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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 門鍵モンキー
第一章 異世界に行ったらヒーローになったSO
18/204

ベガドの危機!?魔王軍襲来! 7改

切り取り方まずったらすみません

「大通り付近には穴が空いてます!ここは危険です急ぎ退避して下さい、無事な避難場所は西中央広場です!」


南中央広場から逃げ出した民衆は散り散りになり逃げ出し街のあちこちへと走り出していた

だが南中央広場からの侵攻は一応の歯止めがかかり、主力と思わしき北大通りからの侵入も一時は進行を許したがオータムとエオーネ、戻ってきていたヒーロー1名により押し戻したのだが、東のスラム街からの魔法兵器の流入は未だ止まらず侵攻を続けている


そんな中、トウヤは1人でも多くの人を西中央広場の避難所へと逃がそうと他冒険者と共に声掛けを行い街の南東へと走り続ける


「ここは大丈夫そうか・・・ん?」


路地へと入り声を掛けるが誰からも返答が無いので、問題なしと思い引き返そうとする

すると路地の隅に2つの人影が見えた

見れば母子がへたり込み震えているのが確認出来る

その2人の元に急いで駆け寄った


「大丈夫ですか?」


「あぁ、すみません、私この街の出身じゃなくて避難場所がわからなくて!」


「俺が来ましたからもう大丈夫ですよ、良かったら避難所に案内しましょうか?」


そう手を差し出すとありがとうございますと言い女性は手を取る

そのまま彼女を引っ張り起こす


「こっちです。ここも危険ですから早く行きましょう」


「お願いします。さ、行こ」


「おにいさん、おねがいします」


「うん、じゃあ行こっか」


ここに来て漸く人の為に行動出来たという思いと子供の言葉に頬を緩ませた


そうして路地を進むと不意に子供が後ろを振り返り立ち止まる

そんな娘の様子にどうしたのかと不思議に思い母親が娘へと声を掛けた

だが娘の返事はない

ただ無言で先程までいた路地の奥を指差し言った


「あれ、なに?」


つられて母親とトウヤは指差した方へと視線を向ける

路地の奥の交差地点には1本の管状の何かが這いつくばり蠢いていた

それはやがて持ち上がると壁に触手を掛けて身体を引っ張り出してくる


その正体に気が付いたトウヤは青ざめた


「走れ、2人とも走れ!急げ!」


トウヤがそう叫ぶと母親は娘を抱き抱え一同は走り出す

それと同時に後ろでは何かが暴れる様な音と共に追いかけて来ているのにも気が付いた

抱き抱えられた娘がその正体を目にして涙を浮かべ泣きじゃくる

その泣き声がさらに2人の恐怖を沸き立たせた

このままではあの冒険者達の様に自分達も死ぬ


その恐怖が侵攻が始まり疲弊した精神にはとてもくるものがあった

通りに出た事で限界が来たのだろう、母親は足をもつれさせて前のめりに転ける


トウヤが心配し声を掛け肩を持ち起こすと器用に母親は娘を抱えながら起き上がった


もう間に合わない、後ろから迫る音は確実に逃げられない距離にまで近付いている


トウヤは親子へと顔を向けると言った


「ここは俺がなんとかしますから、先に行って下さい」


「え、でもそれじゃ貴方が・・・」


死ぬかもしれない、その言葉を母親は吐き出せないでいた

それは自分が残っていた所で何か出来るわけではないのを知っているからであり

このままだと愛する娘を含めた全員が死ぬことを理解できたからだ

1人の母親として、それは許容できなかった

刹那の葛藤をトウヤは理解できた

出来たからこそ、サラやラーザが見せてくれた守人としての表情を作る


「大丈夫、俺も適当な所で逃げますから、さ、早く行ってください」


笑顔で持って母親へと告げた

そう言うと彼女は申し訳なさそうにしながらも足早に去って行く

トウヤはそれを震えを抑えながら手を振って笑顔と共に見送る


手足はもう限界まで震えている

呼吸は乱れ肩で息をし始めていた

ベオテの森で感じたあの恐怖をトウヤは再び感じていたのだ


だがあの時と今は違う、今自分には武器がある、魔法が使える


ーーーだから、戦える、立ち向かえる


振り返り路地から出て来た巨躯と相対する

身体強化魔法をかけた冒険者を容易く押し潰せる程の膂力を持った、異様な不定期に揺れる体躯で6本の触手を揺らす畏怖を感じる化け物


人を溶かし殺すことが出来る青い液体魔力の身体を、自身を振るい立たせる様に睨みつける


「来い、化け物!」


腰に下げた棍棒を抜き構え、自身の恐怖を霧散させる様にそう叫んだ


スライムローパーが触手を振り上げるとトウヤは臆せず身体強化魔法を自身にかけ、棍棒へと魔力供給を行う

そうして振り下ろしてきたそれを横に飛び避ける


すかさず魔法で炎を生み出して飛ばしぶつけた、衝突により炎が炸裂するが怯んだ様子はなく

先ほど振り下ろした触手を動かし横に薙いでくる


身体強化により研ぎ澄まされた感覚でそれを察知し脚部へと身体強化魔法を掛けると高く後ろへと飛び避けた


何も倒す必要はない、倒す気で立ち向かうが目的は母子が逃げる時間を稼ぐことだ

だからこそ、トウヤは距離を避ける事に集中する


スライムローパーが触手を再度振り下ろしてくるので、同じ様に横に飛び避けた

しかし、スライムローパーとて同じ手は使わない

トウヤが避けた先に触手を振り下ろして来たのだ

攻撃の気を伺わず逃げる事に集中してたおかげだろうか、振り下ろされる触手に気が付き素早く対応する事が出来た

だが対応出来たからといって完璧に避けられた訳ではない

認識が遅れた分、避ける距離が足らず彼の近くに振り下ろされる形になった触手、石畳に叩き込まれたそれは多数の石飛礫と共に衝撃を発しトウヤの身体に細かな傷を入れながら吹き飛ばした


「がぁ、ぐぅ・・・!」


彼の身体がズサァと音を立てながら地面を滑る

スライムローパーは次の手をすでに繰り出していた

伸縮自在の触手をバネの様に縮め、戻る勢いのままトウヤを突き刺そうと突いてくる


「やっぱそう簡単には行かないよなぁ・・・」


それを見たトウヤは、よろめきながら立ち上がりそう呟いた

だがその言葉に絶望はない、あの母子は今も順調に西の避難場所へと逃げている事だろう

だからこそ、トウヤにとっては死の恐怖よりも今時間を稼げてる事実が何よりも希望につながっているのだ

それ故にトウヤは笑う

スライムローパーが蹌踉めくトウヤに死の一撃を放っていても


だが、それは決して諦めた訳ではない

この3日間でトウヤはラーザやシスから様々な事を学んだ

その一つを実行する為に、トウヤは手を開き前へ出す、すると手のひらから薄い膜が生じトウヤを包み込む


「結界魔法・・・だっけ?」


この世界においてはスタンダードな防御手段であり、最も強力な防御魔法で個人の魔力量に左右される魔法でもあった


空間を曲げ作り出された結界と触手の槍が激突する

強烈な打撃音が響くと共に水気のある音が聞こえた


トウヤの先天性魔力過剰障害による豊富な魔力により構築された結界は、貫かれる事なくスライムローパーの触手を防ぎ、逆にその勢いが仇となり触手の先端が弾けたのだ


その光景を見るや否や好機と思い結界魔法を解除した

棍棒へと今出せるありったけの魔力を乗せ始めると棍棒は光輝き出したそれを、急に結界が無くなり戸惑い静止していた触手へとぶつける

そのまま棍棒により地面へと押しつけられ触手は、棍棒の表面を流れる濁流の様な魔力により皮がズタズタに抉られ、ついには水気のある音を立て破裂した


液体魔力が飛び散りあたりに霧散する

抉られた痛みから、スライムローパーは触手を引っ込め戻しのたうち回る、長さが急に戻った所為か千切れかけた傷口から液体魔力をボトボトと一気に垂れ流していた


「やった、今のうちに・・・」


そう思いトウヤも退避しようとしたが、スライムローパーが腕を伸ばし建物を薙ぎながら触手をトウヤの頭目掛けて伸ばしてくる


咄嗟に身を屈め避けるが、スライムローパーはところ構わず暴れ、触手を振り回していた


「これじゃ逃げられない」


触手が入り乱れる中、避難場所の付近まで逃げるのは至難の業だった

トウヤは知らないが、スライムローパーの痛覚は殆ど感じられないほど鈍く作られている

何があっても前進する兵器に痛覚は不要だったのだ

だが、トウヤによって行われた触手を荒いヤスリで腕を削る様な攻撃はスライムローパーにとって初めての痛覚を自覚させる一撃だった

それ故にスライムローパーは生まれて初めて感じる痛覚に困惑し暴れ回っているのだ


どうすれば良いのか、危機的な状況ではあるが冷静な気持ちを持って考える


だが、現状の打開策は一つしか浮かんでこなかった

正直力技で危険が伴うのでやりたくないと考えてはいたが、このままではいつ飛んでくるかわからない触手に怯えるしかなくジリ貧なのと、まだ技量が足りないトウヤにはこの方法しか思い付かなかったのである


そして、それを実行するためにトウヤは起き上がり身体強化をかけた身体で走り出した



こりゃやっばいね

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