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生徒会役員

 第一会議室で莉月(りつ)達を待っていたのは生徒会役員の九名だった。


「どうぞ。空いてる席に腰掛けて。まだ来てない人がいるからちょっと待ってて」


なかなか部屋に入ってこない莉月達を見かねた生徒会長が声をかけた。軽く頭を下げ、亜寿樹(あすき)と共に莉月は座った。亜寿樹は緊張しているのか珍しく大人しい。


「あれ?亜寿樹、珍しく静かじゃん。緊張してる?」

「べ、別に!そんなんじゃねーし!」


莉月の隣に移動してきた婀恵(あえ)がからかった。亜寿樹は姉が近くに、来てくれたことで緊張が解けたようでいつもの声量で返した。


「莉月も久しぶりだね」

「お久しぶりです」


 莉月と婀恵が軽く挨拶を済ました時、机を叩く大きな音が部屋に響いた。音源の方に視線を向けると、黒髪だが毛先にかけて赤くなっている短髪の男が机に手をついて立っていた。そして、その男は声を荒げた。


「おい!西園寺仔空(さいおんじ しあ)!机の上に足を置くな!何回言えば分かるんだ!」

「うるせー。お前、立場を考えろ。俺はお前よりも序列が上だ。それに弟が起きるだろ」


声を荒げた男は、どうやら向かいに座っている机の上に足を置いてるのが気に入らなかったようだ。今にも大喧嘩になりそうな雰囲気だがいつもの事なのか、他の生徒会役員は気に留める様子もない。ましてや、西園寺仔空の隣では寝ている人までいた。


「あの声を荒げているのが、6年生で序列9の楽々浦晃輝(ささうら こうき)。で、向かいに座ってる、足を机に置いてるのが4年の序列6の西園寺仔空。仔空さんの隣で寝てるのが同じく4年の序列7の西園寺仔釉(しゆ)。お察しの通り、双子だよ」


 婀恵は、莉月達に丁寧に生徒会役員を紹介していった。


「楽々浦さんの隣に座っているのが、6年生で序列3の葉室陽渚(はむろ ひなぎ)先輩。陽渚先輩のチェスの相手をしてるのが、5年生で序列4の嵯峨貴彦(さが たかひこ)先輩。あの二人仲がいいんだよ」


付き合ってないって信じられる?と優しい眼差しで婀恵は、二人を見た。さっきの三人が騒がしかったからか、二人を見ていると心が和むなと莉月も見てて思った。


「姉ちゃん、あの変人だれ?」


亜寿樹が指差す方を見ると、八重歯が印象的な長髪の女性が、壁に耳をあてて何かを呟いていた。


「あー、あの人は3年生で序列8の愛宕玖羅(あたご きら)。あれはあれで放っといて良いよ。あれに話しかけるのは物好きぐらいだし」

「じゃあ、実美先輩は物好きって事ですか?」


莉月の一言で、伏せていた視線を玖羅の方に戻した婀恵は、呆れた表情になった。婀恵の視線の先には、自身の同級生である実美が変人に話しかけていた。


「玖羅先輩〜、今日は壁から誰の声が聞こえるの?」

「ん?今日は、野口英世や。うちの実験の助言をもらってるんやわ」

「まぁ!面白そう!是非私も聞きたいわ」

「ではでは~、壁に耳をあてて…」

「壁に耳をあてて?」


玖羅が言ったことを実美は反復する。


「あとは待つだけや!」

「待つだけ………何も聞こえないわよ?」

「それは、実美が純粋じゃないからちゃう?」

「あら。それは聞き捨てならないわね」


その光景を見ていた婀恵は、呆れた表情から引いた表情へと変わっていた。ちなみに、引いているのは莉月も亜寿樹も同じである。


「実美は、物好きじゃ無くて、好奇心旺盛なだけだよ。たぶんね」

「そこは言い切って下さい」


そうだねと婀恵は、また一つため息をついた。


✿✿✿✿✿


 各々が自由に過ごすこの賑やかな空間をにこやかに見ている者がいた。それは、生徒会長の濡羽琉生(ぬれば るき)である。琉生は、今しがた部屋に来た客人達、特に莉月を見ていた。


(あれが、一条家の御子息か)


琉生はただただ莉月を観察していた。意外と表情豊かな莉月を見て、何だか懐かしく感じたが、気の所為にしておいた。それよりも、より一層賑やかになりそうなこれからの日常への期待が大きかった。


(一条莉月、君は僕をどれぐらい楽しませてくれるのかな)


琉生は微笑した。


✿✿✿✿✿


莉月が第一会議室に来てから二十分程経っても、会議室内は賑やかなままで、話が切り出される雰囲気がない。いつまで待たされるんだと思い、生徒会長の方を見ても、生徒会長である琉生はにこやかに生徒会役員達を見ているだけである。


(あの会長、さっきからずっと見てくるけど、俺何かしたか?それに、なんかいけ好かない)


一番下級生である莉月が話を切り出すことも出来ないので、時間だけが過ぎて言った。


「るーきくん!いつ始めるの?もう待ちくたびれたよ~」


そう言ったのは、先程までチェスを嗜んでいた陽渚である。その一言に、賑やかだった会議室内が静寂に包まれた。


「ごめんね、葉室さん。あと一人、一年生が来てないんだ」

「ん?どうやら私はだいぶ遅れたようだ」


会長がいい終えると同時に一人の女子生徒が入ってきた。















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