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コーチライン  作者: 山井いろは
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フリーター、コーチになる。

柳北高校の女子バスケ部、前原コーチ。


私がこの学校を選んだ理由は、その人から教えてもらえるからだった。


前原さんは公立学校の教員にも関わらず、生徒に1年間教えただけでそのチームは全国大会へ行き、ベスト4まで上がったという伝説を持つ大物コーチだった。


全中バスケ、2回戦敗退。

同級生のみんなからは全国行くだけで凄いよ、なんて励まされもしたけれど、一応強豪バスケ部としては2回戦敗退はなんとも言えない屈辱だった。


まだ引退して間もないにもかかわらず、他の3年生レギュラーの皆は強豪校へ進学すると決めているらしい。


私はどうしようかと色々迷っていた。

バスケットボール自体のモチベーションも消えかけていた。

そんな矢先のこと。顧問の先生が柳北の存在を教えてくれた。


「…柳北高校の前原コーチ、知ってるか?」

「はい、存じています。」

「りょう、そこにいけばいいと思うんだ。みたところ進路に迷ってるみたいだし、な。」


でも、柳北がそんなに強いイメージはなかった。

だからこうして推されている理由もわからない。

そんな私の気持ちを察してか、先生は資料を持ってきて見せた。


「柳北の今年の成績は振るわなかったが、前原さんは来年もいることは8割確定らしい。

まあ公立学校だから異動があるからまだわからんし、無理にとは言わないが…彼女は君のこともご存知だし。


どうだ?行ってみないか?」


バスケットボールなんてもうこりごり、そう言えるくらいには練習に打ち込んだ。


でも負けた。


悔しいけど、周りからしたら全国大会なんて雲の上の目標で。

その悔しさや虚しさを共有できる人もいないまま1ヶ月も無駄にしてしまった。


それでもまだバスケを辞めるという選択肢が浮かぶことはなくて。


もう少しだけやりたいからやらせてほしい。

この柳北に行くこと、前原さんに教えてもらうことがチャンスならば乗ってみよう。



「わかりました、ここにします。」



先生の手元の名簿の私の名前、


"村岡りょう"の隣には、柳北の文字。



また練習しに行かなくてはいけないかな。

ああ、忙しくなる。















「ああ、君、スポーツ推薦の村岡さんだよね。

ちょっと話があるんだけど、いいかな?」


4月になって、約束通りこの学校に進学した。

入部届を出した日、私は職員室にいる女子バスケ部の顧問に呼ばれた。


「…前監督の前原先生なんだけど、ご家族の都合で異動なされたんですよ。

___せっかく入学してもらったのに悪いね。


今年から僕が顧問なんだけど…バスケはもちろんスポーツがからっきしでさぁ、教えるなんて本当無理なんだけど…。

それでも良ければ入部してね。」


心臓がヒュッと縮んだ。もう呼ばれた時点で嫌な予感がしていた。


3月まで練習に参加させてもらっていたのに。

8割確定は2割未確定だ。


そんなことも頭から抜けていた。


とりあえず入部はした。でもやる気が全く出なくて、もうほとんどなんとなくの気持ちで練習をこなしながら、頭には前原監督の顔が浮かぶ。


あの人は厳しいがとても色々なことが身につくような教え方だった。


2月と3月にあった、たった2ヶ月のプレ入部でも夏の頃とは全く違う動きになったことが自分でもわかった。


忘れられない。


前原さんを追いかけて



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