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勇者抹殺計画 3

和国から帰ってきたトウヤが見たのは煙の上がる街の姿だった


地面は耕され街の中から聞こえる銃声や悲鳴から何らかの戦闘が発生しているのは間違いないだろう、すぐさま通信機を手に取りゼトアへと連絡を取る


「あ、ゼトアさん俺です。浅間です。何があったんですか!」


『浅間くんか!? 帰って来たんだね、街に魔人が現れたんだ今セドとフィリアが対応しているけど、君も向かってくれるか?』


「・・・! わかりました。すぐ行きます!」


魔人が現れた。その言葉に驚きの表現を浮かべるがすぐさま返事をして、通信を切った


そんな慌てた様子のトウヤに雫は並々ならぬ事態だと感じ問い掛ける


「トウヤ、ゼトアはなんて言ってたの?」


「街に魔人が現れたそうです。俺ちょっと行って来ます!」


「えっ、魔人!?」と茜が驚きの声を上げるが、トウヤは焦りからか気にする事なくブレスレットへと魔力を込める


『空間魔法、アクティベート』


「変身!」


『音声認識完了、アクシォン!』


「フレアジェットレディ!」


『イグニッション、プレパレーション!』


「それじゃ行って来ます! イグニッション!!」


「ちょちょ、ちょっと待って・・・うわっ!」


そう言うと茜の静止を意に返す事なく飛び去ってしまう


「行っちゃったよ・・・」


「なら、私達もゼトアに連絡を取ってから行きましょうか」


「もう、行くなら何が起こってるのかちゃんと共有してから行ってよ・・・」







現場に到着した魔人と邂逅したフィリアとセドは、セドの一撃により魔人が吹き飛び崩れた建物の壁を注意深く見つめていた


トンファーダガーを構え、練り上げた魔力をいつでも出せる様にしながら、飛び出して来る魔人にいつでも対応出来る様にと深く構えを取る


だが、飛び出して来たのは魔人ではなかった


「・・・!」


飛んできた物体へとダガーを振るうと、物体は砕け半透明な破片を散らばらせる


「これは」


「まだ来るぞ!」


セドの叫びと共に幾つもの先の尖った魔結晶が2人へと飛翔してくる


急ぎその場を飛び退き躱わすが、魔結晶が通り過ぎた後の彼らがいた場所に紫電が走り、そこに笑顔の魔人が急に姿を現した


「さて、どちらにしようかな」


「この人」


「マズイ!」


どちらを標的にするか、悩んでいる様な仕草を見せる魔人ではあったが、すでに標的は決まっているのか送られて来る殺意にセドが反応し声を出す


魔人が動き出すか否かの瞬間、セドは急ぎ風魔法を用いて空中での方向転換を行うと彼の視界の端に魔人が現れ、拳がこめかみを掠める


「あら、外れた」


額に汗を滲ませるセドとは対照的に、魔人は見せつけるかの様に意地悪く笑みを浮かべながら、まるで期待していなかったクジのハズレを引いた時の様な形だけの空っぽな言葉を投げかけてくる


そんな魔人へと慣性のままに空中を動き遠ざかりながらも風の刃を放ち切り裂こうとするが、対して魔人もまた同じく風の刃をぶつけてきた


一瞬拮抗したかに見えた風の刃ではあったが、込められた魔力の差からか、魔法の威力で劣るセドの刃が押し負けると形が崩れ、刃の形へと纏めていた風が彼へと襲い掛かる


「セド!」


フィリアの叫びも虚しく、荒れ狂う風に押された彼の身体は地面に強く打ち付けられた


「う・・・ぐぅっ」


幸いな事に、魔人の風の刃が彼を切り裂くよりも先に吹き飛ばされたおかげで、打ち付けられた以外のダメージは無いようではあるが、それでも怪人すら切り裂く程の風の刃を形成していた風により吹き飛ばされた衝撃は大きく、あまりの痛みに喘ぐ


「ほらほら、早く反撃して、ハリーハリー! 戦いは楽しまないと!」


倒れるセドへと、魔人は恐れる様子もなく楽しげにゆっくりと歩を進め近付いていく


「させない!」


フィリアはすぐにスーツの身体強化術式を全開にすると、セドを守る為に魔人へと飛び掛かる


何度かトンファーダガーを振るうが、身体強化魔法の出力が異なる為か、彼女よりも圧倒的に高出力のそれにより高められた身体能力で見切られ、全ての攻撃を魔人が生成した剣により弾かれ、いなされてしまう


自身の持てる力を使った攻撃が全て防がれた事でフィリアの中に焦りが募るが、そんな彼女を煽るかのように魔人は嗤う


「無駄ですよ、あなたの攻撃は通用しません、力の差がありすぎる」


「まだ!」


尚も挑もうとするフィリアの姿に、魔人は呆れ果てるようにため息をつく


「何故戦うのです? あなた方に勝ち目は・・・」


そう言った直後、突っ込んできていたフィリアは制動を掛けると、後ろへと飛び退く


一体どうしたのかと疑問に思う魔人ではあったが


「油断大敵だな」


不意に隣から声が聞こえ、顔を向ける暇もなく脇腹に風の刃をぶつけられ吹き飛ぶ


風の刃を作り出した張本人であるセドは、何故か苦々しい顔を浮かべながら震える拳を見つめている


「セド、大丈夫?」


「あぁ無事だ、だが・・・情けない、この程度しか出来んとはな」


隣にやって来たフィリアが心配そうに声をかけるが、込められるだけの魔力を込めた一撃をぶつけたにも関わらず、ゆっくりと立ち上がる魔人を見て自身の不甲斐なさを悔やむような声を漏らす


そんな彼とは対象的に魔人は怒り狂っていた

格下と思っていた相手に、またしても一撃を入れられて醜く土を被りながら転がってしまった事実に、憤慨したのだ


「貴様ぁ・・・! 一度ならず二度までも!」


一気に高まる魔人の魔力に2人は思わず思考する事を忘れ見入ってしまう


「なんだこれは・・・」


彼らの目の前で魔人が頭上へと手を掲げると、巨大な火球が生成されようとしていたのだ


迎撃の為に出した風の刃ですら、セドの刃を上回る出力を誇っていたのに、この火球はそれ以上の高濃度の魔力でもって作り出されていた


おそらく一度でも内包する火が溢れ出せば、今いる街の西側は甚大な被害を被るであろう


そんな火球を前にして、2人は動けない

阻止する為に攻撃をするべきだが、どう攻撃すれば魔法の発動を阻止出来るほどの有効打を与えられるのか、わからないのだ


吹き飛ばすにしても、今までの攻防ーーというよりも遊ばれていたーーで自分たちの魔力量では真正面からの攻撃は通用しないのはわかっている


だが、考えるよりも何かせねばただ黙ってやられるだけになってしまうと、そう思い意を決して動き出そうとした瞬間だった


「セイヤァーーー!!」


甲高い少女の声と共に一つの鎧が魔人の顔へと拳をぶつけ殴り飛ばしたのだ


鎧は地面を転がる魔人の姿を横目に見ながらも2人へと顔を向ける


「大丈夫ですか! フィリアさん、セドさん!」


「天華、なんで来たの?」


そこにいたのは魔人襲来の報を受け退避していた筈の鎧の勇者、雨宮天華だった


彼女は両腕を曲げて胸の前で拳を作ると溌剌と言う


かつて自分が言われた言葉を、思い起こしながら


「助けに来ました!!」


自分も誰かを守るヒーローになるのだと、胸に使命感を燃やしながら







『こちらイーグル、街の様子が確認できた。酷いもんだよ、鎧の勇者も確認した。どうやら魔人と戦うみたいだが援護に入っても良いか?』


『こちらマパナ、ダメだイーグルチーム、お前達だけでは犠牲を増やすだけだ、勇者ならしばらくは持つだろう、本艦もまもなく到着する。偵察を続けてくれ』


『了解した』

登場人物紹介

フィリア・リース:魔人から何故か様付けされてたトウヤの先輩ヒーロー、元捨て子


セド・ヴァラド:現在進行形で自らの意思で拳を振るう事に恐怖を覚えるトウヤの先輩ヒーローその2


雨宮天華:ひょんな事からトウヤに助けられた鎧の勇者、あの時のトウヤみたいになりたいと思い馳せ参じた


勇者を退避させた理由、この時の勇者を用いた戦術が勇者を如何に突出させずに味方の支援のもと戦わせるか、という戦い方になっているので十分な支援を得られない現在の状況と、魔人が一体現れただけではあるが、また何体か急に現れる可能性も考えられた為退避させたが、出て来ちゃった

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