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飛んで南国!! 2

全話で篝野がマインと喧嘩してましたが、あれは単純に見送りに来たらマインと目があったので睨み返したらマインも睨み返して喧嘩勃発って感じです

その後篝野とマインの喧嘩は合流した雫達により止まる事ができ、トウヤ達は無事に雫の持つ刀を使い南の国トランセンドへとやって来ていた


「うわ・・・スッゲェ・・・」


彼女が刀を一振りして作り出した黒い霞の中から出たトウヤは目の前の景色に感激する


自分達のいた新大陸西部よりも温かくほんのりと湿った空気に出迎えられながらも、おそらく丘の上に出たのだろう

眼下に広がる熱帯林とその先に見える粘土造りの白亜の家屋に感動の声を上げる


「なんか南の国って感じの街が見える」


「綺麗でしょ?」


「はい! とっても!」


トウヤが感極まり大きな声で返事をすると、祖国を褒められ嬉しいのだろうエオーネは「そうでしょ」と言い美しい笑みを浮かべる


「これは・・・美しい街並みですね」


「ここが白亜の街トランセンドか・・・」


「綺麗・・・」


次々と到着すれば各々が感嘆の声を上げ、その度にエオーネは嬉しさが込み上げてくる


「さぁみんな、街に向かいましょう」


そう張り切ったエオーネに先導され街の中へと入ってみれば、先程とは違う活気溢れた顔を見る事ができた


屋台に並ぶ南国情緒溢れる果実や今朝取れたばかりの川魚

そんな品々を求め多くの人々が殺到している


しかし、それよりも皆が目を奪われたのは驚くほどの素晴らしい筋肉を持つ美男美女ばかりであった点だ


「うわぁ・・・綺麗な人ばっかりですね」


男性も女性も、皆がスラリとした長身で顔立ちも整っているものばかりで思わずキョロキョロと辺りを見渡してしまう


そうしてトウヤは前を見ずに歩いていると道ゆく人と肩をぶつけてしまった

ドカリとまるでしっかりと根の張った巨木に身体をぶつけたかの様な音と衝撃に、トウヤは弾き飛ばされ後ろに転けそうになる


「トウヤ・・・!」


近くで見ていたフィリアは咄嗟にトウヤを支えようとするが、それよりも早く彼の背中にソッと優しく手を入れて支えられた


それは先程肩をぶつけた女性であり、彼がトウヤを支えたのだ


「ごめんなさい、ぶつかっちゃったわね・・・大丈夫?」


「えっ・・・あ、はい! 大丈夫です!」


心配そうな表情を向ける女性ではあったが、トウヤはそれどころではない


至近にまで近付いた端正な顔立ち、優しく包み込まれる様な高音の美しい声

それに比して鍛え上げられた筋肉がトウヤの胸を早鳴らせたが、そんな彼の様子に女性はクスクスと可憐な笑みを浮かべ彼を引き起こす


「なら良かった。この国は初めて?」


「はい、はじ・・・」


「初めて」


緊張した面持ちでトウヤが答えようとすると遮る様にフィリアが割って入ってくる


何処か警戒した様子を浮かべる彼女の事を不思議に思うが、そんな2人の様子を見て女性は「まぁ」と顔を輝かせ美しく笑う


「可愛いガールフレンドさんがいるじゃない、良いわねぇ、ここは良い国だから楽しんでね」


それだけ伝えると女性は小さく手を振り何処か上機嫌で去っていく


「トウヤ、大丈夫?」


「あ、あぁ大丈夫・・・」


何やら食い気味に言ってくるフィリアの姿に困惑するが、トウヤの言葉を聞くと彼女はすでに見えなくなった女性の背中を追い鋭い視線を向け続けていた


「あ、ちなみにあの人男よ」


「・・・えっ!? えぇぇぇ!?」


美しく可憐な女性だと思っていた人物がまさかの男と聞いたトウヤは驚愕のあまり声を上げ、フィリアは目を見開きエオーネを凝視した







色々と一悶着ありながらも宿へと着いた彼らは各々の部屋へと荷物を置いてから宿の前へと集まっていた


「それで、どこ巡りましょうか」


エオーネが母と会うのは夜になってからなのでそれまでの間観光しようという話になっていたのだ


各々が行きたい場所について言っていくが、行きたい場所が各人異なっていた


片や本日までのショーの観戦、片や屋台市の散策

だが、ショーは万人受けする内容では無かった為、全員で行くのは少しばかり憚られた


だからこそ、ショーを観に行く組と屋台市に行く組とに分かれ観光することになった


ーーまさか、この2人と一緒に観光回るとは思わなかったなぁ


そんな中でトウヤが行くことになったのはマインとゼトアの屋台市散策であり、他にはトウヤについて行くと言ってついて来たフィリアだ


トウヤとしてはまさかマインとゼトアという珍しい組み合わせと共に観光に行くとは思っておらずある意味で新鮮な気持ちになっていた


「いや、ですからここで買うよりもですね」


「別にどこで買っても良いでしょう、本当にあなたは昔から細かいですね」


ーーほんと・・・新鮮ダァ・・・


まさかこの2人も仲が悪かったとは思ってもみなかったので、本当に新鮮だと心の奥底から思うと共に、ぶり返されるここに来る前の篝野とマインの喧嘩を思い出し仄かに胃が痛みだすのを感じる


「なっ・・・細かさならあなたに言われたくありません。1000年前からぐちぐちと言ってきてたのはどなたですか?」


「昔の話を今出されても困ります。それとも・・・それ以外何かを言うことは出来ないのでしょうか? それなら黙っていた方が賢明ですよ?」


「あ、あの2人とも、流石にその辺りにしましょ? ね? ほら初代勇者の人形置いてますよ!」


言葉の応酬は徐々に棘を増していく

そんな様子から見ていることは出来ずに何とか止めようとするが、それが2人の気に障ったのか人形を心底嫌そうに見つめる


「これが初代勇者なわけ無いでしょう」


「何言ってるんですか? トウヤさん」


「あ、あはは・・・すみません・・・」


ーーいや、そんな事言われても・・・


あまりの剣幕に臆し困惑するトウヤではあったが、彼らは標的をトウヤへと変え今度は初代勇者について語り始める


そんな3人の姿を見て、置いてけぼりを喰らったフィリアは自分はどうすれば良いのかと考えた


トウヤは必死に助けて欲しそうに眼差しで訴えかけては来るが、自分が介入したとこで二次被害として巻き込まれるのは目に見えている


ーー落ち着いてきたら、止めよう


怒りや不満というのはある程度まで吐き出すまでは幾ら止めようとしても穏便に止まらない事が多い


だからこそ、ある程度こちらの話を聞けるくらい吐き出すまで放っておく事にした


トウヤの助けを求める視線に罪悪感が湧き出しながらも別の売店の品へと目を向ける





「止めなくて良いの?」


隣から聞こえてきた女の声に背筋が凍る

何故ここにいるのか


隣へと顔を向けると見覚えのある顔に彼女の顔が険しくなっていく


「クヨキシ・・・」


「あら、見分け着いたのね」


警戒したフィリアの威圧感のある声を前にしてもクヨキシは何事も無いかの様に売店へと視線を向けている


「何でここにいるの」


「ただの観光・・・って事にしても納得しないわよね」


当たり前だ、今まで彼らがやってきた事を考えればそんな事で納得できるわけがなく、フィリアはこくりと頷く


「そうよねぇ、まぁ無理も無いわあんなことやったんだもの」


まるで他人事の様にため息がちな態度を見せ腹が立って来るが、今は目的を探るのを優先すべきだと考えるとなんとかその気持ちを抑える


「それで、目的は何?」


だが、問い掛けながらもフィリア自身そう簡単に彼女が目的を言う訳がないのもわかっていた


いつでも弾ける様にと指に力を込める


「この国でちょっとした活動をしようとしてるのよ、あなた達の予想通りのね」


しかし、返ってきた言葉に呆気に取られた


「なによ、その惚けた顔・・・良いじゃない、別にヒントをあげたって、あ、でもここで戦う気はないからその指離してね」


「・・・うん」


そんな顔されるなど心外だ、そう言わんばかりの様子を浮かべながらも、ふと気になった商品があったのか「これ良いわね」などと言いながら商品を手に取っている


先程の自分たちの考えた通りという言葉とは逆に、まるで本当に観光に来たかの様に振る舞うクヨキシ


そんな姿と普段ならば怪人と出会えば大抵悪さをしていたりして即戦闘といういつもの流れという固定概念から来る違和感にフィリアの中で困惑が募っていく


「本当に戦わないの?」


「戦いたいの?」


問いかけた言葉に対して逆に問い返され、彼女は押し黙ってしまう


そんな彼女の顔を見てクヨキシは小さくため息を吐きながら笑みを溢す


「私もよ、今は戦いたくないの、準備の為の時間稼ぎとかそういう意味じゃなくてね」


「なんで?」


フィリアには女の言う事が理解出来なかった


組織の怪人が準備や時間稼ぎの為以外に無駄な会話を交わすなど、トウヤから聞いていたスーラ一派の怪人以外聞いた事が無かったのだ


「・・・気になったのよ、イアを通して見たあなた達のことが」


「どういう事?」


気になったとはどう言う事なのか、何故自分達なのか


短く無感情に返した彼女の言葉を前に、クヨキシもまた頭を悩ます


「・・・わからない、でもね、これまで見て来てあなた達がどんな道を歩むのか気になったのよ」


手にした品物を手に取り、何処か遠い目をしながらもクヨキシは漸く捻りだせた言葉をフィリアへと投げ掛けた


この怪人にどんな事があってこうなったのか

何故洗脳術式が作用していない様な態度を取るのか、それともまた騙そうとしているだけなのか、フィリアは不思議に思いながらも判断に迷った


「ところで・・・」


そうしているとクヨキシが何やら遠くを指差しながら話しかけて来る


「あれは、放っておいて良いの?」


クヨキシの言葉に指を刺す方向を見ると死にそうな程暗い顔をしながらゼトアとマインの話を聞くトウヤの姿があり、それを見て流石にマズイと思ったのか「・・・トウヤ!」と彼の名を呼び駆け寄っていく


その後、2人を止めたフィリアはもう一度クヨキシのいた屋台の方へと目を向けるが、彼女の姿はもうそこには無かった

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