Balut 4
登場人物
浅間灯夜:本作の主人公、ラーザ達を侮辱さ人々の犠牲を何とも思ってない8大罪達に怒り絶賛暴走中
フィリア・リース:トウヤの先輩ヒーロー
篝野:偶に助けに入ったりなんか色々暗躍してる無精髭を生やしたおっさん、作者の癖全開、ヘケェ!
アガー:8大罪の1人、対応する感情は怒り
ウココツ:8大罪の1人、対応する感情は恍惚
既に変身して黒い和服の様なスーツを身に纏いフルフェイスヘルメットのような仮面をつけた篝野は、抱き抱えていたフィリアをそっと下ろすと魔人と化し魔結晶を全身に纏うトウヤと相対する
「坊主、確かにラーザ達の件は俺だって悔しいが・・・嬢ちゃんにまで手をあげるのはどうかと思うぞ?」
「ガアアアア!!!」
嗜めようとしている彼に対して結晶で形作られた片腕を切られたトウヤは獣の如き怒りを露わにする
響き渡る怨叫、既にそうなった理由を忘れトウヤは結晶で構築した腕を斬り落とした憎き敵を睨み付けた
結晶の仮面で覆われた冷たい目、仮面を付けているはずなのに理性が無いことが雰囲気から伝わってくる
そんな彼をフィリアは悲しげに見つめ、篝野はほくそ笑む
「力に呑まれるな、これはヒーローの鉄則な筈なんだがな・・・どうしてこうも」
ゆっくりとトウヤの目の前まで歩き出す
彼の動きに恐れはない、あるのはほんの僅かな呆れだった
「カガリノ・・・何をするの?」
そんな彼を見てフィリアは思った
もしかするとこのまま魔人化トウヤを殺してしまうのではないかと、だが、彼女の不安が杞憂であるかと示す様に彼は小さく笑う
「心配すんな嬢ちゃん、殺しはしないよ・・・ただーー
ーー止めるだけだ」
コツと靴音が響き、その瞬間結晶が砕け散る
周囲で見ていた怪人達も、フィリアもその光景に目を剥く
ほんの一瞬の出来事、瞬きをする暇もなく先程までトウヤと相対していた筈の篝野が、次の瞬間には彼の背後にいて同時にトウヤを包んでいた魔結晶に亀裂が入りバラバラと砕け落ちていく
一体何が起こったのか、オータムと同レベルの見当も付かない程の神業にフィリアは困惑する
だが、そんな疑問も砕け落ちていく魔結晶の中から露わになったトウヤの姿を見つけると霧散してしまう
「あ・・・あぁ、トウヤァ!!」
すぐさま彼の元へと駆け出し、力無く倒れようとするトウヤの身体を受け止めるとそのまま強く抱き締めた
「トウヤ・・・」
彼の意識は無く殺されかけもしたが、今はそんなことはどうでも良い
ただ彼が無事で良かった。彼女の心中を占めるのはそんな安堵の感情であった
しかし、ここは戦場であり未だ倒すべきが目の前にいる状況、そう安堵し続ける余裕は無い
刀を肩に担ぎながら篝野は顔を怪人達へと向ける
「さて、じゃあここら辺でお開きとしないか? こっちも色々と疲れてんだよ」
「なっ・・・ふざけないで、誰が逃すと思ってるの?」
気怠げに放たれた言葉にウココツは怒りの感情を露わにする
自分達がやっとの思いで倒した相手を一瞬で倒し、まるで要らぬオマケの様に扱われた事に彼女達のプライドが刺激されたのだ
しかし、彼女達も腐ってもまた8大罪
感情のままに行動するのではなく冷静に戦術を頭の中で構築し、この相手を如何に倒すか考え始めていた
「力量はアレを倒したのを見るにこっちより上、だが・・・こっちには数の有利がある」
「なら、その有利を活かして立ち回って・・・」
彼と戦う前にトウヤは自分達との戦いで疲弊しており、元々瀕死だった可能性もあるので自分達との正確な力の差はわからない
だが、力量差を差し引いてなおこちらには数のアドバンテージがある。それを使って有利に立ち回ろうと考えるが、小声で話していたはずが話を聞かれていたのだろう篝野が刀を振り下ろすと口を開く
「数の差が気になるのか?」
「うっさいわね、当たり前でしょ?」
何言ってんだお前は、そう言わんばかりの圧を放ちながら言うウココツではあったが、どうやらその姿が滑稽に見えたのだろう
篝野は鼻で笑ってしまい、余計にウココツ達の神経を逆撫でする
ーー余裕ぶっていられるのも今のうちだ
内心苛立ちながらもアガーはチラリとフィリア達へと視線を向ける
怪我人と覆すことの出来ない力の差がある弱者、先程庇ったということは何かしらの交流があるということ、ならばこの重荷も有効活用しようと考えていたのだ
「これだけ数がいれば、お前の相手なんて造作も無い」
「あんたこそさっさと逃げたらどう?」
目的を悟られぬ様に篝野を煽る
「そんなに数の有利を心配してくれるなんて、お優しいことだな」
しかし、それは逆に悪手と言えた
怪我人がいて、今この場で8大罪と戦えぬ者がいるなど篝野にとって百も承知
彼は刀を逆手持ちにすると地面に突き立てる
「なら、こっちも数を用意するよ」
その瞬間、刀を中心に広範囲の地面が凍る
こちらへの攻撃かと思った怪人達は警戒し身体を強張らせるが、何も起こらない
その事を怪訝に思いながらこけ脅しかと一瞬思った時、凍った地面から氷の塊が突き出した
「なっ・・・!」
数にして8、クヨキシを除いた今この場にいる自分達と同じ数の氷塊
「お前らのそれは分裂なんだろ?」
魔力の青く細い線が刀から氷塊に流れると次々と氷塊が爆散し色を宿していく
それは黒、目の前の男の纏ったスーツと同じ黒色
手と足を思わせる形にフルフェイスヘルメットを思わせる滑らかな頭、和風の様なデザインの衣装を着込んだそれらは手に握った刀を構えると一分のずれもなく、同時に8体の篝野達が口を開く
「なら、俺たちは分身だ」
それを見たアガーはただ一言だけ呟く
「こんなの反則だろ・・・」
ガタガタキ、ガタキリバァ!!
あぁ〜〜予算破壊される音ォ!!