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Balut 5 終

登場人物

浅間灯夜:本作の主人公

フィリア・リース:トウヤの先輩ヒーロー

アガー:8大罪の1人、怒り担当、ベースは

ウココツ:8大罪の1人、恍惚担当、ベースはスライムで分裂能力を有する

氷像で作り出された篝野の分身体を前にウココツ達はたじろぐ


ーーただでさえ1人を相手するだけでも厳しいのに


彼女の分体を作る能力は自身の身体を力を分け与えて分裂させる事で生み出している

だからこそ、数はいても1体1体の能力は分裂を繰り返すたびに低下していく


数での優位を維持できる戦いならば有利に働くが、それが同数で同格との戦いとなれば話は別である


だが、そこで彼女は我に返った


「分身って事は制御はあなたがしてるのよね?」


それはつまり、彼もまた人数が増えれば増える程分身体や操作に割く力も増していくという事だと

ならば条件的には彼も同条件なのでは無いかと思い至る


もしそうであれば、アガーがいる分こちらが有利では無いかと希望的観測を込めた予想を口に出すが、篝野は何も答えない


その沈黙こそが答えだと考えたウココツは小さく嗤う


「おい、そりゃどういう・・・」


「なら、やっぱり性能は落ちてるのね」


彼女の言葉に困惑する様子を浮かべていたアガーではあったが、次に発された言葉に彼も気がついたのか満面の笑みを浮かべると拳を打ち合わせる


「なるほど、そういうことか!」


例え魔人化したトウヤを瞬殺出来たとしても、7体の分身に力を与えながら操作して弱体化している

そうとわかれば話が早い、そう言わんばかりにアガーは駆け出し身体を電流へと置換する


対する篝野に動きは無い

それもそうだろう、如何に強い力を持っていようとも分身に力を使っている以上は弱体化は免れない、であれば今の自分の動きに対応出来ていないのだろう


そう思い勝機を見出したアガーは彼の前で元の身体へと戻ると全力の一撃を叩き込む


火花が散り、悲鳴が響く






「誰も弱体化してるなんて言ってないだろ」


拳が当たる直前、下から上へと振り翳された刀がアガーの身体を切り裂いた


「確かに分身体には俺の力を幾らか供給してるが、それで弱体化するほどやわじゃないぞ、俺は」


「グッ・・・クソが!」


蹌踉めきながら後ろへと数歩下がり、赤い鱗で覆われた目の無い顔を歪め悪態をつく

そんな姿を涼しげな様子で流し見すると刀を再度構える


彼の次の行動を如実に示す、溢れ出る闘気と魔力を前に怪人達はピクリと肩を震わせると、篝野は静かに呟く


「行くぞ」


その一声と共に分身体達は怪人達目掛けて駆け出し、怪人達も迎撃の構えを取る


広場に鳴り響く刃を交わせた剣戟の音

しかし、繰り広げられたのは蹂躙に等しい一方的な戦いだった


振るわれる氷の刃はウココツ達の刃を凍て付かせ、灼熱の刃はアガーの身体を焼く


1人を相手取っても、思考を共有しているのか刃を躱された瞬間に背後から斬撃を見舞われる


「何なのよコイツら!」


「ならこっちから!!」


そんな状況に痺れを切らしたのか、ウココツの分体である2体が隙を伺い分身の1人へと前後から同時に攻め掛かるが、分身体の篝野は冷静に刃へと魔力を送ると氷の刃の下から炎が噴き出ると共に砕きながら熱線の刃を構築した


「炎刃剣!」


横薙ぎに円を描く様に振るわれた刃は猛烈な勢いの青い焔を撒き散らす


「うわっ!?」


「熱っ!?」


尋常では無い温度の焔は半透明な彼女達の刃を焼きブクブクと表面が泡立たせた


痛みと恐怖からたじろぎ立ち止まってしまうが、その行動が彼女達の行く末を決めてしまう


「氷刃剣、一刀両断!」


「炎刃剣、一刀溶断!」


氷の巨剣と燃え盛る焔の剣、必殺の一撃が怯んだ彼女達へと振り下ろされたのだ


2つの必殺の刃は8大罪として彼女達が持っている強固な表皮を容易く切り裂きながら氷の巨剣は断面を凍らしていき、片や燃え盛る焔の剣は全身の水分を沸騰させていくと2体の分体は爆散する


「さぁこれで8対6だな、どうする? こちらの数を減らそうか?」


「グッ・・・クゥ・・・!」


「すごい・・・」


その光景を見ていたフィリアは篝野の戦闘能力の高さに息を呑む


技量、力、魔法の巧さ、そのどれもが自分達よりもレベルが違う


刃を受け流したかと思えば柄の頭で相手の頭を殴打して姿勢を崩した隙に切り裂き

電流へと変換した反撃の拳を振るわれれば半身を逸らして躱し、拳を引いた瞬間自身も少し後ろに下がり刀を切り上げる


どの動作も彼女にとっては速く目で追うのがやっとだった


「で、どうするんだ?」


強い語気で問い掛ける彼を前にウココツ達は言葉もなく顔を歪ませる


元より同数で数でのアドバンテージは取れず、力の差は明らか

そこに2体の分体を倒されたのだから既に勝敗は決した様なものであった


「・・・この屈辱、忘れないわ」


「晴らせる日が来ると良いな」


僅かに顔を上げ見下ろしながら言ってくる姿に苛立ちアガーは舌打ちをするが、それ以上何かをする事もなく飛び上がり立ち去っていく


「良いの?」


その姿を見送りながらフィリアは小首を傾げた

彼であれば倒すのは容易なのでは? という疑問を彼女は抱くが「いや、今はまだ良い」と小さく溜息を吐きながら彼は言うと振り返る


「今はそれよりも街を守る。その阿呆の事見てやってくれ」


「わかった」


首を縦に振り返事をすると、彼もまた頷き返し足元に氷を展開する


まさか、と思いフィリアは目を見開くが彼女の予想通り新たに氷像が10個ほど生成された


「過剰戦力だろうが、まぁ良いだろう・・・」


そう呟くと彼は真っ直ぐにトウヤをを見た後にフィリアを見つめる


「あぁ・・・、その・・・だな、うん」


だが、すぐに顔を左右上下に動かし何かを逡巡した様子を見せる彼にどうしたのだろうかと疑問符を浮かべるが、「よし」と呟くと再び見つめ直してきた


「行ってくる」


それだけ、たったそれだけの事を言うために悩んでいたのだろうか

そう考えると少しばかり可笑しく感じる


だが、彼女はそれを表情に出す事なくいつも通りの無表情のまま答えた


「いってらっしゃい」


8大罪すらいとも簡単に撃退して見せた彼が覗かせた表情の正体はわからない

わからないが、こうするべきだと彼女の中で何かが言った気がした


返事をもらった彼はそのまま顔を背けると、僅かに声を弾ませながら「・・・おう」とだけ言うと分身と共に街の各地へと飛び去っていく


こうして事件は収束していくのだった


数多くの哀しみと共に









街中で戦闘が繰り広げられる最中

教会の中で男が笑う


歪な笑い、気持ちを堪えようとしながらも堪らず漏れ出てしまっている。そんな不気味な笑い声をカーテンも閉め切った暗い闇の中で響かせる


念願叶う流れに男は歓喜した

今回も成功したと、首にぶら下げたどの国のどの文明にも見られないデザインの時の止まった時計を強く握りしめながら、狂気的な笑みをマインは浮かべ続ける

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