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孵卵 8 終

これにて31話終了です

アガーが爆散していくのを見届けたトウヤは重力に身を任せ自由落下すると広場へと降り立ち変身を解除した


纏っていた水色のスーツが光の粒となり消えていく中で、トウヤは「ふぅ・・・」と息を吐く


組織の最高幹部たる8大罪の一体を撃破出来たという事実に未だ実感が湧かず、しかし、それに反して歓喜に震える手を複雑な感情を浮かべ見つめた後にグッと力強く握りしめた


「俺は・・・やったのか・・・」


多くの人々を苦しめて来た元凶の一体を倒す事が出来た

その事を実感すると身体の内から徐々に溢れ出てくる達成感にトウヤは堪えきれず思わず空を見上げる


「やったな、トウヤ」


「トウヤ・・・」


達成感に浸っていると声が聞こえ、反応して振り返ってみればセドとフィリアがそこには立っているのが見えてトウヤの顔が綻ぶ


「セドさん・・・無事で良かったです」


「お前もな」


フッと笑いながらセドがそう言うと、何処かむず痒く感じてしまい2人は思わずクツクツと笑ってしまう


「フィリアさんも傷の方・・・は・・・」


「む・・・? フィリア?」


一頻り笑い終えた後にフィリアへと顔を向けたトウヤとセドではあったが、何やら彼女が俯いてるのに気がつくと不思議そうな顔を浮かべる


その様子から何処か痛むのだろうかとトウヤは考えほんの僅かにオロオロと慌て出しそうになった最中、徐に彼女はトウヤの元へ早足に歩き出すと彼のすぐそばまで来て顔を俯かせたままギュッと彼の服の裾を摘む


「あの・・・フィリアさん?」


明らかにおかしな様子を浮かべるフィリアに、どうしたのか不思議に思いながらトウヤは顔を恐る恐ると言った様子で問い掛けと、彼女から返って来たのは、僅かに声が高くなりながらも今にも泣きそうな程沈んだ声で発された言葉だった


「良かった・・・」


何が良かったのかなど、今更聞くまでもない

罪悪感で心を痛めながら裾を掴む彼女の頭に優しく、慈しむ様に触れる


「ご心配おかけしてすみません、俺はもう大丈夫ですから」


言葉に反応して顔を上げた彼女の顔に少しでも安心してくれる様にと満面の笑みを浮かべ暫しの間見つめ合う


そんなどこか甘酸っぱい雰囲気を醸し出す彼らではあったが隣から聞こえて来た咳払いにより現実へと引き戻される事になった


「良い雰囲気になるのは構わないが、俺がいるという事を忘れてくれるなよ」


「忘れてませんよ、セドさん」


ーーなら尚のこと厄介だな


僅かに居心地の悪さを感じていたセドだが、無表情ながらも頬を若干赤く染めたフィリアを一瞥しながら呆れる


「まぁ良い、とりあえず残りの修繕を終わらせよう・・・きっと、この吉報は街にも届いてるはずだからな」


空高く舞い上がった街を襲った元凶たる8大罪の爆発は、すぐさま街中に吉報として駆け巡る事だろう


新たな力の解放と共に街を覆う暗い憂鬱な暗雲は僅かに晴れていく












暗い部屋の中でウココツは不機嫌そうに顔を歪めている


「あら、あなただけ帰って来たの?」


突然ウココツは何も無い空間を睨み付けながら呟く


それを見た者達は誰に話しかけているんだと言うだろうが、ウココツはその一見壁しか置いていない空間に向けて怒気を放ちながら続けて話をする


「あなたにはアガーを連れて帰って来るようにと命じた筈だけど」


「まぁまぁ、落ち着いてよウココツ、そんなカリカリしたらダメだよ」


机の上に置かれた菓子を貪っていた彼女の対面に座る少年が揶揄すようにケラケラと笑いながらも冷たい視線を彼女と同じ空間へと向けた


「でも、なんで帰って来たの?」


「申し訳ございません。ウツコウ様、テッラ様、しかし、障害が現れまして命令を遂行すること叶いませんでした」


彼らの視線を向ける先、何も無い空間が僅かに揺れ声が聞こえて来る


それはアガーと共にいたカメレオン型の怪人の声だった

怪人は震えた声で必死に弁明しようとしていたが、テッラは冷たい視線を向けたままだ


「言い訳は良いからさ、どう落とし前つけるのか・・・」


テッラの腕が人型から怪人の物へと変化する


任務を遂行出来ずにおめおめと帰って来たの愚か者を断罪しようと拳を振ろうとするが、ウココツが彼の前に立ち静止した


「待ちなさいテッラ・・・この子の話、ちょっと興味が湧いたわ」


「・・・わかったよ」


ウココツの言葉にいじけた様子を見せながらも腕を元の人間体へと戻すテッラを尻目に、ウココツは前へと歩み出ると何もない空間を見下ろす


「名ばかりとはいえあいつも8大罪、一体どんな障害があったと言うの?」


「それは・・・フレアレッドです・・・」


「フレアレッド・・・? 何故、彼はまだ眠ったままでしょう?」


ウココツはアガーを撃破したのはてっきりあの黒い仮面の男かと思っていた

何故彼の名が出るのか、と不思議に思うが怪人はありのままの事実を必死に伝える


「わかりません、ですが・・・フレアレッドが、アサマトウヤが現れたのです! 新たな力を伴って!」


「新たな力・・・へぇ・・・」


新たな力、その言葉を前にウココツは暗い笑みを浮かべながら胸の高鳴りを感じる


仮とはいえ8大罪を倒せる程の力、それは一体どのような物なのか


ーー気になる


何事もない風を装いながら踵を返し席に戻るが、そんな彼女にテッラは呆れたような視線を向ける


「ウココツ・・・またなんか変な事考えてるでしょ?」


「うぐっ・・・良いじゃない、気になるんだから」


「別に気になるのは良いけどさ、スポンサーからの依頼もまだあるんだから程々にしてよ」


「別に構わないよ」


その声にウココツとテッラは驚愕して肩を震わし急いで振り向くと緊張から顔を強張らせる


「な、なぜ・・・ここに?」


「帰った筈じゃ・・・」


「ふふ、アガーがどうなったのか気になってね」


「貴様ら! 折角心配して戻って来てくださったのになんだその態度は!!」


爽やかな笑みを浮かべる魔人の男とは対照的に後に続いてフードを被った男が荒々しく叫びながら部屋へと入ってくると、そんな男を見てテッラとウココツはめんどくさそうな顔をした


「うげ・・・余計なものまで帰ってきた・・・」


「余計なものだと・・・貴様ぁ・・・!」


「落ち着きなよ、クソカルトマン」


「クソカルトマンとはなんだクソカルトマンとは!!」


売り言葉に買い言葉というよりも、ほぼ一方的に男が言われ続けるだけではあったが、テッラと男の言葉の応酬は終わりなく続いていくようにも思えた


だが、そんな2人の間で手が叩かれる


「はいはい、スポンサーの前なんだから落ち着きなさいよ」


何故自分がこの様な役回りを演じなければならないのか、そう思いながらも発された言葉ではあったが、流石の2人もスポンサーが居る手前確かにまずいと納得したのだろう

彼女の言葉を受け入れてお互いに口を閉じる


その様子に満足したのか、魔人の男は頷くとウココツへと顔を向けた


「それで? アガーは撃破されたみたいだけど、次の計画は問題ないかな?」


「えぇ、アガーが居なくとも滞りなく・・・」


「お任せください! この私肝入りの計画がございます!」


「頼もしいね」


ウココツとフードの男の言葉に満足げに頷く様子を見せると、フードの男は興奮した様に声を張り上げた


複数の国を周り、超越者と呼ばれる者達の因子を蒐集して漸く叶うのだ


「すぐにでも・・・我らが神降臨を・・・!」


すでに次なる標的は決まっている

ここで事をなせば、いよいよ実現する


「次の標的は南の国、トランセンド! すぐにでも彼の国にて血と肉の祭典を開いて見せましょう! 8大罪が1人にして再転の教会最高司祭、アドラの名に誓って」


再転の教会

その最高司祭を務める男は部屋の中で高らかに笑い宣言した

これにて31話終了!!

次回飛んで南国! 漸くおじゃ魔女聞いてあっためてた国の話が出来る!


あとフェニックスモードの機械音声がやたらと四字熟語とか英語とか使うのは篝野の趣味です


それとダークギャザリングめっちゃおもろくないですか?

あれマジですっごい・・・

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