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孵卵 4

大変お待たせしました!

31-4です!!


登場人物

浅間灯夜:本作の主人公

フィリア・リース:トウヤの先輩ヒーロー、銀髪

セド・ヴァラド:トウヤの先輩ヒーローで大貴族ヴァラド家の元次期後継者

アガー:組織の幹部たる8大罪の怒り担当怪人

広場の復旧には本来であればかなりの時間を要すると考えられていた

当時たまたまここに来ていた者達の成れの果て、それが噴水や地面に壁にとこびり付いていたからだ


そんな光景を前にここに来たものは口を揃えて言った


「なぜこんな事が出来るのかと」


「何を目的にこんな事をしているのだと」


口々に組織の目的を推察しようとするが、どう頭を捻ろうとも答えには至らない

要人がいる訳でもなく、重要施設がある訳でもないこの街に怪人達がわざわざ大軍で押し寄せてくる理由などわかるわけがないのだ


常識があるからこそ、まさか一個人に狙いを澄ましながらも感情的な理由でわざわざ大軍を率いて街に攻め入ったなど思い付かない、思い付くわけがない


ーーでも、こうなった・・・


手から高圧の水を放出すると広場の地面に赤黒く変色してこびり付いていた血は、剥がれると水に押し流されていく


僅かに溶け出した血が水に混ざり薄く赤い線を引き始めると流れに乗って徐々に広がり、次第に希釈され元の透明な水に戻るを繰り返す


雫と茜に何か出来ることは無いかと尋ねたフィリアは、怪人の出現位置であった西区中央広場へと来ていた


彼女が到着した頃には広場に散乱していた者達は警察署へと運ばれた後だった。この後わかる者は故人を特定した後、納体袋に納められた後に家族の元へ、わからない者は出来る限りの事をしてから火葬して集団墓地へと埋葬されるのだが、兎も角として到着した頃には地面にこびり付いた血を丹念に掃除しているだけの状態だったのだ


「終わったかな」


作業をする手を止めて一度辺りを見渡してみる

血で汚れていた広場は彼女の出した水により元の地面の色を取り戻しているのを確認すると「よし」と頷く


「お、終わったかい?」


そんな彼女様子に気が付いたのか、トングと袋を持った男が彼女へと近付いてくる


「悪いね、休んでいても良かったのに手伝ってもらって」


「良い、やりたいからやってるだけ」


自分がやりたくてやっているだけだから気にしないで欲しい

そう言いたいのだろう相変わらず少し言葉が足らない彼女の言に男は感謝の意を内心に浮かべながら微笑む


「そっか、悪いね・・・ありがとう」 


「ん・・・」


そんな謝辞の言葉にフィリアは今一度頷くとキョロキョロと辺りを見渡し始めた

男は何事だろうと思ったが、何かを見つけるとまた男の方へと顔を向ける


「それじゃ、あっちの方手伝ってくる」


彼女の指差した方向に走り出す

男が目を向けてみれば荷物を持つ女性に話しかけると代わりに持って走り出したフィリアの姿が見えた


「変わったなぁ・・・フィリアちゃん」


「えっ、そうか・・・?」


別の場所を見ていた初老の男が感慨深く呟くが男にはその変化がわからず疑問符を浮かべるが、初老の男は尚も変わったと呟く


「前まではヒーローとしての仕事第一って感じだったけど、今はなんか生き生きとしてるよ」


「生き生きねぇ・・・なんかあったのかい?」


「さぁな、でも・・・元気なのは良い事だよ」


それだけ言うと2人の男は仕事へと戻っていく


彼女の背後から近付く男の姿など気にすることなく











「見つけた」


声が聞こえた時、荷物を運んでいたフィリアは背後から猛烈な殺気を感じ取ると前へと飛び退いて距離をとってから振り返る

そこにいたのは浅黒い肌をした筋肉隆々の男が1人


「あなた・・・だれ・・・?」


荷物を置きいつでも指を弾ける様にしながら相対すると、苛立ちを込めた様子を浮かべる


「あぁ? んなもんなんだって良いだろ」


言葉の節々に宿る怒りの感情に気圧され息を呑む


ーーこの男、何かまずい


頭の中で警鈴が鳴り続けたが、そうしている間にも男の容姿は見覚えのある姿へと変わっていく


全身は赤い鱗で覆われ、皮が張り塞がれた両目に額には2本の巻き角


間違いない、あの時トウヤと篝野と戦った8大罪の1体

それがわかるとすぐさま指を鳴らす


「変身」


『音声認識完了、エクスチェンジ』


「おせぇんだよ!!」


機械音声と共に光に包まれ腕を払いガラスの砕ける音と共に青いドレス調の戦闘服が顕にするが、それと同時に身体を電流へと置換した怪人が彼女の目の前まで迫り掴みかかってくる


「グッ・・・!」


回避しようと後ろへと跳ぼうとするが間に合わない


僅かに宙に浮いた瞬間、戦闘服を掴まれ無理矢理引き寄せられた


「フンッ!!」


迫るアガーの頭

引き寄せられたフィリアはそのままアガーの繰り出した頭突きを喰らい反動で後ろへと僅かに飛ばされながら蹌踉めくが怪人はそんな彼女へと拳を打ち込む


「オラァ!!」


「カヒュッ・・・!」


無防備な腹に打ち込まれた重たい拳に肺の中の空気が口から漏れ出る


「オラオラ、次だ!!」


止まらぬ連撃

打ち込む前まで電流に置換して放たれる正しく雷の如き勢いの拳は、彼女に反撃の隙を与えない


遂には拳を打ち込まれた負傷と痛みによる疲弊から膝をつく


そんな彼女にもアガーは容赦しない


「こんなもん・・・かよ!!」


電流へと置換する事なく勢いよくフルスイングされた大木の様に太い脚が彼女のこめかみへと直撃する


彼女の身体はまるで紙切れの様にふわりと一瞬空を舞ったが、すぐさま重力に従い地面へと墜落すると勢いのままに転がる


ーーこれが8大罪・・・


あの時クヨキシと刃を交えた時以上の実感が、地面に倒れ伏したフィリアの心臓を早鳴らせる


歴然とした力

見つけた、その言葉から明らかに狙いは自分である事であり彼女の心中に浮かぶのは明確な危機感であった


悠然と歩いて来るアガーの歩は先ほどの攻撃と比べると一歩一歩が見ていてよくわかる程遅い

近付いてく足音は住民達の悲鳴の中であっても鮮明に聞こえてくる


「クゥッ・・・」


「終わりだな・・・安心しろ、殺しはしない、俺の強さを証明するだけだからな」


「お待ちください、アガー様」


そう言って強く握りしめた拳

しかし、それが振り下ろされる事はなかった


「なんだ? 親衛怪人は姿を見せる事なく8大罪と話をして良いとでも思っているのか?」


周囲を睨みつける様に見渡しながらそう言うと、怪人の背後の景色が少しずつ揺らぎ始める

揺らぎは次第に大きくなり、解ける様にして1体の怪人が姿を現した


「これは大変失礼致しました。しかし、フィリア・リースはスポンサーからも殺すなと指示されております。我々もウココツ様より監視の任を任された身、これ以上の戦闘は・・・」


「わかってるようるせぇな! 要は殺さなきゃ良いんだろ、ウダウダ口挟むんじゃ・・・!?」


その瞬間、何かに気が付いたアガーは腕を薙ぐ

強烈な衝撃波を伴うフルスイングは至近まで近付いていた風の刃を霧散させる


「誰だぁ! こんな木っ端なことするのは!!」


飛来した風の刃を霧散させ怒号を飛ばし視線を向けると、攻撃の主は苦虫を噛み潰した様子を浮かべているのが目に入った


「奇襲したのに防がれたか・・・無事か、フィリア!」


「セド・・・」


騒ぎを聞きつけたのであろう、すでに変身して臨戦態勢を整えたそこにいた


「貴様ら何者だ?」


「何者かじゃねぇよ、テメェこんな事してただで済むと思うなよ!」


アガーの溢れ出る闘気に警戒して拳を構えながら問い掛けるが、そんな事など気にする事なくアガーは怒気を振り撒く


「話を聞く気は無いか・・・ならば」


話していても埒が明かないと考えると、セドは駆け出す

圧縮した空気を用いた動きはすぐさまアガーの懐へと彼の身体を滑り込ませた


「風拳!」


「ウォッ!?」


まずは一撃を腹に、次いでの二撃目は顎に打ち込む

しかし、アガーは僅かに蹌踉はしたがあまり効果が無いのがわかると、指を鳴らし制限魔法を解除しようとする


「・・・チッ!」


だが、指を鳴らそうとした刹那横槍が入った

自身目掛けて振るわれた舌の鞭を寸前で躱わすと距離を取る


「アガー様、ご無事ですか?」


庇う様に前へと勇み出るのは先ほど言い争っていた緑色の怪人だった

こめかみにある大きな赤い目でセドを睨み付けながら、「ゲゲェ!」と前に突き出した頬まで開く大きな口を開き奇声を上げると周囲の物陰から5体の人型怪人が集まって来る


「このヒーローの対処は我々が致します故、どうかお下がりください」


こうきて戦いの幕は開かれた

あっついっすねぇ

みなさん熱中症ならん様にお気をつけ下さい

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