第19話 The lee of the föhn wind
あ、タイトルはGoogleで訳したので間違えてたら直します
直訳でフェーン風の風下ですね、風関係の題名つけたかったので、それにしてもまぁなんでこんなカッコつけた英語のタイトルにしたんだろ
登場人物
浅間灯夜:暇な時は読書か散歩に行ってる
フィリア・リース:暇な時は散歩するか日向ぼっこしている
セド・ヴァラド:暇な時は読書をしている
ラーザ&シス:暇な時はカードゲームやったり、自宅だと飲んで駄弁っていつの間にか朝になっている
その日はあいにくの雨であった
この地域では雨量が少なく、特にこの暑い季節は雨なんてほとんど降らないと聞いていたが、それでも降る時は降るのだと、ゲーム喫茶のテーブル席に腰掛け、窓から外を見ながらトウヤはふとそう思う
「おい、次トウヤの番だぞ?」
「あ、あぁすみません、えーと俺はラーザさんが怪しいと思います」
夜になり仕事が終わった彼は、ラーザやシス、他の冒険者達と共にテーブルゲームに興じていた
9人の参加者の内、潜んでいる2人の鬼を探すゲームであり、元々は歴代勇者の1人がハマっていたこのゲームを広めたのがきっかけで、一時は大陸中でブームになったゲームである
「あ、それ私も」
「なんでだよ! 俺どこも怪しくなくないか!?」
トウヤの発言にシスが同意すると、ラーザが慌てて声を荒げた
「だって・・・ねぇ?」
誰が鬼かを探している時、常に目をそっぽに向けてあたかも自分は関係ないと言ったあからさまに怪しい行動を繰り返していたのだから、仕方ないだろうと内心思うがバレてしまえばつまらない気もしたので、指摘した2人は少し口籠る
「ラーザさんですから・・・」
「それどう言う意味だよトウヤ!」
明らかに動揺が強くなるラーザに、トウヤは勝利を確信して笑みを浮かべた
「それじゃ判決行きますね、まずはフィリアさんお願いします」
「・・・」
「あの、フィリアさん?」
「・・・ごめんね? ラーザで」
「なんでだよ裏切り者!」
結局ラーザは鬼として処理されて試合は終わってしまうのであった
テーブルゲームが一通り区切りが付くと、各々新しく料理を頼み舌鼓する
「今日は参加してくれてありがとうございます。フィリアさん」
「良いよ、楽しかった」
目の前に置かれた蜜がふんだんに掛けられた乳製品を用いた白い濃厚な味わいのケーキを口に運びながら、フィリアはいつも通り端的に返事をする
「でも意外ね、フィリアっていつも参加して来ないから今回もダメだと思ったのに」
「そうそう、なんで今回は参加しようと思ったんだよ」
「・・・なんとなく」
山盛りの肉をフォークで刺しては口に入れを繰り返しながらラーザが問いかけてくるが、彼女は特に理由は無いと答えた
もちろん嘘である
彼女は切り分けられたケーキの刺さったフォークを咥えながらもチラリと目を隣に座るトウヤに目を向けた
彼もまた目の前に置かれた香草が散りばめられた焼き魚の肉詰めへとスプーンを入れ、中から魚の身と共に出てきた挽肉に「おぉ」と感激の声をあげている
その姿にモゴモゴとはしたなく咥えたフォークを動かしながら釘付けになってしまう
「はぁぁ・・・ほんと、青春してるわねぇ」
「何だよ、なんか気持ち悪いぞ」
無表情で無自覚ながらも可愛い様子を浮かべる見た目麗しい後輩に思わずため息が漏れ出てしまうシスだが、いつもと違う様子にラーザが辛辣な言葉を吐き付けてくる
「いや本当に人って変わるのね・・・」
「お、おう・・・セド・・・頼むから早く来てくれ・・・」
いつもなら怒るところを気にする事なくうっとりとした表情を浮かべる彼女の様子に、思わずラーザは引き気味になり、まだ姿を見せない参加者の1人が早く来てくれるようにと祈るのであった
漸く貧民街での役人としての仕事が終わり店に向かっていたセドは、降り頻る雨の中を傘を刺さずに歩いていた
暗い道を歩いていく中、時折雨音に耳を傾け物思いに浸ってしまう
ーー俺はどうすれば良いのだろうな
ヒーローとして、貴族の長子としてラスの仕事を手伝うようになってから、自身は何か変われたのだろうか
人には散々偉そうな事を言いながらも自分はこのザマかと、自傷気味な言葉が脳裏に浮かぶ
今までならそれで良かったと思えていた
変わらぬ日常、下級怪人ばかりを相手取り、倒し役人としての日常的な仕事を手伝い覚えていく
だが、最近はどうだろうか
勇者護衛任務から3大怪人が現れ、上級怪人や果てには親衛怪人まで現れる始末
激化する魔王軍との戦いの中で、街には魔獣が何度も襲来するようになって来ている
後輩達は成長していくが、自分は過去の出来事に囚われてしまいヒーローとして成長出来ず、役人としても魔王軍の襲来という非日常的な出来事により、新しく覚えるべき仕事が増えて壁に当たってしまう
役人としての壁は乗り越えれば良いし確かに成長して来ている。だが街を守るヒーローとしての自分はどうなのだろうか
挑戦すべき事と解決すべき悩みが同時に存在しているからこそ、今セドは苦悩していた
「・・・?」
そんな彼の視界の端に何か闇の中で蠢くものが見えた
何かと指先から炎を出して照らしてみる
「どうしたんだ、何かあったのか!?」
衣服と髪を泥で汚し、壁を背に座り込む少女の姿があった
貧民街にしては珍しいキチンとした衣服を着込んだ少女の姿に、人攫いにあったのかそれとも暴漢に襲われたのかと考え慌てて声をかける
「しっかりしろ!」
そう叫んだ瞬間、少女の腹からクゥーという音が鳴る
「お腹・・・空いた・・・」
「は・・・?」
思わず少女の言葉に間が抜けた声を出してしまう
「何処か痛むところは無いか?」
彼の問いかけに少女は首を横に振るう
「そうか・・・いつから食べてないんだ?」
「昨日・・・」
その言葉にセドは考えた
ボランティア施設は夜遅い今の時間帯は開いていないだろう、だからと言って放っておく事も出来ないので今1番近い店に連れて行く事にする
「俺も今から夕食をとりに行くところだったのだが、良かったら着いてくるか?」
「良いんですか?」
「あぁ、俺はヒーローをやってる者だ、ならば放っておく事など出来ないからな」
そう言うと、少女へと手を差し伸べる
「俺の名はセドだ、君は名は何という?」
差し伸べられた手を恐る恐ると手に取ると、ふらつきながら立ち上がり少女は自身の名を告げた
「トローネ」
大陸では珍しい名前ではあり、おそらく旧大陸系らしき名前から旧大陸人なのだろうと考えると、一先ず少女、トローネに食事を与えるべく1番近いラーザ達が待つ飯屋に向けて歩き出した
トローネ、名前は熱帯低気圧から単語をとって繋げてます
本当はギリシャ系にしたかったけど、知識不足と参考にしてるサイトで見てもどう頑張ってもギリシャ系にならないので旧大陸系の名前って事で出してます
まぁイタリアではお菓子のヌガーって意味らしいですけど・・・