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第18話 勇者抹殺計画

登場人物紹介


フィリア・リース:トウヤの先輩ヒーロー


セド・ヴァラド:トウヤの先輩ヒーローその2


エオーネ:barエオーネの店主で超越者候補生、オカマになる為に修行中である


雨宮天華:鎧の勇者、異世界に召喚されたばかりの頃にトウヤに助けられる


剣の勇者クワバナ:南アフリカ出身の勇者


槍の勇者アルベルト:ドイツ出身の勇者


司令官:ベガド防衛隊の司令官の男、ダンディ


副官:ベガド防衛隊司令官の副官、冷徹なウーマン

歓声に沸く街、そんな中を駆ける2人の男の近くでカタリと音が鳴る

1人の獣人の男が音に気がつくと、その方向に目を向けるが、視線の先には何も存在しない


「何やってるんだ、早く行くぞ」ともう1人の白人の男に呼ばれ気味の悪い感覚を覚えながらこの場を離れた


男達の離れていく靴音が遠くから響く歓声に混じり聞こえる中で、マンホールの蓋がゆっくりと持ち上がる





「よう、お疲れさん」


歓声がひとしきり落ち着きを見せ、ジャイアントアントが走り去った後の門前でフィリア達と剣と槍の勇者は合流を果たした


エオーネに何やら話しかけていたのであろう2人は、フィリア達に気がつくと労いの言葉を掛けてくる


「お疲れ様2人とも、やっぱり凄いね2人は」


「へへっそうだろう! 俺様とゲイボルグに掛かればこの程度造作もないぜ!」


「ところであの水流カッターはあなたが?」


「うん」


「そうか、出来ればどうやってやったのか教えて頂きたいのだが!」


無表情なフィリアに対して、興奮した様子を見せる剣の勇者クワバナは彼女に対して水流カッターのやり方について、鼻息を荒くしながらも問いかける


「・・・感覚?」


「もう少し具体的に!」


ある種の知的欲求なのだろう、暴走気味のクワバナに僅かに気圧されながらも、なんとか具体的に説明しようと奮闘する傍で、何やら重たい表情を浮かべたセドにエオーネが話しかける


「どうしたの?」


「何がだ?」


「顔に悩んでるって書いてるわよ?」


そんな事書いてるわけ無いだろうと思いながらも、自身の今感じている事も全てをお見通しといった様子のエオーネの美しい微笑みの前に、セドは抵抗を諦めると少しの逡巡の後に口を開く


「・・・俺はこのままで良いのかと思ってな」


水流カッターを使い敵を薙ぎ払ったフィリア、新たな力パワードフォームを使い3大怪人の一角、ビヨロコとクーラを討伐してみせたトウヤ

2人とも自己研鑽を重ね新たな力を手にしているのに対して自分は変わらず、魔法ばかりに頼っている


「俺も変わらねばならない、自分自身と向き合わねばならないと、そう考えてるのだが・・・」


過去に起こした事件へと思いを至らせ拳を握る

如何に辛い事件だろうとも、そろそろ向き合うべきなのか


「セド・・・」


「いや、そうだな・・・もう真実から逃げ続けるのは辞めた方が良いのかもしれないな」


「あなたに何があったのかは知らないけど、無理をする必要は無いのよ? そう考えれるのなら少しずつでも良いんだからね」


「ありがとう」


変わらねばならない、それ故の焦りを浮かべる彼ではあったが、心配そうに肩に手を置きながら話しかけてくるエオーネの優しさに、セドは心からの感謝を述べた


なんと無しに勝利に湧き立つ勇者達を一瞥しながらも、どうしようかと考えている最中、通信術式が起動する


「どうした?」


何事かと思い返事をすれば、通信越しに帰ってきたのは焦る司令の声だった


『まずい事になった。魔人出現の報告が上がったので至急対応してくれ!』





時はキング討伐の報が司令部へと届いた時に戻る


前線では戦いが終わり歓声が溢れるが、司令部では戦闘が終わったことへの歓喜を一頻り味わうと、余韻に浸りながらもすぐさま次の仕事に取り掛かっていた


決死隊への戦闘終了の報告と状況確認、各部隊の状態確認に王国軍司令部への報告等、戦闘が終わったにも関わらず、司令部に勤める者達は街が守られた事に安堵はしながらも自分の仕事を続けている


そんな彼らにとある連絡が入ったのだ


曰く、ジャイアントアントが街に侵入した

その様な連絡だった


しかし、先ほどキングが討伐された事で結界にへばりついていたジャイアントアント達は逃げ去って行ったはずだ


その奇妙な連絡に司令部にいる者は皆首を傾げるが、放っておく事も出来ずに近くにいた部隊を派遣して対処をする事にした


『こちら第8歩兵隊、司令部聞こえるか?』


「こちら司令部、どうだ? ジャイアントアントはいたか?」


派遣した第8歩兵隊からの連絡はそれからすぐに届いた。通信に司令が返事をすると、嫌気がさした様な声音で返事があった


『確かに3体いましたよ、なんでまだいやがったんだ』


「何か周囲に怪しい点はあるか?」


『あります。ポッカリと開いたマンホールがね、多分ここから侵入したんでしょう』


「マンホール・・・?」


マンホールという事は家屋保護結界の効果が及んでいない下水道からの侵入が考えられる

だが、地下からの侵攻はグラウンドバスターによる迎撃で防いだ筈であった。それなのに下水道からの侵入が発生した可能性が出て来て事もあり、司令官は訝しげな表情を浮かべた


「奇妙だな・・・わかった。調査隊を派遣しよう、第8歩兵隊は警戒したままその場で待機してくれ」


『わかりました・・・ん?』


その時であった

通信越しにもわかるくらいの音量を響かせながら、何かがハシゴを上がってくる音が聞こえたのだ


眉を顰めながら司令はその音を聞き、現場にいる第8歩兵隊の隊員達は怪訝な表情を浮かべながらマンホールの中を覗き見る


『誰か・・・いるのか?』


そう呟いた瞬間だった。通信が一瞬ノイズまみれになり現場にいた隊員達と通信が取れなくなる


「第8歩兵隊状況を伝えろ! 第8歩兵隊! どうした。何があった!」


「司令! 第8歩兵隊の確認に行った地点に高出力魔法反応!!」


「なんだと!!」


高出力魔法反応、主に普通の人間には使用不能なレベルの高濃度の魔力を用いて発動される魔法に対して使われる用語であり、それが突然発生した

思いがけない事態に司令部は騒然とし始める


『司令・・・こちら第8歩兵隊・・・リーサ・・・』


途切れていた通信が復旧すると、先程とは違う若々しい女性の声へと変わり、嫌な予感を感じながらも司令は問い掛ける


「部隊長はどうした」


『噴き出した炎に呑み込まれて・・・』


「そうか・・・」


その報告に鎮痛な面持ちを浮かべる司令だが、次に知らされた報告に焦りの表情を浮かべる


『魔人です・・・魔人が・・・あぁ!』


「魔人? おい、どうした、返事をしろ! 第8歩兵隊、生き残っている者はいるか!?」


幾ら叫んでも言葉が返ってくる事は無くノイズだけが通信機からは聞こえてくる


眉間に皺を寄せ唸る様な声を上げながらも、努めて平静を保とうとするが、返事のない歩兵隊に魔獣の侵攻と魔人の出現、これらの事から敵の目的を簡単に想像できてしまい憂鬱な気持ちになってしまう


「魔人・・・これはまずい事になったかもしれん」


どう対応していこうか、そう考えようとした彼に、オペレーターからの報告を聞いていた副官が沈んだ表情を浮かべながら戻ってくる


「司令、街中でジャイアントアント出現報告が次々に上がっています。これはおそらく・・・」


「あぁだろうな・・・応援部隊を呼び戻してくれ」


もしも敵の狙いが考え通りであるならば、陽動の為に街中に魔獣を放つくらいの想像はできていたので、特に慌てる様子を見せない


「強襲揚陸艦マパナがあと45分で到着予定との事です」


対して副官である彼女もまた、司令と同じ考えに至ったのだろう


すでに呼び戻していた様だ


「早いな、ありがとう」


行動の速さに思わず舌を巻く

だが、彼女はそれも当然と言わんばかりの態度を取る


「当たり前です。これだけ共に過ごしたのですから、あなたの考えなど手に取るように分かりますよ」


「頼もしいな」


自身の副官の頼もしさに思わず笑みを浮かべた


「それで次はどなたに連絡されますか?」


「この街のヒーローに連絡しよう




ーー勇者を守る為にな」


魔人が来た

人よりも、ヒーローと呼ばれるもの達よりも膨大な魔力を持ち、強力な魔法を放つ魔の人が


だがそれでも、責務を果たす為に人は動く

空中艦隊:

風魔法を使用して空を浮遊する空中艦の艦隊

戦艦、巡洋艦、駆逐艦、フリゲート艦、強襲揚陸艦の5隻が主な艦種

空中艦隊構想の初出は第4勇者が召喚された頃であり、実現出来たのはそれから数世代先の勇者の時代であった

それから世界中に瞬く間に広がり、例を挙げれば魔王軍、旧世界の各国軍隊など、世界各国で使用されるまでに至った

そこから水上艦隊の価値が下がり掛けたが、コスト面や海路を用いた作戦が廃れる事が無かった点、貿易上の問題から海路の保護を目的に水上艦隊は未だ現役である


なお民間の空中艦は存在するが、少人数の人員輸送と荷物の運搬が主であり、飼い慣らした草食の有翼魔獣を使った方が、輸送速度が早く、初期投資から維持費まで全てが安上がりなので殆ど普及しておらず、一部の大手航空会社が富裕層向けの旅行プランで使用するのみであった

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