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第21話 止めろ!ベオテ村拠点化計画!

ワイルズもひと段落したし、久々の登場に筆が乗る乗る


さて、救難周回しまくってネタ重ね着作ろ

それはトウヤが街に向かってから暫く経とうかという日、サラは村を囲う柵を背にして立っていた


何処か浮ついた様子でソワソワとしていると、街道の向こう側からこちらに向かうバスの姿を見つけると停留所に向けて走りだす


目の前で減速して止まっていく満員のバスを見ながらも今か今かと待っていると、扉が開き中から袋を持った女性が降りて来た


「サラ、また待ってたの?」


「そりゃね! 今日はお姉ちゃんから手紙が届く日だもん!」


姉の手紙が届く日は決まって、配達員を乗せたバスが来るのをサラは村の外で待っているのだ


まるで大型犬の様ないつものサラの姿に、配達員の女性はクスリと笑みを浮かべる


「本当に楽しみにしてるのね、ハイこれ」


「ありがとう!」


女性は手に持つ手紙の入った小袋をサラに手渡すと、他の客が降り切るのを待つ


「今日は何だか人が多いわね」


降りて行った客の列を眺めながらも、女性は不思議そうに呟く


「本当だね、まぁお客さんが多いのが良いに越した事はないけど、まだシーズン前で夕方なのに珍しい」


ベオテ村に来る人の目的は大抵は観光であった

魔の森と称されるベオテの森、そこで採れた魔力を豊富に含む工芸品や魔獣達の生態観察や散策などのアドベンチャーなどがあるが、主な観光客は長期休暇の多い夏真っ盛りか、秋の紅葉シーズンに来る事が多いのだが、今はそのどちらでもないどちらかと言えば初夏に該当する季節


だからと言って人が全く来ないわけではないが、それにしても今日は珍しくバスから降りて来る人の量が多いのだ


「おっと、それじゃサラ、そろそろいくわね」


最後の人が降りて来るのを確認すると、配達員の女性は軽く挨拶をして乗客が居なくなった空っぽのバスに乗り込む


そんな彼女に「ありがとう」と言い手を振りバスが次の停留所へと向かい走って行くのを見送ると、小袋を一瞥した後にニヘラと笑顔を浮かべ楽しげに郵便局へと向かうのであった




郵便局で手渡された手紙の入った封筒を手にベッドの上に転べば、姉であるフィリアの字で宛名の書かれた封筒を開け手紙を読み始める


そこに書いてあったのは自分とは違い街に住む姉の暮らしや姉達が如何にして怪人と戦ったのかについての話


そして、トウヤの話


あの日自分が助けた年上の男性が、ヒーローとしてどんな活躍をしたのか、彼に対しての姉の悩みについてがツラツラと書かれていた


「もう強い怪人を倒せる様になったんだ・・・凄いなぁ」


実はすごい人を自分は助けたのではないか? という考えに胸を膨らませながらも、サラはとある考えを抱いてしまう


ーーあのトウヤが?


少し情けない感じのした年上の男性が、今や上級怪人を討伐するというヒーローの中でも指折りの存在になってしまった事実が何処か可笑しくて、クスリと笑い手紙をサイドテーブルに置き天井を見つめ物思いに浸る


「良いなぁ、私も暮らしてみたいな・・・」


生まれてからずっと街で暮らして来たサラにとっては、街での暮らしには憧れがあった


重厚な壁はあるが、門を抜けてバスを降りればそこにあるのは活気のあるメインストリートと出迎える様に立ち並ぶ屋台


街の中心には摩天楼とも言うべき城が聳え立つ


豊富な料理の数々に洒落た店が立ち並ぶ、サラにとっては正しく別世界の様な光景は時折遊びに行くのではない別の憧れを彼女に抱かせていた


そんな思いを馳せている最中、彼女の部屋の扉が叩かれる


「はーい」と返事をすれば、扉越しからしゃがれた祖母の声が聞こえる


「サラ、村長が呼んでるから来てもらっても良いかい?」


「村長が? なんだろ、ちょっと待ってすぐ行く!」


扉の向こうにいる祖母に返事をすると、サラはサイドテーブルの引き出しに手紙をしまい急いで身支度を整え1階へと降りていく


リビングに顔を出せば、祖母と村長が見知らぬ女性と何やら話をしていたが、何処か様子がおかしかった


祖母と村長は女性の顔を見る事なく、下を向きボソボソと何かを喋っていたのだ


「お婆ちゃん・・・?」


その様子に僅かな恐れを抱きながらも、祖母へと声を掛けるとボソボソとした声が止まり、村長がガバリと勢い良く顔を向けて来る


「ヒッ・・・」と小さく声を上げるが、光のない虚ろな目でサラを見つめ、村長は口角を上げた


「おお、来たかサラちゃん!」


「村長・・・?」


「いや実はな、このお方が君に話があるそうなんだが少し聞いてくれないかい?」


「このお方って・・・」


熱が入りながらも何処か空っぽな様子の言葉を投げかけて来る村長の姿に、不気味さを覚えながらも彼が差し示した方にいる女性へと目を向ける


そこにいたのは黒髪に緑色のハイライトで染めた女の姿、女はサラの視線に気がつくと薄く笑みを浮かべた


「こんばんはサラちゃん、私はイアって言うの」


「・・・」


ーー何、この人


女から声を掛けられたサラは彼女に対して守人として研ぎ澄まされて来た直感からか、不気味な感覚を覚えさせた

粘り着く様な嫌な気配に思わずサラはたじろぎ後退りをする


それを見てか女は小さくため息を吐くと、文字通り目の色を赤く変えて今一度サラへと話しかけた


「大丈夫、落ち着いて?」


その言葉を聞いた瞬間、サラの身体は凍り付いたかのように固まってしまう


「えっ・・・あんえ・・・?」


口が思う様に動かず、呂律が回らず困惑するが、それとは対照的に心は酷く落ち着いてしまっていた


思考とは別の動きを取る心に、サラの思考はさらに混乱していく


女が少しずつ歩みを進めこちらに近づいて来る


ーー助けて


助けを求め村長と祖母に目を向けるが、村長もまた凍り付いたかの様に静止し祖母は小刻みに震え始めていた


ーーやめて


そう懇願しながら目を前に向ければ、女がもう目前にまで迫っている


近付けば近付くほどに強まる女の異様さに、胸の鼓動が高鳴り、意識とは別に身体が震え始めた


ーー来ないで


女が手を伸ばし、サラの顔に触れようとしている


「はふ・・・へて、おええちゃ・・・」


今ここにいない姉に助けを求めながら、恐怖から涙が溢れる


「逃げるんじゃ、サラ!」


その声と共に女の身体へと蔓が巻きつきくの字に曲がりながら前へと引っ張られる


女の視線が外れ自由が効く様になった身体で、声を上げた祖母へと顔を向けた


「お婆ちゃん!!」


「はよう逃げんか! こいつは化け物じゃ!」


祖母を1人で置いていく事に、僅かな迷いを抱くサラではあったが、今の自分ではどうしようもないと考えすぐさま走り出す


リビングから出て廊下を走り、扉を開けて外に飛び出せば


無数の手が彼女を出迎える


「あっ・・・」


そうして、彼女の意識は途絶えた

登場人物

サラ・リース:トウヤがこの世界に降り立った時に助けてくれた少女、フィリアの義妹


祖母フェロー・リース:ハイエルフの女性、旧大陸と呼ばれる大陸の出身であり、1000年前のとある事情から新大陸へと移り住んだ


村長:ちょび髭のお爺さん、良い人

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