飛んで西国 4
インビンシブルー無敵のヒーローって知ってますか?
いやあれめちゃグロなので正直人に勧められる様なもんでは無いんですよ
YouTubeとかにも動画転がってるので、見ようと思うなら試しにそれ見てから見て欲しいんですけど、あれストーリーがもうね
ほんっと家族愛というか、マーク(主人公)の成長の話というか、すっごいんですよ
いやもうほんと、シーズン2とかもう切なくて切なくて・・・
気持ちもすっごい理解できるからもう切ない・・・
シーズン3なんかは正義とは、悪とはみたいな内容で心かき乱されるんすよね
特にあのキャラがこのキャラと良い感じになるの!?
え!? お前ここで!?とか・・・
ほんまに・・・脳焼かれます
いつも焼かれてんな(定期)
依頼を受けたトウヤ達は夜が明けた翌朝にダンジョン近くの村を立ち目的地へと向かった
行き先は廃城パラド、数多の侵略からこの王国を守護して来た城である
この城は彼らのいた村から徒歩で凡そ3日は掛かる距離との事なのでトウヤとフィリアは長旅を覚悟していた
していたのだが・・・
「高い・・・めっちゃ高い!!」
彼らは今、空にいた
緊急の案件である事からラントが召喚獣として契約しているワイバーンを召喚したのだ
初めて乗る魔獣の上下に激しく揺れる不安定な背でトウヤは思わず悲鳴の様な叫びを上げるのが、ふと隣のフィリアの様子がおかしい事に気がつく
「あのフィリアさん・・・大丈夫ですか?」
心配になりそう問いかけるトウヤではあったが、彼女から帰って来たのは親指ひとつ、即ち無言のサムズアップであった
「絶対大丈夫じゃないでしょ!?」
「だい・・・じょうぶ・・・」
青い顔をしながらそう答える彼女にトウヤは狼狽えるが、対してそんな彼らを見ていたクレアは楽しげな様子を浮かべていた
「初めてワイバーンに乗るんですから仕方ないですよ、慣れですよ慣れ」
「慣れって・・・」
昨夜とは打って変わり、というか地上にいる時と比べて明らかにテンションの高いクレアに、フィリアの背中を摩りながら顔を引き攣らせる
「とりあえず一旦休憩の為に地上に降りましょうか」
「お願いします・・・」
「クレア、楽しんでないで降りれるとこ探して」
「はーい」
森から抜けた街道沿いの開けた平原、そこに降りるやいなやトウヤはフィリアを介抱しながらワイバーンから降りる
「大丈夫ですか、とりあえずこれ飲んでください」
「ありがとう・・・うっ」
水筒とワイバーンに乗る前に手渡された酔い止め丸薬を座り込むフィリアに手渡すと、彼女はちびりちびりと水を飲みながら薬を呑み込んでいく
それを見ながらトウヤはラントへと顔を向ける
「ラントさん、あとどのくらいで着くんですか?」
このままだと着く前にフィリアが死にそうだと思いながら、ラントに問えば彼女は地図を確認しながら答えた
「ここからだとあと1時間くらいで着きますね」
「そんなに・・・?」
意外と早く着きそうという考えと、まだ意外と距離があると不安に思う感情が混ざり合った声を出す
「一応今みたいな小休憩は何度か挟む予定ではありますが・・・、フィリアさん大丈夫ですか?」
「うん・・・大丈夫・・・」
今までに見ないくらい弱り切っているフィリアではあったが、彼女なりの意地なのだろう
ラントの言葉に大丈夫と言ってふらつきながらも立ち上がる
「フィリアさんあんまり無理しない方が・・・」
「大丈夫、行ける」
脂汗を顔に滲ませながら強がる姿に「ほんとか?」とトウヤは内心思うが、当の本人がそう言っているのだから何を言っても無駄だろうと思いポーチからエチケット袋を取り出し準備をしておく
「そう言えば師匠、今回なんで軍が動かないんですか?」
「軍・・・? あ、前王の遺体だからか」
本来であれば王族の遺体が持ち去られたとなれば動くべきは国の軍隊である
だが、話が来たのは軍隊ではなく自分たち、もっと言えばラントに話が来た
何故軍隊ではなくただの冒険者でしかない彼女に依頼が来たのか、彼女の言葉にトウヤも同様に疑問に感じる
そんなクレアの問い掛けにラントは少しバツが悪そうに目を泳がせながら口を開いた
「軍は・・・どうも別の作戦がある様で動けないとの事です。なので元配下の私に話が回って来たみたいです」
「別の作戦って・・・」
王族の遺体が持ち去られた以上に優先すべき作戦が行われようとしている。その事にトウヤは思わず眉を顰める
別の考え方をすればそれだけラントが信頼されているという事にはなるが、それにしてもであった
「元々私もアークトゥルス王の元で宮廷魔術師をしていましたので、亡き主君の為に働けるというのは栄誉な事ではありますが・・・少し複雑ですね・・・」
「師匠・・・」
国の為に働いた主君の亡骸を粗末にされている様な気がして、ラントは僅かに悲しげに笑う
そんな彼女の表情にクレアとトウヤは居た堪れない気持ちになる
「あ、すみません、なんだか空気を暗くしてしまって、フィリアさんもう大丈夫なんですよね? なら、そろそろ出発しましょうか」
空気が暗くなってしまったのを察してラントが務めて明るくそう言うと、そそくさとワイバーンの背に乗り出発の準備を始めた
「なんか・・・複雑ですね」
「・・・うん」
胸の中に宿る蟠りを吐き出すトウヤではあったが、そんな彼の言葉にフィリアは何かを考え込む様な仕草をしながら返事をした
その様子が気になりトウヤは彼女に顔を向けながら尋ねる
「どうしたんですか? 何か気になる事でも・・・」
「2人とも、早く乗ってください!」
「・・・ごめん、なんでもない、行こう」
クレアの呼び声で誤魔化すかの様に、フィリアはなんでもないと言うと出発の準備を整えワイバーンの背に乗るラント達の元へと向かい歩き出した
ーー王族の遺体を奪還出来ないほどの大規模作戦・・・?
戦乱の予兆すら無いと言われている旧大陸での不自然な程の軍の動きに、フィリアは内心で嫌な予感を感じてしまう
次からは本格的に飛んで西国スタートです
名前は無駄に拘ってます
まぁあの有名作品の語源とか同じ意味の単語から引用した名前ばっかですけど