Dream of the Dead 4 終
なんかひっさびさにすぐ終わったなぁ
ベガドの街に響く銃声とフィーベルアローの射撃音
ギルドでの騒動の後、追って来たトウヤとカウボーイ風の怪人との戦いは側から見れば拮抗している様にも見えた
怪人の放つ銃弾は的確にトウヤの急所を狙い、しかし、そんな銃弾をトウヤはフィーベルアローにて正確に撃ち落とす
攻撃的な怪人に対して、防御一辺倒なトウヤの行動
普段であれば攻撃の機会があれば容赦なく攻めているはずの彼が何故攻めの姿勢を見せないのか
その理由は単純であった
ーーどうすればあいつから情報を聞き出せる・・・?
倒すのは簡単だ
フィーベルアローを連射して怯んでる隙に必殺の一撃を放てば良い
しかし、今回彼が目的としているのは怪人の討伐ではなく、何を企んでいるのかを聞き出すこと
「おぉい! 守ってばっかじゃなんも出来ねぇぞ、ヒーロー!」
攻撃を全て防がれているにも関わらず守ってばかりのトウヤを見てか、怪人は守ることしか出来ないのだと勘違いして余裕の笑みを浮かべながら声高らかに煽りの言葉を上げる
確かにこのままではどうにもならない
そう考えたトウヤは兎にも角にもまずは怪人を無力化することを選ぶ
銃弾を弾いた僅かな隙に横に飛びながら魔力矢を撃ち出し怪人を怯ませる
「グアっ!?」と悲鳴を上げ姿勢を崩し怯む怪人
腕を無造作に振るいながら体勢を立て直し前を見据えた瞬間、眼前に迫っていたトウヤの手を避ける暇もなく掴まれ後ろにのけ反る
今一度体勢を崩されると股下に滑り込んできたトウヤの足に片足の踵を小突かれ重力のままに地面に叩きつけられた
「答えろ! お前達の目的は何だ!」
「グッ・・・チクショ・・・ウ」
「答えろ!!」
虫の様に足掻く怪人の身体に馬乗りになり、力任せに抑えつけながら声を荒げる
「クカッ・・・ククク」
だが、そんなトウヤに対して返ってきた来たのはクツクツと耐えようとして漏れ出た笑い声だった
何がそんなに面白いのかと、神経を逆撫でされる様な感覚を覚え抑えつける手に余計な力が入る
「何がそんなに可笑しい?」
込み上げてくる怒りの感情を抑えながらも言葉をなんとか絞り出すと、耐え切れなくなったのか「ブハッ」と吹き出すと醜悪な笑い声を響かせた
「何が可笑しい!」
「何今更必死になってんだよ、もう全部遅いんだよ!」
抑えつけられながらも、まるで積年の恨みをはらしたかの様に勝ち誇った声を上げる
「ザマァ、ザマァ・・・!! ざまぁみろ!!!」
愉悦の叫びと共に怪人から光が漏れ出す
怪人が何をするのかトウヤは気がつくが、その頃には怪人の身体が一瞬膨れ上がり次の瞬間には高温の炎を噴き出して爆散する
家屋保護結界により周辺の家屋に破損は無いが衝撃によりビリビリと窓が揺れ、煙が晴れた頃には立ち尽くすトウヤの姿しか無かった
「・・・クソッ!」
組織が何をするつもりなのか、聞き出すことが出来ずみすみす取り逃してしまった
その事実から彼は1人悪態を吐く
事件の後には、不快で不穏なそんないやな感覚だけが残った
「もう、遅い!!」
広場の中心
人々が行き交う中で一組の男女が言い合いをしていた
どうも聞こえてくる会話の内容から男の方が遅刻をしたというのがわかる
嫌でも耳に入ってくるたわいも無い言葉の羅列に近くを通りかかった人々は、あまりの微笑ましさに自然と顔を緩ませた
周囲から聞こえてくるクスクスと笑う声に気が付いたのだろう、恥ずかしげに頬を褒め俯く様子は初々しさまで感じる
さては初デートのカップルだろうか、などという考えが頭にふと過ってしまう
何処か気まずそうに頭を掻く男は、本当に反省しているのかどうか怪しい
そんな男を女は上目遣いで可愛らしく睨みつけた
「それで、どうなの?」
「どうって・・・そりゃいつでも行けるぞ」
男がそう言うと、先ほどのいじらしさは消え満面の笑みを女は浮かべる
「そう、ならやりましょうか」
そうして広場から笑顔が消えた
近くにいた人が異形の怪人へと変貌し皆が驚いている
ーードッキリ成功
暴力を形にした姿に皆が恐怖している
ーーサプライズも大成功
広場が赤く染まる
「あとは・・・メインディッシュをどう調理するかね・・・楽しみだなぁ」
多数の怪人を引き連れて、8大罪のウココツとアガーがベガドの街を練り歩く
目的はただひとつ
ヒーローフレアレッド、アサマトウヤの抹殺だ
貧民街の路地裏で男が1人座り込み、微睡みながらかつて夢見た未来を幻視していた
遠くから響く悲鳴と破砕音が男の意識を現世へと帰還させると、傍に立てかけていた刀を杖代わりにして立ち上がる
「俺・・・行くわ」
誰かが言葉を返す訳でもなく、男が1人そう呟くと立ち上がる
「確かにちょくちょく介入してたけどよ、もうみてるだけなんざ真っ平御免だ」
『Say the passcode』
鉄の棒とも表現できる刀を胸に当て魔力を込める
魔力が供給されていくにつれ胸の内と刀の鍔から淡い魔力の光が溢れ出て、刀を勢いよく振るい離せば内蔵された破陣式が割れて膨大な量の魔力が溢れ出す
そして、機会音声に応えるように篝野は声を上げるのだ
「変身」
全身に纏わりつく光を振り払い、黒色の和服の様なスーツを身に纏いフルフェイスヘルメット様な仮面をつけた姿が顕になると彼は戦闘音のする方へと向けて飛び上がる
大切な物を失って漸く気が付いた
自分の使命を、戦う理由を
しかしてヒーローは遅れてやってくる
常々そういうものなのだ