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飛んで西国 5

筆が進む進む

まぁここからちょい停滞するかもですけどねぇ・・・

それから暫く空の旅が続いた

風は穏やかで相も変わらず激しく上下に揺れるワイバーンの背中ではあったが、確かになれてみれば案外快適に感じる


「あの・・・本当に大丈夫なんですか?」


「大丈夫、慣れた」


先程から気になっていたトウヤはチラリとフィリアの方へと目を向けながら僅かな疑心の籠った目で見るが、彼女は何事もない様な表情でトウヤへと返事をする


ーーあの短期間で慣れるもんなのか?


確かに考えてみれば、日頃から変態機動を繰り返している彼女であればこの程度の揺れも案外大した事ないのかも知れない

ひょっとしたら薬の効能のおかげなのかも知れない


何故こうも容体が良くなったのか、良い事ではあるのだがイマイチ納得が行かずトウヤは頭を悩ませた


「みなさん、見えて来ましたよ!」


考えているとラントの声が聞こえ、トウヤ達は前を見るとその視界の先に廃城パラドの姿が見えた


「あれがパラド・・・」


「大きいですね・・・」


小高い山の上に建てられた巨大な城

幾ら主君が失われた長い年月が経とうとも白亜の城は未だ欠ける事なくありし日の美しい姿を残していた


「・・・王よ」


その姿を見て、ラントもまた前王アークトゥルスに仕えていたありし日々を思い返す


あの強く優しかった。臣民の父の様な有り様を示す王の中の王とも呼ばれた嘗ての姿


その脳裏に浮かんだ王の姿に、ラントは眩しそうに目を細める


「今、あなたの栄誉を取り戻してみせま・・・」


「魔力反応!?」


突然廃城となったはずのパラドから高出力の魔力反応を感じ取り一同は慌て出す


「クッ!」


咄嗟にワイバーンの手綱を引き下に回避すれば彼らのいた場所を雷と呼ぶにはあまりにも大き過ぎる雷光が通り過ぎていく


「なんだよこれ!」


「しっかり掴まって!!」


ラントの悲鳴の様な叫びの後、続け様に撃ち込まれて来る雷をワイバーンを巧みに操作する事で躱わすが、時折反応が遅れ空気をチリチリと焦がす熱により頬が焼ける


ーーこのままだと・・・なら!


このまま空中で躱し続けてもジリ貧だと思ったラントはワイバーンの軌道を変え、上へと僅かに上昇した後に急降下させた


降下により速度の乗ったワイバーンだが、追う様に雷が次々と放たれる

徐々に進行方向へと正確に放たれ出したのを確認すると今度は速度を落とす事なく前へと真っ直ぐに進む


「しっかり掴まって下さいね!」


なるべく直進して相手の狙いを絞り、最小限の動きで躱わす

その動きにこの魔法の射手は弱いとラントは知っていた


やがて廃城に近付けば天守から魔法を放つ者の影が見えて来る


そこまで近付くと雷は止み、城壁を越え城内に飛び込んだワイバーンは体力が尽きたのか地面を擦りながら墜落し消失していく


「みなさん・・・無事ですか!?」


「なんとか・・・」


「無事・・・」


ラントが呼びかけると何とか無事であった彼らがトウヤ達は返事をする


「いったい誰があんな魔法を・・・」


そう呟き立ち上がった直後、彼らの向かいに何かが落ちて来た

大きな土煙を伴いながら立ち上がる影を見て、ラントは呟く


「やはり本当に貴方が相手なのですね、我が王」


聞いてはいたが信じたくは無かった

もう一度会いたいと願ったが、こんな再会は望んでいなかった


金のシンプルな王冠に黒く長い髭を蓄えた正しくアンデットと呼称すべき相手だが見間違う訳がない


賢王アークトゥルス

西の超越者が彼らに向けて魔剣を構える





そもそもかの者の魔剣とはいったい何なのか

湖の妖精から託された物か

王の資格を持つ者にしか抜けぬ岩に突き刺さった剣か

星により形作られた剣か


そのどれもが違う

かの者、賢王アークトゥルスの魔剣とは即ち何の捻りもない魔法により形造られる光の剣である


そうであるが故に変幻自在であった




目の前で輝く天にまで届く極光に咄嗟に変身したトウヤは思わず絶望を感じながら目を奪われる


離れているはずなのに、スーツで覆われているはずなのに焼け付く肌の痛みを感じ負けを悟った


「嘘だろ・・・」


ようやく捻り出せた言葉に反応出来る者はいなかった

皆がトウヤと同じ様に極光に目を奪われているからだ


だが、そんな中でも希望を捨てない者もいた


「邪を払いし薄羽の盾よ、戦の神テーナの名の元に、我が呼び声に応え我が身を守れ、アギス!!」


振り下ろされた光の剣をラントが召喚魔法にて呼び出した天使の羽を模った盾で受け止める

盾に防がれ二又に分かれた剣は、両隣の地面と背後の城壁を焼き溶かしていく


後に残ったのは灰とガス

焼き溶かされた石材が気化して高熱のガスとなり彼らへと襲い掛かる


「清涼なる空気の流れよ、呼び声に応え暴風となれ、シフィルド!」


ラントの呼び声に応え、緑色のエクトプラズマが現れたかと思えば襲い掛かるガスを吹き飛ばす


「スゲェ・・・」


召喚魔法、見事アークトゥルスの一撃を防ぎ切ったその力を目にしたトウヤは賞賛の言葉を呟く


だが、まだ何も終わってもいないし始まってすらいない


「まだです!」


額に脂汗を滲ませながらラントがそう叫ぶ


目の前に立つアークトゥルスの亡骸は何故自分の一撃が防がれたのかと、僅かに疑問に思い硬直しているがすぐさま剣を構え直す


今この時を持って漸く戦いが始まるのだ

召喚魔法

契約した魔獣の生霊を召喚する魔法

その力は召喚した魔獣により左右されるが、現世、異界問わずに召喚できるため、歴史上では神話に登場する神獣や過去の偉人の亡霊を召喚することに成功した事例も存在する




自然発生ゴーレム=フィーダス、直訳で胎児を意味する言葉ではあるが基本石製または土製のゴーレムの様なものである

人口のゴーレムとの違いは生息域がダンジョンである事と術式回路の有無であり、フィーダスには魔力の伝う血管のようなものは存在するが、ゴーレムの様な術式回路は存在せずパワーが段違いに事なる

だからこそ、冒険者という只人にすら対処可能なのだろう

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