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閑話 大陸間戦争

今回はいつもお馴染みのおまけ回です

その日、男の気分は最悪だった


軍司令部からの命令で空中艦艇に乗り込んだかと思えば数日後には緊急事態の報告と共に新大陸のとある国に会談のために向かった特使の救出を命令され新大陸へと向かう事になった


その時は流石の男も「何故あんな異教徒どもの巣窟に行かねばならないのか」と特使の心配など他所に仲間たちと共に憤慨したものだ


だが、国境を越えた辺りで事態は劇的に変わった

特使がテロにより殺されたのだ、それも旧大陸の国家に属する特使達ばかりが

これを受けて通商同盟はフェイル王国に向けてテロ実行犯の引き渡しを目的とした最後通牒を行った


空中艦隊も進路を変えて会談の場である地方都市から一路王都を目指す事になる


戦争ともなれば流石に王国側からの対空攻撃もある事は予想されたので、王都まで一直線とは行かず途中で降ろされたがそれでも王都は数日で到着する距離にまで近付いていた


「前進せよ!」


空中艦艇から降ろされた兵士達が陣形を組み、ラッパの音共に歩き出す

一歩、また一歩と足を踏み締めるたびに見に纏った魔法鎧が擦り合いガシャガシャと音を立てながら強く地面を踏みしめる

皆、義憤に燃えていたのだ

罪無き特使を殺し我らを侮辱した新大陸の異教徒共に罰を与えるのだと、使命感を燃やしていた


「おい、聞いたか? 新大陸の国のひとつが俺達に協力してくれるらしい」


「俺も聞いたぞ、何でも空中艦隊を貸し出してくれるらしいな、これで軍船に乗ってきた連中を運んで一気に王都を制圧出来る」


「そんなもんなくても俺達だけで十分だよ」


兵士達は歩きながら何処からか仕入れた噂話に興じていた

戦争をしに行くとは思えないまるでピクニックにでも行くかのような余裕の態度

だが、それも当然の話だ


進軍する彼らの陣形の中に一際目立つ非人間的な岩の身体を持つ魔導兵器、魔国と呼ばれる連中からの技術提供により造られた旧大陸にとっては最新式のゴーレム

今も尚続く新大陸の国家群と魔国との戦いで活躍する兵器は兵士たちに安心感を与える


さらには自分達に賛同する自らの過ちに気が付いた敬虔な異教徒の存在は孤独な敵地であっても心強いものであり、彼らを奮い立たせる原動力にもなっていた


俺達は間違っていない

俺たちは正義だ


正しい事をしていると思うからこそ、自信が生まれ行動するための活力になる

あの時までは皆がそう思っていた







『こちらRDスカウト1-3より司令部、首都に向けて進行する敵軍団を発見した』


『司令部了解、ゴーストを向かわせる。スカウト1-3は監視を続行せよ』







何かがおかしい

そう感じたのは男が朝食を取っている時だった


ここは敵地のど真ん中、そうであるにも関わらず無事に夜を超せてしまい迎撃の部隊が出て来る気配が全くないのだ

迎撃の為の戦力を集めるのに時間が掛かっているのではないか、と言われれば確かにそうなのだがそれにしてもである


将軍の話によればあと数時間もすれば味方の空中艦隊が新大陸産の艦艇を伴って自分達と合流するとの事だが、こうも自分達にとって都合良く障害もなく物事が進むと心配になってきた


そう隣に座る仲間達に話すと、彼らは皆男の意見は大袈裟だと笑う

一頻り仲間たちの笑いの種になると、男もまた「そうだよな」と自分を納得させた







『ゴーストから報告、敵総数1500、他増援として空中艦隊がくる様です』


『砲兵隊から連絡、陣地構築完了との知らせあり』


『攻撃を開始せよ』





それは突然だった

行進を再開した直後、自分達のすぐ近くに砲弾が落下したのだ

耳をつんざく程の轟音が複数響き、先程まで余裕の笑みを浮かべていた兵士たちも緊張から表情を強張らせる


「魔法隊は盾を展開しろ!」


将軍からの命令が伝わると、すぐさま男達は円陣を組むと互いに古式魔法と呼ばれる魔法を詠唱し、組み合わせる事で発動する複合魔法の光が円陣の中心から空高く舞い上がると弾け、軍団を守る薄い幕が展開された


散発的に降り頻る砲弾が幕に当たっては弾かれ爆散するのが見える

周囲を見渡すと展開前に直撃した砲弾は無かった様で皆戦意を昂らせていた


次の瞬間には砲撃音が響き味方の砲撃部隊が敵砲兵に対して果敢に撃ち返しのがわかる


「へっ、攻撃して来たかと思えばこの程度かよ」


「案外大したこと無いな」


共に盾の魔法を展開している仲間たちからは哀れな敵に対する侮蔑の声が聞こえる


「しかし、奇妙なもんだよな」


そんな中で仲間の1人が不思議そうに呟くと、男は「何がだよ」と聞き返した


「いや、俺達に向かって撃たれた砲弾、1発も当たる事なく全部外れるなんて不思議だなってよ」


確かに言われてみれば1発くらいは当たっていてもおかしくはないが、そこは運が良かったと考えるべきなのだろう


そう思っていると、仲間を見てつい笑ってしまう






彼の背後に控えていたゴーレムの表面がまるで水面の様に乱れたかと思えば、下から徐々にゴーレムとしての姿が剥げ、漆黒のMRAの姿が見えてしまい

男は引き攣った笑みを浮かべる


次の瞬間にはMRAは戦斧を振るい自分諸共仲間たちを両断していくのが見えた

それが、男の見た最後の光景だった






「敵襲、敵襲!!」


その声に軍団は俄かに騒がしくなるが、報告が届いた時には既に終わりを迎えていた


攻撃を受けたのは防御魔法を展開していた魔法隊、砲撃をしていた砲兵隊だ

敵MRAは幻術を使用していつの間にか軍団内部に潜み、魔法隊と砲撃隊を一挙に排除する時を待っていたのだろうが気が付いた時には既に遅く

これら2部隊を壊滅させたMRA達は兵士たちが迎撃の姿勢を取ると、戦斧を肩に担ぎ後ろへと高く飛び景色に混ざり合う様にして消えていった




『こちらゴースト、目標の排除に成功し退避した』


『司令部了解した。砲兵隊に通達、敵魔法隊の排除に成功した。これで奴等を守るものは無くなった。一気にすり潰せ』


司令部からの命令を皮切りに砲兵陣地から多数の砲弾が飛翔する

狙うは旧大陸軍、彼らは地面の染みとなり消えていく事となった

戦うM9聞いて書いた割にはなんかMRAの登場シーン少ないな


黒いMRA

王都防衛師団所属のMRAでコールサインはゴースト

今回はE型装備を装着して、敵ゴーレムに擬態し砲撃の邪魔になる魔法隊と砲兵隊の排除を行った


RDスカウト

王都防衛師団所属の有翼人種飛行偵察隊

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