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飛んだ西国 8

すみません・・・間違えてこっちを7よりも先に投稿したので上げ直しです・・・



だが、その喪失感すらも味わう時間を教会の信者達は与えてはくれない


「うわっ・・・!?」


突然地面が揺れ始めたのだ

あまりの揺れにトウヤ達は堪らず膝を突く


「なんだ・・・っつぅ!」


声を上げた瞬間、現れた痛みと粘り着く様な嫌な感覚に思わず顔を歪める


ーー何か嫌な気配を感じる


懐かしい様でだが何かが違うと感じる違和感、そんなおかしな感覚に頭を抑えながら陥ってしまう


その間に地面の揺れは収まり揺れに耐えきれなかったのだろうか、白亜の城が崩れる音がした


「あれ・・・何?」


フィリアが目を剥いたむき恐れを宿した声音でそう言い城の頂きを指差す

トウヤとクレアは彼女の指差す方へと視線を向けると、そこには1本の青白い美しい腕が伸びていた


「は・・・?」


腕、何故腕が城の天守から腕が伸びているのか

遠目から見ればまるで自分達と同じ腕の大きさに見えるそれは、城の頂でまるで海に漂う海藻の様にユラユラと揺れている


「うっ・・・何あれ、気持ち悪い・・・」


見ていると不気味で魂の底から拒絶したくなるほどの気味の悪い気配を感じ取り吐き気を催してくる


そこで城の大扉が開かれた


「ははっ・・・ハハハハッ! 成功した・・・成功したゾォ!」


「やった・・・やったぁ!!」


ところどころが赤く染まった白いローブを羽織った数人の男女が飛び出してくる


彼らは狂気的な眼を城内へと向け、口々に喜びの言葉を叫んでいた


「我らが神が降臨された! こんな腐った世の中はこれで終わるんだ!!」


「お前らももう終わりだ! 俺を認めなかったこの世界がすぐおわっ・・・」


信者達の叫びに呼応する様に腕が大きく揺れ動くのをトウヤは見逃さなかった


「逃げろぉ!!」


遮る様にトウヤが叫ぶ

しかし、彼の声は届かない


届く前に城の中から壁を突き破る様に現れた巨大な手に叩き潰された


「うっ・・・」


ズルズルと力無く緩慢な動きで引き摺られながら城内へと戻っていく手により、信者達の遺体はすり潰され赤い絨毯が引かれていくのを見て血の気が引く


手によりこじ開けられた城壁の穴から城内へと視線を向ければ、怪しい光により照らし出された無数の巨大な腕が伸びる魔法陣と、照らし出された信者達の遺体が見える


これはまずい


トウヤはベオテの遺跡で見た異形と同じ気配を魔法陣の"先"から感じ取り、彼の本能が激しい警鈴を鳴らす


「あいつを・・・なんとかしないと・・・」


恐怖で震える足に力を込めて立ち上がるが、勝てる光景が思い浮かばない


あの時と違い彼らは満身創痍、新大陸に生息する大型魔獣が助けに来てくれることもない


「・・・うん」


だがそれでも、暗い表情を浮かべながらもフィリアもまた立ち上がる


勝てないからと言って止まるわけには行かないのだ


「・・・な・・・のために・・・」


「クレア・・・?」


「あんなものを呼び出す為なんかに・・・アークトゥルスは蘇らされて、師匠は・・・」


彼女は奥歯を強く噛み締める


アークトゥルスの様な世のための呪いでも無ければ、ラント達の使う召喚魔法でもない

人を呪う化け物を呼び出す為の儀式、そんな事のためにアークトゥルスの安らかな死は穢され、ラントは死んだのかと思うと悔しくて涙が溢れる


だが、その感情の矛先はこれからしようとしている自分の行為にも言える事だった


「・・・うぅ」


クレアは立ち上がり駆け出すと、ポーチから小瓶を取り出して何かをかき集め出した


「クレア・・・何をしてるんだ?」


気が触れたのかと心配になるトウヤではあったが、すぐに立ち上がり2人の前に出ると小さな魔法陣を描き出した

「ごめんなさい、ごめんなさい」そう連呼して涙を流しながら魔法陣を書き終えると白い粉の入った小瓶を魔法陣の中心に置く


「今から・・・あの化け物を呼び出す人を召喚します」


「召喚っていったい誰を・・・まさか!」


小瓶に入った白い粉を見てトウヤは後ろを振り返る。その行動を見ていたフィリアも合点がいった様子を浮かべると口を開きポツリと呟く


「・・・アークトゥルス?」


「はい・・・正直、召喚出来るかわからないですけどね」


正直な話をすればこれは賭けだった

ラントの呪いにより昇華されたアークトゥルスが今更現世への召喚に応じられるとは思えない


だが、それでもしない訳には行かない

試しもせずにあの化け物を放置する事など出来ない、だからこそ賭けに出た


クレアは今は野晒しにするしかない師であるラントの遺体へと目を向け祈る様に呟く


「師匠、力を貸して下さい」


しかして、彼女は魔法陣へと手を伸ばす


「廻れ輪廻の歯車よ、開け冥府の門よ、西の超越者にして王の中の王アークトゥルスよ、我が呼び声に応え冥府より顕現せよ」


祈る様に魔力を込めて発された言葉、しかし、魔法陣に動きはない


「・・・今あなたの城で異形のものが呼び出されようとしています。お願いします・・・顕現して、召喚されて!」


焦りにより声を上擦らせながら懇願するが、魔法陣からは何者も現れる気配はない


「やっぱりダメなの・・・」


その残酷な事実にクレアの心は打ちのめされへたり込み項垂れる


今も魔法陣からはあの手が這い出てこようとしているのに、自分は見ているだけしか出来ないのかとそう思った


ーー大丈夫よ、クレア


「師匠・・・?」


声が聞こえた気がした。今はもう死んだはずの師の声が


「クレア・・・大丈夫だ」


声を聞き顔を上げれば、トウヤが彼女に向けてサムズアップをしていた


「まだ俺達がいる」


どんな絶望的な状況だろうと、ヒーローは諦めない

逆境でこそ彼らは不敵に笑うのだ


「だか・・・ら・・・」


その時、風が吹いた

清涼な暖かな魔力の籠った風が


トウヤ達が自身の背後へと視線を向けたまま固まっている

何事かと思った時、背後に誰か立っていることがわかった


「そうだ、安心しろ」


少し年季の入った男の大きな手が、へたり込む彼女の肩に優しく置かれた


まるで父の様な安心感のある優しくも威厳のある声は聴くものを安心させる


「よく戦ったな、若人達よ」


男は前へと進む、魔法陣からは這い出ようとする化け物に恐れる事なく確かな一歩を踏めしめトウヤ達の前へと歩み出た


握り締めた光の剣は何を守るために掴んだだろう

頭に付けた今は既に色褪せた金色の王冠は誰の為に付けたのだろう

強気瞳の先に何を見据えただろう


そんな物は決まっている

民草の未来を守り、見守っていく為だ


「私が奴を倒そう」


魔剣王、守護神、王の中の王、西の超越者


亡き友の愛弟子の呼び声に応え、賢王アークトゥルスが剣を構えた

こういう展開好きだからこうなりました

FGOの翁とかマジやばかった・・・

まぁネタバレ見てから見たから感動薄かったけど・・・

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