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大陸間会談 4

登場人物

浅間灯夜:本作の主人公、ひょんな事からこの世界でヒーローをやる事になった


セド・ヴァラド:トウヤの先輩ヒーロー、大貴族ヴァラド家の元次期当主


フィレス・Fフェル・フェイル:フェイル王国の第一王女、トウヤ達に警護の任を依頼した人物

「すまないな、トウヤ」


ロイヤルフォースに乗り込んでから数時間後、隣町に到着した彼らは喫茶店でお茶を楽しむ王女達一行の近くの席で同じく茶を嗜んでいた


目の前にあるのは小さな赤い果実とクリームをふんだんに使った生菓子

フォークを落とせば小麦粉をベースとした生地に挟まれたクリームと果実が漏れ出し、口に含めば濃厚な甘味が口を支配する


そんな菓子を味わっている最中に向かいに座るセドから掛けられた言葉にトウヤは思わず疑問符を浮かべた


「何がですか?」


「いや・・・面倒ごとに巻き込んでしまったと思ってな・・・」


面倒ごと、それはつまりこの警護任務とは名ばかりの護衛任務の事だろう


「いや、俺は別に面倒事なんて思ってないですよ、それにこんな美味い菓子を食べれるんですから役得ってやつです」


そう屈託のない笑顔を浮かべ言葉を返してくるトウヤ

僅かな緊張はある。依頼内容が元のものよりも遥かに重要度が高い事を隠されていた事に不満はある。だが、それでも本心から面倒ごとに思わず取り組もうという意気込みを彼から感じてセドは思わずつい笑ってしまい、建前と分かりながらも敢えて乗る事にした


「全く・・・お前は現金なやつだな」


「そりゃそうですよ、こんな美味い上物の菓子食える機会なんてそうそう無いんですから」


和気藹々、警護の任にありながらもいつもと変わらぬ楽しげな姿を見せる彼らを、王女フィリスは羨望の眼差しを向ける


ーー良いなぁ


貞淑は雰囲気を出しながらもケーキを口に入れながら、セドと共にお茶を楽しむ青年にいつかの自分を当て嵌め物思いに浸る


口に入れた菓子の味など感じぬままに、想い人への感情を菓子と共に飲み込む


「あれ、トウヤじゃない」


そんな羨望の眼差しを向けられていたトウヤではあったが、ふと声を掛けられる

何やら聞き覚えのある声に胸躍らせて顔を向けると、そこにはラーザとシスの姿があった


「あ、ラーザさんにシスさん、お疲れ様です!」


「おつかれ・・・」


いつも以上におめかしをしているラーザとシスの2人は、軽く手を振りながらもトウヤ達のさらに向こう側からこちらをぼんやりと見つめる王女の姿に気がつくと、慌てた様子ですぐさま彼らの隣に移動して耳打ちする


「ねぇ、あんた達ここで何してるの? サボり?」


「やばいぜトウヤ、あそこにいるの王女様だぞ! サボりがバレたらどうなることか・・・」


何事かと身構えたトウヤ達ではあったが、語られた内容がいつも通りのお節介であった事に胸を撫で下ろすと共に、少しばかりおかしく思えて笑みを溢す


「大丈夫ですよ、これもその任務なので」


「そうだな、我らが王女様の警護任務、もとい護衛任務を遂行中なんだ、心配せずとも俺たちは大丈夫だ」


「そうなのか・・・って、お前らが!?」


安心したかの様子を浮かべたのも束の間、トウヤ達が王女護衛の任についた事に驚きラーザは声を荒げた


「私てっきりオータムさんや雫達とおんなじ任務だとばっかり思ってた・・・」


「え、オータムさん達もここに来てるんですか?」


「そりゃオータムさんも雫も茜も1等級冒険者だからね、こういう任務には必ず呼ばれるのよ」


「なら時間があったら挨拶に行こうかな、最近会って無いですし」


聞き覚えのある名前に心強く思いながら、久方ぶりに会う3人に挨拶でもしようかと思案する


「ねぇ、ところでさっきから見られてるんだけど私たち何かした?」


再び耳打ちしてきたシスの声に振り返ってみれば、フィリス王女がこちらに視線を向けているのが見えたが、彼女はセドの視線に気がつくと慌てて目を背ける菓子を食べ始めた


「まぁ・・・自分の護衛役が仲良さそうに誰かと話していたら気になるだろうな」


淡々と告げられる言葉

確かに護衛が勝手に和気藹々と偶々出会った知人と話していれば普通は気になるどころか任務に集中しろと咎めるところだろう


だが、そんな事もなく逆に熱っぽい視線を向けていた王女の姿に、シスの悪戯心が刺激された


「えぇ・・・それだけ? なんかあんたに熱っぽい視線向けてたけど」


「マジかよ・・・、お前なんかやったのか?」


シスの言葉からラーザもまた興味を惹かれる

一体セドと王女はどの様な関係なのか、お節介ではなく興味本位で2人はセドへと詰め寄った


「確かに・・・セドさんとフェイル王女の関係って気になりますね。なんかヤケに親しげに話してましたし」


「え、マジ? マジ!?」


「トウヤ・・・あのなぁ・・・」


思わぬところで燃料を投下してきたトウヤに、セドは額を抑えながらため息を吐くがそんな事などお構いなしにラーザとシスはさらに詰め寄る


「あの王女様とどんな関係なんだよ!」


「そんなしたいし仲だったわけ?」


耳元で騒ぐ2人を煩わしそうにしながら素っ気なく返す


「なんて事のない、ただの幼馴染だ」


「幼馴染・・・、あの王女様と!?」


「えぇ、それも昔婚姻を誓い合った仲ですよ」


突如として掛けられた鈴の様な声にラーザとシスは硬直し、トウヤは慌てる様な表情を浮かべる

ギギギと錆びついた歯車の様に重く硬い首を後ろへと回せば、そこには美しい金色の髪と可憐な微笑みがあった


「失礼、あんまりにも楽しそうだったもので、混ぜてもらおうかと・・・」


「し、失礼しました!!」


「じゃあなトウヤ! 頑張れよ、あとセドも!」


慌てて王女へと頭を下げらと彼らは駆け足でその場から離れていく


「俺はついでか・・・」


「良いじゃないですか、楽しそうで羨ましい」


そう言いながら遠く離れていく2人の背中を見送る

在りし日の自分達の姿と重ねながら


「あ、あの・・・」


ノスタルジーな感傷に浸るセドと王女、しかし、そんな彼らにトウヤはどうしても確認したい事があったのかしどろもどろになりながらも声をかける


「どうした?」


「婚姻を誓い合ったって本当ですか?」


「ブフッ!?」


彼の言葉に飲みかけていた茶を吹き出してしまう


「え、マジなんですか?」


「ま、待て、それについては誤解がある!」


「誤解だなんて・・・幼い頃に交わしたではないですか・・・」


慌てて訂正しようとするセドに追い打ちをかける様に、頬を染め恥じらいながら言う姿は余計にトウヤの誤解を加速させセドの胃を激しく刺激した


「あまり揶揄うな、子供の頃の児戯の話だろう」


「あら、私はずっと待ってるんですよ、白馬に乗ったお兄様が迎えにきてくれるのを」


フィリス王女が彼を弄るように愉しげに笑うと手で額を抑えながら呻く様な声を上げる


それを見て再び王女は悪戯大成功と思い笑みを浮かべるのだった

ウスズミの果てって漫画知ってます?

これめちゃくちゃ凄いですよ

ニーアみたいな世界観なんですけど、全体的にノスタルジーな雰囲気でもうめちゃエモい


世界観がちょう美しい作品、マジ作者神


単行本なんかもう最後のページマジ最高

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