第3話 ベガドの危機!?魔王軍侵攻!
しーらない、いーだ、ダーマ神殿
終わっちゃだよ尻取り
焼き鳥のヒップって、若い頃食べてたらなんか良い感じに美味いんですけど
今食べたらちょっとうっぷってなる味なんですよねぇ
切ないなぁ
晴天の空の元、暖かな陽光が降り注ぎ穏やかな春の風が流れている
色鮮やかな草花は流れに乗りその身体を思い思いに揺らしていた
そんな草花を根が残らぬ様に丁寧に抜いては背中のカゴに入れといった作業を延々と繰り返す人影が幾つかある
トウヤ達一行もその一つだ
ラーザ達の元でヒーローとしての研修の前に冒険者としての研修を受ける事になり3日が経った
彼らはとある依頼で今ベガドの城壁の外へと来ている
依頼内容はこの季節になると定期的に行われる草抜きだ
この暑い夏になる前になると必ずと言って良いほど出回る街からの正式な依頼である
一概に草抜きと言ってもその重要度は高い
景観を整えるというのもそうだが、この大陸では草花にすら魔力がベオテの森ほどでは無いが豊富に宿る
魔力が豊富に宿るという事は虫型の魔獣が誘因され易くなり、またそれを目当てとした小型種に分類される魔物や魔獣もまた街の近くに来やすくなるのだ
故にこの様に冒険者ギルドに一斉除去を目的とした数日に及ぶ歩号制の短期依頼が降りてくるのだ
低ランクで比較的受けやすいにも関わらず、公的機関からという事もあってか、難易度のわりに高い報酬に多くの冒険者がこの依頼を受けにくる
また難易度も低いので新人冒険者の良い研修の場として使われる事が多い
今回もその様に使われているのか、ベテランに引率された新人冒険者の姿がチラホラ見えた
斯くいうトウヤ自身も、その様な経緯からラーザ達に連れて来られたのだ
トウヤは自身の膝上くらいはある草の根元へと手をかけ、身体強化魔法を発動した後に一気に引き抜く、根がしっかりしているのか土を掘り返し撒き散らしながら抜けた草を、傍に降ろしていた籠へと入れる
「これいつまで続けるんだ・・・」
嫌気がさしたのか、ぼそりとそう呟く
朝の日が出た頃合いにラーザとシスに呼び出され、新人冒険者用の宿舎を出たトウヤは何が何やらわからぬ間にシスに渡された籠と手袋を持って、朝食を取りながら依頼の説明を受け城壁の外へとやって来た
着いた時にはすでに数十人の冒険者が集まり作業を始めており、トウヤ達もその中に加わり草抜きを始めた
そこから日が頂点に上がるまでずっと草を抜いては籠に入れ、満杯になったら計量に行き、空になった籠を持ってまた草を抜くを繰り返していた
強化魔術の練習になると言われてはいたがこれほど長時間作業するとは思っていなかったので、それなりにくたびれて来ていたのだ
んー、と身体を大きく伸ばす
それなりに籠の中身が溜まったのでもう一度計量に行こうかと思い振り返って籠に手を掛けた
その時だった
湿った様なグチッという音とガサリという草がかき分けられた音が背後から聞こえた
何事かと思い後ろを振り返ってみれば大きな水滴の様なものがゆっくりとではあるが周りの草花を溶かし取り込んで行っている光景が目に入った
よく見ればジェル状の不定形の身体の中に整っていないギザギザとした形の結晶が身体の中心に見える
「うわ、出たよスライム・・・これで何回目だよ」
スライム
それは魔力生命体と呼ばれる種類の魔物であり、土壌から発生した魔結晶と呼ばれる魔力が結晶化した物質を核に、半液体化した魔力の身体を形成し発生する
土壌の魔力含有量が多いこの大陸ならではの魔物であった
数も多く、普段は腐肉などを食べる森の掃除屋と呼ばれる魔物ではあるが畑などに入ると農作物に被害を与える事から、害獣として駆除される事が多い
今回の広域に渡る雑草抜き依頼でも、伸び切った雑草目当てに街に近付いて来ていたようだ
一匹でも残しておくと体内に新たな魔結晶を生成し、延々と増えていくので早々に処理をしなければならない
トウヤはうんざりとした表情をしながらも、腰に下げた棍棒を抜くとスライムへと歩き出す、次いで身体強化魔法を発動した後に棍棒へと魔力を供給すると、内蔵された術式が仄かに光を放ち硬化術式が作動し、表面の魔力伝導率の高いコーティング材を伝い手元から先端へと向かう薄い魔力の流れが棍棒を包み込む
スライムの目の前まで来ると草を貪ってるスライムをよそに棍棒を大きく振り上げ叩き込んだ
べチャリという水気を含んだ音と共にスライムの身体はひしゃげた
内部の魔結晶は棍棒の表面で流れる魔力により削られ、ついで棍棒の質量とトウヤの強化された膂力により完全に押し潰された
核となる魔結晶を失った事で半液体魔力の身体は、グズグズと音を立て気化していく
彼自身、最初は驚きながら戦々恐々といった様子で処理をしていたが、朝から昼にかけての数時間で特に抵抗して来ないスライムを十数匹とそれなりの数を処理したおかげか、幾らでも湧いてくるスライムにやっかみを覚える程慣れてしまったのだ
棍棒を下に向け魔力供給を止めると、重力と先端に向けて流れた魔力の流れに乗ってスライムの残骸がボトボトと地面へと落ちていく
数十匹を処理しても尚汚れの付いていない棍棒を腰にしまうと、再び作業に戻ろうと籠に手を掛けた
「おーい!トウヤ、そろそろ飯にしようぜ」
声の方に目を向けると、籠を背負ったラーザとシスが手を振りトウヤを呼んでいる姿が映る
ようやくか、と独りごちるとその声に返事をし籠を背負ってラーザ達と合流する
昼食は城壁内の門の近くにズラリと並ぶ屋台で取ることになった
草抜きに参加している冒険者をメインターゲットにしているのであろう屋台にはタンパク質や炭水化物といったいかにも現場労働といったメニューの屋台が並んでいる
トウヤはサンドイッチを購入するとラーザ達と合流し、屋台の向かいにある植木の近くで食事を始めた
「ラーザまたこんなにお肉ばっかり食べて、ちょっとは野菜取りなさいよ」
「お前こそ、体力仕事の時くらい肉を食え肉を、野菜ばっか食べてるとばてるぞ」
食事中も相変わらず行われる仲睦まじい掛け合いに、またかと思いながらサンドイッチを頬張る
「やーやー、みんなやってるー?」
「みんなお疲れ様」
そんな彼らに、少女特有の高い声がかけられる
一同が声の方向に顔を向けるとそこにはバーで知り合った茜と雫の姿があった
なぜ彼女達がこんなところにいるのか疑問になった一同は彼女達へと問いかける
「なんでお前らがここにいるんだ?」
「まさか草むしりに参加しに来たの?」
「いや、冷やかし」
そうあっけらかんと言い放った茜に一同はコケる
「冷やかしってお前なぁ、別に良いけど忙しいんじゃ無いのか?」
「そうよ、仕事の方は良いの?1等級冒険者なんだから指名依頼も入ってるでしょ」
「そこは大丈夫、昨日全部終わらせたから」
「マジかよ、中型魔獣の巣の破壊とか無かったか?アレも終わらせたのか」
驚きを通り越して引いているラーザの様子に茜はニヤリと口角をあげしたり顔をする
冒険者の等級には幾つか種類があり、5等級から1等級までがある
1等級冒険者には常に名指しの高難易度依頼、民間用ライフルの弾丸すら弾き高熱の火焔放射を行うフィーゼル以上の魔獣や魔物の討伐依頼が常に舞い込んでくるのだが、それを全て終わらせたと言ってのけたのだ
「オータムも帰って来たみたいだよ?」
「もう帰って来たの!?あの人確か大型の巣の偵察依頼じゃ無かった?」
「やっぱすげぇなあの人、人の域超えてるよ」
大型魔獣
その単語を聞き、トウヤは以前あった講習での内容を思い返す
「大型・・・って確か街すら破壊出来るヤバい魔物ですよね?」
「お、よく覚えてるな、そうだよ、たった1匹で小さな街くらいなら簡単に破壊出来る力を持っている強力な魔物、昔は侵攻を許したら街が何個も破壊されてたらしいぜ」
「今は防御結界や兵器の進化でそんな事無いんだけどね、でも魔王軍とかは大型魔獣とかを何匹も使役して攻めてくるらしいからまだまだ油断ならないんだよ」
「へぇー、魔王軍って凄いんですね、そんなのを何匹も使役できるなんて」
「また戦争始めてるし、北方の国も幾つか何十匹の大型魔獣や将軍との戦闘の末占領されたみたいだからね、ほんと油断ならないよね」
「まぁ私達1等級は召集かけられたらそんな戦場に駆り出されるから他人事じゃいられないんだけどね」
うんうんと思案顔で頷く茜、それに捕捉する様に困った様な様子の雫が告げた
公的機関に所属する冒険者は有事があれば召集される
それが戦争であれ災害であれ、国に所属している以上は避けて通れぬ責務であった
「マジっすか、お元気で、俺お二人のことは忘れませんから」
「いやいや、まだ召集あったわけじゃ無いし君も呼ばれると思うよ」
「俺もですか!?」
まさか自分も召集されるとは思っていなかったのか、トウヤは驚く
「冒険者である以上は仕方ない事だよ、それに参加したとしても1等級も5等級も関係なくみんな後方配備だろうしね」
「流石にMRAや魔物やゴーレム、あと魔人がひしめく戦場になんか居られないからなぁ」
「MRA?」
「魔導強化装甲服の頭文字をとってMRA」
「あぁ、なるほど」
意外と安直だなぁ、と思いながらも納得した様子で頷く
正直彼にとってはその前に発された魔人がひしめく戦場という言葉も気になったが、茜が3人に話を聞いて欲しそうに声を上げてきた
「そういえば聞いてよ!雫ってば酷いんだよ!記念日のことすっかり忘れて・・・」
そうして穏やかな時間が流れていく
グラウンドバスター: 魔王軍の地中侵攻作戦にあたり開発された迎撃兵器であった
地中貫通用のST合金製掘削杭を射出し地中侵攻中の掘削兵器を撃破し阻止する
掘削杭は1本1本が、予め仕掛けられた専用の1回限りの使い捨て術式と反応する様に設計されており、それにより別空間を通じて地中内を進むという仕組みであった
MRA: 新大陸国家軍連盟が第4勇者「鎧の勇者」が持ち込んだアメリア大陸製特殊装甲服を基に作成したパワードスーツ
嘗ては重装甲型、軽装甲型の2種が製造されていたが、高性能化に伴い現在生産されている換装型装甲服が採用された
換装型はその名の通り、基本となる装甲服本体とそれに付随する武装と換装パック、D型(デストロイヤー=砲戦パック)・E型・H型・S型の4パック+専用2パック(F型=フライト、M型=マリーン→潜航強襲パック)が存在する
その汎用性の高さから各方面群で採用されており
A型(空軍採用型=F型適応タイプ)B型(陸軍採用型)C型(海軍採用=M型適応タイプ)が存在する
現在は新型装備であるT型外強化装甲服タイタンタイプが作成、試験実証中である。
タイタンタイプは全長10mの大きさを誇る。対大型魔獣用の装備である
ST合金・・・一体どんなすごいチタン合金なんだ・・・
あと設定説明がなげぇ!!
誰だこんなの考えたの!
あ、俺・・・だったのか・・・スゥ