「もう目的は達成しました。あなたがここに来た時点でね」
「どう言うことだ!」
「どうもこうもないですよ、私の目的はあなたを遠ざけ足止めすること! そして、その目的は今達成される!」
言葉を言い終わるや否やアドラは腕を振るうと空中に魔法陣が展開された
「我が呼び声に答え顕現せよ、ファルスの触腕よ!」
聞き覚えのある詠唱と共に魔法陣から飛び出して来たのは青白い触手だった
それは薙ぎ払うように振るわれ迫るが、トウヤは後ろへ1回転して飛び躱わすと空中でブレスレットを擦り合せた
「変身!」
『音声認識完了、アクシォン!』
全身を包み込む光を腕を振り払うとガラスの様な音を立て砕け散る
着地する頃には赤き戦士フレアレッドへとその姿を変えていた
相手の目的は自身を遠ざけ足止めすること
それは一体どこから? 何のために?
自分はどこから遠ざけられた?
そこまで考えると、トウヤはすぐさま己のすべき事を決める
「速攻で戻る!」
『フェニックス!!』
今は目の前の敵を倒すよりも先に戻る事を優先する
すぐさま目の前の敵を撒いて教会に戻るのだ
彼は立ち上がるやいなやすぐさま腕を振るうと赤い鳥の形をしたガジェットを取り出し、突起へと嵌め込みブレスレットと擦り合わせた
鳴り響く機械音声
その声にトウヤは勇ましく叫ぶ
「変身!!」
再び光に包まれると光を振り払い青いスーツを見に纏ったトウヤの姿が露わになる
『旭日昇天! 灰の中から日はまた登る。ハッチアンドエボルブ! フェニックス!!』
機械音声の抑揚のある声が響き青いスーツと鳥や炎の装飾が散りばめられたフェニックスフォームへと姿を変える
アドラはその姿を見て嗤う
「ほほう、それがアガーを倒したという・・・その力見せてもらいましょうか!」
地面をしっかりと踏み締めると、前へと勢いよく飛び出て拳を構える
まずは様子見
こちらの素の攻撃がどれほど通用するのか試してみる事にした
瞬時に懐まで入り込んだアドラはトウヤの腹へとまずは一撃見舞う
ピクリとも動かない所を見るに反応出来ていないのかと思い、一瞬アドラの気が緩むが、拳が触れた瞬間に気がつくのだ
殴ったのに全く微動だにもしていない事に、まるで重厚な合金塊を殴った時の様な手応えの無さに
すぐさま拳を引き距離を取ろうとするが、それは叶わない
ガシリと拳が掴まれる
「しまっ・・・!」
油断は無かった。相手を侮っていた訳でもない
ただ単純に己の想像を軽く超える程にトウヤが強かったのだ
その事を悟り自身の失敗を実感した時、既にアドラの顔には拳が打ち付けられていた
「グァッ!」
仰反る身体、しかし、腕を掴まれているためそれもある程度で止まる
ビンと伸び切った腕、今度はそれを引っ張り手を離すと勢いのまま迫るアドラの顔目掛け再度拳を振るう
「ウグッ・・・ガガガ!!」
殴られた勢いで後ろに飛んだアドラは間抜けな声を上げながら後ろ向きに転がり木に身体をぶつける
「やるなぁアサマトウヤ・・・だが、私はこの程度で倒せはしないぞ!!」
仄かに眩暈を起こしながらも、頭を振るい立ち上がり声高々に叫ぶ有様はまさに気炎万丈といった有様だった
だが、悲しいかな
「ん・・・? あれ、どこに・・・どこに行った! アサマトウヤ!!!」
彼がその意気込みを伝えたつもりの相手は既にいなくなっていたのだから
ーー無事でいてくれ
アドラを早々に転ばしたトウヤは隙を見て教会に戻る事を優先した
フレアウィングを展開して飛翔する彼の心浮かぶのは、去り際に見た仲間達の笑顔である
クッと口を結いながら不安げに息を漏らす
まんまと敵の罠に引っ掛かったことを悔やみながらも彼は教会の庭へと降り立つ
「・・・なんだこれ」
そこで見た光景に思わず言葉を失う事となった
呪術廻戦マジおもろいっすねぇ
アニメしか見てないけど、めっちゃ次のアニメ楽しみです