止めろ!ベオテ村拠点化計画! 7
隠れてしまっているからこそ、それは当人にも気が付けない
本当の善意のつもりでやっているからこそ、トウヤは本気で腹が立っていた
「お前・・・本当にそれが愛情だと思ってるのか?」
全身の痛みを感じながらも、クツクツと湧き立つ感情を抑え問い掛けてみれば、イアは平然と言い放つ
「そうです。この愛こそが世界を救うと私は信じています」
「村の人達は・・・お前の催眠魔法で無理やり操られて死ぬのか・・・?」
「世界の為に死ねるのなら村の方々もきっとわかってくれます。だってこんなに愛が溢れる行動はないでしょう?」
まるで教えを解く語り部の様に腕を広げ部屋を歩きながら、自身の理想に愛という名の飾りを付けて、村人に対し死を強要する様な妄言を吐き散らす
その所業は正しく悪鬼羅刹の言葉の通り、自身の言葉に疑いなく容赦のない存在
だからこそ、トウヤは怒るのだ
少しでも考える力があるのなら、出来るわけがないと判ることすらわからなくさせてしまった組織に
だからこそ、トウヤは哀れむ
そうなるしか出来ないようになってしまった存在に
「ふざけんな! 貴様らの愛は侵略行為だ、人の尊厳を奪い、ただ己の糧にする事を美辞麗句を並べ立て正当化しているだけの行い! そんなの・・・許せるかよ!」
自身の怒りを言葉に変えて、イアに向かって、その後ろにいる何者か達に向かって言い放つと腕を振るい呼び出した円盤状のアイテムを呼び出す
『ライトニング!!』
腰の突起へと円盤を装着しブレスレットを擦り合わせた
『モードチェンジ!ラーイトニングフォーム!!』
トウヤの全身を光が覆い隠し、腕を振るった次の瞬間には光はガラスの砕ける様な音共に散らばり、機動力向上の為に肩と胸部のST合金製物理装甲を無くした代わりに、足に20式電化装甲脚を着けたフォーム、ライトニングフォームとなって現れる
足を固定する粘液を強化された脚力で力任せに引きちぎりながら、強く宣言した
「お前の愛は俺が止める!」
「出来もしないことは・・・言うものではありませんよ!」
言葉と共にイアは粘液を飛ばして来る
トウヤは身体を電流へと置換し躱していくが、粘液の乱射の前に最初は先程と変わらぬ防戦を強いられる
そんな中でもトウヤは冷静に怪人の攻撃を観察した
飛んでくる粘液の乱射は一見隙のない攻撃である。しかし、よく見て避け続ければその射撃間隔の僅かな差が存在するのに気がつく
「・・・これだ」
気が付いてからは粘液ではなく脚を注視した。1度目の射撃を躱し、2度目の射撃で間隔を何となく覚え、3度目の攻撃で確信を覚えると4度目の射撃の後に一気に全身を電流へと置換させた
凡そ人の姿では通れない粘液弾の僅かな隙間を掻い潜り怪人の懐へと飛び込む
「・・・何だと!?」
「セイヤァーー!!」
怪人の胴体目掛けて脚を横薙ぎに振るう
粘液弾を射出していた脚は前に長く展開しているから反撃は出来ない
その考えが油断へと繋がり、彼に大ぶりの攻撃を誘い、大振り故の隙を生んだのだ
彼がその事に気が付いたのは怪人の空いた手が自身の薙いだ脚を掴んだ時だった
「しまった!?」
ライトニングフォームの攻撃は上級怪人であるカウボーイ風の怪人、ソンジシを倒した事で速やかに組織内に共有されていた
無論、その弱点も
狭い屋内で正面から戦う事しか出来ず、怪人からは隙の無い攻撃が容赦なく飛んでくる
そこに僅かな隙が存在し、もしその事に気が付いたならば、こうなるのはある意味で怪人にとっては自明の理であった
改造手術により体内に張り巡らされた術式回路を活性化させると、もう片方の腕に魔力を集中させてトウヤを殴りつける
空気が爆ぜたかの様な爆音と共にトウヤは殴り飛ばされ、部屋を跨いだキッチンの机を粉砕しながら身体を打ち付けた
「うぐっ・・・ぐっ・・・」
「さぁ、これでトドメです」
ライトニングフォームの欠点である防御力の低さから、痛みに悶えるトウヤへと怪人は粘着液を棒状に固めて作った剣を持ってゆっくりと近付いて来る
ジワジワと、まるで愉しむかの様に近付く動きには組織の怪人としての本能とも言うべき加虐性が読み取れた
ーーこのままだと・・・まずい・・・
フォームチェンジを行う隙はない、もし行えばその瞬間怪人は一気に近付きトウヤへと刃を振り下ろすだろう
家の壁を破壊して一旦距離を置くという手もあるが、出来るならそんな事はしたくない
だからこそ他の手を必死に考えていると、手元に砕いた机の上から散らばったであろうナイフやフォークなどが目に入る
「・・・これなら!」
ガッと幾つかのそれらを拾い上げると、間髪入れずに目の前にまで迫っていた怪人に向けて放り投げた
「今更何を・・・」
どう見ても苦し紛れの攻撃にしか見えないそれを、鼻で笑いながら弾く
宙を舞う鉄製の食器達をしっかりと見つめながら、トウヤは倒れたままの姿勢で身体を電流へと置換する
「無駄な足掻きはしない方が・・・!?」
どうせまた直線上に移動しての攻撃が来る
そう思っていた怪人は、電流が背後に回ったのを見てすぐさま振り返るがそこには誰もいない
そして、次の瞬間には背中に伝わる衝撃に何事かと目を白黒させた
トウヤが現れたのは振り返った自身の背後だったのだ
電流の動きを読み振り今度こそはと自身の頭上へと拳を振るうが、またしてもそこには誰もおらず気が付けば自身の真横に姿を現していた
蹴りを受けながらも怪人は考える。何故電流の流れた位置とは違う場所から現れるのかを、そして、その答えは怪人の目の前で床に散らばる食器が電流を受け流していた事が物語っていた
「違う・・・まさか食器を使って・・・!?」
本来直線移動しか出来ないはずだが、鉄製の食器を用いる事で縦横無尽に自身の周囲を駆け巡っている様子に怪人は驚く
「なら・・・!」
種がわかれば食器を遠くに投げ飛ばせば良い、そう思い周囲の食器を風魔法で飛ばそうとするが時既に遅し
縦横無尽に駆け巡るトウヤの蹴りが、怪人にその隙を与えない
「ガフっ・・・!?」
遂には目で追い切る事すら出来なくなり、頭上へと移動したトウヤの一撃を受けて扉を突き破り家の外へと放り出される
「うぐ・・・ぐ・・・」
痛みから悶える怪人を見ながらもトウヤまた別の円盤を取り出し、交換する様にして取り付ける
「変身!」
『モードエボリューション!パ・パ・パ・パワード!!』
機械音声と共に、パワードフォームへと強化されたスーツを更に強化するべく再度円盤へとブレスレットを擦り合わせた
『パワード! オーバーパワー!』
機械音声共に展開されたフィーベル・アローへと膨大な魔力が供給され巨大な弓を形造る
『パワード、スペシャルムーブ!』
「ま、待って・・・!」
怪人は起き上がりながらも命乞いをするが、トウヤは聞く耳を持つ事なく、渦巻く魔力を纏った矢を放つ
『フィニッシュアロー!』
「セイヤァー!!」
放たれた矢は空中で成形され細くなっていきながらも、未だ人間体としての姿を維持した怪人の胴体へと入り込んで行き、術式回路をズタズタに切り裂く
その苦しみからか怪人は身悶えしながらも逆流する魔力により痙攣を始めた
「わた・・・しは・・・あ・・・いを・・・」
まるで何かを欲するかの様に腕を上に伸ばしながら、夜空の元怪人は爆散する
ここまで書いて思ったけど、全然要塞化してないな・・・
タイトル変えようかな・・・ミスったぞこれ
言い訳すると元のプロットでは組織の目的が
建前:フレアレッド討伐のため
本音:遺跡調査のため
だったんですよね
だからこその要塞化何ですけど・・・書いてるうちに狂っちゃったな
後で題名変えておきます
あ、あと次回で21話終わりです
追記:侵略行為というセリフの2回連呼はちょっとくどかったので変更します