呼び起こされる太古の獣 7終
ようやく・・・ひと段落つくとこまで掛けた
まぁもうちょい第2章は続くんじゃがな・・・
爆炎すらも飲み込み消失した異形
全てが終わり静まり返った崩れた遺跡の中で、嫌な気配が消えたのを感じるとトウヤはため息を吐きへたり込む
「終わったぁ・・・」
太陽の日差しを燦々と受けながら、短時間の出来事なのに長く感じた戦いの終わりを感じてか身体の力がふっと抜けていく
青い空を眺めながら思う
ーーあれは一体何だったんだ?
異形に感じた猛烈な嫌悪感、そして、鬼の頭領の時も今回も自身に起こった魔力の高まり
元の世界とは違う何処か遠い所から来たかのような、あまりにも異質な感覚に苛まれながらも今はそんな事考えても仕方ないかと疲れから思考を放棄して転がり、元の色に戻ったムーリア達が遠ざかる足音に耳を傾けた
「トウヤ・・・」
か細い少女の声が聞こえ顔を向けてみれば、そこにはスーツを収納して元の衣服に戻ったフィリアがこちらへ歩いてくるのが見えた
「フィリアさん・・・終わりました」
力が抜け切り起き上がることのできないトウヤは、転がりながらそう笑い言うとフィリアもまた、安堵した様子の柔らかな雰囲気を返す
「お疲れ様」
笑ったようにも見える無表情でそう返して来た彼女は、次の瞬間には何かを探すように周囲を見渡す
「マインは?」
「あぁ・・・そうだ探さないと、遺跡の中が崩落してそれっきりなんです」
そう言って何とか身体を動かそうとするトウヤを見てフィリアは内心驚く
ーー崩落に巻き込まれたかもしれないのに、なんでそんな落ち着いてるの?
まるでひと仕事を終えた後かのように落ち着いているトウヤの姿は、いつもの彼らしくない
「トウヤ、地下で・・・」
そう聞いてみようとした時だった
「いやいや、その心配は無用ですよ灯夜」
「マイン・・・今まで何処に?」
つい先程暴落に巻き込まれたと言われていた当の本人が、何事も無かったかのように遺跡の影から姿を現す
フィリアの問いかけにマインは笑いながら答える
「いえ、少し戦闘が派手になっていたので巻き込まれないようにと隠れていたのですよ」
「そうかよ」
たはは、と笑うマインだが、トウヤの反応は何処か冷たい
どうやら地下で何かあったのは間違いないようだが、2人の間に流れる険悪な雰囲気にフィリアは珍しく口を挟めないでいた
「お主ら何をやった!!」
不意に3人に向けて声が掛けられた
声の聞こえた方向へと顔を向けてみれば老婆と数人の男達の姿が見える
「お婆ちゃん・・・」
「お婆ちゃんって・・・フィリアさんとサラのお婆ちゃん!?」
フィリアの呟きに反応してトウヤは声を張り驚くと、老婆は鬱陶しそうにトウヤへと視線を向けた
「何じゃお主、いった・・・い・・・」
そこで老婆の顔が見る見るうちに青ざめていき目を見開いていく
「お婆ちゃん?」
老婆の異変にフィリアが気がつくと、心配そうに声を掛けるが、老婆は反応する事なくマインへと顔を向けると睨み付けた
「マイン・・・お主、何をやった!!」
感情のままに吐き出された怒号に、マインは涼しげな笑顔で持って答える
「何とは・・・何ですか? フェロー」
「貴様・・・!」
煽るように吐き出された言葉にろうば、フェローは青筋を立てながら怒り狂う
「貴様はまだフェ・・・!」
「そこまでだ」
いつの間にか自身の首筋にあてがわれた刃と耳元で聞こえる男の声に、彼女は息を呑む
ーー全く気が付かなかった・・・こいついつのまに
反撃しようと身体を動かすが、凍り付いたかのように動かない
それどころか周囲の男衆も、マインも、フィリアすらも反応どころか動くことすらなく
木々の喧騒すら聞こえなくなっていた
「お主・・・何者じゃ? いったいなぜこんな真似を」
おそらく今自身の首に刃を当てがっている男の仕業だと当たりをつけながらも、フェローは冷静に男に問いかける
「あなたが知る必要は無い、ただその言葉はまだ言わせるわけにはいかないんでね」
「言わせるわけにはいかないじゃと? それはどういう・・・」
そこまで言ってフェローの言葉は止まった
何かを見たわけでも無いし、男に斬られた訳でもない
感じてしまったのだ、男から伝わるとある感覚を、魂の形を理解してしまったのだ
そうして込み上げて来る感情の赴くままに、フェローは笑った
「そうか・・・そういうことか、貴様もか!」
フェローの言葉に男は答える事はなく
ただ刀を握る手に力が入る
「デアテラ様もお人が悪い、ならばワシからは何も言うことはないから安心せい」
全てを理解したフェローは、意地悪い笑みを浮かべそう言うと男は即座に刀を離す
「やけに素直じゃな、わかっていたのか? こうなるのを」
依然動かぬ身体で男に煽るように言って見せれば、バツの悪そうな雰囲気を出して彼女の側から離れながら言う
「さぁな」
男の気配がフッと消えると周囲の音が聞こえ世界から色づき始める
身体が動かせるようになった。そうにも関わらず、フェローは男の反応が愉快だったのか俯き笑みを浮かべていた
「お婆ちゃん?」
まるで写真を入れ替えたかのように怒りの形相を浮かべマインを睨みつけていたフェローが、俯き笑っているのを見て違和感を覚えフィリアは声を掛けるが、尚も笑みを崩すことなくフェローは静かに笑い続けるのであった
転職したので、更新速度がちょい落ちるかもです・・・なるべく2日以内には投稿出来るように頑張ります!
ベガドの街に戻ったマインが教会の扉を開け中に入ると、女神像の前に誰かが立っているのに気がつく
「おや、あなたの様な方がデアテラ様に祈りに来るとは・・・、何のようですか?」
その声に応える様に声を掛けられた男、ゼトアは彼へと鋭い視線を浴びせながらゆっくりとした歩みで彼へと近付く
「貴様・・・あそこで何をしていた」
「何とは・・・何のことですか? 私にはさっぱり・・・」
「とぼけるな!!」
荒々しく声を張り上げると、マインの胸ぐらを掴み上げる
「奴には厳重な封印が為されていたはずだ! いや、それ以前に貴様・・・死者の魂を!」
「まぁまぁ落ち着いて下さい、ここは女神様の御前ですのでなるべく事を荒立てたくは・・・」
「貴様が神を信奉するはずなどないだろう・・・!」
ゼトアの言葉を契機に片やうすら笑い、片や怒る2人の男の間に暫しの沈黙が流れる
だが、そんな沈黙もマインがゼトアの腕を掴み上げた事で呆気なく終わってしまう
「グッ・・・!」と悔しげな声を上げるゼトアを見てマインは笑みを強くする
「今はもうこの程度の力しか出せないくせに・・・」
それだけ言うとゼトアの腕を離す
「今に見ていなさい、もうじきアレは完成します。その時こそ・・・この忌まわしき争いの終焉となるでしょう」