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The lee of the föhn wind 2

なぁんか長くなりそうな波動を感じる・・・

いやまぁ物語としてはシンプルなんですけどね

店のドアが店が開かれ見知った顔が入って来たのがわかると、ラーザ達は呼び寄せようとまずは顔を向け、次に驚きを露わにした


「セド、その子誰だよ」


「もしかしてあなたの隠し子!?」


「そんな訳なかろう」


ラーザとシスの反応にため息をつくと、カウンターの向こうにいる店主に顔を向ける


「店主、この子の為に何か作ってもらえるか? 1日何も食べないらしい、出来たらあそこの席に持って来てくれ」


そう言うと、店主は「あいよ」と答えると料理を作り始めた


「良いか、君は訛りが酷いからさっき言ったようにあまり喋るんじゃ無いぞ」


ここに来るまでにセドはトローネと何度か会話して、彼女の喋り方に独特の訛りがある事に気が付いていたのだが、その喋り方は今は彼女に取って不利益しかないので一先ずは喋らせないようにと小声で再度釘を刺したのだ


トローネの方もわかっているのか、応じるように首を縦に振るうのを確認してラーザ達の座るテーブルへと向かう


テーブル席ではフィリアや集まった冒険者達含め、皆一様に沈黙し奇異の目でセドとトローネを見つめていた


「あのセドさん、その子って・・・」


「あぁ・・・この子は先の戦いの戦災児だ、腹をすかしていたようなのでな、連れて来てしまった」


そんな中で沈黙を破る様にトウヤがセドへと問い掛けると、帰って来た言葉に皆言葉を失う


ベガド攻防戦や魔人との戦いにより家族を失った者達は、以前トウヤが戦った下水道でのメーテルとハーデの事件を引き起こした母親と同じく、多く存在している


親を失った子供の数も少なく無い


「まだ・・・居たんですね」


苦痛に満ちた表情をトウヤは浮かべる


魔人との戦いの後、いつもの様に貧民街ボランティアに行った時、そこに広がっていたのは彼にとっても痛ましい光景だった


親を亡くし、財産を失い身体を欠損し、いつも通りの日常を歩めなくなった者達が、ボランティア施設へとやって来ていたのだ


国の方でも対応はしているが、被害の多さと財政的な理由で行うにも限度がある

今すぐに出来ることがあるとすれば、それはボランティア施設への追加投資による受入者を増やす試みぐらいだろう


「そうだな・・・それでトウヤ、明日この子を孤児院に預けようと考えているのだが、何処か良いところはあるか?」


「良いところ・・・そうですね、基本何処も同じ様な感じで良いところばかりなので・・・」


「あぁそうだが・・・ちょっと来てくれるか」


「え? あ、はい良いですよ」


そう言いセドはトウヤを連れ添い店の外へと歩いて行く


「どうしたんだろ?」


「さぁな」


トウヤを連れて店の外で話すセドを、シスは不思議そうに見つめた





セドの後に続き店の外に出ると、彼は深刻そうな表情を浮かべていた

その様子から呼び出した要件がただ事ではないのがわかる


「どうしたんですか? 孤児院に連れて行くって言うしあの子に何か・・・」


孤児院とは文字通り孤児を預かる施設であるが、入居には少なく無い金銭が必要になるのだ


それはある意味でこの世界に於ける独特な理由も関係してくるのだが、魔獣災害が多発するこの世界において、定期的な草刈りの様な整備事業などあり多くの金銭が必要となるのだ


国の行う施作の中にも魔王軍に対抗するための軍事費増加や国全体としてのインフラ事業の整備など他にも行うべき政策も多くあり、どうしても浮浪者や孤児への対応は民間のボランティアなどに委託、というよりも完全に手が回らずに対応を丸投げする事が多い


貧民街へのボランティア施設というのがその最もな例である


そんな中で幾ら自分が見つけたとは言え、自分たちボランティア施設に頼むのではなく、孤児院に金銭を支払い預けるとはどういった理由があるのかとトウヤは疑問に思ったのだ


「あの子は魔人なんだ」


「えっ、あの子魔人なんですか!?」


セドの言葉にトウヤは大きく驚きながらも、同時に納得した


「なら・・・確かにボランティア施設に頼むわけにも行かないでしょうね・・・」


「やはり多いのか、施設の方でも」


「職員からのはまぁ無いことは無いです。戦争の原因だし、街が被害を被る理由にもなった訳ですし、ただ1番の問題は貧民街の人達の反応です」


先のジャイアントアント襲来時にもフィリアが遭遇した様に、魔人に対して並々ならぬ感情を持つ人は少なく無い


過去の因縁を元に戦争を幾度となく起こした人種、魔獣を引き連れ家族を友を死に追いやった元凶として、魔国に対する怒りを魔人へとぶつけるのだ


特に貧民街では、そういった事情でやって来た人も多い事もあり、その怒りはより苛烈な物となっていた


「一応今までに魔人が来たことはないですが、そう考えると孤児院に預けた方が安全ですが・・・」


「その様子だと、あまり良い所は無いのだな」


「無い・・・というよりも今の時期は危ういです。職員の中で魔人被害に遭われた人もいるので・・・」


「そうか」と残念がるセドではあったが、彼自身そうだろうなと初めからあまり期待していなかった

役人として仕事をして行く中でも、他の街で孤児院に預けられた魔人へと職員が暴行に及んだという事例を多く聞いているからだ


「あ、というか・・・それなら不味く無いですか?」


「何故だ?」


何がどう不味いのか、何故トウヤは今顔を青ざめさせているのかセドは疑問に思う


「今ラーザさんとシスさん居ますよね?」


その言葉が出た瞬間、セドは急ぎ店の中へと戻って行く

ラーザ達ならば戦災児となれば放っておくはずがないからだ


店内を見渡してみると、自分達の席に人集りが出来ているのが見えた


「なんでだよ!?」


人集りの向こうからラーザの声が聞こえる


「あのお節介焼きめ・・・」


そう呟きながら人を掻き分け席に戻ると、トローネと共にカードゲームに興じるラーザとシス、フィリアの姿が目に入った


「ラーザ、弱い」


「いや俺はその・・・子供が居るから手加減してんだよ、なぁシス」


「何いってるのよ、あなた家でも弱いじゃ無い」


「なぁっ!?」と声を荒げるラーザではあったが、その様子が可笑しかったのか、クツクツとトローネは笑う


「お嬢ちゃん大変だったなぁ、これ食うか?」


彼らを囲う冒険者が包みに入った丸い砂糖菓子を手渡せば、トローネは明るい表情で首を縦に振り受け取り頬張る


「お、どうしたんだよセド? そんな焦って」


「いや・・・楽しんでいる様で良かったよ」


どうやらこの様子だと声を出していないらしい

未だ子供であり、訛りの強いトローネが自分の言い付けを守り喋らずに居てくれて良かったと安心するのであった

ちなみにこの世界に置いて、魔獣の討伐依頼を冒険者ギルドに出す場合、保険と無保険の2つのパターンがあります

無保険だと手数料込みの全額支払い、保険だと幾らかマシになる的なのです

主に村とか集落に住んでる人や街を巡る系の商売の人が入る保険ですが、まぁ費用が高いので村とか集落の場合は1人ではなく村、集落で入るというパターンが多いです。もちろん個人で入るのとは金額が異なりますが、1人1人の負担が少ないというのと組織で入る場合は高い分冒険者ギルドの駐在派遣された冒険者の簡易待機場みたいなのを作ってもらえます。

それ+警察で対応出来ない場合は軍に依頼って感じですね


まぁ一応近代設定なので、もちろん健康保険は民間保険会社頼みではありますが、国は現代と同じくらいの取り組み(災害対策、対応にインフラ整備、新技術対応、警察、各種法整備、テロ対策等)に+軍事費+ビームや炎とか雷とか出す魔獣への対策とかやる事色々あるので孤児への支援はリアルよりも少なめって感じです

その分親の負担が大きくなり、でも孤児の数は多いので定期的にボランティア団体が資金を出したりや寄付金による一括支払いの入居って感じが多いです

チリとシリは嘗ては入所希望として待機していましたが、自分達よりも幼い子供達が来るのを見て入所を取りやめて、その子達が入所するまで守ってあげようとしてる感じ


ちなみに子供の労働に関しては、歴代勇者の取り組みと平時に貴族が色々と取り組んでくれたおかげで子供が働くって事はほぼ無いです。やったね!

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