止めろ!ベオテ村拠点化計画! 3
旅行に行ってたので更新遅れました・・・すみません
登場人物
浅間灯夜:本作の主人公
フィリア・リース:トウヤの先輩ヒーロー、無表情で言葉足らずな喋り方をする銀髪少女
マイン:学園編後に悩んでいたトウヤが向かった教会の神父、エルフであり実は結構なお歳
篝野:街へと向かうとバスの中でトウヤが出会った男、何故か空間魔法を用いた変身道具を使用してトウヤの特訓を手伝った
バスから降りたトウヤは周囲を見渡し一点を見つめる
「着いたなぁ!」
「おや、篝野さんもここで降りるのですね」
「そうだよ・・・文句あるのか?」
彼の後ろではマインに話しかけられた篝野が変わらず不機嫌な様子を浮かべ、その様を見てフィリアは呆れ返り顔を逸らすと、何処かを見つめているトウヤの姿が目に入った
「どうしたの?」
問い掛けながらもトウヤの視線を辿れば、そこにはベオテの森がある
「・・・俺、あの森でサラに助けてもらって、そのおかげでヒーローになれたんですよね」
ポツリと返された言葉、思えばあれからまだ3ヶ月ほどしか経っていないが、元の世界では考えられない様な生活を営んで来た
今ではその生活にも慣れてしまっていたなと感慨深く感じる
それと同時に思うのだ
「もしあの時サラが助けてくれなかったら・・・あの森で死んでたと思います」
魔法の使い方を知らず、どこかもわからず森を彷徨い、もしかしたら死んでいたかもしれない
そんな突拍子もない想像が彼の頭に過ぎる
今のこの生活があるのも、3大怪人を倒せたのも、全ての始まりがサラに助けられたあの時があったからこそだった
だからこそ、トウヤの心に宿る決意がより一層強くなるのを感じると共に、フィリアへと顔を向けて言うのだ
「絶対に助けます。サラもあの村の人達もみんな!」
「・・・うん、助けよう」
その言葉に頷きと共にフィリアは言葉を返し村の中へと向かうべく歩き出す
あの時助けられた恩を、改めて返すのだ
「お待ちしておりました。フレアレッド様、フィリア・リース様」
「・・・! 変身!」
「変身・・・!」
『音声認識完了、アクシォン!』
『音声認識完了、エクスチェンジ!』
目の前の村の門から出て来た女の言葉に反応して、2人は間髪入れずに変身する
何故自分達が来ることを知っていたのか、そんな疑問と共に警戒心を剥き出しにしながら構えを取ると、声をかけて来た黒髪を緑色のハイライトで染めた女は困り顔を浮かべた
「そんな構えないでください・・・私は戦いに来たのではありません」
「村の人達に暗示をかけたくせに・・・何言ってんだ!」
そうトウヤが吼えると、女は苦々しい表情を浮かべながらも首を横に振るう
「確かに催眠魔法は掛けましたが、誤解です。危害を加える気はありません!」
誤解、その言葉に2人は思わず顔を顰めるが女は言葉を続ける
「私はただ村の皆さんに安全な場所に移動してもらっただけです!」
「安全・・・?」
「そうです・・・私の名はイアと申します。宜しければあなた達に説明するチャンスを下さい・・・」
お願いしますと頭を下げてイアの姿に、トウヤとフィリアは混乱する
彼らが出会ってきた怪人はスーラ一派という例外を除き皆一様に尊大不遜な態度で接して来た
寧ろそのスーラ一派という例外を知っているが故に、村人に暗示をかけて入れ替えた癖に戦おうとせず説明を聞いてほしいと懇願するイアの真意を掴みきれない
「お前の目的はなんだ・・・?」
未だ警戒を解く事なく、しかし、この女の真意を探ろうとトウヤが問い掛けると、言葉を聞いてもらえるとわかったイアは安心した様に顔を上げ語り出す
「私は組織に所属していく中で、戦いの哀しさと愛の尊さを学びました。私は全ての生命を愛しているのです。だから無用な戦いは避けたいし、命を無駄にしたくないのです」
なるべく戦いたくない、そう言う彼女は不安げな表情を浮かべ、本心から戦いたくないと考えている様だった
「村人達は私達の仕事が終われば、必ず愛を持って解放します・・・だから、どうかここは穏便にお願いします」
懇願する様に言うと、再度頭を下げる
イアの言葉が真実かどうかはわからないが、村人という人質がいる以上は下手に動けない
「村の人たちはどこにいるんだ?」
「この村の集会所に集まってもらっています」
あっさりと何処にいるのかを言ってみせたイアにトウヤは言い知れぬ気持ち悪さを抱く
「仕事の内容、何をするつもり?」
「それは・・・宜しければ後程説明させてもらってもよろしいでしょうか? 村の人々の安否を確認してもらいたいのです」
仕事の内容については直ぐには言えないのだろう、暈して話すと共に未だ疑惑の目を向ける2人に村人の安否を確認してほしいと懇願して来た
「・・・フィリアさん、どうしますか?」
彼女からの提案にトウヤ達は動揺を隠せないでいた
村人の場所を教えて、安否を確認して欲しいと会うことすらも懇願して来たからだ
まるで、本当に自分は何もするつもりはないと、必死に見せつけるかの様な行動にトウヤの心は僅かに揺らぐ
だからこそ、先輩ヒーローでありこの村の出身者であるフィリアに意見を求めた
「着いていこう」
「ありがとうございます!」
その言葉にイアは顔を明るくさせ礼を言うと、すぐに2人を村の中へと誘うが、トウヤとフィリアは後ろへと振り返りマインへと目を向ける
「マインさん・・・」
トウヤが心配げな目を向け問い掛けると、彼は微笑む
「大丈夫ですよ、催眠阻害魔法はバスを降りた時から掛けています」
「ありがとうございます」
奥の手である催眠魔法を阻害する古式魔法は発動されていると聞き安心すると、3人は村の中へと誘うイアの元へと向かい歩き出した
「気を付けろよ、坊主」
もうね、ニート期間が終わると考えると憂鬱になって来ますね