呼び起こされる太古の獣 5
俺ね
鎧武の紘汰さんと戒斗のラストバトルめっちゃ好きなんですよね
人間を辞める覚悟を決めたもの同士の戦いって感じが、もうね、好きなんですよねぇ
勿論他のシーンも好きですよ?
主任のゲネシスドライバー相手に渡り合うシーンとか、スイカアームズのシーンとか
主任が斬月・真相手に圧倒しながらもやられて仮面が割れて顔を露わにして海に落ちてくシーンとか
夢の中での主任と紘汰さんのシーンとか
ビートライダーズの合同ダンスの時に邪魔しようとした城之内が、何だかんだ元のチームに戻って踊り出すとことか
でもね、やっぱ・・・あのラストバトルは脳焼かれるんすわぁ・・・
何かが鳴動する
倒さねばならない敵が現れたと、怒りの炎が強く心の中で燃え盛った
「フィリア・・・!?」
光が収まった頃には木の根元で倒れ込むフィリアの姿が見えた
おそらく寸前で横に飛び退けることで躱したのだろう、急いで彼女へと駆け寄ればあまりの姿に息を呑む
「フィリア・・・おい、しっかりしろ!」
ギリギリ過ぎた為か彼女のスーツは僅かに焼き焦げており未だに熱を帯びている
何とかしようと不得意な水魔法を使い必死に身体を冷やそうとするが、水をかける度に熱を帯びた白煙が上がり蒸し焼きになりそうな印象を持ってしまい躊躇してしまう
どうしようかと思っているとフィリアが目を覚ました
「トウ・・・ヤ・・・」
「フィリア、気が付いたのか!」
「あいつは・・・」
その言葉にハッとして異形へと目を向けるが、なぜか動くことなくトウヤをじっと見つめていた
「大丈夫、今は動いてない・・・今のうちに」
フィリアの手を肩に掛けて立ち上がると、急いでこの場から立ち去ろうとする
「トウヤ・・・あいつを村から、遠ざけないと・・・」
「わかってる。あんな奴村に行かせちゃ行けない・・・でも、その前にフィリアを安全なところに運んでからだ!」
この男はどこまでも強欲だった
少しでも可能性があるのであれば村を守りフィリアも助ける
それもまたヒーローにとっては大切な考えだろう
だが、時としてその考えは人を殺す
ジッとトウヤの事を見つめていた異形が何を思ったのか、突然ビリビリと空気を震わせながら咆哮を始めた
「何だ!!?」
耳を塞ぎながら後ろを振り向くと、指のような腹を翼の様に広げこちらへと伸ばしてくるのが見えた
「危ない!!」
突き出された攻撃にフィリアを突き飛ばし、防御結界を展開して防ごうとするが、まるで紙切れの様に何の抵抗もなく防御結界は裂かれトウヤの肩と脇腹を斬りつけた
「グゥッ」
「トウヤ!」
フィリアの悲痛な声が響く
この異形の前では防御結界も役に立たない様だ
「なら・・・変身!」
その事がわかると痛む身体を動かし腕を振るい円盤を取り出して腰の突起へと嵌める
『モードエボリューション!パ・パ・パ・パワード!!』
包み込んできた光を振り払いパワードへと変身したトウヤはフィーベルアローを展開して魔力の矢を撃ち出す
防御がダメならば攻撃して何とかするまでだ
矢は真っ直ぐに異形へ向かい飛翔するが、その身体に当たった瞬間砕け散ってしまう
「ダメか!」
「あいつは、水流カッターも無効化したの、生半可な威力じゃ、ダメ」
「マジかよ・・・」
ヨロヨロと立ち上がりながら発されたフィリアの言葉にトウヤは驚き冷や汗を流す
だが、その様な敵とは既に相対済みだ
円盤を今一度擦るとフィーベルアローを再度構えた
「だったら!」
『パワード! オーバーパワー!』
スーツの安全装置を解除すると膨大な魔力が供給されると、全てを弓矢へと送ると巨大な弓が形作られる
それを見届けると、トウヤは目を閉じた
ーーあの時、あの時と同じ感覚だ、思い出せ・・・
トウヤが思い浮かべたのは和国での一件
御所で鬼の首領と相対した時、あの時に溢れ出した力を思い起こそうとした
彼があの時感じたのは怒り
人をゴミと罵る悪鬼羅刹と出会った時の怒りを今一度トウヤは思い起こす
ーーこいつは絶対に生かしちゃおけない、あいつと同じだ、絶対に
「ここで止める!」
その瞬間、トウヤの身体の内から力が溢れ出た
膨大した魔力が結晶化して身体の節々に張り付き、限界を超えた魔力が弓へと供給されていき結晶を纏うと共に大きさが増していく
そんな光景を前にフィリアは呆気に取られ呟く
「何・・・これ・・・」
通常ではあり得ない魔力の増大、こんなの事は技術としては存在せずあり得ないのだ
もしあり得るとすればそれは
「魔人化・・・?」
「セイヤァーー!!」
『フィニッシュアロー!!』
雄叫びと共に収束された渦巻く魔力を纏った矢を撃ち放つ
轟音と共に放たれたそれは、空気を切り裂き波を生みだし音の速さを超えて飛翔する
直後爆音が鳴り響き砂埃が舞う、加速された矢が放ったとほぼ同時に異形へと直撃したのだ
確かな手応えを感じながらもトウヤは警戒を崩さない
もし和国の時と同じ存在であるのであれば、あの程度は
「通じてる訳・・・無いよな・・・」
おそらく翼を前に出し盾にしたのだろう、砂埃を払いながら姿を現した異形を見てトウヤはやはり無理だったかと独りごちる
だが、先程とは違う確かな手応えも同時に感じていた
異形が盾にした翼がボロボロに朽ちていたのだ
持ちうる魔力を使い全力で撃ち込んだ一撃を防がれたが、傷らしい傷を付けられた
だからとて状況が好転した訳ではない
ーー撃てるのは・・・あと1回・・・
同じ一撃を放てるのは魔力の残り的にもあと1回だあり、そもそも再度魔力を練り上げるにしても時間が掛かる
敵がそれを待つかと言われれば甚だ難しいと言わざるおえない
次の一手を考えながらもトウヤは構えた
そんな時だった
彼らの背後から唸り声と何かが近付いてくる音が聞こえたのは
何事かと思いチラリと後ろに目を向けると、その光景に愕然とした
「大型・・・魔獣・・・」
2匹の大型魔獣が先程異形が放った魔力砲の跡地を通りながらこちらへと近づいて来ていたのだ
1匹はベガドの街を襲った熱戦を放つ植物型の魔獣ムロイ
もう1匹は強靭な肉体を持つ、赤い毛皮の巨大ゴリラの様な四つ眼の魔獣ムーリア
「マジかよ・・・これ、流石にヤッバイなぁ・・・」
おそらく先ほどの一撃で巣を破壊されたのだろう、明らかに激昂した様子の2頭は争う事なく同じ足取りでこちら目掛けて走り寄ってくる
その様子に思わず異形を無視して振り返り構えたのだが
先頭を走るムーリアはトウヤを素通りして、寧ろトウヤへと仕掛けられた異形の翼による攻撃を受け止めたのだ
「え・・・?」
その事実にトウヤとフィリアの2人は驚くが、ムーリアは翼を掴んだまま引っ張ると異形を手繰り寄せ殴り付ける
吹き飛んだ異形は遺跡を崩しながら地面へと激突し、その様子を見たムーリアは胸を叩き雄叫びを上げた
「一体・・・何が・・・」
「わからない、なんで?」
あまりの光景に混乱するトウヤとフィリアであったが、雄叫びを上げていたムーリアが声を止めてトウヤへと一瞬顔を向けると赤い毛皮の色が徐々に金色へと変化していく
どうも、前書きあとがきには何でも書き込んで良いと思ってる男です
遠くから伝わってくる感覚
その懐かしい感覚についに目覚めたのかと、男はそう独りごちると共に寂しくなる様な感覚を覚えた
そして、次の瞬間に現れた感覚に驚愕する
「この感覚・・・まさか・・・」
「あの・・・どうかしましたか?」
隣に座る受付嬢が不思議そうな目で彼を見つめている
「あぁいや・・・すみません、ちょっとウトウトしていた様です。あ、よかったら飲み物とってきますね」
そう和やかに話すと、男は席を立ち足早に去っていく
「どうしたんだろ」
そんな彼の後ろ姿を見ながらも受付嬢は呟くのだ
「変なゼトアさん」