第28話 Dream of the Dead
日本語直訳で亡者の夢
まぁ夢占いの死人が蘇る夢から連想ゲームしてとった題名です
登場人物
浅間灯夜:本作の主人公
チリ&シリ:ひょんな事からトウヤが助けた貧民街の孤児、今はボランティア施設の手伝いをしている
マイン:ベガドの街にある教会の神父、何やら訳ありの白森人
ダライチ:人間体の時はイダチと名乗り役場の職員として働いている大怪人スーラの部下
実はダーカー博士とは幼馴染
『旧大陸の通商同盟、フェイル王国に向けて宣戦布告』
その日の朝刊の見出しはどこも同じような内容ばかりだった
記事を読んでみると先日の大陸間会談で起きた大陸では使用禁止となっているHMWが使用された事
関係を疑われる王家の暗部についてのゴシップネタが面白おかしく記載されているが、一貫して話の締めくくりにはこう書かれている
『今回の事件での犠牲者へと哀悼の意を表明すると共に、冥府の神ハーデのご加護が在らん事を切に願う』
あれからテロの首謀者は未だ見つからないまま戦端は開かれようとしていた
犠牲者やその遺族の気持ちは晴れる事なく、疑心の目を王家へと向けている
王家の仕業ではない
そうわかりながらも、トウヤは僅かな感情の蟠りを抱えながら新聞を畳むと机の上に置く
「・・・なんでこうなったんだろうな」
あの事件以降、エオーネは店を閉めている
時折オータムや雫達が様子を見に行っているようだが、ラーザとシスの行方不明の報はいつも気丈な振る舞いをしているエオーネにとっても堪えているようだ
セドとフィリアはいつも通りヒーローとしての職務に就いてはいるものの、時折何処か遠くを見つめる事が多くなった
やはり皆、2人がいなくなった事がショックなのは変わらないようだ
「大丈夫か、兄ちゃん・・・」
もちろんそれはトウヤも同じだった
いつもならば明るい雰囲気を醸し出している彼が、僅かに暗いのを感じ取りチリは心配そうに声をかけた
ボランティア施設に来たのだから、明るい雰囲気で接さねばならないのにどうにも気を抜くと表情が暗くなってしまう
「あぁごめんな、チリ、大丈夫だよ!」
そう気丈に振る舞うと彼女の頭をいつもの様にガジガジと撫でた
「ちょっ、やめろって!」と口では言いながらも振り払う気配を見せないチリを可愛く思う
「チリ、サボってないで手伝って!」
「あ、はーい! それじゃ俺行くな」
「おう、頑張れよ!」
トウヤの言葉に反応しながらも、シリの呼び声に応えチリは厨房へと戻っていく
「いやぁ、随分と懐かれてますね、浅間さん」
そんな彼らを見て微笑ましそうに笑う男の姿があった
「子供なんてあんなもんでしょ、それよりもここに来るのは結構久々じゃないですか、今日はどんな本を読むんですか? マインさん」
いつもであればたまにやって来ては女神デアテラの教えを説いたり本の朗読をしに来るのだが、ここ1ヶ月は街自体が色々とばたついていた為にそれが出来ていなかった
もしかして今日はその為に来たのかと思ったのだが、首を横に振る様子からどうやら違う様だ
「今日はあなたの様子を見に来たんですよ、大丈夫ですか? 体調の方は」
「え、俺ですか・・・? いやまぁ特に異常はないですけど・・・」
どうも今日の目的はトウヤの体調チェックだったらしいが、今の今までそんな事など聞かれたことなどなかったのにとトウヤは驚く
「なんでそんな事を聞くんです?」
「ラーザさん達の件もありますから、少し心配になりまして・・・まぁその様子なら大丈夫そうですね」
彼自身の要件は済んだ様で、それだけ言うと立ち上がる
「それでは、また後日」
「は、はぁ・・・」
一体何がなんだか訳がわからず、トウヤはただ気の抜けた返事をするとマインは歩き去っていく
「なんだったんだ・・・?」
気にしてもらえるのは確かに有り難い事ではあるが、あまりにも唐突すぎた為にトウヤは思わず首を傾げる
「戦争か・・・どうしてこうも・・・」
ダライチは人の賑わう市街を見下ろしながらこの街が置かれている状況について考えていた
通商同盟との戦争はこの街にとっても無視できるものではない
街の収支や物流の減少、避難民の流入による混乱と物資不足の加速、さらには直接戦火に巻き込まれる可能性もある
なぜこの様な事になってしまったのかと、思わず天を仰ぐ
「こんな時にあなたがいてくれたら・・・」
物理的な被害ではなく、経済面での被害という簡単には立て直せない事案の事を考え、思わず頭を抱え弱音を吐いてしまう
だが、この程度で挫けてはいられない
そう思いながら手に持っている書類へと目を落とす
「組織は・・・一体何をしようとしている?」
嘗ては属していた筈なのに、全貌が見えない組織の底の深さにダライチは凍るほどの恐怖と気味悪さを覚えた
28話!
ついにここまで来ましたねぇ
鎧武で言うと貴虎が凌馬に裏切られて偽斬月に襲われた回!!
なんか感慨深いですねぇ